SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?目的・効果・具体例までわかりやすく解説
SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは、友達との関わり方や気持ちの伝え方、集団生活で必要となる社会的なスキルを、練習を通して身に付ける支援方法です。
近年では特別支援学級だけでなく、通常学級や通級指導教室、放課後等デイサービス、家庭など、さまざまな場面で取り入れられるようになりました。
しかし、実際には
- SSTとは何をするの?
- どんな子どもに必要なの?
- どんな教材を使えばいい?
- 授業ではどのように進めるの?
- 本当に効果はあるの?
このような疑問を持っている先生や保護者の方も多いのではないでしょうか。
私は特別支援教育の現場で長年、SSTを実践してきました。
うまくいった活動もあれば、思うような成果が出ず、何度も改善を重ねてきた活動もあります。
だからこそこの記事では、教科書的な知識だけではなく、現場で実際に子どもたちと関わる中で得た経験を交えながら、SSTをできるだけわかりやすく解説します。
また、本記事は「SSTを知るための記事」で終わりません。
この記事を入口として、具体的な実践例や教材、ゲーム、ロールプレイ、無料プリントなども紹介していますので、ぜひ必要に応じてご活用ください。
この記事を読むと分かること
- SSTとは何か
- SSTが注目される理由
- SSTの目的と効果
- SSTの基本的な進め方
- 学校・家庭での活用方法
- 今日から実践できる具体例
- おすすめ教材・無料教材
SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?【この記事の結論】
SST(Social Skills Training:ソーシャルスキルトレーニング)とは、子どもたちが学校生活や日常生活で必要となる「人と関わる力(社会的スキル)」を身に付けるためのトレーニングです。
勉強には国語や算数の学習が必要なように、人との関わり方にも「学ぶ機会」が必要な子どもがいます。
例えば、次のような場面で困っている子どもはいないでしょうか。
- 友達との遊びに入りたいけれど、何と声を掛ければよいか分からない
- 嫌なことがあると怒ったり泣いたりしてしまう
- 自分の気持ちを言葉で伝えることが苦手
- 相手の気持ちを想像することが難しい
- 負けると感情をコントロールできなくなる
- 順番を待つことが苦手
- 頼みたいことがあっても言い出せない
このような困りごとは、「本人の性格」や「わがまま」が原因とは限りません。
必要なスキルを知らなかったり、知っていても実際の場面で使う経験が不足していたりすることがあります。
SSTでは、このような社会的スキルを「できるようになってほしい」と願うだけではなく、子どもが身に付けられるように具体的に教え、練習し、成功体験を積み重ねていきます。
つまりSSTは、「できないことを注意する指導」ではなく、「できるようになるための学習」です。
SSTは「困った子を変えるための指導」ではありません。
子どもが安心して社会の中で生活するために必要なスキルを、一つずつ身に付けていくための教育的支援です。
そのため現在では、特別支援学級だけでなく、通常学級や通級指導教室、放課後等デイサービス、さらには家庭でも広く実践されています。
私は特別支援教育の現場でSSTを実践する中で、「何を練習するか」以上に「どのように教えるか」が子どもの成長を大きく左右すると感じています。
例えば、「友達と仲良くしよう」と伝えるだけでは、多くの子どもは具体的にどう行動すればよいか分かりません。
一方で、「遊びに入りたいときは『入れて。』と相手の近くで笑顔で伝える」「断られたときは『また今度ね。』と言って別の遊びを探す」など、具体的な行動を練習すると、実際の生活場面でも成功する経験が少しずつ増えていきます。
このように、SSTは子どもの「困り感」を減らすだけでなく、「できた」という成功体験を積み重ね、自信や自己肯定感を育てる支援でもあります。

なぜ今、SST(ソーシャルスキルトレーニング)が注目されているのか?
