「集団活動の時間になると、輪に入らない」「声をかけても、少し離れた場所から見ている」。放課後等デイサービスで、そんな子どもの姿を見たとき、どう関わればよいのでしょうか。
参加しない理由を「集団が苦手」「やる気がない」と決めつけると、本人が伝えようとしていることを見落とすかもしれません。活動の内容、音や人との距離、見通し、疲れ、友達との関係など、参加しにくさに関わる条件を一つずつ確かめることが大切です。
この記事では、本人の意思を確かめながら、見学・途中参加・役割選択・別の活動・休憩を用意する方法を紹介します。場面別の声かけ、活動後の記録、個別支援計画へのつなげ方まで具体的に整理しました。
私は小学校の特別支援学級で子どもたちと関わってきました。以下の活動例は、学校での実践をそのまま放課後等デイサービスで行ったという報告ではありません。学校で大切にしてきた本人の思いや環境の見取りを踏まえた、放課後等デイサービスの現場に向けた提案です。事業所の体制と、一人ひとりの状況に合わせて調整してください。
まず確認したいこと
「参加したか」だけで判断せず、本人がどう過ごしたいか、どの条件が負担になっているか、どんな関わり方なら安心できるかを確かめます。見学や休憩を選んだことも、本人の意思を知る大切な手がかりです。
集団活動に参加しないことだけで、理由を決めない
同じ「輪に入らない」という姿でも、背景は一人ひとり、また日によって異なります。活動には興味があっても、遊び方が分からないのかもしれません。音や人数が負担なのかもしれませんし、学校から来たばかりで休む時間が必要なのかもしれません。
まずは評価の言葉を急がず、見たこと・聞いたことを具体的に捉えるところから始めます。
| 決めつけになりやすい表現 | まず記録したい事実 |
|---|---|
| 集団が嫌い | 開始時は入口付近から見ていた。ボールが転がる場面では活動の方を向いた。 |
| やる気がない | 「今日は見てる」と話し、見学用の椅子に座った。 |
| 協調性がない | 勝敗を伝えた後に席を離れた。協力型に変えた場合の様子は、まだ確かめていない。 |
| 声をかければ参加できる | 誘いを重ねたときは返答がなかった。選択肢を示したときは「カード係」と指さした。 |
この時点では理由を断定できません。「音が負担かもしれない」「勝敗のある進め方が気になるかもしれない」と仮説を持ち、本人に確かめながら環境を一つ変えて反応を見ます。
本人の意思と、参加しにくい条件を分けて考える

「今日は参加したくない」という本人の希望と、「参加したい気持ちはあるが、今の活動方法では入りにくい」という状況は、分けて考える必要があります。どちらの場合も、職員が参加を急がせず、本人に伝わる方法で希望を聞くことが出発点です。
言葉だけで答えることを求めない
「やる? やらない?」と急に聞かれても、答えにくい子がいます。活動が見える場所で少し待つ、写真や簡単なカードから選ぶ、指さしや表情を見るなど、伝え方を広げます。返事がないことを同意や拒否と即断せず、選びやすい状況だったかを振り返ります。
- 「今は見る」「少しやる」「別のことをする」「休む」を示す
- 活動の内容と終わりを短く伝える
- 考える時間を取り、繰り返し返答を迫らない
- 始めた後に気持ちが変わっても、選び直せるようにする
活動のどこが負担かを具体的に見る
| 確かめたい条件 | 観察・質問の例 | 試せる調整 |
|---|---|---|
| 音・刺激 | 歓声が大きくなると離れるか | 人数を減らす、静かな活動に替える、見学位置を選ぶ |
| 見通し | 何をするか、いつ終わるか分かっているか | 実物を見せる、短い手順にする、終了時点を示す |
| 対人関係 | 特定の相手との距離や接触が負担か | 組み合わせを選ぶ、接触のない役割を用意する |
