「集団遊びを始めても、参加できずに離れてしまう子がいる」「勝ち負けが気になり、途中でつらくなってしまう」。放課後等デイサービスで活動を考えるとき、遊びの内容と同じくらい大切なのが、一人ひとりの参加のしやすさです。
この記事では、2〜3人から始められる遊びを中心に、集団遊びの具体例を12種類紹介します。見学・途中参加・役割選択の取り入れ方、勝敗や身体接触が負担になる場合の調整、安全確認、活動後の記録例までまとめました。
筆者は小学校の特別支援学級で、子どもに合わせて活動のルールや参加方法を調整してきました。本文にはその経験を踏まえた提案も含みますが、学校での実践を放課後等デイサービスでの実施例として紹介するものではありません。事業所で取り入れる際は、子どもの希望や状態、場所、職員体制に合わせて調整してください。
集団遊びは「全員が同じように遊ぶこと」が目的ではない
集団遊びには、友達と同じ場を楽しむ、順番を待つ、自分の希望を伝える、相手の様子を見るといった機会があります。ただし、参加の形は一つではありません。最初は見ているだけでも、道具を並べる係でも、途中から一回だけ加わっても、その子なりの関わり方になります。
「みんなと一緒に最後までできたか」だけで判断せず、本人が何を選び、どの条件なら安心して関われたかを見ていきましょう。こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインや、こどもの意思の尊重に関する手引きも、活動や支援を考える際の参考になります。
始める前に確認したい4つのこと
- 本人の希望:やってみたい、見たい、今日は休みたいなど、言葉・表情・選択肢への反応から確かめます。
- 参加の形:プレーヤーのほか、道具係、得点係、応援、見学、一回だけの参加を用意します。
- 活動の負担:待ち時間、音、勝敗、身体接触、動きの速さなど、負担になりそうな条件を確認します。
- 安全:場所の広さ、道具の重さ、動線、ぶつかりやすい場所、休める場所、職員の見守り方を確認します。
選べる形を先に示しておくと、活動への入り口が増えます。「参加するか、しないか」の二択にせず、「どのように関わりたいか」を本人と一緒に考えます。
見学・途中参加・役割選択を活動に組み込む方法

活動を説明するときは、ルールだけでなく参加方法も伝えます。例えば「投げる人になってもいいし、ボールを並べる係でもいいよ。まず見てから決めても大丈夫」と声をかけます。途中参加する場合は、次の順番や役割が分かるようにしておくと入りやすくなります。
見学を選んだ子にも、繰り返し参加を迫る必要はありません。「やってみたくなったら教えてね」と伝え、安心して見られる位置を確保します。活動後には、本人がその時間をどう感じたかも確かめましょう。
2〜3人から始める集団遊び4選
1.協力して作る積み木タワー
進め方:2〜3人で一つずつ積み木を置き、倒れないタワーを作ります。高さを競う代わりに「ここまで作れたら完成」という目標を決めてもよいでしょう。
参加の工夫:積む、積み木を渡す、完成写真を撮るなどの役割から選べます。順番を待つのが難しい場合は、一人が二つ置いてから交代するなど、待ち時間を調整します。
2.一枚ずつつなぐお絵描き
進め方:一枚の大きな紙に、順番に好きな線や絵を描き足します。「街を作る」「海の生き物を描く」など、テーマを決めても楽しめます。
参加の工夫:自分の場所を決めて描く、シールを貼る、色を選ぶなど、参加方法を広げます。他人の絵に描き足されることが負担になる場合は、紙を分けて最後につなぎます。
3.カードで探す「同じもの」ゲーム
進め方:色、形、動物などのカードを並べ、順番に同じ仲間を探します。慣れてきたら、子どもが分類のルールを考える時間も作れます。
参加の工夫:カードを取る速さを競わず、指さしや言葉で選べるようにします。カードを並べる係や、見つけた仲間を発表する係も作れます。
4.風船を落とさずつなぐ
進め方:2〜3人で風船を軽く打ち、何回つなげられるか試します。回数を増やすことより、相手が取りやすいところへ返すことを楽しむ設定にもできます。
安全と調整:周囲の物を片づけ、走って追いかける範囲を決めます。風船の音や動きが苦手な子には、柔らかいボールへの変更や見学を選べるようにします。ラテックスへの配慮も必要です。
