Iメッセージとは?特別支援学級でのSST実践|ロールプレイとカードゲームで身につくコミュニケーション指導

自立活動•SST

Iメッセージを使った自立活動|相手を責めずに気持ちを伝えるSST実践と無料カード

「嫌だったことをうまく伝えられず、大きな声になってしまう」
「友達とのトラブルになると、『お前が悪い!』と相手を責めてしまう」

特別支援学級で子どもたちと過ごしていると、こうした場面に出会うことがあります。

本人には伝えたい気持ちがあります。でも、「自分はどう感じたのか」「相手に何を伝えたいのか」を言葉にする方法をまだ十分に知らないことがあります。

そんなときに、自立活動やSSTで練習できる方法の一つが「Iメッセージ」です。

この記事では、私が特別支援学級で行ってきた実践をもとに、ロールプレイやカードを使ってIメッセージを学ぶ方法を紹介します。

📌 この記事で分かること

  • Iメッセージの基本的な考え方
  • 小学生に分かりやすく教える方法
  • ロールプレイの具体的な場面例
  • 無料で使える場面カード・感情カード
  • カードを使ったIメッセージ練習
  • 話すことが難しい子への支援
  • 自立活動6区分27項目との関連の考え方

Iメッセージとは?|「私」を主語にして伝える方法

Iメッセージは、自分の感じていることや困っていることを、相手を責める表現ではなく、自分自身の経験として伝える方法です。

例えば、順番を抜かされたときに、

「ずるい!」
「お前、横入りするなよ!」

と相手を責めるだけでは、さらに言い合いになることがあります。

そこで、例えば、

「ぼくは、順番を抜かされて嫌だった」
「次は並んでほしい」

のように伝えます。

この記事では、小学生が使いやすいように、

「私は・ぼくは ○○と感じた」
+
「できれば △△してほしい」

という形から練習します。

「〜してほしい」まで必ず言わせる必要はない

Iメッセージは、決まった文章を完成させるための練習ではありません。

例えば、

  • 「私は嫌だった」
  • 「それはやめて」
  • 「今は話したくない」
  • 「先生に来てほしい」

だけでも、本人にとって十分に意味のある表現です。

相手を納得させることや、自分の要求を必ず受け入れてもらうことが目的ではありません。

自分の状態や希望を、できるだけ安全な方法で伝えるための選択肢を増やすことを目指します。

Iメッセージを練習する3つの意味

① 自分の気持ちに気づく

「怒っている」だけでなく、「悔しかった」「嫌だった」「困った」など、自分の状態を整理する練習になります。

② 相手を責める以外の伝え方を知る

「お前が悪い」以外にも、自分がどう感じているかを伝える方法があることを知ります。

③ 自分がどうしたいかを考える

「やめてほしい」「少し待ってほしい」「先生に来てほしい」など、自分に必要な支援や希望を考えます。

まずは教師がモデルを見せる

Iメッセージの形を説明しただけで、すぐ使えるようになるとは限りません。

最初は、教師が短いモデルを見せます。

Iメッセージの基本的な伝え方を示した教材

先生A「使っていたペンを急に取られて、私は困ったよ」
先生A「使いたいときは、先に聞いてくれるとうれしいな」

長い説明より、具体的な場面で見せる方がイメージしやすくなります。

ロールプレイでIメッセージを練習する

教師のモデルを見たら、次は場面カードを使って考えます。

基本の流れは次の4ステップです。

  1. 場面を確認する:何が起きているかを見る。
  2. 自分の気持ちを考える:どんな気持ちになりそうか選ぶ。
  3. どうしたいか考える:相手や大人に何を伝えたいか考える。
  4. 必要なら試してみる:教師相手の短いロールプレイを行う。
Iメッセージを使ったロールプレイの例

場面1|順番を抜かされた

例えば、順番を待っていたのに、友達が前へ入ってきた場面です。

Iメッセージの例

「ぼくは、順番を抜かされて嫌だった」
「後ろに並んでほしい」

「悲しい」「腹が立った」「困った」など、感じ方は子どもによって違います。

教師が正解の感情を決める必要はありません。

場面2|友達にからかわれた

「私は、その言い方をされて嫌だった」
「やめてほしい」

ただし、継続的ないじめや危険な行為など、本人だけで解決させてはいけない場面もあります。

Iメッセージで上手に伝えることを子どもの責任にせず、教師が介入して安全を確保します。

場面3|借りたい物を断られた

「貸してもらえなくて、少し残念だった」
「使い終わったら貸してくれる?」

ここではもう一つ大切な学びがあります。

Iメッセージで伝えても、相手が希望どおりに行動してくれるとは限りません。

相手にも「今は貸したくない」「まだ使っている」という気持ちがあります。

「伝えること」と「必ず相手が応じること」は別だと扱います。

無料ダウンロード|Iメッセージの場面カード・感情カード

この授業で使える場面カードと感情カードを無料でダウンロードできます。

まずは1〜2場面だけ選び、目の前の子どもに合うか試してみてください。

① 場面カード

② 感情カード

カードを使って「Iメッセージゲーム」をする

ロールプレイに慣れてきたら、場面カードと感情カードを使ったゲーム形式にもできます。

以前は「Iメッセージバトル」として行っていましたが、誰の表現が一番上手かを競う必要はありません。

今は、複数の言い方を考える協力型の活動として行う方が使いやすいと考えています。

用意するカード

  • 場面カード:順番を抜かされた、からかわれた、物を壊された、など
  • 感情カード:嫌だった、悲しい、悔しい、困った、びっくりした、など
  • 必要に応じて希望カード:やめてほしい、待ってほしい、手伝ってほしい、など
Iメッセージ活動で使う感情カード