| ルール・勝敗 | 待ち時間や負けた場面で様子が変わるか | 協力型にする、短く終える、順番を見える形にする |
| 疲れ・体調 | 来所直後と休憩後で様子が違うか | 最初に休む、後半から参加できるようにする |
感覚面や疲れなどは、外から見ただけでは分かりません。本人の言葉、表情や行動、保護者から聞いたことを合わせて考え、必要に応じて支援方法を見直します。
見学・途中参加・役割選択・別の活動・休憩を用意する
参加方法を一つに限定すると、「最初から最後まで同じようにやる」か「参加しない」かの二択になりがちです。活動を準備する段階で、複数の過ごし方を用意しておくと、本人が選びやすくなります。
| 選べる方法 | 用意の仕方 | 職員の声かけ例 |
|---|---|---|
| 見学 | 活動が見える、落ち着ける席を作る | 「ここから見てもいいよ」 |
| 途中参加 | 次に入れる順番や区切りを決めておく | 「次の回からでも入れるよ」 |
| 役割選択 | 遊ぶ、道具を並べる、カードをめくるなどを用意する | 「やってみたい役割はある?」 |
| 別の活動 | 静かな制作や読書なども選べるようにする | 「今日は別のことを選んでもいいよ」 |
| 休憩 | 職員が把握できる落ち着いた場所を確保する | 「休んでから決めても大丈夫」 |

見学を「本番に入るまでの待機」と決めつける必要はありません。本人が見て過ごしたい日もあります。一方、見学中に興味を示した場合は、途中から入れる道筋を残しておきます。本人の選択を尊重しながら、選択肢を狭めないことが大切です。
少人数から始められる活動を探している方は、放課後等デイサービスの集団遊び12選|少人数から始める進め方と参加の工夫も参考にしてください。
場面別の支援例|何を確かめ、どう調整する?
ここからは、放課後等デイサービスで起こり得る場面を想定した例です。特定の子どもに実施して効果を確認した事例ではありません。本人の様子を確かめ、事業所の職員間で相談しながら使ってください。
1.ボール遊びを離れた場所から見ている
まず確かめること:ボールそのものには関心があるか。歓声、ボールの速さ、人との距離など、負担になりそうな条件は何か。
調整例:柔らかいボールを使い、2〜3人で転がす活動にする。投げるほかに、ボールを並べる役割や見学席を用意する。
声かけ例:「ここから見られるよ。ボールを並べる役もあるよ。どうしたい?」
ボールを使った別の遊び方は、放課後等デイサービスの運動遊び12選|室内でできる活動と参加しやすい工夫で紹介しています。
2.制作活動で、道具を持たずに座っている
まず確かめること:作る物のイメージは伝わっているか。手順、道具の感触、完成までの長さ、周囲のペースが負担ではないか。
調整例:完成例を見せる。材料を選ぶ、シールを貼る、職員と一工程だけ行うなど、入口を小さくする。作らずに見る選択も残す。
声かけ例:「紙を選ぶところからにする? 今日は見るだけでもいいよ」
3.勝敗のある遊びが始まると席を離れる
まず確かめること:勝ち負け自体が負担なのか、待ち時間や大きな声、ルールが変わることが負担なのか。
調整例:点数を競う代わりに、みんなで目標を達成する形にする。短い回数で終え、順番をカードで示す。
声かけ例:「今日は点数をつけずに、みんなで何回できるか試す方法もあるよ」
順番や勝敗がある活動をどう調整するかは、放課後等デイサービスのSST実践ガイド|活動例10選と進め方・振り返り方でも取り上げています。
4.自由遊びから集団活動への切り替えが難しい
まず確かめること:今の遊びをどこまで続けたいか。終わり方や次の活動を理解しているか。突然の中断になっていないか。
調整例:予告するだけでなく、今の遊びをしまう場所や後で続けられる方法を示す。活動の途中から入る選択肢も伝える。
