「特別支援学級って、どんなところなんだろう?」
お子さんの就学先を考えている保護者の方や、初めて特別支援学級に関わる先生の中には、こんな疑問をもっている方も多いのではないでしょうか。
- 特別支援学級には、どんな子が在籍しているの?
- 通常学級とは何が違うの?
- 知的障害学級と自閉症・情緒障害学級はどう違う?
- 授業では何を勉強するの?
- 自立活動って何をするの?
- 通常学級の友達と一緒に授業を受けることはある?
- 特別支援学校や通級とは何が違う?
「特別支援学級」という言葉は知っていても、実際の学習内容や学校生活までは、なかなかイメージしにくいと思います。
私は小学校教員として、知的障害特別支援学級と自閉症・情緒障害特別支援学級の両方を担任してきました。
実際に子どもたちと過ごしてきて強く感じるのは、特別支援学級は「勉強が苦手な子が簡単な勉強をする場所」ではないということです。
特別支援学級で大切なのは、その子が何に困っているのかを捉え、その子に合った方法で「学べる」「できる」を増やしていくことです。
この記事では、特別支援学級について初めて調べる方にも分かるように、対象となる子どもや学級の種類、通常学級・特別支援学校・通級との違い、授業、教育課程、自立活動、交流学級、教室環境などをまとめて解説します。
それぞれのテーマについて詳しく解説した記事も用意していますので、気になるところは関連記事もあわせて読んでみてください。
- 特別支援学級とは?
- 特別支援学級にはどんな子が入る?
- 特別支援学級には7つの種類がある
- 知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の違いは?
- 特別支援学級と通常学級の違いは?
- 特別支援学級と特別支援学校の違いは?
- 特別支援学級と通級指導教室の違いは?
- 特別支援学級ではどんな授業をする?
- 特別支援学級の教育課程はどうなっている?
- 特別支援学級の「自立活動」とは?
- 生活単元学習とは?
- 特別支援学級の学びは「教科・自立活動・生活」をつなげて考える
- 特別支援学級の1日の流れは?
- 交流学級ではどのように学ぶ?
- 特別支援学級では個別の指導計画をどう活用する?
- 特別支援学級の教室環境で大切なこと
- 特別支援学級の担任は何をする?
- 特別支援学級を選ぶときに大切にしたいこと
- 特別支援学級についてよくある質問
- まとめ|特別支援学級は「その子に合った学び方」を考える場所
特別支援学級とは?
特別支援学級とは、障害による学習上・生活上の困難に応じて、一人ひとりに必要な教育や支援を行うために設置される学級です。
小学校や中学校などの中に設置されており、子どもはその学校の児童・生徒として生活しながら、特別支援学級を学びの拠点として学習します。
通常学級と大きく違うのは、少人数の環境を生かしながら、子どもの実態に応じて学習内容や指導方法、学習環境を調整しやすいことです。
一人ひとりの実態に応じて学ぶ学級
同じ「特別支援学級」に在籍していても、子どもの姿は一人ひとり違います。
- 学習内容を理解するまでに時間が必要な子
- 一斉指示を聞き取ることが難しい子
- 予定の変更に強い不安を感じる子
- 友達とのコミュニケーションで困りやすい子
- 音や視覚的な刺激が多い環境では集中しにくい子
- 自分の気持ちを言葉で伝えることが難しい子
このように、困っていることも必要な支援も異なります。
そのため特別支援学級では、「全員に同じことを同じ方法で教える」ことよりも、一人ひとりの実態を把握し、その子が学びやすい方法を考えることがとても大切になります。
「できないこと」に子どもを合わせるのではなく、どうすればその子が学べるのかを考えて環境や指導方法を調整する。
私は、これが特別支援学級の基本だと考えています。
特別支援学級では「特別の教育課程」を編成することができる
特別支援学級だからといって、通常学級とはまったく別の勉強をするわけではありません。
基本的には小学校・中学校の学習指導要領に沿って教育を行います。
一方で、子どもの障害の状態や学習の実態などに応じて、特別支援学校の学習指導要領を参考にしながら「特別の教育課程」を編成することができます。
- 学年より前の学習内容を扱う
- 知的障害特別支援学校の各教科を参考にする
- 自立活動を教育課程に位置付ける
- 子どもの実態に合わせて学習内容や方法を調整する
といったことが可能です。

ポイント
「特別支援学級だから学年より簡単な内容を学ぶ」のではありません。まず子どもの実態があり、その子に必要な学習内容を考えた結果として、学年とは異なる内容を扱うことがあります。
教育課程については後半で詳しく解説します。
小学校の特別支援学級について、学校生活や授業の様子まで詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
参考:文部科学省
特別支援学級の教育課程や学習指導要領については、文部科学省の資料でも確認できます。
特別支援学級にはどんな子が入る?
