放課後等デイサービスの運動遊び12選|室内でできる活動と参加しやすい工夫

自立活動•SST

「室内で身体を動かせる遊びを増やしたい」「運動が好きな子も、音や動きが苦手な子も参加しやすい活動を考えたい」。放課後等デイサービスの活動を計画するとき、このように悩むことはありませんか。

運動遊びでは、活動の種類だけでなく、本人がやってみたいと思えること、無理のない姿勢や方法を選べること、安全に休めることを大切にしたいものです。同じボール遊びでも、座る位置や道具、距離、音の条件を変えると、参加の仕方を広げられます。

この記事では、放課後等デイサービス向けの室内でできる運動遊び12選を紹介します。準備と進め方に加え、座って参加する方法、感覚面への配慮、活動後の記録と個別支援計画へのつなげ方までまとめました。

筆者は小学校の特別支援学級で、ボッチャやドッチビーなどを授業に取り入れてきました。ここで紹介する12例は、学校での経験も踏まえて整理した放課後等デイサービス向けの活動提案です。すべてを放デイで実践・検証した記録ではありません。子どもの実態や事業所の環境に合わせて調整してください。

この記事の使い方

  • 12例をすべて行う必要はありません。本人が気になる活動を一つ選び、短く試します。
  • 「立つ・座る」「近くから・遠くから」「やる・見る・休む」を選べるようにします。
  • 活動後は、できた回数だけでなく、本人の意思と参加しやすかった条件を記録します。
  1. 放課後等デイサービスの運動遊びで大切にしたいこと
  2. 運動遊びを始める前の安全確認
  3. 本人の意思と感覚面に合わせて参加方法を選ぶ
    1. 「やる・見る・休む」を途中でも選べるようにする
    2. 音・触り心地・動きの速さを調整する
  4. 室内でできる運動遊び12選
    1. 1.コロコロボウリング
    2. 2.柔らかいボールの的入れ
    3. 3.ボッチャ風の目標寄せ
    4. 4.テーブルでボールころがし
    5. 5.ドッチビーの的当て
    6. 6.床のラインたどり
    7. 7.色の目印タッチ
    8. 8.まねっこポーズ
    9. 9.音を選べるリズム遊び
    10. 10.タオルでボールゆらし
    11. 11.軽い道具のお届け遊び
    12. 12.選べるミニサーキット
  5. 「難しい」「やりたくない」が見られたときの調整
  6. 運動遊びを5領域の視点で振り返る
  7. 活動後の記録例|事実・本人の意思・調整を残す
    1. 記録例1.座る方法を選んだ場面
    2. 記録例2.音の条件を変えた場面
  8. 記録から個別支援計画につなげる具体例
  9. 運動遊びの工夫を職員同士で共有する
  10. よくある質問
    1. 狭い室内でも運動遊びはできますか?
    2. 運動が苦手な子には、簡単な活動から始めればよいですか?
    3. 座って参加してもよいですか?
    4. 見学を選んだ子には、何度も参加を勧めた方がよいですか?
    5. この12例を行えば、運動機能の改善につながりますか?
  11. まとめ|本人が選べる運動遊びを、次の支援につなげる
  12. 参考資料

放課後等デイサービスの運動遊びで大切にしたいこと

運動遊びは、身体の動かし方を試したり、道具を操作する面白さを味わったりする機会になります。友達と同じ場にいること、好きな道具を選ぶこと、自分から「もう一回」「休みたい」と伝えることも、その子にとって意味のある経験です。

全員に同じ動きや回数を求めると、身体の使い方や感覚の違いによって負担が大きくなる場合があります。活動に子どもを合わせるだけでなく、子どもに合わせて活動の条件を調整する視点を持ちましょう。

また、運動遊びは「運動・感覚」だけに関係する活動ではありません。体調や休憩、ルールの理解、意思の表出、人との関わりなども含め、一人ひとりに必要な支援を考えます。5領域との関係は、記事の後半で具体的に整理します。