ゲームの進め方

  1. 場面カードを1枚選ぶ
  2. 「自分ならどんな気持ち?」を考える
  3. 感情カードから近いものを選ぶ
  4. 「どうしたい?」を考える
  5. 本人が使えそうなIメッセージを作る
  6. ほかの伝え方もあるか考える

例:順番を抜かされた

Aさん「私は嫌だった。後ろに並んでほしい」

Bさん「ぼくは困った。今ぼくの番だよって言う」

Cさん「自分で言いにくいから、先生に手伝ってもらう」

どれか一つを正解にする必要はありません。

「自分に使えそうな方法を増やす」ことが目的です。

話すことが難しい子にはどうする?

Iメッセージという名前から「文章で話せること」を目標にしがちですが、発話を必須にする必要はありません。

  • 感情カードを指差す
  • 「やめて」「たすけて」のカードを渡す
  • 教師が選択肢を二つ提示する
  • 文字で伝える
  • ジェスチャーを使う
  • 教師に代わりに伝えてもらう

など、本人にとって使いやすいコミュニケーション手段を選びます。

「Iメッセージの文章を言えたか」ではなく、「本人なりの方法で自分の状態や希望を伝えられたか」を見ます。

子どもの実体験をロールプレイするときの注意

友達とのトラブルなど、実際にあった出来事を教材にしたくなることがあります。

しかし、本人がまだつらい気持ちを抱えている場合には、無理にその場面を再現しません。

  • 最初は架空の場面を使う
  • 本人と無関係な登場人物で考える
  • 人前で実演させない
  • 途中でやめてもよいことを伝える

など、安心して参加できる方法に調整します。

実践後に見取りたい子どもの変化

Iメッセージの授業では、「完璧な文章を言えたか」だけを評価しません。

例えば、

  • 自分の気持ちをカードから選べた
  • 「嫌だった」と教師に伝えられた
  • 相手を責める前に少し止まれた
  • 自分がどうしてほしいか考えられた
  • 自分で言えないときに教師へ助けを求められた
  • 友達にも違う気持ちがあることに気づいた

といった変化を見取ります。

一度練習しただけで日常生活でも使えるようになるとは限りません。

実際の生活場面で使えたときに、

「嫌だったって伝えてくれたから、先生にも分かったよ」
「先生に助けを求められたね」

のように、その行動がどう役立ったかを具体的に返します。

Iメッセージを自立活動として行うときの考え方

Iメッセージを使った活動だからといって、自立活動の項目が自動的に決まるわけではありません。

まず、子どもの学習上・生活上の困難や実態から指導目標を考え、その目標に必要な項目を選びます。

例えば、次のような関連が考えられます。

目標例関連を検討できる項目例
自分の気持ちや困りごとに気づく3-(3) 自己の理解と行動の調整に関すること
相手の言葉を聞き、自分との違いに気づく3-(2) 他者の意図や感情の理解に関すること
自分の気持ちや希望を表現する6-(2) 言語の受容と表出に関すること
場面に応じた伝え方を選ぶ6-(5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること

※実際に選ぶ区分・項目は、子ども一人ひとりの実態と指導目標によって異なります。

文部科学省「特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編」

Iメッセージの授業で大切にしたい3つのこと

① 正しい文章を作ることをゴールにしない

「私は○○です。だから△△してください」と完全な形で言えなくても構いません。

「嫌だった」「やめて」「助けて」だけでも、本人が自分の状態を伝えられたことを大切にします。

② Iメッセージを言えば相手が従うとは教えない

Iメッセージは、相手を動かすための魔法の言葉ではありません。

自分の希望を伝えても、相手が「今は無理」と答えることもあります。

その場合に、

  • 少し待つ
  • 別の方法を相談する
  • 教師に助けを求める

といった次の方法も一緒に考えます。

③ 日常で使えた場面を見つける

授業時間だけ上手にできても、学校生活で使えなければ十分とはいえません。

実際に嫌なことがあったとき、

  • 「嫌だった」と伝えた
  • 「やめて」と言えた
  • 先生を呼べた
  • その場を離れられた

という姿を見つけ、本人と一緒に振り返ります。

まとめ|「上手な言葉」より「自分を伝える方法」を増やす

Iメッセージは、自分の気持ちや希望を相手に伝えるための一つの方法です。

大切なのは、全員が同じ文章を言えるようにすることではありません。

自分の気持ちに気づく
↓
自分がどうしたいか考える
↓
自分に使いやすい方法で伝える
↓
必要なら大人に助けを求める
↓
実際の生活でも使ってみる

という力を少しずつ育てていきます。

まずは、この記事で無料配布している場面カード・感情カードから、1つの場面を選んで試してみてください。

関連するSST・自立活動

✅ 自立活動・SSTの教材をまとめて準備したい方へ

支援級パック(自立活動・SST教材フルパック)

支援級パック(自立活動・SST教材フルパック)

SST・自立活動、感情理解、自己理解、コミュニケーション、アンガーマネジメントなど、特別支援学級で活用しやすい教材をまとめています。

※最新の収録内容・利用条件は販売ページでご確認ください。

👉 支援級パックの詳しい内容を見る

コメント

タイトルとURLをコピーしました