「特別支援学級の授業参観、何をしよう?」
「学年や実態が違う子どもたちが、一緒に取り組める活動はないかな?」
「保護者に子どもの成長が伝わる授業にしたい」
そんなときに取り入れやすい活動の一つが、絵の具スタンプを使った「ありがとうの花束アート」です。
スタンプを押す、色を選ぶ、花を配置する、メッセージを添えるなど、活動を細かく調整できるため、学年や実態が異なる子どもが一緒に取り組みやすい活動です。
また、「お母さんへのプレゼント」と限定せず、
「ありがとうを伝えたい人に、花束を作ろう」
とすることで、家族、友達、先生、自分自身など、子どもが相手を選べる活動にできます。
この記事では、実際に行った花束アートをもとに、45分の授業展開、準備物、一人ひとりの実態に応じた支援、自立活動として行うときの考え方まで詳しく紹介します。
📋 この記事でわかること
- 授業参観で使える「ありがとうの花束アート」の進め方
- 45分授業の具体的な流れ
- 実態に応じて活動を調整する方法
- この活動を自立活動として行うときの目標設定
- 感覚面・書字・手先の操作などへの配慮
- 家庭状況の多様性に配慮したテーマ設定
こちらが完成作品の一例です。

ほかの授業参観向け自立活動を探している方はこちらも参考にしてください。
花束アートを自立活動として行うときに大切なこと
最初に確認しておきたいのが、「花束を作れば自立活動になる」というわけではないことです。
例えば、色や形を工夫して作品を表現すること自体が主な目標であれば、図画工作として位置付けることが自然な場合もあります。
一方で、子どもの学習上・生活上の困難を踏まえて、
- 手指を使った作業を順序立てて行う
- 苦手な感触に対して、自分に合う方法を選ぶ
- 活動の手順を見ながら見通しを持って取り組む
- 自分で色や道具を選択する
- 伝えたい相手を決め、自分なりの方法で思いを伝える
といった個別の目標があり、その目標を達成する方法として花束アートを取り入れるのであれば、自立活動としてのねらいが明確になります。
「花束を作る」ことから目標を考えるのではなく、
子どもの実態 → 育てたい力 → 活動
という順番で考えることが大切です。
また、複数の子どもが同じ花束アートに取り組んでいても、一人ひとりの自立活動の目標は同じとは限りません。
個別の指導計画と自立活動のつなげ方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
花束アートで考えられる自立活動のねらい
この活動では、子どもの実態によって、例えば次のような目標を設定できます。
| 子どもの実態 | 目標の例 | 支援の例 |
|---|---|---|
| 絵の具などの感触に強い苦手さがある | 自分が取り組みやすい道具や方法を選ぶ | スポンジ・道具・手袋など複数の方法を用意する |
| 作業の順番が分からなくなりやすい | 手順表を確認しながら活動を進める | 「①選ぶ→②押す→③貼る」などを写真で示す |
| 手先の細かな操作が難しい | 自分に合った道具を使って作業する | 大きいスタンプ・事前に切ったパーツを用意する |
| 自分で決めることが難しい | 二つ程度の選択肢から色や材料を選ぶ | 色カードや実物を見せて選択する |
| 気持ちを言葉で伝えることが難しい | 自分に合った方法で「ありがとう」を表現する | 言葉・絵・シール・選択式メッセージなどから選ぶ |
自立活動の6区分27項目では、子どもの実態や目標によって、例えば「環境の把握」「身体の動き」「コミュニケーション」「心理的な安定」などとの関連を検討できます。
ただし、「この活動はこの区分」と先に決めるのではありません。必要な項目は、児童一人ひとりの実態から選びます。
準備物|花束アートに必要なもの
| 材料 | 準備のポイント |
|---|---|
| 画用紙(A4またはB4程度) | 1人1枚。白や薄い色が使いやすい |
| 絵の具 | 赤・ピンク・黄・緑など数色。選択肢を増やしすぎない |
| スタンプ | スポンジ、ラップの芯など。持ちやすさも確認する |
| 花・葉のパーツ | 切ることが難しい子が使えるよう事前に準備 |
| クレヨン・色鉛筆 | 茎・リボン・背景などに使用 |
| メッセージカード | 自由記述・なぞり書き・選択式など複数用意すると使いやすい |