近年、SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、特別支援学級だけでなく、通常学級や放課後等デイサービス、家庭など、さまざまな場面で実践されるようになっています。
その背景には、子どもたちを取り巻く環境の変化があります。
以前は、友達と遊ぶ中で自然に身に付いていた「順番を待つ」「気持ちを伝える」「相手の気持ちを考える」といった社会的なスキルを、経験だけで十分に学ぶことが難しい子どもが増えています。
また、発達障害に対する理解が広がったことで、「できないことを叱る」のではなく、「できるようになる方法を教える」という支援の重要性が広く認識されるようになりました。
学校現場でも、友達とのトラブルや感情のコントロール、人との距離感、コミュニケーションに課題を抱える子どもは少なくありません。
そのような困り感に対して、SSTは子ども一人ひとりに必要なスキルを具体的に教え、安心して学校生活を送れるよう支援する方法として注目されています。
「できないから注意する」のではなく、「できるようになる方法を一緒に学ぶ」。
この考え方こそが、SSTの基本となる考え方です。
教育者として私が感じること
私は特別支援学級で子どもたちと関わる中で、「友達と仲良くしよう」「落ち着こう」と何度伝えても、行動が変わらない場面を数え切れないほど経験してきました。
しかし、それは子どもが努力していないからではありません。
「どう行動すればよいのか」を知らなかったり、知っていても実際の場面で使う経験が不足していたりすることが多いのです。
だから私は、注意する前に「どうすればできるのか」を一緒に練習することを大切にしています。
SSTを継続すると、子どもたちが「できた!」という経験を積み重ね、自信をもって友達と関われるようになる姿を何度も見てきました。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)の目的とは?
SST(ソーシャルスキルトレーニング)の目的は、単に「社会性を身に付けること」ではありません。
子ども一人ひとりが、学校や家庭、地域社会の中で安心して生活できるようになることが、SSTの最も大きな目的です。
私たちは毎日の生活の中で、友達や家族、先生、地域の人など、多くの人と関わりながら生活しています。
その中では、相手に気持ちを伝えたり、困ったときに助けを求めたり、自分の気持ちをコントロールしたりする場面が数多くあります。
しかし、こうした力は自然に身に付く子どももいれば、具体的に教えたり、繰り返し練習したりすることで少しずつ身に付く子どももいます。
SSTは、そのような社会生活に必要なスキルを「経験任せ」にするのではなく、子どもが理解し、実際に使えるようになるまで丁寧に支援する学習方法です。
SSTの目的は、「困った行動を減らすこと」ではなく、「子どもの『できる』を増やすこと」です。

SSTでは、このような一つひとつのスキルを、小さな目標に分けながら練習していきます。
例えば、「友達と仲良くする」という大きな目標であれば、それを次のような具体的な行動に分けて学習します。
- 笑顔であいさつをする
- 遊びに「入れて」と伝える
- 順番を待つ
- 相手の話を最後まで聞く
- 嫌なことは落ち着いて伝える
- ありがとう、ごめんなさいを伝える
このように、「友達と仲良くしよう」と伝えるだけではなく、必要な行動を一つずつ具体的に教えていくことがSSTの大きな特徴です。

コラム|SSTで伸びる子どもに共通する3つの特徴
私は長年、特別支援教育の現場で多くの子どもたちと関わってきました。その中で、「SSTの効果が出やすい子ども」には共通する特徴があると感じています。
- ① 小さな成功体験を積み重ねられていること
難しい課題ではなく、「少し頑張ればできる課題」から始めることで、自信が育ちます。 - ② 大人ができたことを具体的に認めていること
「すごいね」ではなく、「最後まで話を聞けたね」「自分からお願いできたね」と行動を具体的に伝えることが大切です。 - ③ 学んだことを生活の中で何度も使っていること
SSTの時間だけで終わらせず、教室や家庭、遊びの中で繰り返し使うことで、社会的スキルは少しずつ定着していきます。
私は、子どもが「できなかったこと」よりも「今日できるようになったこと」を積み重ねることが、社会的スキルを育てる一番の近道だと考えています。
SSTで身に付けたい社会的スキル(ソーシャルスキル)とは?
