本田秀夫先生が語る発達障害の本質と、特別支援学級の先生がすべき「環境調整」

自立活動•SST

本田秀夫先生が語る発達障害の本質と、特別支援学級の先生がすべき「環境調整」の具体策

本田秀夫先生が語る発達障害の本質と、特別支援学級の先生がすべき「環境調整」の具体策

「発達障害の子どもは、困らせているのではなく、困っている」——この言葉を聞いたことがありますか?

信州大学医学部教授・精神科医の本田秀夫先生が長年の臨床経験から語り続けているこの視点は、特別支援学級の担任として子どもたちと向き合う私にとって、大きな支えになっています。

この記事では、

本田先生の考え方の核心をまとめながら、「では実際の教室でどう動けばいいか」という具体的な手立てまでを現場目線でお伝えします。長年、特別支援学級の担任として感じてきた実感も交えながら書きました。

本田秀夫先生とはどんな医師か

本田秀夫先生は、信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部長を務める精神科医・医学博士です。

📋 本田秀夫先生 プロフィール概要

  • 1988年、東京大学医学部医学科卒業
  • 横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床・研究に従事
  • 信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部長(2014年〜)
  • 知的障害を伴わない自閉症が珍しくない割合で存在することを世界で初めて実証した疫学調査は国際的に評価を受けている
  • 英国の自閉症専門誌『Autism』編集委員
  • 特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事
  • 著書多数(『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』『学校の中の発達障害』など)

30年以上にわたり未就学の幼児から成人まで多数の発達障害のある人たちの診療に当たってきた、日本を代表する発達障害の専門家です。学術的な権威であるだけでなく、「当事者・家族・支援者にとって本当に役立つ情報を届ける」という姿勢で発信を続けていることから、保護者や教育現場からも厚い信頼を得ています。

私がとりわけ本田先生の考え方に惹かれるのは、発達障害を「欠陥」や「問題」としてではなく、「多数派向けに設計された社会の中で生きる少数派の種族」として捉え直している点です。この視点が、子どもたちへの関わり方を根本から変えてくれます。

本田先生が伝える発達障害の本質——「困っている子」という視点

「少数派の種族」という考え方

本田先生は発達障害を、「多数派向けに作られた社会の中で生きることを余儀なくされている少数派」として説明します。

ASDやADHDの子どもたちは、「暗黙のルールを読む」「雰囲気で察する」「同時に複数のことを処理する」といった、多数派が当たり前にできることが苦手です。しかし、それは彼らが「劣っている」からではなく、多数派向けに設計された環境に少数派として生きているからです。

本田先生の核心的な視点

発達障害の子どもたちは「困らせている子」ではなく、「困っている子」です。彼らは社会のルールや他者の見えない感情を自然に読み取ることが苦手なだけで、適切な形で「見せて・教えて」もらえれば理解できる力を持っています。問題は子どもの側にあるのではなく、その子に合った「見せ方」「教え方」ができていない環境の側にあることが多い。

この考え方を私が初めて知った時、長年のもやもやが一気に晴れる感覚がありました。「なぜあの子はできないんだろう」と悩んでいた視点が、「あの子には、どう見せてあげればいいんだろう」に変わった瞬間でした。

「〜が苦手」ではなく「〜よりも〜を好む志向性」

本田先生のもう一つの重要な視点が、発達障害の特性を「できないこと」としてではなく、「その子の志向性・特性」として捉え直すことです。

従来の見方本田先生の視点
「集団行動が苦手」「一人の時間・自分のペースを好む志向性がある」
「空気が読めない」「言語化されていないルールを推測するよりも、明示されたルールを好む」
「こだわりが強い」「一貫性・見通しを強く求める特性がある」
「落ち着きがない」「刺激への感度が高く、動くことで処理している」

この視点の転換は、担任としての声かけや支援のあり方を大きく変えます。「なんでできないの」という指導から、「この子はどんな見せてなら分かるか」という設計思考へのシフトです。

「特別支援学級に異動してきたばかりの頃、私は普通学級のやり方をそのまま持ち込んで、子どもたちを混乱させていました。本田先生の考え方に出会って初めて、『この子たちには、別の言語で話しかける必要がある』と気づきました。」