声かけ例:「ここまで作ったら写真を撮って残そうか。次の遊びは見てから決められるよ」
5.来所直後は活動に向かえない
まず確かめること:学校での一日を終えた後の疲れ、空腹、暑さ、本人が今したいこと。
調整例:水分補給や休息の時間を取り、落ち着いてから活動を選べるようにする。毎回同じ時刻から集団に入ることを前提にしない。
声かけ例:「着いたばかりだから、先に少し休もうか。あとで今日の活動を伝えるね」
私は学校で、送迎時に放課後等デイサービスの職員と短く情報を交わすことがあります。ただし、学校で見えた疲れ方だけで、放デイでの過ごし方を決めることはできません。学校と事業所で確認したい情報については、学校と放課後等デイサービスの連携方法|担任が実践した送迎・予定共有・見学にまとめています。
声かけを増やす前に、伝え方と環境を見直す
本人が返事をしないとき、何度も誘うことが助けになるとは限りません。活動を見られる位置、職員との距離、選択肢の数、説明の長さを調整した方が伝わりやすい場合もあります。
| 負担になり得る関わり | 見直し例 |
|---|---|
| 「みんなやっているよ」と繰り返す | 本人の希望を聞き、見学や別の活動も示す |
| 理由をすぐに言葉で説明させる | 落ち着ける場所で待ち、指さしなどでも選べるようにする |
| 参加するまで活動場所に誘い続ける | 安心できる距離から活動を見られるようにする |
| 一度決めた参加方法を変えられない | 途中から参加する、休む、再び見学する道筋を残す |
本人が選べるようにすることは、放任することではありません。職員は安全を見守りながら、本人の希望を受け止め、必要な支援を提案します。
本人の意思を尊重し、安全に過ごせる体制も整える
活動に入らない子のために、見学席や休憩場所を設ける場合も、職員が様子を把握できる配置にします。出入口、移動経路、道具の置き方を確認し、活動中の子どもと静かに過ごす子どもの双方が安全に過ごせるようにします。
- 見学や休憩の場所から、職員が本人の様子を確認できるか
- ボールや道具が休憩場所へ飛び込まないか
- 途中参加するときの動線が、ほかの子とぶつからないか
- 活動を離れるときに、職員間で誰が見守るか共有できているか
- 本人が困ったとき、助けを求める方法があるか
安全に関わる行動が見られた場合は、その場の安全確保を優先します。その後で、何が起きたかを事実として整理し、本人の意思を確かめながら次の環境調整を考えます。
活動後の記録例|参加の有無だけで評価しない
「参加しなかった」とだけ書いても、次に何を調整すればよいか分かりません。場面、本人の言葉や様子、用意した選択肢、選んだ方法、その後の反応を短く残します。次の二つは、書き方を示すための架空の例です。
記録例1.音が気になり、見学を選んだ
場面:4人でボール遊びを開始。歓声が大きくなったとき、本人は活動場所から離れ、耳に手を添えた。
本人の表現:職員が静かな場所と見学席を示すと、本人は見学席を指さし、「ここで見る」と話した。
試した支援と反応:活動から少し距離のある席を用意。本人は約10分間、座って活動を見た。途中で職員に「あのボール、次はどこに行く?」と尋ねた。
次に確かめること:少人数で音の小さい遊びにしたとき、本人がどの過ごし方を選ぶか。本人に聞いてから試す。
耳に手を添えた理由を、この記録だけで「聴覚過敏」と断定することはできません。観察した事実と職員の仮説を分けておきます。
記録例2.途中から、選んだ役割で関わった
場面:カード遊びの開始時、本人は輪には入らず、近くの椅子から見ていた。
本人の表現:2回目が始まる前に「めくるのはやってみたい」と話した。
試した支援と反応:職員がカードをめくる役を示すと、本人は自分で席から移動し、3枚のカードをめくった。その後「もう見る」と話して見学席に戻った。
