特別支援学級や通常の学級で、こんな場面に出会うことはありませんか?
- さっきまで落ち着いていたのに、急に怒りが大きくなった
- 友達とのトラブルで、強い言葉や行動が出てしまった
- 「どうして怒ったの?」と聞いても、「ムカついたから!」としか言えない
- 自分がどのくらい怒っているのか、本人にも分かりにくい
怒りそのものは、なくすべき感情ではありません。
大切なのは、「自分はいま怒っている」と気づき、気持ちの大きさを捉え、その場で使えそうな行動を選べるようにしていくことです。
しかし、「怒り」「気持ち」「感情」といった目に見えないものを授業で扱うのは、簡単ではありません。
そこでこの記事では、私が特別支援学級の自立活動でも活用してきたカード教材、『みんなの怒りスイッチをさがせ! ゲームで身につくアンガーマネジメント』を紹介します。
この記事で紹介すること
・『みんなの怒りスイッチをさがせ!』の内容
・3種類のゲームの進め方
・自立活動で「気持ちのコントロール」を扱うときの考え方
・指導案のねらい・支援・振り返りの例
・実際に授業で使うときの配慮
なお、小学生向けのアンガーマネジメントゲームや無料プリント・ワークシートを幅広く探している方は、こちらの記事にまとめています。
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『みんなの怒りスイッチをさがせ!』とは?
『みんなの怒りスイッチをさがせ!』は、日常生活で起こりそうな「怒りのできごと」を題材に、
- 自分ならどのくらい怒るか
- 友達はどのくらい怒るか
- その出来事をどう考えるか
- 怒ったときにどんな行動を選ぶか
をゲーム形式で考えたり話し合ったりするカード教材です。
主なセット内容には、
- できごとカード:60枚
- 怒りの温度計カード:22枚
- 行動カード:6枚
- 三重丸シート
- グランドルール
- 振り返りシート
- 遊び方マニュアル
などがあります。
カードには、「友達に挨拶したのに返事がない」「自分のプリントだけ少し破れていた」「リレーで転んでしまった」といった、子どもがイメージしやすい出来事が示されています。
自分自身の出来事をいきなり話すのではなく、まずカードに描かれた第三者的な場面について考えられることも、この教材の使いやすさの一つだと感じています。
自立活動で「気持ちのコントロール」を扱うときの考え方
「自立活動 気持ちのコントロール」「自立活動 感情のコントロール」と検索して、このページに来られた方も多いと思います。
ここで一つ確認しておきたいのは、「気持ちのコントロール」「感情のコントロール」「行動のコントロール」という名称が、そのまま自立活動の正式な項目名になっているわけではないということです。
自立活動は6区分27項目で整理されています。
この教材を活用する場合、児童の実態や指導目標によって、例えば次の項目が関連することがあります。
- 2-(1) 情緒の安定に関すること
- 3-(2) 他者の意図や感情の理解に関すること
- 3-(3) 自己の理解と行動の調整に関すること
- 6-(5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること
ただし、『みんなの怒りスイッチをさがせ!』を使えば、自動的にこれらの項目の学習になるわけではありません。
自立活動では、
子どもの困り感
↓
指導目標
↓
必要な自立活動の項目
↓
具体的な指導内容
↓
その手段として教材を選ぶ
という順番で考えることが大切です。
「怒らない子にする」ことを目標にするのではなく、自分の状態に気づく、相手との違いを知る、安全な行動の選択肢を増やすといった具体的な目標にしていきます。
ゲームの進め方① 怒りの温度当てゲーム

ねらいの例
- 自分の怒りの強さに気づく
- 同じ出来事でも、人によって感じ方が違うことを知る
- 自分の感情について表現する経験をする
準備するもの
- できごとカード
- 怒りの温度計カード
進め方
- 進行役ができごとカードを1枚読みます。
- 「自分だったらどのくらい怒るかな?」と考えます。
- それぞれが自分の怒りの温度を選びます。
- 話せそうであれば、その理由も伝えます。
- 友達の答えを聞き、感じ方の違いを確認します。