二次障害を防ぐことが最重要——叱られ続ける悪循環を断つ

二次障害とは何か

本田先生が一貫して訴えているのが、「発達障害の支援で最も重要なことは二次障害を予防すること」だということです。

二次障害とは、発達障害の特性そのものではなく、その特性が理解されない環境で生き続けた結果として生じる、不登校・うつ・不安障害・反社会的行動などを指します。

二次障害が生じる悪循環

特性への誤解→叱られ続ける→自己肯定感の低下→不登校・うつ・反社会的行動

本田先生の臨床では、大人になってから発達障害と診断された方々が「もっと早く知りたかった」と語るケースが多いといいます。子どものうちに特性を理解し、叱られ続ける悪循環を防ぐことができれば、その後の人生は大きく変わる——それが本田先生の臨床の原動力になっています。

「できている時」にこそ注目する

二次障害の予防に最も効果的なのは、問題が起きた時に指導する(事後指導)よりも、うまくいっている瞬間を見逃さず声をかける(予防的指導)ことです。

静かに順番を待てている時、友達に「かして」と言えた時、気持ちを言葉で伝えられた時——そういう「当たり前にできた瞬間」を「すごくかっこよくできているね。先生嬉しいな」と言葉にする。この積み重ねが、子どもの自己肯定感の土台になります。

本田先生が指摘するように、叱られ続けて自己評価が下がる悪循環を防ぐことが、支援の最優先課題です。「問題行動を減らす」ことより、「自分はできる」という感覚を育てることが先なのです。

スモールステップで「できた」を保証する

一度SSTで教えたからといって、すぐに日常で実践できるわけではありません。三歩進んで二歩下がるのが当たり前です。

昨日は手が出てしまったけれど、今日は「やめて」と一瞬でも言葉で言おうとした——その「プロセス」を強烈に褒めてください。結果よりも、変化の芽を見つけることが大切です。

この章のポイント

  • 二次障害(不登校・うつ等)の予防が発達障害支援の最重要課題
  • 「叱られ続ける→自己肯定感の低下」の悪循環を早期に断つ
  • できている瞬間に声をかける予防的指導が最も効果的
  • スモールステップで「できた!」を積み重ねることが土台になる

「環境を整えること」が先——学校でできる具体的な支援

支援の優先順位:環境調整→合理的配慮

本田先生は、学校での支援の順序について明確な考えを持っています。まず取り組むべきは「環境調整」——クラス全体にとって過ごしやすい環境を整えることです。そのうえで、それでもなお困難を感じる子に対して「合理的配慮」(個別の対応)を行う、という順序です。

例えば、口頭指示だけでなく視覚情報(絵・写真・文字)を併用することは、ASDの子だけでなくクラス全員にとって分かりやすい環境になります。「障害のある子が過ごしやすい環境は、多数派の子も過ごしやすい」という本田先生の言葉は、インクルーシブ教育の本質を突いています。

特別支援学級でできる具体的な環境調整

① 見通しを「見える化」する

一日のスケジュールをイラスト・文字でホワイトボードに提示する。急な変更がある場合は事前に「今日は〇〇が変わります」と視覚的に伝える。予定の変化への強い不安を持つ子には、「変わることもある」という事実を事前のソーシャルストーリーで教えておくことが有効です。

② ルールを「暗黙」にしない

「列に並ぶ時は前の人と少し離れる」「先生に話しかける前に『いまいいですか?』と聞く」——多数派には当たり前に見えるルールも、少数派の子どもたちには「言葉と絵で明示」してはじめて理解できることが多い。「察して当然」という前提を外すことが環境調整の第一歩です。

③ 感情に「名前」をつける

「むかむかする」「ドキドキする」「がっかりした」という感情を、その瞬間に言語化してあげる。自分の内側で何が起きているかを言葉にできると、行動で爆発する前に対処できるようになる。感情カードや感情メーターといった視覚ツールが役立ちます。

④ 「正解の行動」を具体的に教える

「ダメ」「やめて」という否定的な指示だけでは、では何をすればいいかが伝わりません。「その代わりに〇〇しよう」という代替行動をセットで伝えることが重要です。「手を出す前に、ことばで『かなしいよ』と伝えよう」というように。

📚 「見えないルールを見える化する」教材を作りました

本田先生の考える「環境調整」の核心——ルールの視覚化・感情の言語化・行動の代替提示——を、特別支援学級の現場で18年間実践してきた私がソーシャルストーリーとコミック会話の教材にまとめました。全10テーマ・指導書付きです。

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視覚化支援がなぜ有効なのか——ソーシャルストーリーとの接続

ASDの子どもが「見えないもの」に苦手さを持つ理由

本田先生が指摘するように、ASDや情緒課題のある子どもたちの多くは、視覚的な情報処理に優れている一方で、耳から入る言葉の指示や、目に見えない「相手の気持ち」を推測することが苦手です。