特別支援学級について調べている保護者の方が特に気になるのが、「どのような子が特別支援学級の対象になるのか」ということだと思います。
ここで最初に知っておいてほしいのは、診断名やIQの数値だけで機械的に決まるわけではないということです。
診断名だけで特別支援学級が決まるわけではない
例えば、自閉スペクトラム症(ASD)の診断があるからといって、必ず自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍するわけではありません。
通常学級で必要な配慮を受けながら学ぶ子もいれば、通級による指導を利用する子、特別支援学級で学ぶ子もいます。
大切なのは診断名そのものではなく、
- 現在どのようなことに困っているか
- どの程度の支援が必要なのか
- どのような学習環境なら力を発揮しやすいか
- 本人や保護者はどのような学びを希望しているか
といったことを総合的に考えることです。
IQだけで「支援級か通常級か」を決めるものでもない
「IQが何点以下なら特別支援学級ですか?」という疑問をもつ方もいます。
しかし、知能検査の数値だけを見て、学ぶ場所を決めることはできません。
同じような検査結果であっても、集団の中で困っていること、学習面の状況、コミュニケーションの力、身辺自立、必要な支援などは子どもによって大きく異なります。
そのため、就学先を検討するときには、検査結果だけではなく、実際の子どもの姿を多面的に見ることが重要です。
「その子がどこなら学びやすいか」という視点が大切
私は特別支援学級を担任してきて、学びの場を考えるときに最も大切なのは、
「通常学級にいられるか」「特別支援学級に入れるか」ではなく、「その子がどの環境なら困り感を減らし、安心して学ぶことができるか」を考えること
だと思っています。

特別支援学級に入る基準や、就学先を検討するときの具体的なポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
👉 小学校の支援学級に入る基準は?勧められた時の対処法、デメリットまで解説
また、就学相談ではどのような点が見られるのかについては、こちらの記事で詳しくまとめています。
👉 就学相談の判定基準とは?現場の教員が教える、本当に見られていること
参考:文部科学省
特別支援学級や通級による指導の対象となる障害の種類・程度については、文部科学省の通知で示されています。
特別支援学級には7つの種類がある
「特別支援学級」と一括りにされることが多いですが、実際には子どもの障害の状態に応じて、いくつかの種類があります。
主な特別支援学級は、次の7種類です。
| 特別支援学級の種類 | 主な対象 |
|---|---|
| 知的障害特別支援学級 | 知的発達の遅れがあり、学習や生活面で継続的な支援を必要とする子 |
| 自閉症・情緒障害特別支援学級 | 自閉症や情緒面の困難によって、集団生活や学習に支援を必要とする子 |
| 肢体不自由特別支援学級 | 身体の動きに困難があり、学校生活や学習に支援を必要とする子 |
| 病弱・身体虚弱特別支援学級 | 慢性的な病気や身体の弱さなどにより、継続した配慮や支援を必要とする子 |
| 弱視特別支援学級 | 視覚に困難があり、教材や学習環境への配慮を必要とする子 |
| 難聴特別支援学級 | 聴覚に困難があり、聞こえやコミュニケーションへの支援を必要とする子 |
| 言語障害特別支援学級 | 発音や言語表出などに困難があり、専門的な指導を必要とする子 |
ただし、すべての学校に7種類すべての特別支援学級が設置されているわけではありません。
学校や自治体によって設置状況は異なります。
例えば、ある学校には知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の両方があっても、別の学校にはどちらか一方しか設置されていない場合があります。
そのため、就学先を考える場合には、希望する学校にどの種類の学級が設置されているのかを教育委員会や学校に確認しておくことも大切です。
なお、「発達障害学級」「ADHD学級」という名称の特別支援学級があるわけではありません。
発達障害のある子どもの学びの場については、障害の状態や必要な支援を踏まえて検討されます。
7種類それぞれの対象や授業内容の違いについては、関連記事でさらに詳しく解説します。
知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の違いは?
小学校の特別支援学級について調べていると、特に目にすることが多いのが、
- 知的障害特別支援学級(知的学級・知的級)
- 自閉症・情緒障害特別支援学級(情緒学級・情緒級)
の2つです。
この2つは似ているように見えて、教育課程や支援で重視するポイントには違いがあります。
| 比較 | 知的障害学級 | 自閉症・情緒障害学級 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 知的発達の遅れがあり、学習・生活面に継続的な支援が必要な子 | 自閉症や情緒面の困難などにより、集団生活・対人関係・学習に支援が必要な子 |
| 学習内容 | 子どもの発達段階に応じて、下学年の内容や知的障害特別支援学校の教科等を参考にすることがある | 当該学年の教科を基本にしながら、実態に応じて内容や学習方法を調整することがある |
| 支援の例 | 学習内容の具体化、生活経験と結び付けた学習、繰り返し学習など | 見通しの提示、刺激の調整、コミュニケーション支援、感情調整など |
| 自立活動 | 子どもの実態に応じて取り入れる | 子どもの実態に応じて取り入れる |

知的障害学級では「今どこまで分かっているか」を丁寧に見る
知的障害学級では、学年だけを基準に学習内容を決めるのではなく、その子が現在どこまで理解できているのかを丁寧に把握して学習を組み立てます。
例えば小学5年生だからといって、必ず5年生の算数だけを学ぶわけではありません。
数の理解や計算の段階を確認し、その子に必要であれば、より基礎的な内容まで戻って学習することがあります。
これは「学年を下げること」が目的なのではなく、その子が分かるところから学びを積み上げるためです。
自閉症・情緒障害学級では「学習できる状態をつくる」支援が重要になることもある
一方、自閉症・情緒障害学級では、教科の内容そのものは理解できても、別の困難によって学習に参加しづらい子もいます。
- 周囲の音が気になって集中できない
- 予定変更への不安が強い
- 集団の中では発言しにくい
- 友達とのトラブルで気持ちを切り替えられない
- 困っていても「助けて」と言えない
このような場合には、学習内容を簡単にすることよりも、
- 見通しを提示する
- 刺激を減らす
- 休憩できる場所を用意する
- 気持ちを整理する方法を一緒に考える
- コミュニケーションの方法を学ぶ
といった環境調整や自立活動が重要になることがあります。
ただし、「知的学級ならこの指導」「情緒学級ならこの指導」と一律に決めることはできません。
同じ学級種であっても、子どもの実態や困り感は一人ひとり違います。学級の名称よりも、目の前の子どもに何が必要なのかを見ることが大切です。
知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の違いや、実際の就学相談でどのような点が見られるのかについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
👉 就学相談の判定基準とは?知的学級と情緒学級の違いも現場の教員が解説
ここまで、特別支援学級の基本的な仕組み、対象となる子ども、7つの種類、知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の違いについて説明してきました。
では、特別支援学級は通常学級や特別支援学校、通級指導教室とは具体的に何が違うのでしょうか。
次の章では、「通常学級・特別支援学級・通級・特別支援学校」の違いを、比較表を使いながら分かりやすく整理していきます。
特別支援学級と通常学級の違いは?