運動遊びを始める前の安全確認

室内では、活動する子、待つ子、道具を回収する人の動きが重なりやすくなります。始める前に、活動場所・待機場所・休憩場所と、人が通る経路を確認しましょう。

  • 床と周囲:滑りやすさ、段差、マットのずれ、家具の角、窓、出入口までの経路を確認する。
  • 道具:破損や外れる部品がないか確認する。口に入れる可能性も考慮して、大きさ・材質を選ぶ。
  • 人数と動線:投げる方向に人が入らない配置にする。道具を回収するときは、投球を止める。
  • 体調と休憩:活動前の様子を確認し、水分補給や休憩を取りやすくする。回数や時間を一律に決めない。
  • 座る姿勢:安定した椅子や本人に合う座位環境を用意する。道具を取ろうとして大きく身を乗り出さない距離にする。
  • 職員の役割:活動を見る人、待機する子を支える人、道具を回収する人などを、その場の人数と必要な支援に合わせて決める。

姿勢保持や移動、身体への介助について個別の留意事項がある場合は、保護者や関係する専門職と確認している方法に沿って進めます。車椅子などの用具も適切に使用し、無理な姿勢や動きを求めないようにします。

痛み、めまい、普段と異なる息苦しさ、強い疲れなどが見られたときは活動を中止し、事業所で定めた対応手順に沿って確認してください。

室内の運動遊びで活動場所、待つ・見る場所、休憩場所を分けた配置の一例
配置の一例。部屋の広さや子どもの動きに合わせて調整し、ボールを回収するときは投球を止めます。

本人の意思と感覚面に合わせて参加方法を選ぶ

「やる・見る・休む」を途中でも選べるようにする

活動を始める前に、実物や短い実演を使って「何をするのか」を伝えます。そのうえで、本人が参加方法を選べるようにしましょう。

例えば、「ここから転がす? もう少し近くにする?」「一回やってみる? まず見る?」と、具体的な選択肢を示します。言葉だけでは選びにくい場合は、道具や写真、カードを使う方法もあります。

最初に参加を選んでも、途中で休んだり、終わりにしたりしてかまいません。見学を選んだ子に繰り返し参加を迫ることも避けたいところです。

視線、手の動き、身体を近づける・離すといった様子も手がかりになります。ただし、一つの反応だけで気持ちを決めつけず、本人に合った伝え方で確かめていきます。

職員がやる・見る・休むのカードを示し、子どもが見るを選んでいる場面
「見る」「休む」も選べるようにし、途中で気持ちが変わったときにも選び直せるようにします。

音・触り心地・動きの速さを調整する

運動が苦手に見える場面でも、実際には道具の音や触り心地、急な動きなどが負担になっている可能性があります。本人の様子と意思を確かめながら、条件を調整します。

気になっている条件調整の例
ボールやピンが当たる音柔らかい道具を使う。音楽を止める。一人ずつ短く試す。
道具の触り心地材質の違う道具から選ぶ。直接触らず、トレーなどを使う方法も考える。
速く近づいてくるボール転がす前に知らせる。速度を落とす。止まっているボールを本人が押す形にする。
人に身体を触られること介助の前に説明して意思を確認する。実演や目印で伝えられないか考える。
一度に多くの動きを求められること動作を一つにする。説明や道具を減らす。本人のペースで進める。

苦手な感覚に慣れさせることを優先し、嫌がる刺激を続ける必要はありません。どの条件なら本人が関わりたいと思えるかを探していきましょう。

室内でできる運動遊び12選

まずは子ども一人と職員で短く試し、必要に応じて少人数での活動に広げます。以下の距離、道具の数、進め方は固定のルールではありません。本人の希望や身体の使い方、その日の状態に合わせて調整してください。

1.コロコロボウリング

準備:柔らかいボール、軽いピンを1〜3本程度用意します。倒れたときの音が気になる場合は、柔らかい素材のピンなどを選びます。

進め方:近い位置からボールを転がします。本人がピンの色や本数を選ぶ方法もあります。難しいときは、距離、ボールの大きさ、ピンの間隔のうち一つを変えてみます。

座って参加する方法:安定した椅子に座り、無理なくボールを放せる位置を探します。必要に応じて、動かないように設置したスロープを使い、本人がボールを押したり、方向を選んだりする方法も考えられます。