3〜5人で楽しむ集団遊び4選
5.やさしいルールのボッチャ
進め方:目標となるボールを置き、一人ずつ柔らかいボールを転がして近づけます。初めは2〜3人で、投げる位置を近くして試します。正式な競技ルールにこだわらず、事業所の場所や子どもに合わせて進められます。

参加の工夫:投げる、ボールを渡す、位置を確かめる、記録する、見学する役割があります。勝敗が負担になる場合は「どれだけ目標に近づいたかを一緒に試す」活動に変えられます。転がる先に人が立たないよう、投球場所と待機場所を分けます。
学校でボッチャを扱う際にも、私は全員が同じ役割を担うことだけを目標にはせず、取り組みやすい入り口を考えてきました。ここで紹介したのは、その考え方を踏まえた放課後等デイサービス向けの活動案です。
6.協力して運ぶボールリレー
進め方:二人でタオルの端を持ち、上に置いた柔らかいボールを決めた場所まで運びます。最初は短い距離を歩き、「落とさずに運べたら成功」にします。
安全と調整:速さを競うと衝突しやすいため、動線を一方向にします。ペアで息を合わせることや近い距離での活動が負担なら、一人で道具を運ぶ役割やコース案内係も選べます。
7.ヒントを出し合う宝探し
進め方:室内に隠したカードを、写真や簡単なヒントを手がかりに探します。見つけたカードを持ち寄り、全員で絵を完成させる形にすると協力しやすくなります。
参加の工夫:探す、ヒントを読む、カードを並べるなどから役割を選びます。走らない約束を共有し、立ち入らない場所を明示します。見つからない子が続く場合は、ヒントの出し方や隠す場所を調整します。
8.順番に出すジェスチャークイズ
進め方:動物や乗り物などのお題を見て、身振りで伝えます。少人数なら一人の発表をじっくり見られます。
参加の工夫:人前に立つことが負担なら、職員と一緒に表現する、絵カードを選ぶ、答える役だけにする方法があります。答えが出ないことを失敗として扱わず、ヒントを追加して楽しめるようにします。
人数を増やして広げられる集団遊び4選
9.ルールを選べるサイコロすごろく
進め方:短いコースのすごろくを用意し、止まったマスに「好きなものを一つ話す」「次の人に質問する」などの選択肢を設けます。答えたくないときはパスできるようにします。
調整:ゴールの順位が負担になる場合は、全員でゴールを目指す形にします。待ち時間が長ければ、サイコロ係やカード係を増やすか、グループを分けます。
10.作戦を相談する紙コップタワー
進め方:数人で紙コップを積み、どんな形なら安定するか相談します。完成の高さだけでなく、試した方法や協力した場面も振り返ります。
参加の工夫:設計を考える、コップを渡す、積む、写真を撮るなどの役割があります。倒れた音や急な崩れが苦手な子には、低く積む、机の上で行う、少し離れて参加する方法を用意します。
11.目標を決める輪投げ
進め方:輪を投げる位置を複数用意し、本人が試したい場所を選びます。得点の高低より、「昨日より近い場所から始める」「違う投げ方を試す」など自分で決めた目標を大切にします。
安全と調整:輪を取りに行くタイミングを決め、投げている人の前を横切らないようにします。投げることが難しい場合は、近くから置く方法や輪を渡す役割も選べます。
12.みんなでつくるミニコース
進め方:床の目印をたどる、柔らかい障害物をまたぐ、最後にカードを選ぶなど、短いコースを一緒に作ります。子どもが「ここは歩く」「この順番がいい」と提案できる時間を設けます。
安全と調整:動線が交差しない配置にし、滑りやすい道具や転倒しやすい段差を避けます。身体を動かすことが負担なら、目印を置く係や順番を案内する係として関われます。
勝敗や身体接触が負担になる場合の調整
勝ち負けを楽しむ子もいれば、負ける見通しが立つと参加しづらくなる子もいます。まず本人がどこに負担を感じているかを確かめ、得点をつけない、個人戦を協力型にする、短い回数で終えるなど、活動の条件を変えてみます。「負けても我慢する練習」に一律に置き換えないことが大切です。
また、手をつなぐ、身体に触れて誘導するといった方法を当然の前提にしないようにします。言葉や視覚的な目印で伝える、道具を介して一緒に動く、距離を取って参加するなど、接触しない方法を用意できます。