SST(ソーシャルスキルトレーニング)では、「社会的スキル(ソーシャルスキル)」を身に付けることを目指します。
社会的スキルとは、学校や家庭、地域社会などで他者と関わりながら生活するために必要な行動や考え方のことです。
例えば、友達にあいさつをすることや、自分の気持ちを言葉で伝えること、困ったときに助けを求めることも社会的スキルの一つです。
これらは当たり前にできるように見えるかもしれません。しかし、子どもによっては「どうすればよいのか分からない」「知っていても実際の場面でできない」ということがあります。
SSTでは、そのようなスキルを一つひとつ具体的に教え、繰り返し練習することで、日常生活の中でも使えるようになることを目指します。

SSTで育てたい社会的スキルの例
| 身に付けたい力 | 具体例 |
|---|---|
| コミュニケーション | あいさつ・お願い・断り方・質問する |
| 感情のコントロール | 怒りを落ち着かせる・深呼吸・気持ちを言葉で伝える |
| 友達との関わり | 遊びに誘う・仲間に入る・協力する |
| 集団生活 | 順番を待つ・話を聞く・ルールを守る |
| 問題解決 | 困ったときに相談する・話し合う・折り合いをつける |
| 自己理解 | 得意・苦手を知る・SOSを出す |
教員として感じてきたこと
私は特別支援学級で子どもたちと関わる中で、「できないこと」だけに目を向けるのではなく、「どの社会的スキルが育っていないのか」を考えるようにしています。
例えば、友達とのトラブルが多い子どもでも、その原因は一人ひとり異なります。
- 気持ちを言葉で伝えることが苦手なのか
- 相手の気持ちを想像することが苦手なのか
- 怒りをコントロールする方法を知らないのか
- 困ったときに助けを求められないのか
原因が違えば、必要な支援も変わります。
だから私は、困った行動だけを見るのではなく、その背景にある「まだ身に付いていない社会的スキル」を見つけることを大切にしています。
※社会的スキルを身に付けるためには、ロールプレイやゲーム、ソーシャルストーリーなど、子どもが楽しく取り組める活動を組み合わせることが大切です。詳しくは以下の記事で紹介しています。
SSTの基本的な進め方【5つのステップ】
SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、ただ「やってみよう」と活動するだけでは十分な効果は期待できません。
子どもが新しい社会的スキルを理解し、実際の生活場面でも使えるようになるためには、段階的に学習を進めることが大切です。
学校や放課後等デイサービスなどではさまざまな実践方法がありますが、多くのSSTは次の5つのステップを基本として進められています。
① 教える(教示)
まずは、今回練習する社会的スキルを子どもに分かりやすく伝えます。
例えば、「友達と仲良くしよう」といった抽象的な言葉ではなく、「遊びに入りたいときは『入れて。』と言ってみよう」のように、具体的な行動で伝えることが大切です。
活動のねらいや、どんな場面で使うスキルなのかも合わせて説明すると、子どもは目的を理解しやすくなります。
② 見本を見せる(モデリング)
次に、先生や友達が見本となり、実際の場面を演じます。
子どもは言葉だけでは理解が難しいこともあるため、「実際に見て学ぶ」ことがとても重要です。
良い例だけでなく、「困ってしまう例」を演じて比較すると、違いがより分かりやすくなります。
③ やってみる(ロールプレイ)
見本を見た後は、実際に子ども自身が練習します。
ロールプレイでは、「友達役」と「自分役」に分かれて、実際の学校生活をイメージしながら活動します。
最初から完璧にできる必要はありません。安心して挑戦できる雰囲気づくりが大切です。
④ 振り返る・ほめる(フィードバック)
ロールプレイが終わったら、「どこが良かったか」「次はどうするともっと良くなるか」を一緒に振り返ります。
特に大切なのは、できたことを具体的に認めることです。
例えば、「最後まで話を聞けたね」「笑顔で伝えられたね」と具体的に伝えることで、子どもは成功体験として自信を積み重ねられます。
⑤ 生活の中で使う(般化)
SSTで最も大切なのは、活動の時間だけで終わらせないことです。
教室や家庭、休み時間など、実際の生活場面で子どもが学んだスキルを使えるよう支援することを「般化(はんか)」といいます。
例えば、SSTで「遊びに入れてと言う練習」をした後、休み時間にも先生がそっと声を掛け、実際に挑戦できるよう支援します。