| 新聞紙・テーブルカバー | 机や床の汚れを防ぐ |
| 手袋・道具 | 絵の具に直接触れることが負担な子の選択肢として用意 |
事前準備① 花や葉のパーツを準備しておく
授業参観では時間が限られます。
切ること自体が目標ではない子については、花や葉のパーツを事前に用意しておくと、その子に取り組んでほしい活動へ時間を使いやすくなります。
事前準備② 絵の具は教師が試しておく
スタンプは、水分が多すぎると輪郭が出にくくなります。
使うスポンジや絵の具で事前に一度試し、子どもにも実物で押し方を見せられるようにしておくとスムーズです。
事前準備③ 一人ひとりの支援方法を決めておく
授業参観だからといって、当日だけ特別な支援を用意するのではなく、普段の学習で使っている方法を基本にします。
- どこまで自分で行うのか
- どこで教師が支援するのか
- どんな視覚支援を使うのか
- 途中で休みたくなったらどうするのか
を事前に整理しておくと、授業中に必要以上の声かけをせずに済みます。
授業の流れ|45分で行う花束アート
実際の授業では、次のような流れで進められます。
1.導入・今日の活動を確認する(5分)
最初に完成作品を見せ、今日作るものを確認します。
「今日は、ありがとうを伝えたい人に花束を作ります」
「家族でも、友達でも、先生でも、自分でもいいですよ」
と伝えます。
「誰に作るの?」と全員の前で答えさせる必要はありません。相手を言いたくない場合は、本人の中で決めるだけでも構いません。
手順表を使う場合は、この段階で全体の流れも確認します。
2.花束の土台を作る(5〜10分)
クレヨンで茎・リボンなどを描いたり、あらかじめ用意したパーツを貼ったりします。
すべての子に同じ方法を求めず、
- 自分で描く
- 見本を見ながら描く
- 型紙を使う
- 準備したパーツを貼る
など、目標に合わせて選べるようにします。

3.絵の具スタンプで花を作る(15〜20分)
好きな色を選び、スタンプで花を表現します。
- 一色を選んで押す
- 複数の色を組み合わせる
- 花の型紙の上に押す
- パーツを貼り、周囲にスタンプする
など、取り組み方は複数あって構いません。

絵の具に触れることへの抵抗が強い場合は、無理に直接触れさせるのではなく、スポンジ・持ち手付きスタンプ・手袋など、本人が使いやすい方法を用意します。
「苦手だから経験させる」のではなく、「どうすれば自分も参加できるか」を一緒に探すことを大切にします。
4.「ありがとう」のメッセージを添える(5〜10分)
作品ができたら、伝えたい内容を考えます。
例えば、
- 「ありがとう」
- 「いつもありがとう」
- 「いっしょにあそんでくれてありがとう」
- 絵やマークだけで表す
など、その子に合った方法で構いません。
書字そのものが目標ではない場合には、なぞり書き、選択式カード、教師による代筆なども使えます。
5.作品紹介・振り返り(5分)
最後は作品を見ながら、短く振り返ります。
「どこを自分で選んだ?」
「今日できたことは?」
「どのやり方が使いやすかった?」
「気に入っているところはどこ?」
など、その日の個別目標に合わせて問いかけます。
全員の前で発表することが負担なら、教師との1対1の振り返りや、指差しで答える方法でも構いません。
授業参観で大切にしたい4つの支援
① 完成作品を全員同じにしない
見本を示すことは、活動の見通しを持つために役立ちます。
一方で、見本と同じ作品を作ることがゴールになると、子ども自身が選んだり工夫したりする余地がなくなります。
「こんな作品を作ります」という見通しは示しつつ、色・配置・方法には選択肢を残すことを意識します。
② 選択肢を増やしすぎない
「好きな色を自由に選んでいいよ」と言われると、かえって決められなくなる子もいます。
その場合は、
「赤と黄色、どっちにする?」
のように二択から始めます。
③ 授業参観だからといって支援を減らさない
保護者が見ていると、「できるだけ一人でやらせたい」と考えたくなるかもしれません。
しかし、その子が普段使っている視覚支援や道具を授業参観の日だけ外す必要はありません。
必要な支援を使いながら自分の力を発揮している姿も、大切な成長の姿です。
④ 保護者には「作品」だけでなく学習のねらいも伝える
