ソーシャルストーリーとは?特別支援学級のSST・自立活動で使う方法|コミック会話・教材10テーマ
「ソーシャルストーリーという言葉は聞いたことがあるけれど、実際にどう使えばいいの?」
「コミック会話とは何が違うの?」
「自立活動やSSTの授業に取り入れたいけれど、どんな場面を扱えばいいのか分からない」
特別支援学級で子どもたちと関わっていると、このように感じることがあります。
ソーシャルストーリーやコミック会話は、目に見えにくい状況や人とのやり取りを、文章・イラスト・吹き出しなどを使って整理するときに役立つ方法です。
この記事では、特別支援学級での実践経験をもとに、
- ソーシャルストーリーの基本的な考え方
- コミック会話との違いと使い分け
- 自立活動・SSTとの関連
- 学校生活で扱いやすい10テーマ
- 45分授業で使うときの展開例
- 子どもを追い込まないための指導上のポイント
を具体的に解説します。
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Social Stories™は、Carol Grayによって1990年頃から開発されてきた、本人にとって意味のある状況・概念・出来事などを、正確で安全、尊重的な形で説明するためのアプローチです。
学校では、例えば次のような場面を整理するときに応用できます。
- 予定が変更されたとき、何が起きるのか分からず不安になる
- 友達との会話で、いつ話せばよいか分かりにくい
- 分からないことがあっても、助けを求める方法が分からない
- 友達に誘いを断られた理由が分からず、強く落ち込む
- 失敗したとき、その後どうすればよいか分からなくなる
ただし、ここで大切なのは、「本人が社会を分かっていないから正しい行動を教える」という発想だけにしないことです。
「本人には、この場面がどのように見えているのだろう?」
「こちらの説明や環境の方に、分かりにくさはなかっただろうか?」
と、大人側も状況を見直します。
用語について
Carol Grayが定義するSocial Story™には、現在10の基準があります。本記事では、その考え方を参考にしながら学校現場で活用する「ソーシャルストーリー型の視覚支援教材」も含めて解説しています。

現在のSocial Stories™は「4種類の文」で作るわけではない
以前の書籍や解説では、「描写文」「視点文」「指示文」「肯定文」など複数の文の種類が紹介されていました。
しかし、現在のSocial Stories™ 10.4 Criteriaでは、基本的に次の2種類に整理されています。
| 種類 | 役割 | 学校で考えると |
|---|---|---|
| Descriptive Sentences 描写する文 | 状況・人・出来事・理由などを、思い込みや評価を入れずに正確に説明する | 「雨の日は、外遊びができないことがあります」 |
| Coaching Sentences 穏やかに方向づける文 | 必要に応じて、本人や周囲が使える方法を穏やかに提案する | 「雨の日は、教室でできる遊びを選ぶこともできます」 |
ポイントは、「こうしなさい」という指示を並べるのではなく、まず状況を丁寧に説明することです。
現在の基準では、本人を方向づける文よりも、状況を説明する文を十分多くすることが重視されています。
つまり、
「友達に断られたら怒ってはいけません」
ではなく、
「友達には、そのときにしたいことがあります。今は一人で本を読みたいこともあります。『今は遊べない』という返事は、『あなたが嫌い』という意味とは限りません」
のように、本人が判断するときに役立つ情報を増やすイメージです。
コミック会話とは?ソーシャルストーリーとの違い
コミック会話(Comic Strip Conversations)も、Carol Grayによって開発された視覚的なコミュニケーション支援法です。
人物を簡単な絵で描き、
- 実際に言ったこと
- 考えていたこと
- その場で起きたこと
- 別の行動を選んだ場合に起こりそうなこと
などを吹き出しや絵で整理します。