実際の生活で成功体験を積み重ねることで、社会的スキルは少しずつ定着していきます。
教員として感じてきたこと
私が特別支援学級でSSTを行う中で最も大切にしているのは、「活動で終わらせないこと」です。
ロールプレイでは上手にできても、休み時間や教室では緊張してうまくできない子どもは少なくありません。
だからこそ、実際の学校生活の中で成功できるように先生がタイミングを見て声を掛けたり、成功した場面をその場で認めたりすることが重要です。
SSTは「教える時間」よりも、「生活の中で生かせるよう支援する時間」の方が大切だと私は感じています。

SSTを成功させるために大切な5つのポイント
SSTは、手順どおりに進めるだけでは十分な効果を発揮できません。
私は特別支援学級でSSTを実践する中で、「どのように教えるか」だけでなく、「どのような環境で、どのような関わり方をするか」が、子どもの成長を大きく左右すると感じています。
ここでは、私が現場で特に大切にしている5つのポイントをご紹介します。
① 子どもが成功できる場面から始める
SSTでは、「難しい課題に挑戦すること」よりも、「成功体験を積み重ねること」が大切です。
例えば、「友達と30分遊ぶ」という目標では難しすぎても、「友達に『入れて。』と言う」「朝、自分からあいさつをする」であれば成功できる子どももいます。
小さな成功を積み重ねることで、「やってみよう」という気持ちが育ち、次のチャレンジにつながります。
② ほめるポイントを具体的に伝える
「すごいね」「えらいね」とほめるだけでは、子どもは何が良かったのか分からないことがあります。
例えば、
- 最後まで相手の話を聞けたね。
- 笑顔で伝えられたね。
- 順番を待てたね。
- 困ったときに先生へ相談できたね。
このように具体的な行動を伝えることで、子どもは「次もやってみよう」と考えやすくなります。
③ 日常生活の中で何度も練習する
SSTは週1回の活動だけでは十分とは言えません。
本当に力を付けるためには、学校生活や家庭生活の中で何度も使う経験が必要です。
例えば、「遊びに入れて」と言う練習をした日は、休み時間にも先生が近くで見守り、「今がチャンスだよ」と声を掛けます。
子どもが実際に挑戦できたら、その場で「勇気を出して言えたね。」と具体的に認めます。
このように、練習と実生活を結び付けることで、学んだスキルは少しずつ定着していきます。
④ 保護者と連携する
SSTは学校だけで完結するものではありません。
家庭でも同じ場面を経験できるようにすると、社会的スキルはさらに定着しやすくなります。
例えば、学校で「お願いの仕方」を練習したら、家庭でも「飲み物を取ってくださいと言ってみよう」と練習してもらうことができます。
学校と家庭で同じ言葉掛けや支援方法を共有すると、子どもは安心して新しい行動に挑戦できます。
⑤ 子どもによって支援方法を変える
同じ「友達とのトラブル」があっても、その原因は子どもによって異なります。
そのため、全員が同じSSTを行えばよいわけではありません。
例えば、自分の気持ちを伝えることが苦手な子どもには「I(アイ)メッセージ」の練習が効果的な場合があります。一方で、相手の気持ちを想像することが苦手な子どもには「コミック会話」や「ソーシャルストーリー」が役立つこともあります。
子どもの困り感の背景を丁寧に理解し、その子に合った支援方法を選ぶことが、SSTを成功させるための重要なポイントです。
コラム|実践を通して気づいたこと
以前の私は、「この活動ならきっと伸びる」と考え、同じSSTを子どもたち全員に実践していた時期がありました。
しかし、実際には同じ活動でも大きく成長する子どもがいる一方で、ほとんど変化が見られない子どももいました。
そこで私が変えたのは、「活動」ではなく「子どもの見方」です。
「なぜ、この子は困っているのだろう」「どの社会的スキルがまだ育っていないのだろう」と考えるようになると、自然と選ぶ教材や声掛けも変わりました。
今では、SSTで最も大切なのは「活動」ではなく、「子どもの困り感を正しく理解すること」だと感じています。
学校・家庭・放課後等デイサービスでのSST活用例
SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、特別支援学級だけで行うものではありません。
学校・家庭・放課後等デイサービスなど、子どもが生活するさまざまな場面で取り組むことで、学んだ社会的スキルが実生活に結び付きやすくなります。
ここでは、それぞれの場面でどのようにSSTを取り入れられるのかをご紹介します。
