「特別支援学級の授業参観、自立活動で何をしよう?」
「学年や実態が違う子どもたちが、一緒に取り組める活動はないかな?」
「保護者にも、自立活動で何を育てているのか伝わる授業にしたい」
特別支援学級の授業参観では、こうした悩みを感じることがあります。
私が授業参観で実践したのは、「楽しく体を動かそう」をテーマにした自立活動です。
体育館で、リレー・ボール遊び・ドッチビー・大縄跳びなどに取り組みました。
一見すると体育の授業にも見えます。しかし、自立活動として大切なのは、運動そのものではありません。
「この子は何に困っているのか」
「どんな力を育てたいのか」
「そのために、この活動をどう使うのか」
という順番で考えることが、自立活動では重要です。
この記事では、実際に授業参観で行った運動活動をもとに、活動のねらい・教師の支援・めあてと振り返り・授業参観で保護者に見てもらいたいポイントまで詳しく紹介します。
📋 この記事でわかること
- 授業参観で取り入れやすい運動を使った自立活動
- リレー・ボール・ドッチビー・大縄跳びの支援ポイント
- 運動を「体育」ではなく「自立活動」として行う考え方
- 「めあて→活動→振り返り」の進め方
- 子どもの実態に応じて活動を調整する方法
ほかにも、授業参観で取り入れやすい自立活動を紹介しています。
運動遊びを自立活動で行う意味|体育との違いは?
自立活動は、単に「体を動かす時間」「楽しく遊ぶ時間」ではありません。
子ども一人ひとりの学習上・生活上の困難を整理し、必要な力を育てるために、具体的な指導内容を設定します。
例えば、同じリレーに参加していても、子どもによってねらいは違います。
- 順番を見ながら自分の出番を待つ
- 友達に合わせてバトンを渡す
- 力の入れ方や走る速さを調整する
- うまくいかなかったときに気持ちを切り替える
- 困ったときに教師へ助けを求める
このように、活動は同じでも、何を学ぶために取り組むのかは一人ひとり異なります。
内容によって、自立活動の6区分のうち「身体の動き」「人間関係の形成」「心理的な安定」「コミュニケーション」「環境の把握」などが関連する場合があります。
「リレーをしたから自立活動」なのではありません。
子どもの実態に基づく目標があり、その目標を達成するための方法としてリレーを選ぶことで、自立活動としての意味が明確になります。
自立活動の目標や指導内容は、子どもの実態把握と個別の指導計画をもとに考えていきます。
個別の指導計画と自立活動のつなげ方はこちらで詳しく解説しています。
授業参観で行った自立活動|運動メニューと流れ
私の学級では、月に1〜2回程度、体育館で体を動かす自立活動を取り入れていました。
授業参観だけ特別な活動をするのではなく、普段から取り組んでいる活動を保護者に見ていただく形です。
慣れている活動であれば、子ども自身も流れを理解しているため、授業参観という普段とは違う環境でも参加しやすくなります。
授業の流れは、例えば次のように設定できます。
- ウォーミングアップ|体育館を歩く・走る
- 準備運動|ラジオ体操や簡単な体操
- 今日のめあてを確認する
- 運動活動①|リレー・ボール遊びなど
- 運動活動②|ドッチビー・大縄・ボッチャなど
- 振り返り|できたこと・気づいたことを確認する
活動を詰め込みすぎる必要はありません。
子どもの集中の続きやすさや、その日にねらいたいことを考え、メイン活動を1〜2種類程度に絞ると、落ち着いて取り組みやすくなります。
授業参観に使える自立活動① リレー
リレーは、走ることだけでなく、順番・見通し・友達とのやり取りなど、さまざまな姿を見ることができる活動です。

リレーで考えられるねらい
- 自分の順番や活動の流れを理解する
- 相手を見ながらバトンを受け渡す
- 自分の体の動きを調整する
- 友達と一緒に活動する経験を積む
- 勝敗や失敗によって気持ちが動いたときに、自分に合った方法で整える
教師の支援ポイント
① 流れを見えるようにする
走る場所、待つ場所、バトンを渡す場所などを、カラーコーンや床の印で分かりやすくします。
言葉だけで説明するよりも、教師が一度モデルを見せると理解しやすい子もいます。
② 難易度を調整する
全員に同じ距離・同じ速さを求める必要はありません。
歩いて取り組む、距離を短くする、教師と一緒に走るなど、子どもの実態と目標に応じて調整します。
その日の状態によっては、スタートの合図や記録など別の役割から参加する方法もあります。ただし、運動そのものが目標の場合は、別の役割だけで終わらせず、本人が取り組める運動課題を別に設定することも大切です。
③ 結果だけを評価しない
「速かったね」だけでなく、
「自分の順番を見て待てたね」
「相手を見てバトンを渡せたね」
「失敗したあと、もう一度挑戦できたね」
など、個々の目標に沿った姿を具体的に伝えます。
授業参観に使える自立活動② ボール遊び
ボール遊びは、投げる・転がす・受け取る・的を狙うなど、子どもの実態に応じて活動を調整しやすいのが特徴です。