特別支援学級について考えるとき、多くの保護者の方がまず気になるのが、「通常学級と何が違うのか」ということではないでしょうか。
どちらも同じ小学校・中学校の中にありますが、学級の人数や教育課程、指導の進め方などには違いがあります。
| 比較 | 通常学級 | 特別支援学級 |
|---|---|---|
| 学級の人数 | 多人数で学ぶ | 少人数で学ぶ |
| 学習内容 | 基本的に学年の教育課程に沿って学ぶ | 子どもの実態に応じて学習内容を調整できる |
| 指導方法 | 集団での一斉指導が中心 | 個別・少人数での指導を取り入れやすい |
| 自立活動 | 教育課程上の領域としては位置付けられていない | 特別の教育課程では、自立活動を取り入れて指導する |
| 交流 | 基本的に在籍学級で学ぶ | 交流及び共同学習として通常学級で学ぶことがある |
| 支援の考え方 | 合理的配慮や個別の支援を行う | より個別性の高い教育課程や支援を組みやすい |
一番大きな違いは「学び方を調整しやすいこと」
特別支援学級の特徴を一つ挙げるなら、子どもの実態に合わせて学び方を調整しやすいことだと思います。
例えば、同じ小学4年生でも、算数は4年生の内容を学びながら、国語では読み書きの基礎まで戻って学習することがあります。
また、学習内容そのものは理解できる子でも、
- 一斉指示では内容を聞き取りにくい
- 周囲の音や人の動きが気になって集中しにくい
- 長時間座って学ぶことが難しい
- 予定変更への不安が強い
といった困り感がある場合には、座席配置や教材、指示の出し方、学習時間の区切り方などを調整することがあります。
特別支援学級は「学習内容を簡単にする場所」ではありません。
子どもが学習上・生活上の困難を減らし、自分の力を発揮しやすくするために、内容・方法・環境を調整する学級だと考えると分かりやすいでしょう。
特別支援学級に在籍していても通常学級で授業を受けることがある
特別支援学級に在籍すると、すべての時間を特別支援学級だけで過ごすわけではありません。
子どもの実態や学校の体制に応じて、通常学級の子どもたちと一緒に学ぶ「交流及び共同学習」を行うことがあります。
例えば、
- 音楽
- 体育
- 図工
- 理科
- 社会
- 学級活動
- 学校行事
などに交流するケースがあります。
ただし、「できるだけ通常学級に行けばよい」というものではありません。
交流することで学習や人間関係が広がる子もいれば、集団の大きさや刺激の多さによって疲れが強くなる子もいます。
そのため、「どの教科を交流するか」「どのくらいの時間交流するか」は、子どもの実態や教育的な意味を考えて決めることが大切です。
特別支援学級と特別支援学校の違いは?
「特別支援学級」と「特別支援学校」は名前が似ていますが、同じものではありません。
大きな違いは、どこに在籍して学ぶのか、対象となる子ども、教育環境です。
| 比較 | 特別支援学級 | 特別支援学校 |
|---|---|---|
| 設置 | 小学校・中学校などの中に設置 | 独立した学校として設置 |
| 在籍 | 地域の小学校・中学校等に在籍 | 特別支援学校に在籍 |
| 対象 | 障害による学習上・生活上の困難があり、特別な教育的支援を必要とする子 | 障害の状態や必要な支援などを踏まえ、特別支援学校で専門的な教育を受けることが適当と判断された子 |
| 通常学級との交流 | 同じ学校内で交流及び共同学習を行いやすい | 地域の学校等と交流及び共同学習を行うことがある |
| 教育環境 | 通常の小中学校の環境を基本とする | 障害特性に応じた設備・専門性を備えている |
特別支援学級は地域の小学校・中学校の中で学ぶ
特別支援学級は、小学校や中学校などの中に設置される学級です。
そのため、学校行事や休み時間、給食、交流及び共同学習などを通して、通常学級の子どもたちと一緒に活動する機会をもちやすいという特徴があります。
特別支援学校はより専門的な教育環境が整えられている
一方、特別支援学校では、障害の状態に応じた専門的な教育を行うため、学校全体の設備や教育課程、教職員配置なども特別支援教育を前提として整えられています。
そのため、どちらが「上」「下」という関係ではありません。
大切なのは、どちらの環境がその子の学習や生活に必要な支援をより提供しやすいかという視点です。
特別支援学級と特別支援学校の違いについては、対象や教育課程、進路なども含めて、こちらの記事で詳しく比較しています。
👉 特別支援学級と特別支援学校の違いとは?就学先の選び方・判断基準を解説
特別支援学級と通級指導教室の違いは?
特別支援学級とよく比較されるもう一つの学びの場が、「通級による指導(通級指導教室)」です。
両者の大きな違いは、どの学級に在籍しているかです。
通級:通常学級に在籍し、必要な時間だけ特別な指導を受ける
特別支援学級:特別支援学級に在籍し、必要に応じて通常学級で交流及び共同学習を行う
| 比較 | 通級による指導 | 特別支援学級 |
|---|---|---|
| 在籍 | 通常学級 | 特別支援学級 |
| 普段の授業 | 基本的に通常学級で受ける | 特別支援学級と交流学級を組み合わせる |
| 特別な指導 | 週の一部の時間などに受ける | 日常的に必要な支援を受けながら学ぶ |
| 教育課程 | 通常学級の教育課程を基本とする | 必要に応じて特別の教育課程を編成する |
通級は通常学級での学びを基本とする
通級による指導を利用する子どもは、普段は通常学級で学びます。
その上で、学習上・生活上の困難を改善・克服するために必要な時間だけ、通級指導教室などで特別な指導を受けます。
例えば、
- コミュニケーション
- 対人関係
- 注意・集中
- 読み書き
- 気持ちの整理
など、子どもの困り感に応じた指導が行われます。
特別支援学級は日常の学習環境そのものを調整しやすい
一方で特別支援学級の場合は、特定の時間だけ支援を受けるというより、普段の学習や学校生活そのものを子どもの実態に合わせて組み立てることができます。
そのため、
- 少人数で学ぶ時間を多く確保したい
- 教科学習でも個別の調整が必要
- 学校生活全体で継続的な支援が必要
といった場合には、特別支援学級という学びの場が検討されます。
通級と特別支援学級の違いについて、利用の仕組みや授業内容まで詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
👉 通級とは?通級指導教室のキホンから特別支援学級との違いまで解説
ここまで紹介した4つの学びの場を、改めて簡単に整理すると次のようになります。
| 学びの場 | 基本となる場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 通常学級 | 通常学級 | 学年の教育課程を基本として集団で学ぶ |
| 通級による指導 | 通常学級 | 通常学級で学びながら、一部の時間に特別な指導を受ける |
| 特別支援学級 | 特別支援学級 | 少人数で、実態に応じた教育課程や支援を組み立てやすい |
| 特別支援学校 | 特別支援学校 | 障害の状態に応じた専門性の高い教育環境で学ぶ |
この表だけを見ると、「どこが一番よいのか」を比べたくなるかもしれません。
しかし、学びの場に一律の優劣があるわけではありません。
大切なのは、「どの学びの場なら、その子の困り感を減らしながら、安心して力を伸ばせるか」を考えることです。
また、子どもの成長や学校生活の様子によって、必要な支援や適した学び方が変化することもあります。
一度決めた学びの場を固定的に考えるのではなく、本人の姿を見ながら継続的に考えていく視点も大切です。
ここまで、通常学級・特別支援学級・通級指導教室・特別支援学校の違いを整理してきました。

では、実際に特別支援学級に在籍した場合、子どもたちはどのような授業を受けるのでしょうか。
次の章では、「特別支援学級では何を勉強するのか」を入り口に、授業、教育課程、自立活動、SST、生活単元学習について具体的に解説していきます。
特別支援学級ではどんな授業をする?