安全・振り返り:投球中はピンを直したり、ボールを拾ったりしません。倒れた本数だけでなく、選んだ姿勢、転がしやすかった位置、音への反応などを記録します。

2.柔らかいボールの的入れ

準備:柔らかいボールと、口の広いかごを用意します。かごは倒れたり滑ったりしにくい位置に置きます。

進め方:近い位置から、下手で投げたり、そっと落としたりして入れます。かごを大きくする、距離を近づけるなど、本人が試しやすい条件から始めます。

座って参加する方法:座った姿勢から届く範囲にかごを置きます。「投げる」動きが難しければ、手元から放して入れる方法でもかまいません。

安全・振り返り:的の後ろに人を配置せず、回収は投球を止めてから行います。本人が選んだ距離や道具、続けたい・終わりたいという意思も記録しましょう。

3.ボッチャ風の目標寄せ

準備:目標にするボールと、色の異なる柔らかいボールを用意します。投げる場所と待つ場所を分けます。

進め方:目標に向かって、一球ずつ転がします。最初は勝敗をつけず、「どこに止まったかな」「次はどちらに転がしたい?」と、動きや位置を確かめる遊びにできます。正式な競技ルールにこだわる必要はありません。

座って参加する方法:椅子に座って転がすほか、安定させたスロープを使う方法もあります。ボールを押す、方向を選ぶ、開始の合図を出すなど、本人が担いたい部分を相談します。

安全・振り返り:ボールが通る場所に人が入らないようにします。勝敗が負担になる場合は、みんなで一つの目標に近づける形に変えましょう。少人数での進め方は、放課後等デイサービスの集団遊び|参加しやすい活動例と進め方でも紹介しています。

4.テーブルでボールころがし

準備:安定したテーブル、柔らかいボール、目標になる印を用意します。ボールが落ちた場合は職員が回収できるようにします。

進め方:向かい側の職員や、テーブル上の目印に向かってボールを押します。「止める」「押す」「向きを変える」など、一つの動きをゆっくり楽しむところから始められます。

座って参加する方法:椅子とテーブルの高さ、ボールまでの距離を調整します。両手を使うことにこだわらず、片手で押すなど、本人が使いやすい方法を選びます。

安全・振り返り:テーブルが動かないか確認し、落ちたボールを追って身を乗り出さない配置にします。押しやすい位置や、転がす前の知らせ方による反応の違いを記録します。

子どもと職員が椅子に座り、テーブルの上で柔らかいボールを転がしている場面
座る位置と道具までの距離を調整し、無理なく関われる方法を探します。

5.ドッチビーの的当て

準備:柔らかいディスクと大きな的を用意します。投げる方向や周囲に人、窓、壊れやすい物がないか確認します。十分な広さが取れない場合は、別の転がす遊びを選びます。

進め方:一人ずつ的に向かって投げます。投げる位置を選べるようにし、的に当たることだけでなく、飛び方を試すことも楽しめるようにします。

座って参加する方法:座った姿勢で無理なく腕を動かせる範囲に調整します。道具の持ちやすさも確認し、ディスクが合わない場合は柔らかいボールなどを選び直せるようにします。

学校での実践と放デイでの調整:筆者の学校での取り組みは、ドッチビーの的当ての実践記事で紹介しています。放デイに取り入れる際は、そのまま再現するのではなく、部屋の広さ、人数、投げる方向、回収の手順を改めて確認してください。

6.床のラインたどり

準備:床に適した、滑りにくく剥がれにくい目印を使います。最初は短い直線にし、スタートとゴールを分かりやすく示します。

進め方:線に沿って歩いたり、二本の線の間を進んだりします。線から外れないことを厳しく求めず、幅や長さを変えて、進みやすい条件を探します。

座って参加する方法:テーブル上に線を示し、大きな駒などを手で動かしてたどる遊びにできます。歩く活動とは身体の使い方が異なるため、実際に取り組んだ動きに沿ってねらいや記録を考えます。

安全・振り返り:目印の浮きや滑りを確認し、反対方向から人が入らないようにします。線の幅、色、長さ、途中で立ち止まった位置などを記録します。

7.色の目印タッチ

準備:色や形の異なる大きな目印を2〜3個用意し、本人が無理なく届く位置に置きます。色だけで区別しにくい場合は、形や絵も組み合わせます。

進め方:本人が選んだ目印に触れます。慣れてきたら、本人の希望に応じて「丸、次は星」と順番をつけるなど、少し変化を加えられます。

座って参加する方法:テーブル上や手元のボードに目印を置きます。大きく身体をひねったり、腕を伸ばしきったりしなくても届く範囲にします。

安全・振り返り:速さを競わせず、目印を見てから動ける時間を確保します。言葉で伝えた場合と実物を示した場合の違い、触れやすい高さや方向などを記録します。

8.まねっこポーズ

準備:手を開く、片腕を軽く上げる、肩を小さく動かすなど、本人が試せそうな動きを用意します。必要に応じて写真やイラストを使います。

進め方:職員が一つずつゆっくり実演します。子どもが好きな動きを選んだり、お手本役になったりしてもよいでしょう。完全に同じ形にそろえることを目標にする必要はありません。

