「うちの子、お友達とうまく関われなくて…」
「気持ちの切り替えが苦手で、どう声をかければいいかわからない」
「学校でSSTをやっているみたいだけど、家でも何かできることがあれば」
そんなふうに悩んでいる保護者の方に、この記事を届けたいと思います。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、学校や療育施設でやるものというイメージがあるかもしれません。でも実は、家庭の中でこそできるSSTがあります。特別な教材も、広い部屋も必要ありません。日々の生活の中に小さな「工夫」と「声かけ」を取り入れるだけで、お子さんの社会で生きる力は着実に育っていきます。
この記事では、特別支援学級の担任として長年、そして保護者としても子どもに関わってきた経験をもとに、発達障害・グレーゾーンのお子さんを持つ保護者が家庭でできるSSTを、具体的なやり方・遊び方・声かけ例とともに解説します。
今日から使える内容だけをまとめました。
家庭でSSTをやる意味|なぜ「家」が一番のスタートラインなのか
SSTを家庭でやることに、どんな意味があるのでしょうか。学校や療育に任せておけばいいのでは? そう思う方もいるかもしれません。
でも、子どもたちが最もリラックスできる場所は「家庭」です。そして社会的なスキルは、安心できる場所でこそ定着しやすいという特徴があります。
家庭でのSSTには、次の3つの強みがあります。
- 失敗しても受け止めてもらえる安心感がある:学校や療育では「うまくやらなきゃ」というプレッシャーがかかりやすい。家庭なら失敗しても大丈夫という空気の中で練習できます
- 繰り返し練習できる:週1回の療育より、毎日の食事・お風呂・就寝前の5分の方が積み重ねは大きくなります
- その子だけに合わせた関わりができる:クラス全員に合わせる必要がないから、今日のその子の状態に合わせて柔軟に対応できます
私がクラスで担任していたある子は、学校でのSSTではほとんど発言できなかったのに、保護者が家庭でコツコツと練習を続けてくれたことで、ある日「先生、こんなことができたよ!」と嬉しそうに報告してくれた日がありました。家庭での積み重ねは、目には見えにくくても、確実に子どもの力になっています。
家庭でSSTを進めるときの3つの基本
始める前に、家庭でSSTを続けるための考え方を3つだけ押さえておきましょう。この3つを頭に入れておくだけで、うまくいかないときも焦らずに続けられます。
① 完璧を目指さない
最初から「正しい行動」を求める必要はありません。「少しできた!」を一緒に喜ぶことが、SSTの出発点です。
たとえば「あいさつ」を練習するとき、目が合わなくても、声が小さくても、「おはよう」が言えたならそれで十分です。「もっとちゃんと!」ではなく、「言えたね!」の一言が次の意欲につながります。
② スモールステップで進める
いきなり難しい場面に挑戦させると、子どもは不安になって動けなくなります。「ちょっと頑張ればできること」から始めるのが鉄則です。

例えば「友達に『貸して』と言う練習」をしたいとき:
- まずはぬいぐるみに「貸して」と言う
- 次に保護者に「貸して」と言う
- 慣れたら兄弟・きょうだいに言ってみる
- 最後に友達に言ってみる
この段階を踏むだけで、子どもの成功体験が積み重なり、「自分にもできる」という自信が育ちます。
③ 失敗してもOKを伝え続ける
うまくいかなかったとき、「なんでできないの」は絶対に避けましょう。代わりに使いたい言葉はこれです。
- 「チャレンジできたこと自体が素晴らしい」
- 「今はまだうまくいかないだけだよ」
- 「何回も練習して、少しずつできるようになろうね」

発達障害の子どもたちは、失敗体験が積み重なると「どうせ自分にはできない」という諦めのパターンに入りやすいです。「失敗しても大丈夫」という空気を家庭で作り続けることが、長期的な成長の土台になります。
発達障害の子どもに家庭でできるSST|具体的な6つのやり方
ここからは、今日からすぐに使える具体的な活動を紹介します。すべて特別な道具なし・準備ほぼゼロで始められるものばかりです。
① 絵カードで「気持ち」を当てっこする
表情や感情を読み取るのが苦手なお子さんに特におすすめです。人の顔の表情が描かれた絵カードを使って、「この顔、どんな気持ちかな?」と問いかけます。
やり方
- カードを1枚見せて「この顔の人は、どんな気持ちだと思う?」と聞く