ここまで、特別支援学級と通常学級、特別支援学校、通級指導教室との違いについて説明してきました。
では、実際に特別支援学級に在籍すると、どのような授業を受けるのでしょうか。
まず知っておきたいのは、「特別支援学級では全員が同じ特別な授業をする」というわけではないことです。
特別支援学級でも、国語・算数・理科・社会・音楽・図工・体育などの教科学習を行います。
その一方で、子どもの障害の状態や発達段階、学習上・生活上の困難などに応じて、学習内容や指導方法を調整したり、自立活動を取り入れたりすることがあります。
特別支援学級の授業で大切なのは、「何年生だからこれをする」だけでなく、「この子が今、何を学ぶ必要があるのか」を考えることです。
国語・算数などの教科学習も行う
「特別支援学級では国語や算数をあまり勉強しないのでは?」と思われることがありますが、もちろん教科学習も大切にします。
ただし、同じ学級の中でも、子どもによって学年や学習進度が異なることがあります。
例えば、同じ時間に「算数」を行っていても、
- Aさんは、たし算・ひき算の定着
- Bさんは、九九の復習
- Cさんは、わり算
- Dさんは、当該学年の文章問題
というように、取り組んでいる内容が異なることもあります。
また、課題そのものだけでなく、
- 具体物を使う
- 写真やイラストで視覚化する
- 問題数を調整する
- 課題を小さなステップに分ける
- 活動の順番を提示する
- ICTを活用する
など、その子が理解しやすい方法に変えることも特別支援学級の授業づくりでは重要です。
異学年でも「一緒に学べる部分」は一緒に学ぶ
小学校の特別支援学級では、1年生と3年生、5年生と6年生など、複数の学年の子どもが同じ教室で学んでいることも珍しくありません。
そのため、すべての時間を完全な個別指導にすることは現実的ではありません。
そこで私は、「活動は共通、目標や課題は個別」という考え方をよく使ってきました。
例えば、写真を見て文章を書く活動なら、全員が同じ写真を使いながら、
- 1年生は、言葉や短い文を書く
- 3年生は、「いつ・どこで・何をした」を使って文章を書く
- 高学年は、理由や気持ちまで加えて文章を書く
というように課題を変えることができます。
「みんな同じ」である必要もなければ、「全員完全に別々」である必要もありません。
子どもの実態を見ながら、一緒に学ぶ部分と個別に学ぶ部分を組み合わせることが大切です。
私が実際の授業で取り入れてきた、異学年の子どもたちがそれぞれの課題に取り組む方法はこちらの記事で紹介しています。
👉 【特別支援学級の授業のネタ・仕方】黒板に書く「3つの課題」
特別支援学級の教育課程はどうなっている?
特別支援学級の授業を理解するうえで、避けて通れないのが「教育課程」です。
教育課程という言葉は少し難しく聞こえますが、簡単に言えば、
「この子が学校で、何を、どのくらい、どのように学ぶのかを組み立てた全体の計画」
と考えると分かりやすいでしょう。
基本は小学校・中学校の教育課程
特別支援学級も、小学校や中学校の中に設置されている学級です。
そのため、基本となるのは小学校・中学校の学習指導要領です。
「特別支援学級に入った瞬間に、通常の教科とはまったく違う勉強になる」というわけではありません。
子どもの実態に応じて「特別の教育課程」を編成できる
一方で、通常の教育課程をそのまま実施することが、子どもの実態に合わない場合もあります。
そのような場合には、障害の状態や学習上・生活上の困難などを考慮し、特別の教育課程を編成します。
例えば、子どもの実態に応じて、
- 下学年の教科の目標や内容を取り入れる
- 知的障害特別支援学校の各教科の内容を参考にする
- 自立活動を教育課程に位置付ける
- 交流及び共同学習との組み合わせを考える
といった教育課程を編成することがあります。
ここで大切なのは、「難しいから学年を下げる」と単純に考えないことです。
どこでつまずいているのか、どのような支援があれば学べるのか、将来どのような力につなげたいのかまで考えたうえで、教育課程を組み立てます。
同じ特別支援学級でも教育課程は一人ひとり違う
特別支援学級の教育課程を考えるときに、特に重要なのがこの点です。
同じ学級に在籍しているからといって、全員が同じ教育課程で学ぶとは限りません。
例えば、同じ5年生でも、
- Aさんは5年生の国語・算数を中心に学ぶ
- Bさんは国語は5年生、算数は基礎的な内容を重点的に学ぶ
- Cさんは知的障害特別支援学校の教科等を参考にした内容を取り入れる
ということも考えられます。
だからこそ、特別支援学級では「学級の時間割」だけを見るのではなく、一人ひとりが何を学んでいるのかを見る必要があります。
特別支援学級の教育課程については、下学年の内容を扱う場合、自立活動、時間割、交流学級との調整まで含めて、こちらの記事で詳しく解説しています。
👉 特別支援学級の教育課程とは?「特別の教育課程」の編成・自立活動・時間割をわかりやすく解説
特別支援学級の「自立活動」とは?
