特別支援学級の自立活動|気持ちカードで感情を言葉にする「おしゃべりゲーム」の実践と効果

自立活動•SST


「イライラして暴れちゃった…」
「なんかモヤモヤするけど、うまく言えない…」

支援学級でよく見られる、気持ちの言語化のむずかしさ。

A君はゲームに負けて机をひっくり返してしまったり、Bさんは友達との小さなトラブルで泣き止まなくなったり…。

感情の爆発は、決して「わがまま」ではありません。まるで、言葉の代わりに体が動いてしまうかのように、表現手段が見つからない“助けて”のサインなのです。

今回は、

私の学級で実践して効果的だった【気持ちカードおしゃべりゲーム】をご紹介します。この活動は、自閉症や情緒の課題をもつ子どもたちの心理的安定につながる大切な学びです。

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この活動で育てたい力

  • 自分の気持ちを「言葉」にできる力(感情ラベリング) 「モヤモヤする」といった曖昧な感覚を、「悲しい」「悔しい」など具体的な言葉にすることで、自分の気持ちを客観的に捉える第一歩になります。
  • 気持ちを聞いてもらえる安心感 自分の気持ちを受け止めてもらえるという経験は、自己肯定感を育み、安心感を深めます。
  • 他者の気持ちにも気づける共感性 友達の体験を聞くことで、「自分だけじゃないんだ」と感じたり、相手の気持ちを想像するきっかけが生まれます。
  • 気持ちのコントロールのヒントを見つける力 自分の感情を話す中で、「こんな時、こうすると落ち着くんだ」という自分なりの対処法に気づくきっかけになります。

特別支援学校教育要領 学習指導要領解説 自立活動編を参考にしました。

「こころカルタ」を使った自立活動もこれらの力を育むのにおすすめです👇


活動の概要

活動名:気持ちカードおしゃべりゲーム

対象:小学校低学年〜中学年の支援学級(自閉症・情緒)

時間:10〜15分

用意するもの

  • 気持ちカード(表情イラストつき)
  • お話サイコロ(「いつ」「どこで」「だれと」など)※なくてもOK
  • 気持ちメーター(連動して使う場合)

活動の流れ(基本パターン)

このゲームは、子どもの状況や目標に合わせて様々な進め方が可能です。ここでは基本パターンと、応用例をご紹介します。

基本パターン

  1. カードを1枚引く
    先生:「今日の気持ちはどれかな?」と声をかけ、子どもに感情が描かれたカード(例:「イライラ」「かなしい」「うれしい」など)を引いてもらいます。
  2. その気持ちになったことがあるかを聞く
    先生:「その気持ち、なったことある?」と問いかけます。もし言葉が出てこなければ、「悲しい気持ちになった時、どんなお顔になるかな?」など、表情を促す質問も有効です。
  3. 自分の体験を話す
    「ゲームで負けたとき」「友達にからかわれたとき」など、子どもが自分の実体験を話します。子どもが話す内容に応じて、「そうだったんだね」「悔しかったね」など、共感的な相槌を打ちながら傾聴します。
  4. (自然に)対処法を聞く
    「そんなとき、どうしてるの?」と聞かれた子が、もし対処法を思いつかなければ、「先生はね、深呼吸するんだよ」とヒントを出すこともできます。→ 子どもが“自分なりのやり過ごし方”を話す機会になります。
  5. 気持ちメーターとの連動(発展)
    「そのとき、気持ちメーターだとどこかな?」→ 指さしで今の気分を表せるようになります。

応用パターン

子どもの理解度や目標に合わせて、以下のようなパターンも効果的です。

  1. 表情から気持ちを推測するパターン先生が提示した表情のイラストを見て、「この顔、どんな気持ちかな?」と子どもに尋ねます。子どもが答えた気持ち(例:「怒ってる」「悲しい」)に合わせて、対応する気持ちカードや気持ちメーターを選んでもらい、その気持ちになった体験を話してもらいます。
  2. 具体的な場面から感情を選ぶパターン(⭐︎おすすめです 。 「給食で嫌いなものが出た時」「友達に意地悪を言われた時」など、学校生活や日常生活で起こりうる場面が書かれたカードを引きます。その場面でどんな気持ちになるか(例:「嫌だな」「悲しい」)を子どもに選んでもらい、対応する気持ちカードや気持ちメーターを指差し、その気持ちになった具体的な体験を話してもらいます。

子どもたちの変化

  • 「気持ちメーターで指差す」→「先生と話す」という流れが自然に生まれた
    以前は不満げにメーターを指差すだけだった子が、「あのね、先生…」と自分から話しかけてくるようになりました。
  • ゲームで負けたり、あおられたりしたときに、「イライラだった」と自己表現できるようになった
    以前ならすぐに手が出てしまっていた子が、「今、イライラだった」と言葉で教えてくれるようになり、大きなトラブルになる前に気持ちを受け止められるようになりました。
  • 他の子の話にも「わかる!」と反応が出るようになった
  • 「そんなときどうしてる?」という問いに、自分の対処法を語れる子が増えた

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活動のコツと工夫

🔸安心できる雰囲気づくりが最優先

  • 話したくない子には無理に聞かず、「指差しだけ」でもOK
  • 「話したくなったら、いつでも教えてね」と優しく伝え、子どものペースを尊重することが大切です。指差しだけでも「よく教えてくれたね」と肯定的に受け止めるようにしましょう。