座って参加する方法:椅子に座って、手や腕などを動かします。片手だけ、小さな動きだけでも参加できます。本人が動かしやすい範囲を大切にします。

安全・振り返り:腕を引っ張って形を作るなど、身体を無理に動かすことは避けます。どの実演が分かりやすかったか、本人がどの動きを選んだかを記録します。

子どもと職員が椅子に座り、それぞれ無理のない高さで手を上げるまねっこポーズ
動きの大きさや形をそろえることより、本人が無理なく試せることを大切にします。

9.音を選べるリズム遊び

準備:音量を調整できる音源を用意します。音楽を使わず、職員の動きを見ながら取り組む方法も用意しておきます。

進め方:ゆっくりしたリズムで手を開く、膝に軽く手を置く、腕を動かすなど、本人が選んだ動きを楽しみます。音楽を使うかどうかも本人と相談します。

座って参加する方法:手や腕だけで参加できます。足を動かす場合も、姿勢や本人の動かしやすさに合わせて調整します。

安全・振り返り:突然大きな音を出さず、開始前に知らせます。音のある場合・ない場合での様子や本人の希望を記録し、「リズムに合ったか」だけで評価しないようにします。

10.タオルでボールゆらし

準備:小さめのタオルと、軽くて柔らかいボールを用意します。子どもと職員が無理なく両端を持てる大きさを選びます。

進め方:タオルの中央にボールを置き、両端を持ってゆっくり動かします。大きく跳ね上げる必要はありません。止める、少し傾けるなど、小さな動きを試します。

座って参加する方法:向かい合って座り、楽に手が届く位置で持ちます。持ち上げることが難しい場合は、テーブルにタオルを置き、端を少し動かす方法もあります。

安全・振り返り:タオルを身体に巻きつけたり、強く引き合ったりしません。持ちやすい位置、二人の距離、動かす速さ、本人の「止めたい」という意思などを確認します。

椅子に座った子どもと職員がタオルの両端を持ち、中央の柔らかいボールをゆっくり動かす場面
楽に持てる距離で、小さな動きから始めます。強く引いたり、ボールを大きく跳ね上げたりする必要はありません。

11.軽い道具のお届け遊び

準備:柔らかいボールや大きなスポンジ、入れ物、届け先の目印を用意します。運ぶ物は、本人が持ちやすい大きさと重さにします。

進め方:本人が選んだ道具を、近くのかごに届けます。速さを競うリレーにせず、「何を」「どこへ」届けるかを選べる遊びにできます。

座って参加する方法:手元のかごから隣のかごへ移すなど、座った位置で取り組める配置にします。身体を大きく傾けなくても届く距離にしましょう。

安全・振り返り:歩いて運ぶ場合は、荷物で足元が見えなくならないようにします。持ちやすい形やかごの高さ、途中で休みを選んだ場面などを記録します。

12.選べるミニサーキット

準備:ここまでの遊びから2〜3種類を選び、写真や実物で順番を示します。例えば「ラインたどり→的入れ→休憩」という組み合わせです。

進め方:本人が順番や取り組む活動を選びます。一周したら、続けるか終わるかを確かめます。一つの場所だけで遊んでもかまいません。

座って参加する方法:「目印タッチ→ボールころがし→休憩」など、座ったまま取り組める内容にします。子どもが場所を移る代わりに、職員が道具を入れ替える方法もあります。

安全・振り返り:移動する経路と投球する場所が交差しないようにします。職員が全体を確認できる範囲に収め、選んだ順番や休憩、続けやすかった活動を記録します。

運動以外の活動も組み合わせたい場合は、放課後等デイサービスの室内遊びアイデア30選も参考にしてください。静かな遊びと身体を動かす遊びを、本人の希望やその日の状態に合わせて選べます。

「難しい」「やりたくない」が見られたときの調整

活動に入らない、途中で止まる、道具から離れるといった様子が見られたら、まず本人の意思を確認します。そのうえで、道具、説明、距離、音、姿勢、疲れなど、負担になっている可能性のある条件を整理します。