特別支援学級の学びを考えるうえで、もう一つ非常に重要なのが自立活動です。
自立活動と聞くと、
- 一人で着替える練習
- 一人で準備する練習
- 生活できるようにする訓練
のようなイメージをもつ方もいるかもしれません。
しかし、自立活動でいう「自立」は、何でも一人でできるようになることだけを意味するわけではありません。
自立活動は「その子の困り感」から考える
自立活動では、障害による学習上・生活上の困難を捉え、その困難を改善・克服するために必要な力を育てていきます。
例えば、学校生活の中でこんな困り感があるとします。
| 子どもの困り感 | 自立活動で考えられる学び |
|---|---|
| イライラすると気持ちをうまく伝えられない | 感情に気付き、言葉やカードで伝える |
| 困っていても助けを求められない | 援助要請の方法を練習する |
| 予定変更で強く不安になる | 予定を確認する方法や変更への対処法を学ぶ |
| 友達との距離感が分かりにくい | 場面に応じた関わり方を考える |
| 力加減が難しい | 自分の身体の動きや力の入れ方を知る |
このように、自立活動は「自立活動という決まった教材を全員で行う」のではありません。
まず子どもの姿を見て、何に困っているのかを考えることが出発点です。
子どもの姿を見る
↓
困り感を整理する
↓
育てたい力を考える
↓
活動・支援を考える
↓
子どもの変化を振り返る
私は、この流れを自立活動を考える基本にしています。

自立活動は6区分27項目で整理されている
自立活動の内容は、大きく次の6区分27項目に整理されています。
- 健康の保持
- 心理的な安定
- 人間関係の形成
- 環境の把握
- 身体の動き
- コミュニケーション
ただし、27項目を順番にすべて教えるわけではありません。
子どもの実態から必要な項目を選び、必要に応じて複数の項目を関連付けながら目標や指導内容を考えます。
6区分27項目それぞれの具体例や、小学校の特別支援学級ですぐ使える活動についてはこちらの記事で詳しくまとめています。
👉 自立活動の具体例と実践例|6区分27項目別にわかる活動アイデア
自立活動は「余った時間にやる活動」ではない
現場では、ときどき「国語や算数が早く終わったら自立活動をやろう」という扱いになってしまうことがあります。
しかし、自立活動は余った時間を埋めるための活動ではありません。
子どもの実態を把握し、目標を設定し、意図的・計画的に指導することが大切です。
また、自立活動で学んだことは、その時間だけで完結させるのではなく、日常の学校生活につなげていく必要があります。
例えば自立活動で「困ったときに『手伝ってください』と伝える」練習をしたなら、国語や算数、休み時間、交流学級など、実際に困った場面でも使えるように支援していきます。
自立活動で練習する → 日常生活で使う → 振り返る
このつながりをつくることが重要です。
SSTは特別支援学級でどう活用する?
特別支援学級では、自立活動などの中でSST(ソーシャルスキルトレーニング)を取り入れることがあります。
SSTとは、人との関わりや社会生活で必要になるスキルを、具体的な場面を通して学んでいく方法です。
SSTは、学習指導要領上の独立した「教科」や「領域」ではありません。
子どもの目標に応じて、自立活動などの指導の中で活用できる方法の一つと考えると分かりやすいでしょう。
SSTでは日常生活で起こる場面を扱う
例えば、特別支援学級では次のようなテーマを扱うことがあります。
- 友達に物を貸してほしいと頼む
- 嫌なことを上手に断る
- 順番を待つ
- 負けたときの気持ちを整える
- 友達と意見が違ったときにどうするか考える
- 困ったときに助けを求める
- 怒ったときの落ち着き方を考える
教師が「こうしなさい」と正解を教えるだけではなく、
「こんなとき、どうしたらいいと思う?」
と一緒に考え、ロールプレイやゲーム、カードなどを使って実際に試してみることができます。
SSTも「その子の困り感」から始める
ただし、SSTも「支援級だから全員に同じ内容を行う」というものではありません。
例えば、友達への頼み方に困っていない子に、何度も「上手な頼み方」の練習をさせても、その子にとって必要な学びにはなりにくいでしょう。
自立活動と同じように、
目の前の子どもがどんな場面で困っているのか。
そこから必要なテーマを選ぶことが大切です。
特別支援学級ですぐに取り入れやすいSSTの実践例はこちらの記事で紹介しています。
👉 【特別支援学級】自立活動に役立つ簡単おすすめSSTゲーム5選
生活単元学習とは?
特別支援学級について調べていると、「生活単元学習」という言葉を目にすることがあります。
生活単元学習とは、子どもが生活上の目標を達成したり、課題を解決したりするために、一連の活動を組み立てて学ぶ指導の形です。
例えば、
- 買い物をしよう
- 料理を作ろう
- 野菜を育てよう
- 誕生日会を開こう
- 季節の行事を楽しもう
といった活動の中には、国語・算数・生活・図工・人との関わりなど、さまざまな学習要素が含まれています。
生活の中で「学んだことを使う」ことが大切
例えば、「お店で買い物をする」という単元なら、
- 何を買うか相談する
- 買い物リストを書く
- 必要なお金を考える
- 店員さんに伝える
- 順番を守る
- 実際に商品を選ぶ
- 買ったものを振り返る
という活動が考えられます。
「国語の時間だから国語だけ」「算数だから計算だけ」と切り分けるのではなく、実際の生活に近い活動の中で複数の力を結び付けながら学べるところが大きな特徴です。
すべての特別支援学級で生活単元学習を行うわけではない
ここは誤解されやすいポイントです。
生活単元学習は、すべての特別支援学級で必ず行う独立した教科ではありません。
知的障害のある児童生徒の教育では、各教科等を合わせた指導の一つとして、生活単元学習が行われることがあります。
そのため、特に知的障害特別支援学級などで、子どもの実態や教育課程に応じて取り入れられることがあります。
一方、自閉症・情緒障害特別支援学級だから必ず生活単元学習を設定する、というものではありません。
「特別支援学級だからこの授業をする」のではなく、「この子たちに必要な学びは何か」から教育課程を考えることが大切です。
生活単元学習の具体的な活動例として、季節の野菜を使った実践はこちらで紹介しています。
👉 【生活単元学習 夏ネタ】特別支援学級向け!五感を育む夏野菜スタンプ
特別支援学級の学びは「教科・自立活動・生活」をつなげて考える
ここまで紹介してきた内容を整理すると、特別支援学級の学びは単純に、
「国語・算数+少し特別な活動」
というものではありません。
子どもの実態に応じて、
- 教科学習……国語・算数などの学力を育てる
- 自立活動……障害による学習上・生活上の困難への対応を学ぶ
- 交流及び共同学習……通常学級の子どもたちと共に学ぶ
- 生活に結び付いた学習……必要に応じて生活単元学習などを取り入れる
などを、一人ひとりの教育課程の中で組み合わせていきます。
私が特別支援学級の教育課程を考えるときに軸にしてきたのは、「目の前の子どもの困り感を減らし、今と将来の学びにつながるか」ということです。
時間割の枠を先に埋めるのではなく、子どもの姿から必要な学びを考え、その学びを教育課程の中に位置付けていくことが大切だと感じています。
ここまでで、特別支援学級の授業・教育課程・自立活動・SST・生活単元学習の関係が見えてきたと思います。
では、実際の学校生活では、これらの学習をどのように1日の中に組み込んでいるのでしょうか。
次の章では、特別支援学級の1日の流れ、交流学級、個別の指導計画、教室環境、担任の仕事について、より具体的に紹介していきます。
特別支援学級の1日の流れは?