🔸先生も一緒にカードを引いて話す

  • 「先生もこんなときあったよ」と共有することで信頼感が育ちます。
  • 先生:「今日、先生はちょっとモヤモヤする気持ちを引いたよ。実はね…」と、自分の正直な気持ちを話すことで、子どもは「先生も同じなんだ」と感じ、安心して話せるようになります。

🔸「正解・不正解のない活動」と伝える

  • 感情に正解はありません。「そう思ったんだね」で十分です。
  • 「どんな気持ちも、みんな大切な気持ちだよ」と繰り返し伝え、感情を否定しない姿勢を示すことが重要です。「そう思ったんだね」と、まずはありのままを受け入れることが第一歩です。

特性別の対応のコツ|ASD・ADHD・場面緘黙の子への工夫

「気持ちカードおしゃべりゲーム」は、子どもの特性によって関わり方を調整することで、より大きな効果が生まれます。特性別に私が実践している工夫をまとめます。

ASD(自閉スペクトラム症)の子への工夫

ASDの子は「気持ちを言葉にする」こと自体が難しい場合があります。特に「なんとなくモヤモヤする」「言葉が出てこない」というケースが多いです。

  • 感情の「名前」を先に教える:「これが『悔しい』という気持ちだよ」と、感情と言葉を繰り返しマッチングさせます。
  • 視覚的な手がかりを増やす:表情イラストに加えて、体の反応(「胸がドキドキする」「頭が熱くなる」など)のカードを用意すると、自分の感情に気づきやすくなります。
  • パターン化した問いかけをする:毎回同じ順序で聞くことで、子どもが「次はこれを聞かれる」と見通しを持てます。

ADHD(注意欠如・多動症)の子への工夫

ADHDの子は、気持ちが高ぶっているときにカードを引くこと自体が難しい場合があります。衝動的な行動の後に振り返る「クールダウンとセット」での活用が効果的です。

  • クールダウン後に行う:興奮が落ち着いた5〜10分後に「さっきどんな気持ちだったと思う?」と振り返ります。感情が高ぶっている最中ではなく、落ち着いた状態で行うのが鉄則です。
  • 短時間で終わらせる:ADHDの子は長い活動への集中が難しいため、カード1枚・問いかけ2つ程度でさっと終わらせます。
  • 動きを取り入れる:カードをめくる・貼る・並べるなど、手を動かしながら行うと集中が続きやすくなります。

場面緘黙・言葉が少ない子への工夫

言葉で話すことが難しい子には、「話さなくてもできる」選択肢を必ず用意します。

  • 指差しだけでOKにする:「言わなくていいよ、ここを指差すだけでいいよ」と最初に伝えます。
  • 選択肢を減らす:5〜6枚のカードから選ぶのが難しい子には、2〜3枚に絞って提示します。
  • 答えを強要しない:「どれかな〜?」と軽い調子で聞き、答えが出なくても「そっか、また教えてね」で終わらせます。話さなかったことを問題にしないことが、長期的な信頼関係につながります。

家庭への波及効果|保護者と連携するポイント

「気持ちカードおしゃべりゲーム」の効果を最大化するには、学校だけでなく家庭でも同じ「気持ちの言葉」を使ってもらうことが重要です。

連絡帳での共有の仕方

授業での振り返りを連絡帳に書くことで、保護者が家庭でも同じ言葉を使って子どもと話しやすくなります。

例文:「今日の自立活動で『悔しい』という気持ちカードを選びました。ゲームで負けたときの気持ちを自分で言葉にできていました。家でも、うまくいかなかったときに『悔しいね』と声をかけてみてください。」

気持ちの言葉を家庭でも使ってもらう

学校で「悲しい」「悔しい」「モヤモヤ」という言葉を覚えても、家庭でその言葉が使われないと般化(日常化)しにくくなります。保護者に対して以下を伝えておくと効果的です。

  • 「今日どんな気持ちだった?」と毎日1回聞いてみること
  • 子どもが感情を言葉にしたら「教えてくれてありがとう」と受け止めること
  • 保護者自身も「お母さんは今日、嬉しい気持ちだったよ」とモデルを見せること

家庭でも使える簡単な気持ちカードゲームの紹介

保護者から「家でも同じことをしたい」という声があった場合は、以下のシンプルな方法をすすめています。

  1. 食事中や就寝前に「今日どんな気持ちがあった?」と聞く(カードなしでもOK)
  2. 子どもが答えたら「そうだったんだね」と受け止めるだけでいい(アドバイスや修正はしない)
  3. 慣れてきたら「その時、どうしてた?」と対処法を聞いてみる

「うまくできなくて当然」くらいの気軽さで、食卓の日常会話として取り入れてもらうのが長続きのコツです。

📖 参考資料

文部科学省「特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編」では、自立活動の区分「心理的な安定」において、「情緒の安定」「状況の理解と変化への対応」「障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲」が重要な指導内容として位置づけられています。気持ちカードを使った感情の言語化は、この「心理的な安定」区分の中核的なアプローチです。

▶ 特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編(文部科学省)

おわりに|この活動は「心の土台づくり」

支援学級での学びにおいて、学力や技能以上に大切なのは「自分の気持ちを知って、伝えて、整理できる力」です。

この活動は、その出発点です。たった10〜15分の短い時間でも、子どもたちの「心の土台」を育む大切な一歩になります。

毎日でなくても、心が動いた日の振り返りに、ちょっとしたSSTとして取り入れてみてください。きっと、子どもたちの笑顔と成長に出会えるはずです。

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感情のコントロールにはSSTが欠かせません。いくつか記事を書いていますので、こちらもご覧ください。👇

特別支援学校教育要領 学習指導要領解説 自立活動編を参考にしています。

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