コミック会話は「事後の反省」だけに使うものではない
コミック会話は、トラブルがあった後の振り返りにも使えますが、それだけではありません。
- これから起こる場面を事前に考える
- 過去のやり取りを整理する
- 言葉の受け取り方の違いを考える
- 次に使えそうな言葉や行動を考える
など、さまざまな使い方ができます。
「相手の心の中」を正解として教えない
コミック会話を使うときに、特に大切にしたいことがあります。
それは、相手の気持ちを教師が決めつけないことです。
例えば、友達が「今日は遊ばない」と答えた場面で、
「この子は本を読みたかったんだよ」
と教師が断定するのではなく、
「どんな理由が考えられそうかな?」
- 本を読みたかったのかもしれない
- 少し疲れていたのかもしれない
- 別の遊びをしたかったのかもしれない
- 本当の理由は本人に聞かないと分からない
と、複数の可能性を考えるようにします。
これは、人の気持ちを「当てる」練習ではなく、自分とは違う見方があることを知る練習になります。
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学校生活で起こりやすい10テーマを、ストーリー・コミック会話・書き込みワーク・教師用指導書としてまとめています。
教材セットの詳しい内容を見る自立活動ではどう位置付ける?
ソーシャルストーリーやコミック会話は、「この教材を使えば自立活動になる」というものではありません。
自立活動では、まず一人ひとりの学習上・生活上の困難や実態を把握し、目標を設定した上で、必要な内容を選ぶことが基本です。
文部科学省が示す自立活動は、現在6区分27項目です。
ソーシャルストーリーやコミック会話を使った活動は、子どもの実態によって、例えば次の区分・項目と関連付けて考えることができます。
| 扱う困り | 関連を検討できる区分の例 |
|---|---|
| 予定変更への対応 | 心理的な安定/環境の把握 |
| 人との関わり方 | 人間関係の形成/コミュニケーション |
| 援助を求める | コミュニケーション |
| 自分の気持ちや行動を振り返る | 人間関係の形成/心理的な安定 |
| 状況に合わせた伝え方を考える | コミュニケーション/環境の把握 |
ただし、テーマだけを見て機械的に区分を割り当てるのではありません。
自立活動での基本的な考え方
子どもの困り感・実態 → 目標 → 必要な6区分27項目 → 具体的な活動
「ソーシャルストーリーを読むこと」そのものを目標にするのではなく、その子が何に困り、どんな力を身につけたいのかから授業を考えます。
特別支援学級で扱いやすい10テーマ
ここからは、学校生活で扱いやすい10テーマを紹介します。
すべての子どもに必要という意味ではありません。目の前の子どもの困り感に合うテーマだけを選んでください。
① おはなしのキャッチボール|会話のやり取り
こんな場面に:好きな話題になると長く話し続け、相手が話すタイミングをつかみにくい。
指導のポイント:「会話はキャッチボール」という比喩が本人に分かりやすい場合は、話す→聞く→また話す、という流れを視覚化します。
「〇〇さんはどう思う?」など、相手に順番を渡す言葉も一つの選択肢として練習できます。

② よていが かわったとき、どうする?|変更への対応
こんな場面に:予定が変更されると不安が大きくなり、次に何をすればよいか分からなくなる。
指導のポイント:まず「楽しみにしていたから残念だった」という気持ちを受け止めます。その上で、変更後の予定や選択肢を視覚的に示します。
深呼吸、休憩、予定表を見る、先生に確認するなど、本人が使いやすい方法を一緒に探します。