これは「気持ちを読もうとしない」のではなく、「読もうとしているが、読み取るためのツールを持っていない」状態です。ならば、見えないものを見える化してあげればいい——この発想から生まれたのが、ソーシャルストーリーとコミック会話です。

ソーシャルストーリーが「環境調整」になる理由

ソーシャルストーリーは、「この状況では何が起きるか」「周りの人はどう感じているか」「自分はどう動けばいいか」を、その子にとって分かりやすい言葉とイラストで論理的に伝えるツールです。

本田先生の言う「暗黙のルールを明示すること」「相手の気持ちを教えること」を、まさに実践している手法です。「言って聞かせる」のではなく、「見せて理解させる」——この違いが、少数派の子どもたちへの支援の核心です。

コミック会話が「感情の言語化」を助ける理由

コミック会話は、マンガの吹き出しを使って言葉(発話)だけでなく、頭の中の「思考」や心の中の「感情」を視覚化するツールです。

トラブルが起きた後に、子どもと一緒に紙の上でコミック会話を描きながら「その時、相手の心の中はどんなだったかな?」と問いかけることで、目に見えない感情の動きを客観的に整理する力を育てます。本田先生が強調する「相手の気持ちを理解して行動を選ぶ」力への橋渡しです。

この教材で扱う全10テーマ

特別支援学級でよく見られる「困り場面」を網羅した全10テーマを収録しています。

① おはなしのキャッチボール

② よていが かわったとき

③ こまったとき

④ れつに ならぶとき

⑤ あそびかたのキャッチボール

⑥ せんせいと おはなしするとき

⑦ きもちの つたえかた

⑧ 友だちを さそうとき

⑨ おもちゃの かしてね・どうぞ

⑩ まちがえたとき

いずれも「困り場面→感情の認識→代替行動の練習」という流れで設計されており、本田先生が重視する「二次障害の予防」と「自己肯定感の育成」を実践的に支援する構造になっています。

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本田先生の著書ガイド——まず読むべき4冊

本田先生の考え方をもっと深く知りたい方のために、特に入り口として読みやすいものをご紹介します。

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『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(SB新書)

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本田先生の「少数派モデル」の考え方が最も分かりやすくまとめられた一冊。発達障害の当事者・家族・支援者いずれにもおすすめ。「この本を中学校の課題図書にしてほしい」という声があるほど、読みやすく本質的な内容です。保護者への理解啓発にも使いやすい。

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『学校の中の発達障害——「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち』(SB新書)

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学校場面に絞って、困りごとへの対応策を詳しく解説。教室を飛び出してしまう子・不登校・友達関係のトラブルなど、支援学級の担任が直面しやすい場面が網羅されています。特別支援学級の担任として最初に読むべき一冊と言っても過言ではありません。

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『子どもの発達障害——子育てで大切なこと、やってはいけないこと』(SB新書)

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保護者向けに書かれた一冊ですが、担任として保護者の目線を理解するのに非常に役立ちます。「やってはいけないこと」のリストが具体的で、支援の優先度を整理する際に助かります。保護者との面談前に読むと視野が広がります。

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マンガ形式でASDの特性をケーススタディで解説。「この子の行動には理由がある」という視点が具体的な場面で分かるため、経験が少ない担任にとって入り口として読みやすい。個人の勉強にも、校内研修の教材としても使えます。

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🔗 参考・引用サイト


まとめ——「理解」を「実践」に変えるために

本田秀夫先生の考え方を整理すると、特別支援学級の担任として大切にすべきことが見えてきます。

本田先生の考え方から学べる支援の核心

  • 発達障害の子は「困らせている」のではなく「困っている」——視点の転換から始める
  • 特性を「苦手」ではなく「志向性・特性」として捉え直す
  • 二次障害の予防が最重要——叱られ続ける悪循環を早期に断つ
  • 「環境調整」が先——暗黙のルールを明示し、見通しを視覚化する
  • できている瞬間に注目する予防的指導が自己肯定感を育てる
  • 感情に名前をつけ、代替行動を具体的に教える

これらは「理想論」ではありません。18年間、支援学級の担任として子どもたちと向き合ってきた私が、実際に試行錯誤しながら辿り着いた実感と、本田先生の理論が重なるところです。

そして、「環境調整・視覚化・感情の言語化・行動の代替提示」を日々の授業で実践するための具体的なツールが、今回作成したソーシャルストーリー&コミック会話の教材です。

本田先生の本を読んで「そうだよな」と思った。でも、実際の授業でどう動けばいいか分からない——そんな先生に、この教材が少しでも役立てば嬉しいです。

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