- 子どもが答えたら「そう思ったんだね!どうしてそう思った?」と掘り下げる
- 「こんな気持ちのとき、どうすればいいと思う?」と対処法も一緒に考える
正解を求めすぎず、「そう感じたんだね」と受け止めることが最初の目標です。クイズ形式にすると、子どもが楽しみながら参加できます。
💡 コツ
「悲しい顔」「怒った顔」など種類が豊富な絵カードがあると、語彙が広がりやすくなります。市販の表情カードの他、無料でダウンロードできる教材を使うのもおすすめです。
② ごっこ遊びで「やりとり」を体験する
お店屋さんごっこ・病院ごっこ・バスの運転手ごっこなど、役割を決めて会話する遊びは、社会的なやりとりの練習として非常に効果的です。「遊び」の中では、失敗してもリセットできるので、緊張せず挑戦できます。
お店屋さんごっこの例
- 「いらっしゃいませ」→「これください」→「ありがとうございました」の流れを繰り返す
- 最初は保護者がお店の人役をやってモデルを見せる
- 慣れてきたら役割を交代して子どもにお店の人をやってもらう
役割を交代することで、「相手の立場から考える」練習にもなります。
③ 「こんなときどうする?」場面絵で一緒に考える
「友達にえんぴつを貸してと言われた」「順番を抜かされた」「ゲームに負けた」——子どもが実際に経験するような場面が描かれた絵カードを使って、「こういうときはどうすればいいと思う?」と一緒に考える活動です。
正解を教えるのではなく、「どうしたいか」「どう感じたか」を言葉にする練習がこの活動の目的です。
進め方:
- 場面カードを見せて「この子、今どんな気持ちかな?」と感情から入る
- 「こういうとき、あなたはどうする?」と自分のこととして考えさせる
- 子どもの答えを受け止めた上で「こういう方法もあるよ」と選択肢を広げる
この活動を続けることで、実際の場面で「あ、これってこんなときどうする?でやったやつだ」と思い出して行動できるようになっていきます。
ダウンロードはこちら
④ 「感情の温度計」で今の気持ちを言葉にする
イライラや不安を言葉にすることが難しい子どもには、「感情の温度計」が効果的です。0〜10の数字で「今のイライラは何度?」と聞くだけで、言葉にならない感情を数字で表せるようになります。
やり方
- 「今の気持ちを温度計で表したら何度?」と聞く
- 「8度か、それは結構しんどいね。どうしたら少し下がりそう?」と対処法につなげる
- 「3度のときはどうやって落ち着かせたの?」と成功体験を掘り起こす
この「数値化」は、感情をコントロールするための第一歩である「自分の状態に気づく」力を育てます。
⑤ ロールプレイで「断る練習」をする
「いやだ」が言えない、断れなくてトラブルになる——という悩みを持つ子に特に効果的です。家庭という安全な場所で「断る練習」を積み重ねておくことで、実際の場面でも言えるようになってきます。
練習の例
- 「宿題見せて」と言われたとき→「ごめん、それはちょっと…」と言う練習
- 「これやって」と頼まれたとき→「今はちょっと難しいな」と言う練習
- 触られたくないとき→「やめて」とはっきり言う練習
最初はぬいぐるみを相手に練習するのがおすすめです。ぬいぐるみが「宿題見せて」と言ったら、子どもが断る、というロールプレイから始めてみてください。
⑥ 「できた!」を目に見える形で記録する
小さな成功体験を可視化することで、子どもの意欲が持続します。カレンダーやシール台帳に「今日できたこと」を記録していきましょう。
- 「今日は『ありがとう』が言えたね!シール貼ろう」
- 「お友達に『どうぞ』ができたね!カレンダーに丸をつけよう」
- 週末に「今週できたこと」を一緒に振り返る
「できた」が積み重なると、子ども自身が「自分は成長している」と実感できるようになります。これが次の挑戦への最大のモチベーションになります。
場面別|よくある困りごとへの声かけ例
家庭でSSTをやっていると、子どもが実際に困る場面が出てきます。そのときとっさに使える声かけをまとめました。
ゲームに負けて泣く・怒る
「悔しいね。でも最後まで頑張ったよ」→「悔しいって思えるくらい、頑張ってたんだね」と感情を認めてから、「次はどうしたい?」と前向きにつなぐ。
友達に「貸して」が言えない
家で「貸して」の練習を繰り返す。最初はぬいぐるみや家族相手に。言えたら「言えたね!」と大げさに喜ぶ。
順番が待てない・割り込んでしまう