作品だけを見ると、「きれいにできた」「上手にできた」という評価になりやすくなります。
授業の最初に、例えば、
「今日は、一人ひとり自分の目標を持って取り組んでいます。完成作品だけでなく、選ぶ姿、手順を確認する姿、困ったときに支援を使う姿なども見ていただければと思います」
と伝えておくと、自立活動で何を見てほしいのかが保護者にも伝わりやすくなります。
家庭状況に配慮して「母の日」ではなく「ありがとうの日」にする
この活動は、母の日の時期にも取り入れやすい花束制作です。
ただし、私は「お母さんにプレゼントを作ろう」と全員一律には設定しないことが大切だと考えています。
家庭の形や、子どもと家族との関係はさまざまです。
例えば、
- 母親と暮らしていない
- 家族との関係について扱われることに負担がある
- 誰に作るかを人前で話したくない
といった子どもがいる可能性があります。
そこでテーマを、
「ありがとうを伝えたい人に花束を作ろう」
と広げます。
贈る相手は、家族に限定しません。
- 家族
- 友達
- 先生
- 学校で関わっている人
- 自分自身
など、本人が選べるようにします。
また、誰に渡すのかを教師や友達に公開する必要もありません。
「みんなに当てはまる家庭の形」を教師が前提にしないことも、安心して参加できる授業をつくるための大切な視点です。
授業参観で使える保護者向けメッセージ例
作品を掲示したり持ち帰ったりするときには、活動のねらいを短く添えると、保護者にも学習内容が伝わりやすくなります。
本日はご参観ありがとうございました。
今日の活動では、一人ひとりが自分に合った方法で色や材料を選び、「ありがとう」の気持ちを花束で表現しました。
完成した作品だけでなく、選ぶこと、手順を確認すること、自分に合う方法で取り組むことも大切な学習です。
ぜひご家庭でも、作品を見ながら今日の活動についてお話しいただければと思います。
振り返りまで入れると、自立活動の学びが見えやすくなる
授業参観では作品を完成させることに時間を使いがちですが、最後に数分でも振り返りの時間を取ることをおすすめします。
例えば、
- 自分で選べたものは何だったか
- 難しかったところはどこだったか
- どんな支援があるとやりやすかったか
- 気に入っているところはどこか
を確認します。
振り返りの方法も、発表だけではありません。
- ○をつける
- 表情マークを選ぶ
- 作品の気に入った場所を指差す
- 教師に一言だけ伝える
など、その子に合う方法を選べます。
自立活動の「めあて」と「振り返り」についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
まとめ|授業参観は完成作品より「取り組む姿」を見てもらおう
今回は、特別支援学級の授業参観で取り入れやすい「ありがとうの花束アート」を紹介しました。
この活動のよさは、見栄えのする作品を作れることだけではありません。
- 色や材料を選ぶ
- 手順を確認する
- 自分に合った道具を使う
- 必要な支援を受けながら活動する
- 自分なりの方法で思いを表現する
- 自分のできたことを振り返る
など、一人ひとりの実態に応じてさまざまな学習につなげられます。
ただし、繰り返しになりますが、花束アートそのものが自立活動なのではありません。
子どもの困り感を捉える
↓
一人ひとりの目標を決める
↓
その目標に合う活動・支援方法を選ぶ
↓
活動中の姿を見取る
↓
振り返って次の支援につなげる
という流れを大切にしてください。
授業参観だからといって、全員が同じ方法で同じ作品を完成させる必要はありません。
「この子は、この方法なら自分の力を発揮できる」という姿を保護者に見てもらうことも、特別支援学級の授業参観の大切な意味の一つだと思います。
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📖 参考資料
自立活動では、6区分27項目をすべて一律に指導するのではなく、子どもの実態に応じて必要な項目を選び、関連付けて具体的な指導内容を設定します。
▶ 特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編(文部科学省)







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