③ こまったとき、どうする?|援助要請
こんな場面に:分からないことや困ったことがあっても、助けを求める方法が分からない。
指導のポイント:助けを求めることも、自分で問題を解決するための大切な方法の一つであることを伝えます。
「手伝ってください」「ここが分かりません」など、本人が使いやすい言葉・カード・ジェスチャーなどを一緒に選びます。
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④ れつに ならぶとき、どうする?|順番と人との距離
こんな場面に:列で前の人との距離が近くなったり、待つことに負担を感じたりする。
指導のポイント:「前の人がどう感じるか」を決めつけるのではなく、人によって心地よい距離が違うことを伝えます。
床の目印、立つ場所のマーク、待ち時間が分かるタイマーなど、環境側の工夫も合わせて考えます。
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⑤ あそびかたのキャッチボール|違う考え方を知る
こんな場面に:自分が考えていた遊び方と友達の遊び方が違うと、戸惑ったり言い合いになったりする。
指導のポイント:「どちらが正しいか」を決めるのではなく、同じ遊びでも複数の楽しみ方があることを一緒に確認します。
「それもいいね」「次はこっちもやってみたい」など、場面に合う言葉をいくつか用意します。
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⑥ せんせいと おはなしするとき|話しかけるタイミング
こんな場面に:教師に伝えたいことがあるとき、いつ声をかければよいか分からない。
指導のポイント:「先生はいま話せる?」「ほかの人と話している?」など、判断の手掛かりを視覚的に整理します。
「先生、いま話していいですか?」と尋ねる方法だけでなく、メモを置く、合図カードを使うなど、その子に合った伝え方も選べるようにします。
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⑦ きもちの つたえかた|感情と行動を分ける
こんな場面に:嫌なことがあると、言葉で伝える前に大声になったり手が出たりする。
指導のポイント:「怒ったこと」を否定せず、感情と行動を分けて整理します。
「勝手に使われて嫌だった」「返してほしい」など、本人の気持ちに近い伝え方を一緒に考えます。
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⑧ 友だちをさそう・ことわられたとき|相手にも都合があることを知る
こんな場面に:遊びの誘いを断られると、「嫌われた」と受け止めてしまう。
指導のポイント:断られた理由には複数の可能性があることをコミック会話で考えます。
- 今は別のことをしたかったのかもしれない
- 疲れていたのかもしれない
- あとなら遊べるかもしれない
「また今度ね」「いつなら遊べる?」など、次につながる言葉も選択肢として練習します。
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⑨ おもちゃの「かして」「どうぞ」|共有と順番
こんな場面に:使いたい物があると、相手からすぐ受け取りたくなったり、順番を待つことが難しかったりする。
指導のポイント:「使いたい」という気持ちを否定せず、「次に貸して」「終わったら教えて」などの伝え方を増やします。
待つこと自体が大きな負担になっている場合は、順番カードやタイマーなども併用します。
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⑩ まちがえたとき、どうする?|失敗した後の対処
こんな場面に:問題を間違えたり作品が思い通りにならなかったりすると、大きく落ち込む。
指導のポイント:まず「悔しい」「残念」という気持ちを受け止めます。
その上で、
- 直してみる
- 先生に聞く
- 少し休憩する
- 別のやり方を試す
など、「失敗した後にも選べる行動がある」ことを伝えます。
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教材の雰囲気を確認してから使いたい先生向けに、10テーマのうち「まちがえたとき、どうする?」を無料サンプルとして用意しています。