学校でのSST活用例
学校は、子どもが友達や先生と関わる機会が多く、社会的スキルを実践する場面が豊富にあります。そのため、SSTで学んだことを実際の生活につなげやすい環境です。
特に次のような場面では、SSTを取り入れやすいでしょう。
- 朝の会・帰りの会でのあいさつや発表
- 学級活動・自立活動・特別活動
- 休み時間の友達との関わり
- 係活動や当番活動
- グループ学習や話し合い活動
私は特別支援学級でSSTを行う際、活動時間だけで終わらせるのではなく、休み時間や給食、掃除などの生活場面でも同じスキルを使えるよう意識しています。
例えば、「遊びに入れてください」と伝える練習をした後は、休み時間に実際に挑戦する機会をつくります。成功したときにはその場で具体的に褒めることで、「できた」という経験が積み重なり、自信につながっていきます。
家庭でのSST活用例
家庭は、子どもが安心して何度も練習できる大切な場所です。
特別な教材がなくても、日常生活の中で社会的スキルを育てることは十分にできます。
- 「貸して」「ありがとう」を言葉で伝える
- 困ったときに「手伝って」とお願いする
- 家族で順番に話す練習をする
- 買い物で店員さんへあいさつをする
- ゲームで負けたときの気持ちを言葉にする
保護者の方は、「できなかったこと」を指摘するよりも、「できたこと」を具体的に認めることを意識してみてください。
「自分からお願いできたね」「最後まで話を聞けたね」と行動を具体的に褒めることで、子どもは安心して次のチャレンジに取り組みやすくなります。
放課後等デイサービスでのSST活用例
放課後等デイサービスでは、遊びやレクリエーションを通して楽しみながらSSTに取り組めることが大きな特徴です。
集団活動だけでなく、個別支援の時間を活用して、一人ひとりの課題に合わせたSSTを実践することもできます。
- カードゲームで順番を待つ練習
- ボードゲームで勝ち負けへの対応を学ぶ
- ロールプレイで断り方やお願いの仕方を練習する
- ソーシャルストーリーで学校生活を振り返る
- コミック会話で相手の気持ちを考える
楽しみながら繰り返し練習できる環境は、子どもにとって成功体験を積み重ねる大きな力になります。
学校・家庭・放課後等デイサービスが連携することが大切
SSTの効果を高めるためには、一つの場所だけで取り組むのではなく、学校・家庭・放課後等デイサービスが同じ目標を共有することが大切です。
例えば、学校で「困ったときは『手伝ってください』と伝える」ことを練習したら、家庭でも同じ言葉掛けを行い、放課後等デイサービスでも実際に使う機会をつくることができます。
このように、さまざまな生活場面で同じスキルを繰り返し使うことで、社会的スキルは少しずつ子どもの力として定着していきます。
SSTは「教える時間」に価値があるのではなく、「生活の中で使えるようになること」に価値があります。
SSTの具体例【今日から実践できる10選】
「SSTとは分かったけれど、実際にはどのような活動をすればよいの?」と悩む先生や保護者も多いのではないでしょうか。
SSTには決まったやり方があるわけではありません。子どもの発達段階や困り感に合わせて活動を選び、繰り返し練習することが大切です。
ここでは、学校や家庭、放課後等デイサービスで今日から実践しやすい活動を10個紹介します。
① あいさつの練習
育てたい力
- コミュニケーション
- 対人関係
- 自己表現
こんな子どもにおすすめ
- 自分から話し掛けられない
- 友達との関わりが少ない
進め方
先生と一対一で「おはようございます。」から始めます。
慣れてきたら友達同士でも行います。
最後は実際の朝の会や登校場面で実践します。
現役教員のワンポイント
「声が小さいね。」ではなく、「目を見て言えたね。」など、できた行動を具体的に褒めると成功体験につながります。
② 「遊びに入れて」と伝える練習
育てたい力
- 自己表現
- 友達との関わり
- 勇気を出す力
こんな子どもにおすすめ
- 一人遊びが多い
- 遊びに入りたいけれど言えない
進め方
先生が友達役になります。
「入れて。」と言う練習を何度か行います。
その後、休み時間に実際にチャレンジします。
現役教員のワンポイント
私は休み時間の前に「今日挑戦してみようか。」と一声掛けます。
成功したら、その場ですぐ褒めるようにしています。
③ 気持ちカードを使った活動
育てたい力
- 感情理解
- 自己理解
- 自己表現
こんな子どもにおすすめ
- 怒ってしまう