ボール遊びで考えられるねらい
- 目と手を使いながらボールを操作する
- 力の強さや方向を調整する
- 相手の位置を見て投げる
- 成功・失敗を経験しながら取り組みを続ける
教師の支援ポイント
① ゴールを具体的にする
「ボールで遊ぼう」ではなく、「赤い的に当てよう」「先生の胸のところに投げよう」のように、何を目指すのかを分かりやすくします。
② 道具を調整する
大きさ・重さ・硬さが違うボールを用意すると、子どもが扱いやすい道具を選べます。
的との距離も、成功しやすい位置から始めて徐々に調整します。
③ 安全面に配慮する
柔らかいボールを使い、人に向けて強く投げないことや、投げる方向をあらかじめ決めておきます。
ボールが飛んでくることに不安が強い子には、転がす活動から始めるなど、本人が安心して参加できる方法を考えます。
授業参観に使える自立活動③ ドッチビー
ここで紹介するドッチビーは、相手に当てるゲームではなく、2〜3人でディスクを投げ合う活動として行います。

ドッチビーで考えられるねらい
- 相手の位置を確認して投げる
- 相手が受け取りやすい強さを考える
- 「いくよ」「もう一回」など必要なやり取りを経験する
- 投げ方を試しながら自分の体の使い方を調整する
教師の支援ポイント
① 声を出すことを強制しない
「いくよ」と声をかけることは一つの方法ですが、すべての子に発声を求める必要はありません。
相手を見る、手を挙げる、うなずくなど、本人が使いやすい方法で「これから投げる」ことを伝えられればよいでしょう。
② 相手が受け取りやすい投げ方を一緒に考える
「もっと優しく投げよう」と指示するだけではなく、実際に受け取る側の経験も通して、どのくらいの強さや高さなら受け取りやすいかを考えます。
③ 試行錯誤できる時間をつくる
思った方向に飛ばないときも、すぐに教師が正解を教えず、「持ち方を変えたらどうなるかな?」などと問いかけ、自分で試せるようにします。
授業参観に使える自立活動④ 大縄跳び
大縄跳びは、縄を見る・タイミングを取る・体を動かすといった複数の動きを組み合わせる活動です。

