時計が読めない発達障害の子への教え方|無料ワークシート付

おうちでできる支援

「うちの子、なかなか時計が読めるようにならなくて…」
そんな不安を抱えて、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

私は特別支援学級の担任として18年、そのうち8年を支援学級の子どもたちと向き合ってきました。現在は放課後等デイサービスでも指導を続けています。その中で感じてきたのは、「時計が読めない」と一言で言っても、原因もつまずくポイントも子どもによって本当にさまざまだということです。

この記事では、なぜ時計が読めないのかという原因から、実際に指導してきた中で見えてきた効果的な教え方、そして今日から使える無料のワークシートまで、実体験をもとにお伝えします。

なぜ時計が読めないのか?発達特性からみる原因

時計を読むという動作は、実はとても複雑な処理を同時に行っています。

  • 短針の位置を見て、数字と数字の「途中」を判断する(視空間認知)
  • 長針の位置を「数字×5」に変換する(ふだん使わない60進法の考え方)
  • 短針と長針、2つの情報を同時に頭の中に保持する(ワーキングメモリ)

この3つを同時にこなす必要があるため、どれか一つでも力が育っていないと、時計はうまく読めません。発達障害のあるお子さんは、視空間認知やワーキングメモリに関する特性が指摘されることも多く、時計の学習でつまずきやすい背景があります。

発達障害そのものについて詳しく知りたい方は、国が運営する発達障害情報・支援センターにも、特性や基本的な対応についての情報が掲載されています。

ADHD・ASD・LD、特性ごとのつまずき方の違い

同じ「時計が読めない」でも、背景にある特性によってつまずき方の傾向は変わってきます。

ADHDの傾向がある子
注意の持続が苦手なため、短針と長針を同時に見るという複数情報の処理でつまずきやすい傾向があります。短い時間で区切って、一つずつ確認しながら進めると定着しやすいです。

ASDの傾向がある子
「だいたい」「そろそろ」といったあいまいな表現が伝わりにくく、「ちょうど」ではない、数字と数字の途中の時刻の理解に時間がかかることがあります。視覚的にはっきり構造化された教材が合いやすい傾向があります。

LD(学習障害)の傾向がある子
数的な処理に苦手さがある場合、5とび数え(かけ算的な考え方)自体が負担になりやすく、時計に限らず算数全般のつまずきと重なっていることがあります。

もちろんこれはあくまで傾向であり、同じ診断名でもつまずき方は一人ひとり違います。大切なのは診断名で分類することより、目の前のその子がどこで止まっているかを見ることです。

何歳までに読めるようになればいい?焦らなくていい理由

学校のカリキュラムでは、小学2年生頃までに時計の学習を扱うのが一般的です。そのため「学年が上がっても読めない」と焦ってしまう保護者の方は少なくありません。

ですが、発達障害のあるお子さんの場合、周りの子より時間がかかることは決して珍しいことではありません。長年指導してきて感じるのは、「時計が読めない」のではなく、時計を読むために必要な力のどこかが、まだ育っている途中なだけだということです。

周りと比べて焦る必要はありません。その子がどこで止まっているのかを見極めて、そこから積み上げていけば、着実に力はついていきます。

【実践エピソード】スモールステップで教えて、時計が「生活」に変わった瞬間

多くの解説記事では「長針から教える」「5とびを覚える」といった方法が紹介されています。もちろんどれも大切な要素です。ですが実際に指導してきた中で感じているのは、その子がどこでつまずいているのかを見極めることの方が、方法論より先に大切だということです。

実は「短針」でつまずく子が一番多い

長針より先に、短針でつまずく子が非常に多くいます。たとえば長針が「11」を指しているとき、短針は「2」と「3」の間にあります。この状態を見て「2時55分」ではなく「3時55分」と答えてしまう子がとても多いのです。短針が数字を”ぴったり”指していない状態、つまり「途中」という概念が理解しにくいことが背景にあります。

ほかにも、こんなつまずきがよく見られます。

  • 5とび数え:長針が「8」を指していても、5倍せずそのまま「8分」と読んでしまう
  • デジタル⇔アナログの変換:デジタルの「3:40」は読めても、アナログにすると分からない(逆もある)
  • 「あと〇分」がわからない:時計は読めても、時間の経過を実感する力は別物
  • 時間概念そのものが曖昧:「8時になったら」より「朝の会が終わったら」の方が伝わることも

よく紹介される方法が、実は効果的でなかったこともある

  • 1〜60まで数字を全部書いた時計盤 → 情報量が多すぎて、逆にどこを見ればいいか分からなくなる子も
  • 「5とびを覚えよう」の暗唱だけ → 暗唱はできても、実際に時計を読むときには使えない
  • プリントだけを毎日 → 時計は「生活の中で使うもの」なので、生活場面での反復のほうが定着しやすい

「時計を読む」と言わない

指導のとき、あえて「時計を読んでみて」とは言いません。代わりに「短針のおうちはどこ?」と聞きます。すると「2のおうち!」と答えてくれる。そこから「じゃあ2時だね」とつなげます。抽象的な言葉より、イメージのある言葉のほうが理解しやすいことがあるからです。「短針は今、歩いている途中なんだよ」という表現も、「まだ3には着いていない」という感覚を伝えるのに役立ちます。