「やる気がない」「この特性だから苦手」と結論づけず、観察した事実と、職員が考えた理由の仮説を分けることが大切です。

見られた様子確かめたいこと・調整の例
ボールを持ったまま動かない何をするか伝わっているか、始めたいかを確認する。短く実演する、的を近づけるなどを試す。
近づくボールから顔を背ける速さや近づき方が負担ではないかを確認する。止まっているボールを本人が押す方法にする。
途中で動きが止まる疲れ、痛み、飽き、待ち時間、ほかにしたいことなどを確かめる。休憩や終了も選べるようにする。
順番を待つ場所から離れる待つ時間、周囲の音、場所の分かりやすさなどを確認する。少人数にする、順番の目印を使うなどを考える。

安全に関わる点はすぐに整えます。そのほかの条件は、可能であれば一つずつ変えると、何が参加しやすさにつながったのかを振り返りやすくなります。

「手伝って」「もう一回」「終わり」と伝える方法を用意することも、活動を支える工夫です。言葉やカードなどを使ったやりとりについては、放課後等デイサービスのSST実践ガイドでも紹介しています。

運動遊びを5領域の視点で振り返る

5領域は、活動を機械的に分類するためだけのものではありません。同じボール遊びでも、本人が何を望み、どのような支援を必要としているかによって、見るポイントは変わります。

  • 健康・生活:体調や疲れを確かめる。水分補給や休憩を選べるようにする。
  • 運動・感覚:姿勢、道具の持ちやすさ、動かす範囲、音や触り心地を調整する。
  • 認知・行動:目印や実演を使い、何をするか、どこから始めるか、いつ終わるかを分かりやすくする。
  • 言語・コミュニケーション:道具や参加方法を選ぶ。「もう一回」「休む」「手伝って」を伝える方法を用意する。
  • 人間関係・社会性:同じ場で過ごす、道具を介してやりとりする、役割を選ぶなど、本人に合った関わり方を探す。

一つの遊びで5領域をすべて扱おうとする必要はありません。実際の姿から必要な支援を整理する考え方は、放課後等デイサービスの5領域とは?活動例と個別支援計画へのつなげ方で詳しく解説しています。

活動後の記録例|事実・本人の意思・調整を残す

「楽しんでいた」「運動が苦手だった」だけでは、次の職員が支援を再現しにくくなります。本人が何を選び、どの条件で、どのように関わったかを具体的に残しましょう。

以下は記録の書き方を示すための架空例です。実際の利用児の記録ではありません。

記録例1.座る方法を選んだ場面

活動:コロコロボウリング。

本人の意思と事実:立つ方法と座る方法を示すと、Aさんは「座る」と伝えた。椅子とボールを手元に用意し、近くにピンを3本置いた。両手でボールを押し、3回取り組んだ。その後「終わり」と伝えたため終了した。

振り返り:今回は座る方法を本人が選んだ。座位を選んだ理由や、ほかの日にも同じ条件が合うかは、この記録だけでは分からない。

次回:再び姿勢と距離を選べるようにし、取り組みやすさを本人に確かめる。

記録例2.音の条件を変えた場面

活動:リズムに合わせて手を動かす遊び。

本人の意思と事実:音楽が始まると、Bさんは両手で耳を覆い、椅子を後ろへ動かした。「音を止める」「場所を変える」を示すと、「止める」を選んだ。音楽を止めると手を下ろし、その後、職員の手を開く動きを2回まねた。

振り返り:音が負担だった可能性がある。ただし、音量や曲、周囲の状況など、どの条件が関係したかは未確認。

次回:開始前に、音楽を使うかどうかを本人が選べるようにする。

記録では、「耳を覆った」は観察した事実、「音が負担だった可能性」は仮説です。この二つを分けておくと、次の支援で何を確かめるかが明確になります。

記録から個別支援計画につなげる具体例

一度取り組めたことだけで、目標や支援方法を決める必要はありません。複数回の様子、本人の希望、家庭や学校での情報などを合わせ、児童発達支援管理責任者を中心に検討します。

例えば、本人から「友達とボールで遊びたい」という希望があり、座る位置や道具を選べると関わりやすい様子が繰り返し見られた場合、次のように整理できます。以下も説明のための架空例です。

  • 本人の希望:友達とボールで遊びたい。
  • 目標の例:自分に合う姿勢や道具を選び、続ける・休む・終わるという意思を伝えながら、ボール遊びに関わる。
  • 支援の例:参加前に姿勢と道具の選択肢を示す。手が届く位置に道具を置く。転がす前の合図を決める。休憩や終了を伝える方法を用意する。
  • 確認すること:本人が選んだ方法、必要だった援助、負担が見られた条件、活動後の本人の言葉や反応。

