SSTロールプレイの具体例3つ|頼み方・断り方・順番待ちの進め方と声かけ

自立活動•SST

「SSTのロールプレイをしたいけれど、どんな場面から始めればよい?」「言葉の見本を示しても、子どもが話そうとしない」「練習したことを日常でどう支えればよいか迷う」。授業や活動を準備するとき、こうした悩みはありませんか。

この記事では、特別支援学級や放課後等デイサービスで取り上げやすい「頼み方」「断り方」「順番待ち」の3場面を例に、進め方と声かけを紹介します。

大切なのは、本人が使いやすい伝え方を選び、相手や大人に受け止めてもらう経験です。話す、指さす、カードを見せる、職員の見本を見るなど、参加方法を選べるようにします。

本文のやり取りは、使い方を説明するための架空例です。また、筆者が制作・販売する教材への案内を含みます。実際に取り組む際は、本人の希望や理解しやすい方法に合わせて調整してください。

SSTロールプレイとは?始める前に確かめたいこと

SSTのロールプレイは、日常の場面を設定し、相手とのやり取りを短く試す活動です。例えば、道具を借りる役と貸す役になり、知らせ方や応じ方を確かめます。

やってみることで分かりやすくなる場合もあれば、人前で演じることや、実際とは違う設定を理解することが負担になる場合もあります。全員に同じ形で参加を求めず、次の点を確認します。

  • 本人に関係する場面か:生活で困っていることや、本人が試したいことから選ぶ。
  • 見通しがあるか:誰と、何を、どのくらい行うかを短く伝える。
  • 参加方法を選べるか:演じる、見るだけ、カードを選ぶ、パスする方法を用意する。
  • 大人が応じられるか:援助や休憩の希望が出たときの対応を準備する。

実際に困らせたり、嫌なことを続けたりして練習の機会を作る必要はありません。本人が安心して試せる条件を整えます。

短いロールプレイの基本的な進め方

初めは一つの場面、一往復のやり取りから始めます。下の時間は進行例であり、最後まで実施することや、時間いっぱい取り組むことを目標にはしません。

段階時間の例大人がすること
意思と場面の確認1分活動内容を伝え、参加方法を確かめる
見本を見る1分職員同士や人形で、短いやり取りを示す
選んで試す2分本人が選んだ表現に、その場で応じる
確かめて終える1分使いやすかった方法や必要な援助を確認する

振り返りは、長く話したり書いたりする必要はありません。「この方法でよさそう?」「別の方法にする?」を、指さしや普段の合図でも確かめられます。振り返りを断ることもできます。

具体例①「頼み方」|知らせる方法と相手の応答を試す

場面と準備

消しゴムを借りたい、工作の道具を使いたい、分からないところを手伝ってほしい、といった場面を選びます。使う物と、本人が普段使う意思表示の手段を準備します。

頼み方のロールプレイで場面を考えるための既存教材画像

物を借りる練習なら、貸し手が使っている場合や貸せない場合もあります。借りられることを約束せず、断られたときに別の道具や大人の援助へつながる方法も用意します。

職員が示す短いやり取りの例

頼む役:「消しゴム、借りてもいい?」
応じる役:「今使っているよ。終わったら知らせるね」
大人:「待つ間は、予備の消しゴムも使えるよ」

言葉が負担になる場合は、道具を指さす、写真やカードを見せるなど、本人に合う方法を選びます。大人は「これを使いたい?」と確認して応じます。

本人が試すときのポイント

「貸してください」と正確に言い直すことや、相手の目を見ることを必須にしません。声が届きにくい場合は、大人が近づく、周囲の音を減らす、物やカードを見せられる位置を整えるなど、受け手側も調整します。

宿題などの援助を求める練習では、合図が出たら実際に手伝います。合図が出なくても、困っていることに気づいた大人が支援します。発話やお礼の成功を援助の条件にしないようにします。

場面を見ながら考える教材を探している方は、筆者作成の「こんなときどうする?」絵カード50種&発問指導書10種セットもご覧いただけます。後半で紹介する放課後等デイサービス向け活動パックとは別の商品です。

具体例②「断り方」|断る側と受け止める側を一緒に考える

場面と準備

まだ使っている物を貸してほしいと言われた、今は参加したくない遊びに誘われたなどの場面を扱います。本人が経験した嫌な出来事を、人前で再現させないようにします。

断り方のロールプレイで場面を考えるための既存教材画像

断る表現は「今は使っている」「今日はやめておく」「いやだ」「やめて」など、場面と本人に合うものを選びます。首を振る、手で合図する、カードを示す方法もあります。

職員が示す短いやり取りの例

誘う役:「一緒にゲームする?」
断る役:首を振る。
誘う役:「今日はやらないんだね」
大人:「ここで見ていても、別の場所で過ごしてもいいよ」

断る側だけでなく、断られた側がいったん止めることも見本にします。相手が残念に感じることはあっても、それを理由に参加や貸し借りを強制しません。

謝罪や理由を、断るための条件にしない

「ごめんね」「今は使っているから」と添えたい本人には、その表現も選べます。ただし、理由を説明できないと断れない、代わりの案を出さないと認められない、という扱いにはしません。