プリントが解けなかった子が「あと10分!」と言えた日

ある子は、プリントの上ではまったく時計が読めませんでした。それでも「3時になったらお母さんがお迎えに来るね」「今2時50分だから、あとどれくらいかな?」というやりとりを、毎日の生活の中で続けました。最初は「わからない」ばかり。それでもある日、「あと10分!」と答えられた瞬間がありました。その子は嬉しそうに「もうすぐママだ!」と言ったのです。時計が、数字ではなく生活と結びついた瞬間でした。

保護者からよく聞かれること

「デジタル時計ばかり使わせても大丈夫でしょうか?」という相談が一番多く寄せられます。生活の中で困っていなければ、まずはデジタル時計で構いません。そのうえで、学校生活や社会生活ではアナログ時計を見る場面も多いため、できる範囲で少しずつアナログにも触れる機会を増やしていくことをお伝えしています。

ほかにも「学年が上がっても読めない」「教えると親子げんかになる」「アナログだけ苦手」「教えても翌日には忘れてしまう」といった相談をよくいただきます。そんなとき私がお伝えしているのは、「時計は算数というより、生活のスキル」だということ。プリントを何枚も解くより、「今何時かな?」「あと5分で出発だね」といった声かけを日常に散りばめるほうが、結果として定着が早いことが多いです。

今日から使える無料のスモールステップワークシート

ここまでお伝えしてきた考え方をもとに、「短針・長針の区別」から「ちょうど・はんの読み方」までを、無理なく身につけられる全8ステップのワークシートを作りました。

短針は赤、長針は青と色を分けているので、「どちらが何を表しているか」を目で見て区別しやすくしています。いきなり問題を解かせるのではなく、まずは針をなぞる・ことばと結びつけるところから始め、少しずつ「読む」段階へ進む作りです。

  1. STEP1:短針・長針をなぞって区別する
  2. STEP2:針とことば(「じ」「ふん」)のマッチング
  3. STEP3:長針はいつも12。短針だけを読む練習
  4. STEP4:短針だけを読むまとめ問題(10問)
  5. STEP5:長針が12を指しているかの○×判定
  6. STEP6:「はん」(長針が6)の導入と練習
  7. STEP7:「ちょうど」か「はん」かの判別
  8. STEP8:ちょうど・はんの混合まとめ問題+こたえ付き

つまずいたステップだけを繰り返し練習できるので、その子のペースに合わせて使っていただけます。実際のワークシートは、こちらです。

はじめての時計 表紙
STEP1 みじかいはり・ながいはりをみつけよう
STEP2 はりとことばをむすぼう
STEP3 みじかいはりだけをよもう


「分」まで完全にマスターしたい方へ

「ちょうど」「はん」が読めるようになったら、次は「〇時〇分」まで正確に読めるようになる段階です。長針の数字から5分刻みで分を読む練習から、1分刻みで正確に読む練習まで、こちらもスモールステップで進める全7ステップの続編教材です。

  1. STEP1:「すうじ×5=ふん」の対応を覚える
  2. STEP2:長針だけで「なんぷん」かを読む練習
  3. STEP3:短針・長針を合わせて「〇時〇分」を読む
  4. STEP4:5分刻みのまとめ問題
  5. STEP5:1分刻みの読み方(目盛りの数え方)
  6. STEP6:1分刻みのまとめ問題
  7. STEP7:総復習(ちょうど・はん・5分刻み・1分刻み全部ミックス)

時計のプリント自体は、探せば無料のものもいくつも見つかります。ですが「プリントを渡しただけでは、うちの子にはうまくいかなかった」「どこでつまずいているのか分からない」という声をよく聞きます。

そこでこの教材には、ワークシートに加えて指導書(使い方ガイド)を添付しています。各ステップで何を見て、どんな声かけをすればいいか、つまずきやすいポイントとその対応、現場で実際に効果のあった言葉かけの例まで、指導経験をもとにまとめました。プリントを「解かせて終わり」にせず、「どう寄り添えばいいか」までセットにすることで、発達障害のあるお子さんへの支援がしやすくなるように作っています。

とけいのべんきょう② 表紙
STEP1 すうじは5ふんずつふえる
STEP2 ながいはりだけでなんぷんかよもう
STEP3 じとふんをあわせてよもう




この記事を書いた人:ゆた先生

特別支援学級の担任として18年、そのうち8年を支援学級で指導。

まとめ

時計が読めないのには、短針・長針の同時処理、5とび数え、時間感覚など、いくつもの理由があります。大切なのは、「読めない」ことを問題にするのではなく、その子が今どこで止まっているかを見つけて、そこから小さく積み上げていくことです。

今日ご紹介したワークシートも、ぜひ生活の中の声かけと合わせて使ってみてください。焦らず、その子のペースで進めていきましょう。

その他にも学習に使える無料プリントを多数ご用意しています。💁

コメント

タイトルとURLをコピーしました