- 気持ちを言葉にできない
進め方
さまざまな表情カードを見ながら、「今の気持ちは?」「どんな時にこの気持ちになる?」と話し合います。
現役教員のワンポイント
「正解」を求めるのではなく、子どもの感じ方を受け止めることが大切です。
④ ロールプレイ
SSTの代表的な活動です。
学校生活で起こりそうな場面を実際に演じながら練習します。
- 断り方
- 頼み方
- 謝り方
- 相談の仕方
▶詳しい進め方は「SSTロールプレイ実践例」で紹介しています。
⑤ ソーシャルストーリー
育てたい力
- 場面理解
- 適切な行動の選択
- 不安の軽減
こんな子どもにおすすめ
- 初めての活動に不安を感じやすい
- 学校生活の見通しが持ちにくい
- 同じ失敗を繰り返してしまう
進め方
ソーシャルストーリーとは、これから起こる出来事や望ましい行動を、イラストや写真、短い文章で分かりやすく伝える教材です。
例えば、「休み時間に友達と遊びたい」というテーマであれば、「友達を見つける」「笑顔で近付く」「『入れて。』と伝える」「一緒に遊ぶ」という流れを絵本のように示します。
事前に流れを知っておくことで、不安が軽減され、実際の場面でも行動しやすくなります。
現役教員のワンポイント
私は子どもの実際の学校生活に合わせてストーリーを作るようにしています。一般的な教材よりも、「自分の教室」「自分の先生」「実際の教具」の写真を使うと、理解が深まりやすくなります。
よくある失敗
説明が長すぎたり、一度読んだだけで終わったりすると、実生活に結び付きにくくなります。
改善のコツ
短い文章と写真・イラストを使い、実際の活動前に何度も読み返しましょう。
⑥ コミック会話(コミック会話法)
育てたい力
- 相手の気持ちを理解する力
- コミュニケーション力
- 振り返る力
こんな子どもにおすすめ
- 相手の気持ちを想像することが苦手
- 友達とのトラブルが多い
- 会話のすれ違いが多い
進め方
コミック会話とは、出来事を漫画のように描きながら、そのときの気持ちや考えを整理する方法です。
吹き出しの中に「何と言ったのか」「そのとき何を考えていたのか」を書き込みながら、一緒に振り返ります。
自分だけでなく相手の吹き出しも考えることで、「相手はどう感じたのかな?」という視点を育てられます。
現役教員のワンポイント
私は「正しい答え」を探すのではなく、「いろいろな考え方があるね」と受け止めながら話を進めます。その方が子どもも安心して自分の気持ちを話せます。
よくある失敗
子どもの考えをすぐに否定したり、正解だけを教えたりすると、自分の気持ちを表現しにくくなります。
改善のコツ
まずは子どもの考えを受け止め、その上で「相手だったらどう思うかな?」と一緒に考えることを大切にしましょう。
⑦ SSTゲーム
育てたい力
- コミュニケーション
- 協力する力
- ルールを守る力
- 感情コントロール
こんな子どもにおすすめ
- 活動への参加意欲が低い
- 楽しみながら学びたい
- 集団活動が苦手
進め方
ゲームは、子どもが自然に社会的スキルを練習できる活動です。
勝ち負けがあるゲームでは、「順番を待つ」「相手を応援する」「負けても気持ちを切り替える」など、多くの社会的スキルを育てられます。
また、協力型ゲームでは、友達と相談したり役割分担をしたりする経験も積めます。
現役教員のワンポイント
私はゲームを始める前に、「今日は何を練習するゲームなのか」を必ず伝えます。
例えば「勝つこと」ではなく、「順番を待つこと」「友達を応援すること」が今日の目標だと共有すると、活動後の振り返りもしやすくなります。
よくある失敗
ゲームを楽しむことだけが目的になり、育てたい社会的スキルが曖昧になってしまうことがあります。
改善のコツ
活動前に「今日の目標」、活動後に「できたこと」を全員で確認すると、SSTとしての学びが深まります。
困り感に合わせたSST活動の選び方
SSTにはさまざまな活動がありますが、「人気の活動だから」「他の学校でやっているから」という理由で選ぶのではなく、子どもの困り感に合わせて選ぶことが大切です。
同じ「友達とのトラブル」があっても、その背景にある課題は子どもによって異なります。まずは、「何に困っているのか」「どの力を伸ばしたいのか」を整理し、それに合った活動を選びましょう。
困り感別おすすめ活動一覧
| 子どもの困り感 | おすすめのSST活動 | 育てたい力 |
|---|---|---|
| 友達の輪に入れない | ロールプレイ・あいさつ練習 | コミュニケーション・自己表現 |
