【自立活動】「わたしのトリセツ」ワークシートで広がる自己理解※SST無料DLプリント付き

自立活動•SST

特別支援学級を担任していると、こんな場面に何度も直面しました。

「この子、今どんな気持ちなんだろう」
「どんな声かけをすれば安心できるんだろう」
「困っているのはわかるけど、何がどう困っているのかが伝わってこない」

言葉での表現が苦手な子どもほど、その困り感は「行動」として出てきます。パニック、突然の癇癪、教室からの飛び出し——その裏にある「その子なりの理由」を知らずに関わっていると、先生も子どもも消耗していきます。

この記事では、情緒学級の自立活動で実践してきた「わたしのトリセツ(自己理解シート)」をご紹介します。子どもが自分の好きなこと・苦手なこと・困ったときにどうしてほしいかを整理して周囲に伝えるためのワークシートです。無料PDFもダウンロードできます。

なぜ「自己理解」が特別支援学級の自立活動で重要なのか

自立活動は、子どもが自分らしく生活していくための土台を育む時間です。感情のコントロール・人との関わり・生活スキルなど幅広い内容を扱いますが、その中でも「自己理解」はあらゆる力の起点になります。

自分が何に困っているか、どんな状況でしんどくなるか、何があれば安心できるか——これが言葉にできると、子どもは助けを求められるようになります。逆にここが育っていないと、困りが「行動」として出てしまい、周囲が困惑するという悪循環に陥ります。

特別支援学級では「その子に合った支援」が基本ですが、その前提として「その子が自分自身を知っていること」が必要です。「わたしのトリセツ」は、そのための入り口となるワークシートです。

「わたしのトリセツ」ワークシートとは

子どもが自分を知り、周囲に伝えられるよう設計された自己理解シートです。以下の6つの項目で構成されています。

  • なまえ(またはニックネーム)
  • すきなこと・じかん
  • きらいなこと・にがてなこと
  • こんなとき、こうしてほしい(自分のトリセツ)
  • 自分のいいところ
  • これからできるようになりたいこと

イラスト入りで親しみやすく、低学年から高学年まで対応できます。1対1の個別指導でも、グループ活動でも使えます。

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💡 このワークシートの特徴
書くだけで終わらない設計になっています。「こうしてほしい」という項目が核心で、子どもが自分の対処ニーズを言語化できると、先生も保護者も具体的な支援が打てるようになります。

実際の活用の流れ

① 導入:年度当初・転入時の関係づくりに

新しい学期の始まりや、新しい支援体制がスタートするタイミングが最適です。まず先生が「先生のトリセツ」を書いて見せるところから始めましょう。

「先生はね、うるさい場所がちょっと苦手なんだよね。だから、静かに話してくれると嬉しいな。」

先生が自分の弱さやお願いを開示することで、子どもたちの緊張がほぐれ、「自分のことも話していいんだ」という安心感が生まれます。

② 実施:安心できる場で、急がずに

1対1でじっくり関わることが基本です。言葉にできない部分は選択肢から選んだり、イラストを指差してもOKです。「こう書くと先生に伝わるよ」と手伝いながら、子どもの中にある「言葉にならない気持ち」を一緒に形にしていきます。

あるとき、一人の子が「しっぱいしたときは何も言わずにちょっとそっとしておいて」と書いてくれました。それを見て担任の先生も指導のタイミングを意識できるようになり、それ以降の関係性が大きく変わりました。こういった「子どもの言葉」が、支援の設計図になります。

③ 活用:支援会議・保護者面談・個別指導計画に

完成したトリセツは、個別の支援計画や指導案の参考資料として非常に有効です。保護者に共有することで「学校での子どもの姿」が伝わりやすくなり、家庭との連携にもつながります。「これ、家でも貼っています」という声をいただいたこともあります。

また、自己理解が進むと「自分の苦手なこと」への対処法(SST)が必要になる場面が出てきます。「怒りのコントロールが苦手」とわかった子にはアンガーマネジメントのワークを、「友達への声掛けが苦手」な子には具体的なロールプレイが必要になります。トリセツで浮き彫りになった課題が、そのまま次の自立活動のテーマになる流れです。

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年間3回の「定点観測」として使う

「わたしのトリセツ」は一度作って終わりではなく、その時々の成長や心の変化をとらえる定点観測として年間を通じて活用できます。

私は年間3回のタイミングで取り組んできました。

時期目的活用のポイント
年度当初(4〜5月)自分を知る・信頼関係を築く支援の出発点として。個別指導計画の根拠資料に
2学期中頃(10〜11月)変化に気づく・支援の見直し1回目との比較で成長を実感。支援内容の調整に
学年末(2〜3月)1年の振り返り・自己評価次年度への引き継ぎ資料に。子ども自身の達成感に

2回目の記入で「にぎやかな中でも安心できる人がいると大丈夫」という表記が加わった子がいました。そこから、行事や合同活動でその子が安心できる人と一緒に活動できるよう配慮した計画を立てることができました。子ども自身の言葉が支援を変えた瞬間です。

継続で見られる子どもの変化

このワークを継続することで、現場では以下のような変化が見られています。

  • 自分の気持ちを整理して伝える力が育つ
  • 他者の「トリセツ」にも興味をもち、共感しようとする
  • 「こうしてほしい」と言えることで、感情の爆発が減る
  • 先生・支援員が「その子に合った関わり」を具体的に考えやすくなる

特に「こうしてほしい」という項目が埋まったとき、支援側の動きは劇的に変わります。「この子はパニックになったとき、声をかけないでほしい」「まず5分だけ一人にしてほしい」——こうした言葉が、感情的な対応を減らし、子どもと先生両方のストレスを下げます。

使う上で大切にしてほしいこと

この活動を使う上で一つだけ注意してほしいことがあります。「全部書かせる」ことが目的になると逆効果になることがあります。

大切なのは、「自分のことを大切にしていい」「先生はそれをちゃんと受け止めるよ」というメッセージを丁寧に届けることです。書けなくても、指差しでも、うなずくだけでも、それで十分です。

ワークシートは手段であって、目的ではありません。子どもと先生の間に「対話」が生まれることが、このシートの本当のゴールです。

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まとめ|「わたしのトリセツ」は自立活動の出発点

自己理解は、すべての支援の起点です。子どもが「自分ってこんな人」と気づき、それを周囲に伝えられるようになること——この力は、学校生活だけでなく、将来にわたって子どもを守り続けます。

「わたしのトリセツ」は、その出発点をつくるためのシートです。完璧に書き上げることよりも、ゆっくりと対話しながら進めることを大切にしてください。

子どもの言葉が、支援の設計図になる瞬間があります。そういう時間を、ぜひ積み重ねてください。

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