友達とのやり取りを練習する際の進め方や具体例は、放課後等デイサービスのSST実践ガイドでも紹介しています。
集団遊びと5領域の関係
同じ遊びでも、何を見るかは子どもによって異なります。例えばボッチャ風の遊びでは、ボールを転がす動き、相手との順番の調整、希望する役割の表明など、複数の姿が見られます。活動名を一つの領域に機械的に当てはめるより、本人の目標とその日の様子を結びつけて考えます。
- 健康・生活:活動と休息を自分に合う形で選ぶ。
- 運動・感覚:道具の重さや動きに合わせて、無理なく身体を使う。
- 認知・行動:順番やルールを理解し、見通しを持って活動する。
- 言語・コミュニケーション:希望や困ったことを、言葉・指さし・カードなどで伝える。
- 人間関係・社会性:友達と場を共有し、役割ややり取りを経験する。
5領域の考え方と活動例を詳しく知りたい方は、放課後等デイサービスの5領域とは?活動例と個別支援計画へのつなげ方をご覧ください。ほかの室内活動も探したい場合は、室内遊びアイデア30選を参考にできます。
活動後は「できた・できない」以外も記録する
記録には、活動名だけでなく、本人の選択、参加しやすかった条件、負担になった場面、職員の関わり、その後の反応を残します。次回の活動を変えるために使える情報が大切です。
記録例(架空の例)
ボッチャ風の遊びを3人で実施。Aさんは開始時に「見ている」を選び、投球位置から少し離れた席で見学した。職員がボールを並べる係を示すと、自分でその役割を選び、2回目から参加した。投げることを勧めた際は首を横に振ったため、本人の選択を尊重した。終了後、本人は「並べるのはまたやりたい」と話した。次回も役割を先に提示し、投球への参加は本人の希望を確かめる。
この記録からは、「投げられなかった」ではなく、「役割が分かると本人が参加を選べた」という手がかりが得られます。複数回の記録を見比べ、本人や保護者の意向と合わせて、支援の目標や環境調整を検討します。記録を計画の見直しにつなげる流れは、放課後等デイサービスの個別支援計画の書き方で詳しく解説しています。
職員同士で「参加しやすかった理由」を共有する
集団遊びを担当した職員だけが工夫を知っている状態では、次の活動に生かしにくくなります。「今日は何を選んだか」「どの声かけや配置が役立ったか」「次回は何を一つ変えるか」を短く共有すると、事業所内で支援の視点をそろえやすくなります。
職員間で事例を話し合う際の考え方は、放課後等デイサービスの職員研修記事でも紹介しています。
集団遊びの事例を、職員みんなで考える研修へ
遊びへの参加を「できた・できない」で終わらせず、本人の意思、困り感、環境、試した支援と反応を職員同士で整理することが大切です。「支援力向上研修システム|事業所研修版」では、スライド・講師用台本・受講者ワークなどを使い、事例を通して支援を考える研修を進められます。教材の内容や見本は販売ページで確認できます。
よくある質問
Q.見学だけで終わった場合も、集団遊びに参加したと考えてよいですか?
A.本人が選んで同じ場で見ていたなら、その経験も大切にできます。ただし、見学の意味は一人ひとり異なります。安心して見ていたのか、入りたくても方法が分からなかったのかを本人の様子や言葉から確かめ、次の活動に生かします。
Q.勝負のある遊びを避けた方がよいですか?
A.一律に避ける必要はありません。本人が勝負を楽しんでいるか、負担が強くなっていないかを見ながら、得点をつけない方法や協力型への変更も選べるようにします。
Q.人数が多く、順番待ちが長くなります。
A.グループを分ける、一回の活動時間を短くする、待つ間に選べる役割を作るなどの方法があります。待つこと自体が目的になっていないかも振り返りましょう。
まとめ
集団遊びは、まず少人数で始め、本人が希望する参加方法を選べるようにすると取り入れやすくなります。見学、途中参加、道具係なども含めて関わり方を用意し、勝敗や身体接触、安全面の負担を調整します。
活動後には「何の遊びをしたか」だけでなく、「本人が何を選び、どの条件で関われたか」を記録しましょう。その積み重ねが、次の活動や個別支援計画を考える材料になります。

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