| 気持ちを言葉で伝えられない | 気持ちカード・I(アイ)メッセージ | 自己理解・自己表現 |
| 相手の気持ちが分からない | コミック会話・ソーシャルストーリー | 他者理解・共感 |
| 怒りをコントロールできない | アンガーマネジメント・深呼吸練習 | 感情コントロール |
| ルールを守ることが苦手 | SSTゲーム・ボードゲーム | 順番を待つ・協力する |
| 困ったときに相談できない | ロールプレイ・相談の練習 | SOSを出す力 |
⑧ 協力する力を育てる活動
育てたい力
- 協力する力
- 役割分担
- 相手を認める力
おすすめの活動
- 新聞紙タワーづくり
- 協力してパズルを完成させるゲーム
- 共同制作
- グループミッション
現役教員のワンポイント
私は「完成したか」よりも、「どんな声掛けができたか」「友達の意見を聞けたか」を振り返るようにしています。
よくある失敗
活動の結果ばかり評価してしまうと、話し合いや協力の過程に目が向かなくなります。
改善のコツ
「ありがとうと言えたね」「友達の考えを最後まで聞けたね」など、協力する姿勢そのものを認めましょう。
⑨ 感情コントロールを育てる活動
育てたい力
- 感情のコントロール
- 自己理解
- 問題解決
おすすめの活動
- 気持ち温度計
- アンガーマネジメント
- 深呼吸
- リラックス方法を考える活動
現役教員のワンポイント
怒ってしまった後に振り返るだけでなく、落ち着いているときに「怒り始めのサイン」を一緒に考えておくと、実生活で生かしやすくなります。
よくある失敗
「怒ってはいけない」と教えてしまうことです。怒りは自然な感情であり、大切なのは表現の仕方を学ぶことです。
改善のコツ
「怒らないこと」ではなく、「怒ったときにどう行動するか」を具体的に練習しましょう。
⑩ 問題解決力を育てる活動
育てたい力
- 考える力
- 選択する力
- 相談する力
おすすめの活動
- 「こんなときどうする?」カード
- トラブル場面のロールプレイ
- グループで解決方法を考える活動
現役教員のワンポイント
私は一つの正解を教えるのではなく、「他にはどんな方法があるかな?」と問い掛けながら、複数の解決方法を一緒に考えることを大切にしています。
よくある失敗
先生が答えをすぐに教えてしまうと、子ども自身が考える機会が少なくなります。
改善のコツ
子どもの考えを受け止めながら、「もし友達だったらどう思うかな?」「別の方法もありそうかな?」と視点を広げる問い掛けを取り入れましょう。
コラム|私が経験したSSTの失敗と、そこから学んだこと
私も、これまでの実践で多くの失敗を経験してきました。
特に印象に残っているのは、「教室ではできるのに、休み時間になると全くできない」という場面です。
当時は「まだ練習が足りない」と考え、活動時間だけを増やしていました。しかし、大きな変化は見られませんでした。
そこで、休み時間や給食、掃除など実際の生活場面で一緒に練習し、その場で成功を認めるように支援を変えました。
すると、少しずつ子どもたちは自分から学んだスキルを使えるようになっていきました。
この経験から私は、SSTは「活動の時間」ではなく、「生活の中で使えるようになること」が本当のゴールなのだと実感しています。
SSTを実践するときによくある質問(FAQ)
SST(ソーシャルスキルトレーニング)について調べていると、「何歳から始められるの?」「通常学級でもできる?」など、さまざまな疑問が出てくると思います。
ここでは、学校現場でよく受ける質問をもとに、分かりやすくお答えします。
Q1. SSTは何歳から始められますか?
A. SSTは幼児期から始めることができます。
例えば、順番を待つことや「あいさつをする」「ありがとうを伝える」といった活動も、広い意味ではSSTの一つです。
年齢よりも大切なのは、その子どもの発達段階や困り感に合わせて内容を調整することです。難しい活動を無理に行うのではなく、「少し頑張ればできる」課題から始めることで、成功体験を積み重ねやすくなります。
Q2. 通常学級でもSSTはできますか?
A. はい、通常学級でも十分に実践できます。
SSTは特別支援学級だけの取り組みではありません。学級活動や道徳、特別活動、朝の会・帰りの会など、さまざまな場面で取り入れることができます。
例えば、「友達の話を最後まで聞く」「相手の気持ちを考えて伝える」「困ったときに相談する」といった力は、すべての子どもにとって大切な社会的スキルです。
Q3. 発達障害のある子どもだけが対象ですか?