目標は、その子の生活や希望に合わせて具体化します。「全員が同じ回数できること」を一律の到達点にするのではなく、本人にとって意味のある参加につながっているかを確かめましょう。

目標、支援内容、記録、見直しのつなぎ方は、放課後等デイサービスの個別支援計画|書き方・5領域の記入例と振り返りも参考にしてください。

運動遊びの工夫を職員同士で共有する

参加しやすかった条件が分かったら、その場にいた職員だけの気づきで終わらせず、チームで共有します。「優しく声をかける」だけでは伝わりにくいため、具体的な関わり方を残しましょう。

例えば、「ボールを転がす前に名前を呼び、本人が受け取る準備をしているか確かめてから、ゆっくり転がす」という形です。目を合わせることを条件にせず、本人に合った反応や合図で確認します。

短い振り返りでも、「本人が選んだこと」「参加しやすかった条件」「まだ分からないこと」「次に試すこと」を分けて話すと、次回の活動につなげやすくなります。

こうした視点を事業所全体で共有したい場合は、放課後等デイサービスの職員研修|教材の内容と活用方法をご覧ください。

活動の工夫を、事業所全体の学びにつなげたい方へ

「活動に入らない」「途中で離れる」という場面にも、音、見通し、身体の使い方、疲れ、本人の希望など、確かめたいことがあります。職員同士で観察した事実を共有し、背景を考え、本人の意思を確かめながら支援を試すことが大切です。

支援力向上研修システム|事業所研修版は、基本12講と補完6テーマを、スライド・講師用台本・受講者ワークなどで学ぶ教材です。年間研修計画やケース会議などに使う管理者向けのツールも含め、事業所内で学びを実践につなげるための内容をまとめています。

研修の進め方や実際の教材見本は、noteの販売ページでご確認いただけます。

事業所研修版の内容と教材見本を見る

よくある質問

狭い室内でも運動遊びはできますか?

テーブルでのボールころがし、座って行うまねっこポーズ、手元の目印タッチなど、移動の少ない活動を検討できます。ただし、狭い場所に多くの子どもや道具を集めると接触しやすくなります。人数や道具を減らし、安全な空間が確保できる内容を選んでください。

運動が苦手な子には、簡単な活動から始めればよいですか?

動きの難しさを調整することは一つの方法です。ただし、本人が負担に感じているのは、音、触り心地、説明の分かりにくさ、人との距離などかもしれません。まず何をしたいか、何が気になるかを確かめ、必要な条件を調整します。

座って参加してもよいですか?

座った姿勢で参加する方法も選択肢になります。椅子や道具の高さ、届く範囲を調整し、本人の身体の使い方に合う方法を探します。座位保持などに個別の留意事項がある場合は、確認している支援方法に沿って進めてください。

見学を選んだ子には、何度も参加を勧めた方がよいですか?

繰り返し誘うことが負担になる場合もあります。見学を選んだ意思を尊重し、参加したくなったときに伝えられる方法を用意しましょう。見学を必ず実際の参加へ進むための段階と考える必要はありません。

この12例を行えば、運動機能の改善につながりますか?

この記事は活動のアイデアを紹介するもので、特定の機能改善を保証するものではありません。身体機能や姿勢などについて個別の評価・助言が必要な場合は、関係する専門職と相談してください。日々の活動では、本人の希望と負担、参加しやすかった条件を丁寧に確かめます。

まとめ|本人が選べる運動遊びを、次の支援につなげる

放課後等デイサービスの運動遊びでは、活動の種類に加え、道具、距離、姿勢、音、人数を調整することが大切です。立って行う方法だけでなく、座る、見る、休むという選択肢も用意しましょう。

まずは本人が気になる活動を一つ選び、安全を確認して短く試します。その後、何を選んだか、どの条件で関わりやすかったか、どのような意思や反応が見られたかを記録します。

その記録を職員同士で共有し、本人の希望と合わせて個別支援計画の見直しにつなげていくことが、活動を日々の支援に生かす一歩になります。

参考資料

支援の考え方については、こども家庭庁が公開する以下の資料を参考にしています。

本文の活動12例、調整方法、架空の記録例は、これらの資料を踏まえた筆者の提案です。こども家庭庁が個別の遊び方や効果を推奨・保証しているものではありません。

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