特別支援学級について調べている保護者の方にとって、「実際に学校でどんな1日を過ごすのか」は、とても気になるところだと思います。
特別支援学級の1日は、通常学級とまったく別の流れになるわけではありません。
登校、朝の会、授業、給食、掃除、帰りの会など、学校生活の基本的な流れは同じです。
一方で、子どもによって、
- 特別支援学級で受ける授業
- 交流学級で受ける授業
- 自立活動を行う時間
- 個別に学習する時間
などが異なるため、同じ特別支援学級に在籍していても、1日の時間割が一人ひとり違うことがあります。

小学校の特別支援学級の1日の例
| 時間 | 活動例 |
|---|---|
| 登校 | 荷物整理・提出物・朝の準備 |
| 朝の会 | 健康観察・予定確認・スピーチなど |
| 1〜2時間目 | 国語・算数などの個別・少人数学習 |
| 3〜4時間目 | 教科学習・自立活動・交流学級での授業など |
| 給食・掃除 | 特別支援学級または交流学級で行う場合がある |
| 5〜6時間目 | 教科学習・図工・体育・自立活動など |
| 帰りの会 | 1日の振り返り・翌日の予定確認 |
これはあくまで一例です。
実際には、学校の時間割や学年、子どもの実態によって大きく変わります。
見通しをもって過ごせるように工夫する
特別支援学級では、1日の流れを分かりやすくすることも大切な支援です。
例えば、
- 黒板やホワイトボードに1日の予定を示す
- 文字だけでなく写真やイラストを使う
- 終わった活動を消す・外す
- 予定変更があるときは早めに知らせる
といった方法があります。
「次に何をするのか」が分かるだけで、不安が大きく減る子もいます。
見通しを示すことは、単に予定を教えることではなく、安心して自分から行動するための支援にもなります。
特別支援学級での登校から下校までの具体的な流れは、こちらの記事でさらに詳しく紹介しています。
交流学級ではどのように学ぶ?
特別支援学級に在籍する子どもが、通常学級の子どもたちと一緒に学習したり活動したりすることを、「交流及び共同学習」といいます。
学校現場では、交流先となる通常学級を「交流学級」と呼ぶことも多くあります。
交流学級で過ごす時間や教科は、子どもによって異なります。
交流する教科は一人ひとり違う
例えば、
- 音楽だけ交流する子
- 体育・図工・学級活動などを交流する子
- 理科や社会も交流する子
- 国語や算数を含め多くの時間を交流学級で学ぶ子
など、さまざまです。
同じ自閉症・情緒障害学級に在籍しているからといって、全員が同じ教科を交流する必要はありません。
「交流できるか」より「交流する意味があるか」を考える
交流学級について考えるとき、私は「どれだけ多く交流できるか」を目標にしないことが大切だと考えています。
大人数の中でも安心して学べる子もいれば、交流の時間が続くと非常に疲れてしまう子もいます。
また、交流学級に参加していても、授業内容がその子の学習課題とかけ離れていれば、座っているだけの時間になってしまうこともあります。
交流及び共同学習は、「通常学級にいる時間を増やすこと」が目的ではありません。
その子にとって、交流することでどんな学びや経験につながるのかを考えることが重要です。
例えば、
- 友達と一緒に作品を作る経験を積む
- 得意な体育で自信をもつ
- 学年の仲間とのつながりを広げる
- 集団の中で自分の役割を経験する
といったねらいが考えられます。
交流学級と特別支援学級の担任同士の連携も重要
交流を有意義なものにするためには、担任同士の情報共有も欠かせません。
- 今日の授業では何をするのか
- どのような支援が必要か
- どこまで一人で取り組めるか
- 困ったときはどう対応するか
- 交流後の様子はどうだったか
といったことを共有しておくことで、単に「交流学級へ送り出す」だけではない学びにつながります。
特別支援学級では個別の指導計画をどう活用する?
特別支援学級では、一人ひとりの実態や教育的ニーズに応じて指導を考えるために、個別の指導計画を作成し、指導や評価に活用します。
個別の指導計画は、単に年度初めに作成して提出するための書類ではありません。
本来は、
- 今、どんな姿なのか
- どんな力を育てたいのか
- どんな支援を行うのか
- 支援の結果どう変化したのか
を整理し、日々の指導につなげるための計画です。
STEP1 子どもの実態を把握する
最初に見るのは診断名ではなく、実際の子どもの姿です。
- できていること
- 難しいこと
- 好きなこと
- 苦手なこと
- 困りやすい場面
- 支援があるとできること
などを整理します。
STEP2 目標を設定する
実態が整理できたら、「どんな姿を目指すのか」を考えます。
ここでも、教師の都合で目標を決めるのではなく、子どもの困り感や本人・保護者の願いを踏まえて考えることが大切です。
STEP3 具体的な支援方法を考える
例えば、目標が「困ったときに援助を求める」なら、
- 援助要請カードを用意する
- 教師と「手伝ってください」と言う練習をする
- 実際の授業場面で使えるよう促す
というように、具体的な支援へ落とし込みます。
STEP4 評価して次の支援につなげる
一定期間取り組んだら、目標が達成できたかどうかだけではなく、
- どの支援が有効だったか
- どんな場面ではまだ難しいか
- 目標そのものが適切だったか
まで振り返ります。
実態把握 → 目標 → 支援 → 評価 → 見直し
この循環をつくることで、個別の指導計画が「書類」ではなく、実際の支援に役立つものになります。
特に悩みやすい自立活動の目標・支援・評価の書き方については、こちらの記事で6区分27項目ごとの具体例を紹介しています。
👉 【記入例つき】個別の指導計画「自立活動」の書き方|目標・支援・評価の実例
特別支援学級の教室環境で大切なこと
特別支援学級では、教師の説明や教材だけでなく、教室そのものを子どもが学びやすい環境に整えることも重要です。
例えば、教師が「集中して」と何度声をかけても、周囲の刺激が多すぎて集中できない子もいます。
その場合、必要なのは注意を増やすことではなく、環境を調整することかもしれません。
① 視覚的な刺激を増やしすぎない
掲示物や教材が多いほどよいとは限りません。
壁や黒板の周囲に情報が多すぎると、必要な情報に注意を向けにくい子もいます。
「何を掲示するか」と同時に、「何を掲示しないか」も考えます。
② 座席は子どもの実態に合わせる
全員が同じ机配置で学ぶ必要はありません。
- 黒板に集中しやすい座席
- 人の出入りが視界に入りにくい座席
- 教師の支援を受けやすい座席
- 必要に応じてパーテーションを使う
など、その子が学習しやすい場所を考えます。
③ 動線を分かりやすくする
机、ロッカー、提出物、教材、休憩スペースなどの位置が整理されていると、子ども自身が動きやすくなります。
教師に毎回「次はここ」と教えてもらわなくても動ける環境は、自立にもつながります。
④ クールダウンできる場所を考える
気持ちが高ぶったときや、刺激が多く疲れたときに、一度集団から離れて落ち着ける場所が役立つことがあります。
ただし、クールダウンスペースは「罰として入れる場所」ではありません。
子ども自身が「少し休みたい」と選べる場所として使えるようにすることが大切です。
⑤ レイアウトは完成させるものではなく調整していく
4月に教室を整えたら、それで完成ではありません。
実際に子どもが過ごす姿を見て、
- ここでは集中しにくそうだ
- この動線はぶつかりやすい
- この掲示物は気になりすぎる
- この場所なら落ち着けている
と気付いたら、その都度変えていきます。
教室レイアウトは「先生がきれいだと思う教室」を作ることではありません。
子どもの姿を見ながら、困り感を減らし、学習しやすい環境へ調整していくことが目的です。
教室環境を整える際には、年度初めの準備として、机の配置・掲示物・スケジュール・刺激量などを確認しておくと安心です。
👉 新年度に向けて先生がラクになるToDoリスト|特別支援学級の環境整備も解説
特別支援学級の担任は何をする?