「間違えないようにする」のではなく、
- 上手になりたい気持ちがあること
- 人は誰でも間違えることがあること
- 悔しい・残念と感じることもあること
- 間違えた後にも選べる方法があること
- 次にどうするかを自分で選べること
を、イラストと短い文章で整理しています。
📖 10テーマをまとめて使いたい先生へ
ソーシャルストーリー+コミック会話 教材セット
ソーシャルストーリー型教材、コミック会話、書き込み用ワーク、教師用指導書をまとめています。
教材セットの詳しい内容を見る45分授業で使うときの展開例
ここでは、1つのテーマを45分の自立活動で扱う場合の一例を紹介します。
子どもの実態によっては、一度に45分行わず、10〜15分ずつ複数回に分けても構いません。
① 導入|今日考える場面を確認する(5分)
「今日は、友達に遊びを断られたときのことを考えます」のように、テーマと授業の流れを伝えます。
予定を黒板やカードで示しておくと、見通しにつながります。
② ストーリーを読む(10分)
文章とイラストを一緒に見ながら、まず何が起きているのかを確認します。
すぐに「どうするのが正解?」と聞くのではなく、
- どこで起きている?
- 誰がいる?
- 何があった?
- 分からないことはある?
と、事実を整理します。
③ コミック会話で考える(15分)
登場人物が実際に言ったことを吹き出しに書きます。
次に、
「このとき、どんなことを考えていた可能性があるかな?」
と考えます。
答えを一つに決めず、
「そう考えていたかもしれないね」
「別の可能性もあるかな?」
と広げます。
④ 使えそうな方法を試す(10分)
本人が使えそうな言葉や行動を選び、必要に応じてロールプレイします。
例えば、
- 「また今度遊ぼう」
- 「終わったら教えて」
- 「分からないので手伝ってください」
- 一度その場を離れる
などです。
言葉で言うことが難しい場合は、カード、指差し、ジェスチャーなどでも構いません。
⑤ 振り返る(5分)
「今日、使ってみたいと思った作戦はどれ?」
と本人が選べる形で振り返ります。
授業中に正しく答えられたかではなく、本人が理解しやすい方法や、実生活で使えそうな方法が見つかったかを大切にします。
般化のポイント
自立活動で学んだことを、授業外でそのまま使えるとは限りません。実際の場面で使えたときに「さっき『手伝って』って伝えられたね」のように具体的に確認し、経験と学習内容を結び付けます。
ソーシャルストーリー・コミック会話を使うときの5つの注意点
1. 子どもを「正しい行動」に従わせる教材にしない
「先生の話は最後まで聞きます」
「友達には必ず貸します」
「怒ってはいけません」
と、ルールを守らせるための文章だけにすると、本人が困っている理由が置き去りになってしまいます。
まず何が起きているのか、なぜその状況になるのか、本人にはどのように見えているのかを丁寧に整理します。
2. 本人の気持ちを決めつけない
「〇〇されたから悲しかったんだね」と教師が決めるのではなく、
「どんな感じだった?」
「この中だと近い気持ちはある?」
と確認します。
言葉で表しにくければ、感情カードや選択肢を使っても構いません。
3. トラブル直後に無理に振り返らない
まだ強く怒っていたり、泣いていたりする段階で、コミック会話を書かせる必要はありません。
まず安全と落ち着きを優先し、振り返りは本人が話せる状態になってから行います。
4. 「できた瞬間」を具体的に返す
「えらいね」「すごいね」だけではなく、
「今、『あとで貸して』って言葉で伝えられたね」
「予定が変わったとき、予定表を自分で確認していたね」
のように、本人が使えた方法を具体的に伝えます。
5. 教材が合わなければ別の方法を考える
ソーシャルストーリーがすべての子ども、すべての困りに適しているわけではありません。
文字を読むより写真の方が分かりやすい子もいます。実際に練習した方が理解しやすい子もいます。そもそも環境調整をした方が解決しやすい場合もあります。
「教材に子どもを合わせる」のではなく、「子どもに合う方法を探す」ことを優先します。
ソーシャルストーリー+コミック会話 教材セット
ここまで紹介した考え方を、特別支援学級の自立活動・SSTで使いやすい形にした教材セットを作成しています。
学校生活で起こりやすい10テーマを扱っています。


コミック会話シート
完成例を見ながら考える教材に加え、自分で吹き出しを書き込んで考えられるワークも用意しています。

教師用指導書
教材を配って終わりにならないよう、各テーマのねらい、授業での進め方、声かけのポイントなどをまとめています。

教材は印刷して使うことができ、個別の自立活動、小集団SST、通級など、子どもの実態に合わせて活用できます。
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予定変更、援助要請、会話、友達との関わり、感情の伝え方、失敗への対処など、学校生活で扱いやすいテーマをまとめています。
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教材セットの詳しい内容を見るまとめ|「正解を教える教材」ではなく、状況を理解する手掛かりに
ソーシャルストーリーやコミック会話の価値は、子どもに「正しい社会行動」を覚えさせることだけではありません。
大切なのは、
- 何が起きているのかを整理する
- 自分の気持ちを知る
- 他の人には違う見方があることを知る
- 困ったときに使える方法を増やす
- 次にどうするかを本人と一緒に考える
ことです。
そして、教材だけでは解決しないときには、環境や大人の関わり方も見直します。
「どうすればこの子にもっと分かりやすく伝わるだろう?」
という視点を持ち続けることが、特別支援教育では大切だと感じています。



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