小学生のアンガーマネジメント|学校で使えるゲーム3選・教材・授業の進め方
「怒ると、すぐに手が出てしまう」
「『どうして怒ったの?』と聞いても、『ムカついたから!』としか言えない」
「SSTや自立活動で、怒りについて扱いたいけれど、どんな授業をすればよいか分からない」
小学校では、こうした子どもたちへの支援を考える場面があります。
アンガーマネジメントというと、「怒らないように我慢する練習」と思われることがあります。しかし、怒りそのものは自然な感情です。
授業で目指したいのは、自分がどんなときに怒りやすいのかに気づき、怒りの大きさや感じ方を知り、困ったときに使える行動の選択肢を増やしていくことです。
この記事では、小学校教員としての実践経験と特別支援学級での経験をもとに、私が実際に取り組んできたアンガーマネジメントのゲームや授業の進め方を紹介します。
この記事で紹介する内容
- 小学生にアンガーマネジメントを教えるときの考え方
- 授業で使えるアンガーマネジメントゲーム3選
- 授業前に決めておきたいグランドルール
- 実際の特別支援学級での活用例
- 授業後の振り返りと日常生活へのつなげ方
- 無料で使えるアンガーマネジメント教材
- 市販教材「みんなの怒りスイッチをさがせ!」の活用法
なお、怒りが大きくなったときの対応やクールダウン、予防的な環境調整について知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
小学生のアンガーマネジメントで大切なのは「怒らない」ではない
アンガーマネジメントの授業を行うとき、最初に子どもたちへ伝えたいことがあります。
怒ること自体が悪いわけではありません。
大切なのは、怒ったときに自分や相手が困りにくい方法を少しずつ増やしていくことです。
例えば、友達に嫌なことをされたときに怒るのは自然な反応です。
そこで「怒ってはいけません」と教えるのではなく、
- 自分は何に怒りやすいのか
- どのくらい嫌だったのか
- 友達は同じ出来事をどう感じるのか
- 次に同じことが起きたら何ができそうか
を考えていきます。
この考え方を土台にすると、アンガーマネジメントが「大人の言うことを聞くための訓練」ではなく、子ども自身が困ったときに使える方法を増やす学習になります。
アンガーマネジメントの授業は「気づく→比べる→選ぶ」で組み立てる
私が授業を組み立てるときは、次の3つを意識しています。
自分はどんな場面で怒るのか、どのくらい嫌なのかを知る。
同じ出来事でも、人によって感じ方が違うことを知る。
怒ったときに使えそうな行動を複数の選択肢から考える。
この3つを一度の授業ですべて扱う必要はありません。
その子の実態に応じて、「今日は自分の怒りの大きさを考える」「今日は困ったときの方法を一つ増やす」など、ねらいを絞る方が取り組みやすくなります。
授業前に決めたいグランドルール
怒りを扱う活動では、子どもが自分の経験や気持ちを話すことがあります。
そのため、ゲームを始める前に「安心して話せる場」をつくることが重要です。
私は、例えば次のようなルールを確認します。
- 答えが違っても「変」と言わない
- 話したくないときは「パス」してもよい
- 友達が話しているときは最後まで聞く
- ゲームで聞いた話を、後からからかいに使わない
- 先生の答えと違ってもよい
アンガーマネジメントでは「正しい感情」を答えさせることが目的ではありません。
「自分はこう感じる」「友達は違うんだ」と安心して表現できることを大切にします。
自立活動で「気持ちのコントロール」を扱う指導案や、『みんなの怒りスイッチをさがせ!』を使った授業実践を探している方はこちらをご覧ください。
小学生向けアンガーマネジメントゲーム3選
ここからは、学校で取り組みやすい3つのゲームを紹介します。
イラスト付きの場面カードがなくても、教師が「こんなときどう思う?」と出来事を読み上げたり、黒板に書いたりすれば実践できます。
① 怒りの温度当てゲーム|自分と友達の感じ方の違いを知る