特別支援学級の担任というと、少人数の子どもを教える先生というイメージがあるかもしれません。
しかし実際には、授業だけでなく、一人ひとりの教育課程や支援を調整する役割も大きくなります。
① 子どもの実態を把握する
まずは、子どものことを知るところから始まります。
- 学習状況
- 得意・苦手
- コミュニケーション
- 感覚面の特徴
- 生活面
- 不安になりやすい場面
- 有効だった支援
などを、前年度の記録や担任、保護者、実際の子どもの姿から把握します。
② 授業と教育課程を組み立てる
異学年・異なる学習進度の子どもたちが在籍することも多いため、通常学級とは違った授業設計が必要になることがあります。
誰がどの内容を特別支援学級で学ぶのか、どの授業を交流学級で受けるのか、自立活動をどこに位置付けるのかなどを考えていきます。
③ 個別の指導計画を作成・評価する
一人ひとりの目標や支援を整理し、実際の指導と結び付けていきます。
④ 交流学級の担任と連携する
交流及び共同学習を行う場合には、交流学級の担任との連携が欠かせません。
時間割だけでなく、授業内容や支援方法、子どもの様子についても共有していきます。
⑤ 保護者や関係職員と連携する
保護者、支援員、特別支援教育コーディネーター、養護教諭など、さまざまな人と情報を共有しながら支援を考えることも重要な仕事です。
特別支援学級担任の仕事を一言で表すなら、「一人ひとりが学びやすい状態をつくること」だと私は考えています。
教師がすべてを抱えるのではなく、子ども・保護者・交流学級・支援員などと一緒に、その子に合った支援を考えていくことが大切です。
初めて特別支援学級を担任する先生に向けて、年度初めの準備、個別の指導計画、教室環境、保護者対応などをまとめた完全ガイドも作成しています。
👉 特別支援学級担任が初めての先生へ|1年間を安心して乗り越えるための完全ガイド
ここまで、特別支援学級の1日の流れ、交流学級、個別の指導計画、教室環境、担任の仕事について紹介してきました。
特別支援学級は、単に少人数で授業を受ける場所ではありません。
授業、教育課程、交流、環境調整、個別の目標などを組み合わせながら、子どもが安心して学べる環境をつくっていきます。
では、保護者が実際に学びの場を選ぶときには、何を基準に考えればよいのでしょうか。
次の章では、特別支援学級を選ぶときに確認したいポイント、よくある疑問、通常学級へ戻ることや進路についてまで整理していきます。
特別支援学級を選ぶときに大切にしたいこと
ここまで読んで、「特別支援学級については分かってきた。でも、結局うちの子にはどの学びの場が合っているんだろう?」と感じている保護者の方もいると思います。
就学先や在籍する学級を考えるとき、私は「特別支援学級に入れるかどうか」だけを考えないことが大切だと思っています。
見るべきなのは、学級の名称ではなく、その子がどのような環境なら安心して学び、自分の力を発揮できるかです。
① まず「子どもが何に困っているのか」を考える
最初に考えたいのは、診断名やIQではなく、現在の学校生活での子どもの姿です。
- 授業の内容が分からず困っている
- 大人数の中では緊張が強い
- 周囲の音や刺激によって疲れやすい
- 友達との関係でトラブルになりやすい
- 予定変更への不安が強い
- 困っても自分から助けを求められない
など、まずは具体的な困り感を整理します。
「特別支援学級が必要か?」から考えるのではなく、
「今、この子は何に困っているのだろう?」
から考えると、必要な支援が見えやすくなります。
② どのような支援があれば学べるのかを考える
困り感が分かったら、次に「どのような支援があれば学べるのか」を考えます。
例えば、大人数では集中しにくい子でも、
- 少人数にする
- 座席を調整する
- 視覚的に予定を示す
- 課題を小さく分ける
- 休憩できる場所を用意する
ことで学習できる場合があります。
反対に、必要な配慮が通常学級でも十分に受けられ、その環境で安心して学べているのであれば、通常学級や通級による指導という選択肢もあります。
③ 「学級名」ではなく実際の学校を見る
同じ「自閉症・情緒障害特別支援学級」であっても、学校によって環境は異なります。
- 在籍している子どもの人数
- 学年構成
- 教室の広さ
- 交流学級との関わり方
- 支援員の配置
- 学習の進め方
- 教室の刺激量
などは学校によって違います。
可能であれば、就学前や転籍を検討している段階で実際の学級を見学することをおすすめします。
④ 本人の気持ちも大切にする
大人から見ればよい環境に思えても、本人が強い不安を感じている場合もあります。
言葉で十分に説明することが難しい子でも、
- どの教室では表情が柔らかいか
- どこなら安心して過ごしているか
- 学校へ行くことへの抵抗が強くなっていないか
- どんな授業なら主体的に参加しているか
など、子どもの姿から読み取れることがあります。
⑤ 一度決めた学びの場を固定的に考えない
子どもは成長します。
入学時には特別支援学級が合っていた子が、数年後には通常学級で学ぶ時間を増やした方が力を発揮できるようになることもあります。
反対に、通常学級で頑張ってきたものの、学習内容や人間関係が複雑になるにつれて負担が大きくなり、特別支援学級を検討することもあります。
学びの場は「一度決めたら終わり」ではありません。
子どもの成長や困り感の変化を見ながら、「今、この子に合っているか」を継続的に考えていくことが大切です。

特別支援学級への入級を勧められたときの考え方や、具体的な基準についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
👉 小学校の支援学級に入る基準は?勧められた時の対処法・デメリットまで解説
支援学級と通級のどちらが合うか迷っている方はこちらも参考にしてください。
👉 支援学級と通級、うちの子に合うのはどっち?後悔しない選び方
特別支援学級についてよくある質問
最後に、特別支援学級について保護者や先生からよく聞かれる疑問をまとめます。
特別支援学級は何人まで?