例えば、自分は「8」なのに友達は「2」ということもあります。
ここで教師が「8は怒りすぎ」「2が正解」と評価するのではなく、
「同じことが起きても、人によって感じ方が違うんだね」
と確認します。
理由を話したくない子には、温度を選ぶだけでも構いません。
ゲームの進め方② 3重丸ゲーム
3重丸ゲームでは、できごとカードを見て、その出来事を自分がどのように感じるかを考えます。
ねらいの例
- 自分の「許せる・許せない」の傾向に気づく
- 友達とは判断が違うことを知る
- 一つの出来事について複数の見方を知る
進め方
- できごとカードを1枚選びます。
- 「許せる」「まあ許せる」「許せない」から、自分に近いものを選びます。
- 可能であれば理由を伝えます。
- 友達の選択や理由も聞きます。
- 「どんなところが同じ?」「どこが違った?」と振り返ります。
ここでも、教師が「これは許すべき」と正解を決めることが目的ではありません。
自分の感じ方に気づき、他の人には別の感じ方があると知ることを大切にします。
ゲームの進め方③ 「こんなときどうする?」ゲーム
3つ目は、怒りを感じた場面で、どのような行動を選ぶか考えるゲームです。
ねらいの例
- 怒りを感じたときの行動の選択肢を増やす
- 自分に使えそうな方法を考える
- 友達が使っている対処方法を知る
進め方
- できごとカードを1枚読みます。
- 「このとき、どうする?」と考えます。
- 行動カードなどから、自分が使えそうな方法を選びます。
- 可能であれば選んだ理由も伝えます。
- 友達の方法も聞きます。
- 最後に「自分ならどれを使えそう?」と振り返ります。
「先生に伝える」「少し離れる」「深呼吸する」「別のことをする」など、状況によって選択肢は変わります。
一つの対応を正解として覚えさせるのではなく、本人が使える方法を増やしていくことを大切にします。
自立活動「気持ちのコントロール」の指導案例
『みんなの怒りスイッチをさがせ!』を自立活動で使う場合の一例です。
| 児童の姿 | 嫌なことがあると気持ちが大きくなりやすく、そのとき自分がどのくらい怒っているのか捉えにくい。 |
|---|---|
| ねらい | 身近な場面について、自分の怒りの強さを選び、自分と他者では感じ方が異なる場合があることに気づく。 |
| 活動 | 怒りの温度当てゲーム |
| 教師の支援 | 理由を言葉で説明することを必須にせず、数字やカードを選ぶだけでも参加できるようにする。友達との違いを優劣で評価しない。 |
| 振り返り | 「同じところ」「違ったところ」「今日気づいたこと」から一つ選んで振り返る。 |
| 評価の視点 | 自分の感情の強さを本人が使いやすい方法で表そうとしたか。他者との感じ方の違いに気づく様子があったか。 |
これはあくまで一例です。
同じ教材を使っていても、児童の実態が違えば、ねらい・支援・評価も変わります。
実際の授業での活用|最初に「今日のめあて」を一つ決める
私の特別支援学級では、この教材を自立活動の中で使ってきました。
その際は、ゲームを始める前に、ホワイトボードへその日のめあてを一つ示すようにしていました。
例えば、
「自分の怒りの大きさを考えてみよう」
「友達と自分の感じ方の違いを見つけよう」
「怒ったときに使えそうな方法を一つ見つけよう」
といった形です。

カードには具体的な場面が描かれているため、私の授業でも、子どもから自分の経験と結び付けた発言が出ることがありました。
一方で、カードがあれば必ず自分の気持ちを話せるようになるわけではありません。
言葉にすることへの負担が大きい子には、
- カードを選ぶだけにする
- 理由は言わなくてもよいことにする
- 教師と一緒に答える
- パスを認める
など、参加方法を調整します。

授業を重ねる中で、以前に扱った「怒りの温度」や「落ち着く方法」を思い出して話す子がいたこともあります。
ただし、こうした変化を教材だけの効果と断定することはできません。
日常の支援、教師との関係、環境調整などと合わせて取り組む中で、自分の状態を振り返るための共通の言葉や手掛かりとして教材を使うイメージがよいと考えています。

ゲームの後は振り返りを入れる
ゲームが楽しかっただけで終わらないように、最後に短い振り返りを入れます。
例えば、
- 今日、新しく気づいたことは?