場面を一つ提示し、「自分ならどのくらい怒る?」と考える活動です。
ねらい
- 自分がどんな出来事に反応しやすいかに気づく
- 怒りの大きさを表す方法を知る
- 同じ出来事でも感じ方には違いがあることを知る
準備するもの
- 学校生活などの場面カード
- 怒りレベルカード、または黒板に描いた1〜5程度の目盛り
進め方
- 教師が場面を一つ提示する
- 自分ならどのくらい嫌かを考える
- カードや指などで一斉に示す
- 話せそうな子は理由を伝える
- 友達との違いを確認する
例えば、「一生懸命描いた絵を友達に笑われた」という場面で、ある子はレベル5、別の子はレベル2を選ぶかもしれません。
ここで大切なのは、「レベル2の方が偉い」と評価しないことです。
教師は、
「同じ出来事でも違うんだね」
「○○さんにとっては、すごく嫌なことなんだね」
と違いを整理します。
② 許せる?迷う?許せない?ゲーム|感じ方に幅があることを考える
場面を見て、例えば、
- 許せる
- 迷う・場合による
- 許せない
の3つから、自分に近いものを選びます。
ねらい
- 自分の感じ方を整理する
- 相手の意図や状況によって考えが変わる場合があることを知る
- 友達との考え方の違いを知る
例えば「友達のボールが顔に当たった」という場面でも、
「わざとなら許せない」
「すぐ謝ってくれたら変わる」
「痛かったら、わざとじゃなくても嫌だ」
など、さまざまな考えが出てきます。
教師が特定の答えへ誘導するのではなく、「条件によって自分の考えが変わることもある」と気づく材料にします。

③ こんなときどうする?ゲーム|使える行動を増やす
3つ目は、怒りを感じたときに「次に何ができそうか」を考えるゲームです。
ねらい
- 困ったときの行動の選択肢を増やす
- それぞれの行動の後に何が起こりそうか考える
- 自分が実際に使えそうな方法を見つける
例えば、「並んでいる列に友達が割り込んできた」という場面なら、
- 「順番だよ」と伝える
- 先生に知らせる
- 少し距離を取る
- 友達に手を出す
など複数の行動を並べ、
「それをすると、その後どうなりそう?」
「自分ならどの方法が使えそう?」
と考えます。
「先生に言うのが絶対の正解」のように一つの方法だけを教えるのではなく、場面や本人に応じた複数の選択肢を持てるようにすることを大切にします。
特別支援学級で実際にやっている授業の進め方
私の学級では、こうしたゲームを単なるレクリエーションとして終わらせず、授業のねらいを決めて取り組んできました。
例えば、授業の最初にホワイトボードへ、
「自分の怒りスイッチを一つ見つけよう」
「友達と自分の感じ方の違いを一つ見つけよう」
「怒ったときに使えそうな方法を一つ見つけよう」
など、その日の活動で意識してほしいことを示します。

カードがあると「自分のこと」を話すきっかけになることがある
私自身、最初は「カードを見せるだけで、本当に子どもが自分の気持ちを話すのだろうか」と思っていました。
実際にやってみると、場面が具体的なので、
「これ、前にもあった」
「こういうときは僕も怒る」
と、自分の経験と結び付けて話す姿が見られました。

普段、「なんで怒ったの?」と聞かれると答えにくい子でも、目の前に具体的な場面があることで、話しやすくなる場合があります。
ただし、カードを使えば必ず話せるということではありません。
言葉で表現することが難しい場合は、指差し、表情カード、選択肢など、本人が使いやすい方法を選びます。
授業でできても、実際のトラブル場面ですぐ使えるとは限らない
ゲームの中では落ち着いて考えられても、実際に怒りが大きくなった場面では同じように行動できないことがあります。
そのため、授業で「先生に言う」「その場を離れる」という選択肢を知ったら、日常生活の中でも教師が、
「今、授業で考えた方法のどれか使えそう?」
と必要に応じて思い出せるように支援します。
できたときには、
「怒らなかったから偉い」ではなく、
「嫌だったことを先生に伝えられたね」「少し離れる方法を使えたね」
と、本人が使えた具体的な行動を確認します。
授業後の「振り返り」でゲームと実生活をつなぐ
アンガーマネジメントのゲームでは、活動そのものと同じくらい、最後の振り返りを大切にしています。
振り返りでは、例えば次のように問いかけます。
- 「今日、新しく気づいたことはあった?」
- 「友達と自分で違ったところは?」
- 「自分はどんなときに怒りやすそう?」
- 「次に困ったとき、どの方法なら使えそう?」
- 「今日のめあてについてどうだった?」
すべてを答えさせる必要はありません。
一つだけ選んだり、カードを指差したり、教師とのやり取りで整理したりしても構いません。
大切なのは、ゲームを「楽しかった」で終わらせず、自分の生活で使えそうなことを一つ持ち帰ることです。
自立活動での「めあて」と「振り返り」については、こちらでも詳しく解説しています。
自立活動ではどの項目と関連する?
アンガーマネジメントの活動は、子どもの実態や目標によって、自立活動の複数の区分・項目と関連する場合があります。
例えば、
- 2-(1) 情緒の安定に関すること
- 3-(2) 他者の意図や感情の理解に関すること
- 3-(3) 自己の理解と行動の調整に関すること
- 6-(5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること
などを関連付けることが考えられます。
ただし、「アンガーマネジメントをやるからこの項目」と一律に決めるものではありません。
子どもの困り感 → 目標 → 必要な項目 → 具体的な活動
の順で考え、個別の指導計画とつなげていきます。
自立活動は、6区分27項目を順番に学習したり、全項目を実施したりするものではありません。児童一人ひとりの状態や課題を把握し、必要な項目を選定して具体的な指導内容を設定します。
無料で使えるアンガーマネジメント教材
「まずはクラスの子どもたちに合うか試してみたい」という先生向けに、アンガーマネジメント教材の無料サンプルを用意しています。
怒りの場面カード無料サンプル
学校生活で起こりそうな具体的な場面を見ながら、「自分ならどのくらい嫌?」「どうする?」と話し合えます。
怒りレベルカード無料サンプル
自分の気持ちの大きさを、表情やレベルから選んで伝えるためのカードです。