大縄跳びで考えられるねらい
- 縄の動きを見ながらタイミングを取る
- 両足で跳ぶなど、自分の体を調整する
- 少し難しい課題にも、自分に合った方法で取り組む
- 友達と一緒に活動する
教師の支援ポイント
① 「跳べる・跳べない」だけで評価しない
大縄跳びは難易度の高い活動です。
縄をまたぐ、止まった縄を跳ぶ、ゆっくり揺れる縄を跳ぶ、回っている縄に入るなど、段階を細かく分けます。
② 無理に挑戦させない
「勇気を出せばできる」と考えるのではなく、その子にとって何が難しいのかを見ます。
縄の動きが怖い、タイミングが分からない、周囲の声が気になるなど、背景によって支援方法は変わります。
③ 安全なスペースを確保する
縄の周囲に十分なスペースを取り、待つ場所も分かるようにしておきます。
ボッチャを取り入れたい場合はこちらの記事も参考にしてください。
「めあて→活動→振り返り」で自立活動としての学びをつなぐ
運動活動を自立活動として実施するとき、私が大切にしているのが「めあて」と「振り返り」です。
ただし、全員に同じめあてを設定する必要はありません。
同じ活動でも、一人ひとりの目標が違う場合には、子どもに分かる形でそれぞれのめあてを確認します。
活動前|今日のめあてを確認する
めあては、子どもが活動中に意識できる程度に、具体的で短い言葉にします。
「じゅんばんを見て待つ」
「相手を見て投げる」
「困ったら先生に伝える」
「失敗しても、もう一度やってみる」
文字だけでは理解しにくい場合は、写真・イラスト・実物を使って確認します。
「友達と協力しよう」「頑張ろう」といった抽象的な言葉だけでなく、活動中にどんな姿になればよいか分かる表現にすることがポイントです。
活動後|結果ではなく、自分の取り組みを振り返る
振り返りでは、「何回跳べた?」「勝った?」だけを確認するのではなく、最初に設定しためあてに戻ります。
「今日できたことは?」
「どこが難しかった?」
「どんな方法だとうまくいった?」
「次にやるなら、どうしたい?」
と問いかけます。
言葉で説明することが難しい子なら、表情マークから選ぶ、写真を指差す、三段階で選ぶなどの方法でも構いません。
振り返りは文章を書かせることが目的ではなく、自分の取り組みに気づくための時間です。
めあてと振り返りについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
子どもの実態に応じて活動を調整する
授業参観では保護者が見ているため、「全員同じ活動を最後までやらせなければ」と考えてしまいがちです。
しかし、特別支援学級の自立活動では、子どもの実態に合わせて参加方法を調整すること自体が大切な支援です。
待つことが難しい場合
床に待つ位置を示す、自分の番を写真や順番カードで見せる、待ち時間を短くするなどの方法があります。
音や人の多さが負担になる場合
活動場所を少し離す、参加人数を減らす、休憩できる場所を用意するなど、刺激量を調整します。
勝ち負けで気持ちが大きく動く場合
勝敗をなくす、個人記録の更新を目標にする、チーム全員で達成するルールに変えるなどの方法があります。
運動そのものに不安がある場合
教師と一緒に行う、距離を短くする、道具を変更する、最初は見学してから一部参加するなど、段階を細かくします。
「できないから参加させない」でも、「みんなと同じことを何とかやらせる」でもなく、その子が目標に向かって参加できる方法を考えることが大切です。
授業参観で保護者に見てほしいのは「上手さ」だけではない
授業参観では、子どもが縄を何回跳べたか、ボールを上手に投げられたかといった分かりやすい成果に目が向きやすくなります。
しかし、自立活動でぜひ見ていただきたいのは、その結果に至るまでの姿です。
- 自分の順番を確認できた
- 苦手な活動にも自分なりの方法で参加できた
- 友達を見ながら道具を渡せた
- 困ったときに助けを求められた
- 失敗したあとに気持ちを整えて戻れた
- 活動後に自分のできたことを振り返れた
こうした小さな変化は、普段から関わっている教師だからこそ気づきやすいものです。
授業の最初や最後に、
「今日は一人ひとり、自分のめあてを持って活動しています」
「できた回数だけでなく、待ち方や友達との関わり方にも注目していただけるとうれしいです」
と保護者に伝えておくと、自立活動で何を育てているのかがより伝わりやすくなります。
継続して取り組むことで変化を捉えやすくなる
今回紹介した運動活動は、授業参観だけで実施していたわけではありません。
私の学級では月に1〜2回程度継続して取り組んでいました。
同じ活動を繰り返すことで、
- 活動の流れが分かり、自分から準備できるようになった
- 以前は難しかった動きが少しずつできるようになった
- 必要な声かけが減ってきた
- 友達とのやり取りが増えた
- 自分に合う方法を選べるようになった
といった変化を捉えやすくなります。
重要なのは、「継続すれば必ずできるようになる」と考えることではありません。
同じ活動の中で子どもの姿を継続して観察し、支援方法が合っているかを見直していくことに意味があります。
まとめ|授業参観の自立活動は「何をするか」より「何を育てるか」
今回は、特別支援学級の授業参観で実践した、運動を取り入れた自立活動を紹介しました。
リレー、ボール遊び、ドッチビー、大縄跳びなどは、どれも特別な活動ではありません。
しかし、
子どもの困り感を捉える
↓
育てたい力を決める
↓
その力につながる活動を選ぶ
↓
活動中の姿を観察する
↓
振り返り、次の支援へつなげる
という流れを持つことで、自立活動としてのねらいが明確になります。
授業参観だからといって、特別に華やかな活動を用意する必要はありません。
普段取り組んでいる活動の中で、「以前よりできるようになったこと」「自分なりに工夫していること」を保護者に見てもらう。
それも、特別支援学級の授業参観の大切な形の一つだと考えています。
✏️ 活動後の振り返りやSSTにもつなげたい方へ

SSTカード「こんなときどうする?」
運動活動の中で起きた「順番を待つ」「友達とのやり取り」「うまくいかなかったときの対応」などを、別の場面に置き換えて考えるSSTにも活用できます。
✅ 自立活動・SSTの教材をまとめて準備したい方へ

支援級パック(自立活動・SST教材フルパック)
SST・自立活動、感情理解、自己理解、コミュニケーション、アンガーマネジメントなど、特別支援学級で活用しやすい教材をまとめています。
※最新の収録内容・利用条件は販売ページでご確認ください。
👉 支援級パックの詳しい内容を見る








コメント