- 友達と自分で違ったところは?
- 怒ったときに使えそうな方法はあった?
- 学校のどんな場面で使えそう?
- 今日のめあてについて、できたことは?
などから一つ選びます。
書くことへの負担が大きい子なら、口頭、選択肢、カードなどで振り返っても構いません。
大切なのは、活動で考えたことと実際の学校生活をつなぐことです。
自立活動の「めあて」と「振り返り」については、こちらの記事でも詳しくまとめています。
『みんなの怒りスイッチをさがせ!』を使うときの5つのポイント
① 「怒らないこと」をゴールにしない
怒りは自然な感情です。
怒りを感じないようにするのではなく、気づく、伝える、選ぶという力を育てます。
② 答えを否定しない
「そんなことで怒るの?」と言われると、自分の気持ちを話しにくくなります。
感じ方の違いそのものを教材にします。
③ パスを認める
自分の経験や感情について話したくないときは、パスできるようにします。
④ 児童に合わせてカードを選ぶ
すべてのカードを使う必要はありません。
その子にとって刺激が強すぎる題材や、現実のトラブルと近すぎる題材は避けるなど調整します。
⑤ 日常生活で使えた場面を拾う
授業で学んだ方法を、日常で少しでも使えたときには、
「今、少し離れることを選べたね」
「先生に伝えられたね」
と具体的に確認します。
学校で使えるアンガーマネジメント教材も作成しています
『みんなの怒りスイッチをさがせ!』とは別に、学校生活で起こりやすい場面から、怒りの強さや対処方法を考えられる教材も作成しています。
「どのくらい怒る?」「どうしたら落ち着ける?」「どんな伝え方ができる?」といった問いを使いながら、自立活動やSSTで取り組める内容です。
😤 学校生活の場面から怒りについて考えたい先生へ
アンガーマネジメント教材
SST・自立活動で使いやすい場面カードや、気持ちの強さ・対処方法について考える教材をまとめています。
※この教材は支援級パックにも収録されています。最新の収録内容・利用条件は販売ページでご確認ください。
『みんなの怒りスイッチをさがせ!』を購入する
今回紹介した市販教材『みんなの怒りスイッチをさがせ!』は、Amazonや楽天市場などで確認できます。
まとめ|『みんなの怒りスイッチをさがせ!』を自立活動で使うときに大切なこと
『みんなの怒りスイッチをさがせ!』は、具体的な場面を使いながら、
- 自分の怒りの強さに気づく
- 自分と他者では感じ方が違うことを知る
- 出来事の捉え方について考える
- 怒りを感じたときの行動の選択肢を増やす
といった学習につなげやすいカード教材です。
ただし、大切なのは教材そのものではありません。
子どもの困り感
↓
ねらい
↓
活動
↓
振り返り
↓
実際の学校生活
という流れを意識しながら、その子に必要な学習として位置付けることです。
「怒らないようにする」のではなく、怒りに気づき、自分に合った方法を選べるようにするという視点で活用していきたいところです。
小学生向けのアンガーマネジメントゲーム、プリント、ワークシートをさらに探したい方はこちらをご覧ください。
怒りが大きくなったときの支援や、ゲームだけではうまくいかないときの考え方はこちらにまとめています。
参考資料
文部科学省「特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編」
ゆた先生|特別支援教育ブロガー
小学校教員としての実践経験と特別支援学級での経験をもとに、自立活動・SST・教材アイデアなどを発信しています。
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