アンガーマネジメント教材を使って授業準備を短縮したい方へ
無料サンプルより多くの場面を扱いたい場合は、授業で使えるアンガーマネジメント教材も用意しています。

場面カード、怒りレベルカード、許す/許さないカードなどを使いながら、この記事で紹介したゲームに取り組めます。
授業の進め方や声かけについて確認できる指導書も付けています。
🃏 アンガーマネジメントの授業を準備したい先生へ
アンガーマネジメント教材
怒りの大きさや感じ方、困ったときの行動について、具体的な場面から考えられる教材です。
アンガーマネジメント教材の詳しい内容を見る市販教材「みんなの怒りスイッチをさがせ!」も授業で活用できる
アンガーマネジメントをゲーム形式で扱える市販教材として、合同出版の『みんなの怒りスイッチをさがせ!』があります。
※以下にはAmazon・楽天市場へのアフィリエイトリンクが含まれています。
この教材には、日常生活で起こりそうな出来事を扱うできごとカード60枚のほか、怒りの温度計カード、行動カード、三重丸シート、振り返りシート、グランドルールなどが含まれています。
主に、
- 怒りの温度当てゲーム
- 3重丸ゲーム
- こんなときどうする?ゲーム
の3種類のゲームを通して、怒りの大きさや考え方、行動について話し合う構成になっています。
私の学級でも活用しましたが、場面が具体的なので「これ、あったことある」「自分ならこれは嫌」と、子どもが自分の経験について話すきっかけになる場面がありました。
教材をそのまま順番に進めることを優先するのではなく、その日の子どもの様子や目標に合わせてカードを選ぶと使いやすくなります。
また、特定の児童の実際のトラブルをそのまま全員の前で題材にするのではなく、少し離れた架空の場面から考えるなどの配慮も必要です。
アンガーマネジメントのゲームがうまくいかないときは
アンガーマネジメントの授業を行っても、すぐに実際の生活で使えるようになるとは限りません。
また、「深呼吸」「数を数える」など、一般的によく紹介される方法が本人には合わない場合もあります。
そのようなときは、子どもができないことを責めるのではなく、
- 活動のねらいが本人の困り感と合っているか
- 選択肢が本人に使えるものになっているか
- 怒りが大きくなっている最中に練習させようとしていないか
- 環境調整で減らせる負担はないか
- 授業で学んだことを日常場面で思い出せる支援があるか
を見直します。
「アンガーマネジメントをやっているのにうまくいかない」と感じている方はこちらの記事も参考にしてください。
まとめ|ゲームの目的は「怒らない子」をつくることではない
小学生へのアンガーマネジメントでは、怒りをなくしたり、大人が考える正解へ子どもを誘導したりすることが目的ではありません。
ゲームを通して、
- 自分はどんなことを嫌だと感じるのか
- 怒りの大きさはどのくらいなのか
- 同じ出来事でも友達の感じ方は違うこと
- 困ったときには複数の行動を選べること
を知っていきます。
そして授業の中で学んだ方法を、実際の学校生活で少しずつ使えるようにつなげていくことが大切です。
「先生に伝えられた」「少し離れられた」「自分の嫌だった気持ちを後から話せた」といった小さな変化も、その子にとって大切な学びです。
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参考資料
文部科学省「特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編」
市販教材:安藤俊介『みんなの怒りスイッチをさがせ! ゲームで身につくアンガーマネジメント』合同出版
ゆた先生|特別支援教育ブロガー
小学校教員としての実践経験と、特別支援学級での経験をもとに、SST・自立活動・教材アイデアなど「明日使える支援」を発信しています。
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