公立小・中学校の特別支援学級は、1学級8人が国の学級編制の標準です。
ただし、「どの学校でも必ず8人」という意味ではありません。
都道府県や自治体の基準、学校の児童生徒数、障害種別などによって、実際の学級人数は異なります。
また、特別支援学級は異学年の子どもが同じ教室で学ぶこともあるため、例えば「3年生2人・4年生1人・6年生2人」といった学級になることもあります。
IQはいくつなら特別支援学級に入る?
「IQが○以下なら特別支援学級」という全国一律の単純な基準では決まりません。
知能検査は就学先を考える際の重要な情報の一つですが、それだけで決定するものではありません。
学習状況、生活面、コミュニケーション、障害の状態、必要な支援、本人・保護者の意向、学校や地域の教育環境などを踏まえて総合的に検討されます。
特に知的障害特別支援学級について詳しく知りたい場合はこちらの記事も参考にしてください。
ADHDや発達障害でも特別支援学級に入れる?
発達障害があるからといって、自動的に特別支援学級に在籍するわけではありません。
特に、ADHD(注意欠如・多動症)やLD(学習障害)は、それ自体が特別支援学級の学級種として設けられているわけではなく、通常学級での合理的配慮や通級による指導などが検討されることもあります。
一方、ASD(自閉スペクトラム症)などがあり、自閉症・情緒障害特別支援学級の対象となる状態や教育的ニーズがある場合には、特別支援学級が学びの場として検討されることがあります。
診断名だけで決めるのではなく、学校生活でどのような困難があり、どのような支援や環境を必要としているかを総合的に考えることが大切です。
特別支援学級から通常学級に戻ることはできる?
はい。子どもの成長や必要な支援の変化に応じて、特別支援学級から通常学級への学びの場の変更を検討することはできます。
ただし、私は「通常学級へ転籍すること=成長」「特別支援学級に残ること=成長していない」とは考えていません。
大切なのは、通常学級へ行くこと自体を目標にするのではなく、その子が現在どの環境で最も学びやすいかを考えることです。
転籍の考え方や手続きについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
👉 特別支援学級から普通学級への転籍は本当に幸せ?判断基準と手続きを解説
特別支援学級でも高校へ進学できる?
特別支援学級に在籍していることだけを理由に、高校へ進学できなくなるわけではありません。
中学校卒業後には、
- 高等学校
- 通信制高校
- 定時制高校
- 特別支援学校高等部
- その他の学びの場
など、子どもの実態や希望に応じてさまざまな進路が考えられます。
ただし、中学校でどの教育課程を履修しているか、評価・評定、希望する学校の入学者選抜の仕組みなどは進路選択に関係します。
中学生になったら早めに学校や教育委員会、進路担当者と相談しておくことが大切です。
交流学級には何時間まで行ける?
交流及び共同学習については、「○時間まで」と全国一律の単純な上限が設定されているわけではありません。
一方、文部科学省は、特別支援学級に在籍する児童生徒について、原則として週の授業時数の半分以上を目安に特別支援学級で授業を行うという考え方を示しています。
これは、必要な指導体制がないまま大半の時間を通常学級で過ごし、「特別支援学級に在籍している意味が薄くなる」状態を避けるためです。
ただし、次年度に通常学級への学びの場の変更を検討している場合など、文部科学省が示す一定のケースでは例外があります。
大切なのは「何時間交流したか」ではなく、「交流先で本人にとって意味のある学びになっているか」です。
参考:文部科学省
交流及び共同学習の「週の半分」という目安や、例外となる場合については、文部科学省のQ&Aで詳しく説明されています。
特別支援学級と通級はどちらがいい?
どちらが優れているというものではありません。
通常学級での学習を基本としながら、一部の困り感について特別な指導を受けることで学びやすくなる子には、通級が合うことがあります。
一方、教科学習や学校生活全体で継続的な環境調整・個別支援が必要な場合には、特別支援学級が合うことがあります。
子どもの困り感と必要な支援から考えることが大切です。
👉 支援学級と通級、うちの子に合うのはどっち?違いと選び方を詳しく解説
まとめ|特別支援学級は「その子に合った学び方」を考える場所
この記事では、特別支援学級について、対象となる子ども、種類、通常学級・特別支援学校・通級との違い、授業、教育課程、自立活動、交流学級などをまとめて紹介してきました。
最後に、大切なポイントを整理します。
- 特別支援学級は、一人ひとりの障害の状態や教育的ニーズに応じて学ぶ少人数の学級
- 特別支援学級には7つの種類がある
- 診断名やIQだけで学びの場が決まるわけではない
- 必要に応じて特別の教育課程を編成することができる
- 国語・算数などの教科学習も行う
- 子どもの実態に応じて自立活動を取り入れる
- 通常学級との交流及び共同学習を行うこともある
- 子どもの成長によって学びの場を見直すこともできる
そして、私が特別支援学級を担任してきて最も大切だと感じているのは、「通常学級で学べるか」「特別支援学級に入るべきか」という学級名から考え始めないことです。
まず見るのは、目の前の子どもです。
子どもの姿を見る
↓
困っていることを見つける
↓
必要な支援を考える
↓
その支援を受けやすい学びの場を考える
特別支援学級は、「通常学級でできない子が行く場所」ではありません。
一人ひとりの困り感に目を向け、その子が安心して学び、自分の力を発揮するための方法を考える学びの場の一つです。
そして、どの学びの場を選んだとしても、その選択だけで子どもの未来が決まるわけではありません。
子どもの成長を見ながら、その時々で「今、この子に必要な支援は何だろう」と考え続けていくことが、何より大切だと思います。
特別支援学級についてさらに詳しく知りたい方へ
入級するか迷っている保護者の方
特別支援学級の授業について知りたい先生
👉 特別支援学級の授業のネタ・仕方|黒板に書く「3つの課題」
自立活動の具体例を探している先生


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