「やめて」が伝わっても相手が続ける場面では、大人が止めたり距離を確保したりします。子どもに、もっと上手に断ることだけを求めないことが大切です。

具体例③「順番待ち」|見通しと待つ間の過ごし方を選ぶ

場面と準備

遊具やゲーム、工作の道具など、実際に順番が必要な場面を選びます。誰の次か、いつ交代するかが伝わる表示や、待つ間にできることを用意します。

順番待ちのロールプレイで場面を考えるための既存教材画像

待ちにくさには、長さが分からない、音や混雑がつらい、何をすればよいか分からないなど、さまざまな条件が考えられます。まず、不要な待ち時間を減らせるか確認します。

職員が示す短いやり取りの例

大人:「今はこの人。その次があなたの番だよ」
本人:別の玩具を指さす。
大人:「これで遊んで待つんだね。順番が来たら知らせるよ」

列に立つ以外にも、近くの席で待つ、大人と一緒に待つ、別の活動をしながら知らせてもらう方法があります。実際に対応できる方法を提示します。

待てた長さだけで評価しない

短く試した後は、「どこで待つとよさそう?」「順番は分かった?」を確かめます。話すことが難しければ、場所や道具を選ぶ方法でも構いません。

時間を延ばすことを一律の目標にせず、本人の負担と生活上の必要性を見ます。見通しの表示が合わない場合や待つ負担が大きい場合は、職員が待ち方や活動の運営を調整します。

学校で使う教材をまとめて準備したい方へ

特別支援学級の授業で使う教材をまとめて確認したい方には、筆者作成の「自立活動・SST教材フルパック」をご案内しています。

絵カードやワークシートなど、使いたい教材が含まれているかを販売ページで確認してください。教材の選択、印刷、本人に合わせた準備は必要です。学校向けの商品と、次に紹介する放課後等デイサービス向けの商品は、収録内容や構成が異なります。

ロールプレイに参加しにくいときの調整

本人の様子見直す方法
人前で演じることを嫌がる職員と一対一、職員同士の見本を見る、人形を使う方法を選ぶ
言葉が出ない指さし、物やカードの提示、普段の合図で表せるようにする
場面設定が分かりにくい説明を短くし、本人が使う実物や分かりやすい写真を添える
途中でやめたい様子があるいったん止め、休憩や終了を確認する。理由の説明を求め続けない

役を演じることだけが参加ではありません。見る、選ぶ、今回は取り組まないという方法も含め、本人が表した意思を受け止めます。返答がないことを同意と決めつけないようにします。

練習を日常につなぐために、大人が共有すること

練習の場面でできたことが、そのまま日常で使えるとは限りません。疲れや周囲の音、相手、時間の余裕などが変わるため、日常でも必要な支援を続けます。

  • 本人が使いやすかった表現:言葉、指さし、物の提示、カードなど。
  • 大人の応答:何を確かめ、どう援助や休憩につなげたか。
  • 環境の条件:人数、待ち時間、道具の位置、見通しの示し方など。
  • 次に確かめること:本人の反応を見ながら、何を一つ調整するか。

記録には、「うまく頼めた」だけでなく、「本人がプリントを示した。大人が一緒に見ることを提案し、本人が困った箇所を指した」のように、見聞きした事実を残します。気持ちの推測は分けて扱います。

家庭や学校、事業所で共有するときも、同じ言葉を言わせることより、本人の表現をどう受け止めるかをそろえます。共有する情報は、必要な範囲と方法を確認します。

放課後等デイサービスで活動全体を考えたい方は、SST実践ガイドもご覧ください。絵を使った導入には、無料SST絵カードと指導資料も参考になります。

放課後等デイサービスで、教材と職員の応答を一緒に準備したい方へ

ロールプレイでは、子どもの伝え方に加えて、相手役となる職員がどう応じるかも大切です。「合図が出ないとき」「すぐには手伝えないとき」まで準備しておくと、担当者間で支援を相談する手がかりになります。

活動パックの「困ったら助けを求める」職員用進行案内。進め方、発話以外の合図への応答、環境調整の見本
「困ったら助けを求める」職員用進行案内の実物見本(PDF内p1〜2)。画像を押すと拡大できます。

放課後等デイサービス向け SST・コミュニケーション活動パック

筆者が制作した、子ども用教材と職員用ガイドをまとめた有料PDF教材です。12の活動を軸に、ワーク、絵カード、場面プリント、操作型教材、日常への接続ガイドなどを収録しています。

全163PDF・488ページ。PDF本数はファイル数であり、カード枚数やロールプレイの場面数ではありません。この記事の3つの具体例と、商品の12活動も別の区分です。

教材を一から作る作業を減らし、本人の参加方法や職員の応答を考える準備に使いたい方は、販売ページの見本をご確認ください。

価格・利用条件・ダウンロード方法は販売ページをご確認ください。印刷や本人に合わせた準備は必要です。教材の使用による特定の成果を保証するものではありません。

SSTロールプレイでよくある質問

同じ場面は何回練習すればよいですか?

全員に共通する回数は決めず、本人の希望、負担、生活で必要な場面を見ながら調整します。繰り返す前に、やり取りの方法や大人の応答が本人に合っているかを確認します。

悪い例も演じて見せた方がよいですか?

必須ではありません。怒鳴る、物を取るなどの演技が不安を招いたり、何を試す活動か分かりにくくなったりする場合があります。まずは本人が使えそうな方法と、それに応じる相手の姿を短く示します。

見ているだけでもよいですか?

はい。見本を見る、使いたいカードを選ぶ、途中で休むなどの方法を用意します。見ることを選んだ子に、後から必ず演じることを求めないようにします。

本人が使える方法と、大人の応答を一緒に準備する

頼み方・断り方・順番待ちは、日常の場面を考える入り口になります。本人に関係するものを一つ選び、短いやり取りから始めましょう。

大切なのは、本人の表現が援助や調整につながることです。発話以外の方法も受け止め、生活の中でも使いやすい条件を整えていきます。

学校の授業用教材をまとめて探している方は、自立活動・SST教材フルパックの収録内容もご確認ください。

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