「順番を待てた人は、次に何か良いことがある」という小さなご褒美を設定して待つ練習をする。タイマーで「あと○秒」と見通しを持たせると待ちやすくなる。
気持ちを言葉にできない・癇癪になる
「言葉にしなくていい。今どんな感じ?熱い感じ?冷たい感じ?」と感覚から入る。言語化より先に身体感覚に気づかせることで、少しずつ言葉にする練習につなげていく。
📚 家庭でのSST、もっと体系的に取り組みたい方へ
「こんなときどうする?」絵カード50種+発問指導書セット
「友達に順番を抜かされた」「ゲームに負けた」「宿題を見せてと言われた」など、子どもが日常で出会う50の場面を収録した絵カード教材です。発問指導書(5,000字超)付きなので、何を聞けばいいかわからないという保護者の悩みも解消できます。印刷してすぐ使えるPDF形式です。
「書くのが苦手」な子には、マジックテープ式教材が効果的
「プリントを用意しても書くこと自体が負担で続かない」という声は、保護者からとてもよく聞きます。発達障害の子どもにとって、「書く」という作業は想像以上のエネルギーを消費することがあります。
そういった子どもに特に有効なのが、カードを選んで貼るだけで参加できる教材です。書かなくていいから学びが止まらない、というアプローチです。
マジックテープ式の教材では:
- 失敗してもペタッとやり直せる(心理的安全性が高い)
- 「できた!」という手応えが手に伝わる(身体的な達成感)
- 書くしんどさがないから、内容の対話に集中できる
プリント学習では「やらされ感」が強かった子が、カードを自分で選んで貼る活動なら「もう1枚やりたい」と言い出すことがあります。これは、形式が変わるだけで子どものモチベーションが大きく変わるということを示しています。
🃏 書かなくていいから続けられる、ラミネート&マジックテープ式SST教材
SSTワーク全50枚+指導書付き(家庭でも使えます)
感情の色分け(ゾーン理解)・見通しを立てる順番ワーク・「場面×気持ち×体の反応」の深掘りワークなど、全50枚のワークがセットになっています。ラミネートしてリングで綴じると「自分の本」になり、子どもが愛着を持って使い続けてくれます。指導書付きなので、家庭でも迷わず使えます。
家庭でSSTを続けるためのコツ
「始めてみたけど続かない」という声もよく聞きます。続けるためのコツを3つまとめます。
① 1日5分、毎日続ける方が週1時間より効果的
SSTは「量より頻度」です。週1回の療育で1時間やるよりも、毎日の食事の前後5分の方が定着しやすいです。「今日の夕食前に1枚だけやる」という小さなルーティンから始めましょう。
② 子どもの調子がいいときに短く
疲れているとき・機嫌が悪いときに無理にやると、SSTそのものが「嫌なもの」になってしまいます。「今日は楽しそうだな」というタイミングで短く。調子が悪い日は休んでOKです。
③ 結果よりプロセスを見る
「できた/できない」で評価するのではなく、「チャレンジした」「考えた」「言葉にしようとした」というプロセスを認めてください。長期的に見ると、プロセスを認められた子の方が、着実に力をつけていきます。
まとめ|家庭でのSSTは「子どもとの安心な時間」を作ること
家庭でのSSTは、特別なプログラムではありません。毎日の生活の中に、ほんの少しだけ意識を加えるだけで十分です。
- できたことを一緒に喜ぶ
- スモールステップで少しずつ挑戦を広げる
- 失敗しても「チャレンジしたね」と伝え続ける
この積み重ねが、子どもたちの「社会で生きていく力」を育てます。そして何より、一緒に取り組む時間の中で、親子の信頼関係もぐっと深まっていきます。
完璧を目指さなくていいです。できることから、ひとつずつ。あなたとお子さんのペースで、ゆっくり進んでいきましょう。
🎁 家庭でのSSTをもう一歩深めたい方に
2つのSST教材、どちらもnoteで入手できます
📖 「こんなときどうする?」絵カード50種+発問指導書セット
日常のリアルな場面50種を収録。発問指導書(5,000字超)付きで、何を聞けばいいかわからない保護者でもすぐ使えます。
🃏 ラミネート&マジックテープ式SSTワーク全50枚+指導書
書くことが苦手な子に。カードを選んで貼るだけで参加できる設計。感情理解・見通し・コミュニケーションを体系的に学べます。


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