A. いいえ。SSTはすべての子どもに役立つ支援方法です。
ASD(自閉スペクトラム症)やADHDなどの特性がある子どもに活用されることが多い一方で、友達との関わり方や感情の伝え方を学ぶことは、すべての子どもの成長につながります。
実際に通常学級でも、学級づくりや人間関係づくりの一環としてSSTを取り入れている学校は少なくありません。
Q4. SSTは毎日行った方がよいですか?
A. 毎日まとまった時間を確保する必要はありません。
大切なのは、短時間でも生活の中で繰り返し実践することです。
例えば、朝のあいさつや休み時間、給食、掃除など、学校生活のさまざまな場面はSSTを実践するチャンスです。
活動時間だけで終わらせず、実生活の中で何度も成功体験を積み重ねることが、社会的スキルの定着につながります。
Q5. 家庭でもSSTはできますか?
A. はい。家庭はSSTを実践する絶好の場所です。
例えば、「ありがとうを伝える」「困ったときに助けを求める」「ゲームで順番を待つ」など、日常生活には社会的スキルを練習できる場面がたくさんあります。
保護者の方は、「できなかったこと」を叱るよりも、「できたこと」を具体的に認めることを意識すると、子どもの自信につながります。
Q6. SSTの効果はどれくらいで現れますか?
A. 効果が現れる時期には個人差があります。
数回の活動で変化が見られる子どももいれば、数か月かけて少しずつ定着していく子どももいます。
私自身、特別支援学級で子どもたちと関わる中で、小さな成功体験を積み重ねた結果、半年後や一年後に大きな成長につながった姿を何度も見てきました。
焦って結果を求めるのではなく、「昨日より少しできた」という成長を大切にしながら支援を続けることが重要です。
まとめ|SSTは「できないこと」を責めるためではなく、「できる」を増やすための支援
SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、子どもに社会的スキルを身に付けてもらうための支援方法です。
あいさつや友達との関わり方、気持ちの伝え方、困ったときの相談の仕方など、一つひとつのスキルを分かりやすく伝え、繰り返し練習することで、子どもが安心して生活できる力を育てていきます。
この記事では、SSTの意味や目的、基本的な進め方、具体的な活動例、そして学校・家庭・放課後等デイサービスでの活用方法について紹介しました。
しかし、最も大切なのは「どの活動を行うか」ではありません。
子ども一人ひとりの困り感や得意なことを理解し、その子に合った支援を考えることです。
同じ活動でも、子どもによって支援の方法や声の掛け方は変わります。だからこそ、SSTには「正解が一つだけ」という考え方はありません。
子どもが「できなかったこと」ではなく、「今日できるようになったこと」に目を向け、小さな成功体験を積み重ねていくことが、社会的スキルを育てる一番の近道です。
伝えたいこと
私は特別支援学級で子どもたちと関わる中で、「この子は何ができないのだろう」ではなく、「この子は何を学べば生活しやすくなるのだろう」と考えることを大切にしています。
困った行動には、必ず理由があります。そして、その背景には「まだ身に付いていない社会的スキル」が隠れていることが少なくありません。
SSTは、その足りない部分を責めるための支援ではありません。子どもが安心して挑戦し、「できた」という経験を積み重ねるための支援です。
私自身、何度も「できなかった子が、少しずつできるようになる瞬間」を見てきました。その変化は、一度の活動で起こるものではなく、先生や保護者、支援者が子どもの小さな成長を認め続けた先に生まれるものです。
この記事が、子ども一人ひとりに合ったSSTを考えるきっかけとなり、明日からの支援に少しでも役立てば幸いです。
SSTについてさらに詳しく学びたい方へ
SSTは、一つの記事だけですべてを理解することは難しい支援方法です。
以下の記事では、具体的な活動例や教材、実践方法について詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
- ▶ SSTの具体例20選
- ▶ SSTゲーム集
- ▶ SSTロールプレイ実践例
- ▶ ソーシャルストーリーの作り方
- ▶ コミック会話法とは?
- ▶ 気持ちカードの活用方法
- ▶ アンガーマネジメント実践ガイド
- ▶ SSTプリント無料ダウンロード

























コメント