次に確かめること:最初に見学席と役割を示し、活動の途中でも選び直せることを伝える。

この場合、「最後まで参加できたか」よりも、本人が希望を伝え、役割を選び、必要に応じて選び直せたことに注目します。
記録に残す六つの項目
- 活動とそのときの人数・音・場所などの条件
- 本人の言葉、表情、行動として確認した事実
- 本人に示した選択肢と、本人が選んだ方法
- 職員が一つ変えて試した支援
- その後の本人の反応や過ごし方
- 次回、本人に確かめたいこと
個別支援計画には、本人の希望と必要な支援をつなぐ
活動記録が重なると、「どの場面で、どんな選択肢があると過ごしやすいか」が見えてきます。児童発達支援管理責任者と職員が本人・保護者の意向を確かめ、必要に応じて個別支援計画の目標や支援内容を検討します。
| 記録から分かったこと | 計画に反映する例 |
|---|---|
| 本人は活動を見ることに関心があり、途中から短い役割を選んだ | 見学できる席を用意し、活動途中でも本人が役割を選べるようにする |
| 歓声が大きい場面では離れ、静かな少人数活動では近くで過ごした | 音や人数を調整した活動を提案し、本人の希望と反応を確認する |
| 来所直後は休みたいと伝え、休息後に活動を選んだ | 来所後の休息と、その後に過ごし方を選ぶ時間を確保する |
例えば目標は「毎回、集団活動に最後まで参加する」ではなく、「本人が活動内容と参加方法を知り、見学・役割参加・休憩などから、その日の過ごし方を伝えられる」といった形が考えられます。これはあくまで記載例です。本人の希望、現在の姿、事業所で提供できる支援に合わせて検討してください。
記録を5領域と結び付けて考える方法は放課後等デイサービスの5領域とは?活動例と個別支援計画へのつなげ方、目標・支援内容・振り返りの書き方は放課後等デイサービスの個別支援計画|書き方・5領域の記入例とPDCAの回し方で詳しく解説しています。
保護者との共有でも、本人の希望と観察した事実を分けて伝える
保護者に「今日も集団活動に参加しませんでした」とだけ伝えると、その日の本人の選択や、関心を向けた場面が伝わりません。
例えば「最初は見学席を選びました。活動を見ながらカードの役割に興味を示し、途中で3枚めくりました。その後は自分で見学に戻ると伝えました」と、事実を具体的に共有します。その上で、本人が話した希望、職員が次に試したい調整を分けて伝えます。
家庭や学校の様子も手がかりになりますが、別の場面での姿をそのまま放課後等デイサービスでの理由と決めつけないことが大切です。
職員同士で「何を試し、何を見るか」を共有する
職員によって「誘い続ける」「見守る」「別の活動を提案する」と対応が分かれると、本人は何を選べるのか分かりにくくなります。活動前後の短い時間でも、事実と仮説を分けて話し、次に試すことを一つ決めておくと、支援を振り返りやすくなります。
- 事実:本人は何を見て、何を話し、どこで過ごしたか
- 本人の意思:どんな過ごし方を希望したか。まだ確認できていないことは何か
- 仮説:どの条件が負担、または参加の助けになった可能性があるか
- 次に試すこと:環境や伝え方を一つ変え、何を観察するか
職員研修を事業所内でどう組み立てるかは、放課後等デイサービス職員研修|研修内容・新人育成・教材の使い方でも紹介しています。
子どもの姿から支援を考える研修を、事業所の中で続けたい方へ
「支援力向上研修システム|事業所研修版」は、基本12講と補完6研修に、講師用台本・受講者ワーク・管理者キットなどを組み合わせた職員研修教材です。子どもの行動を観察し、背景を考え、本人の意思を確かめ、試した支援を振り返るための共通の視点を、職員同士で学ぶ際に活用できます。
よくある質問
集団活動を見学するだけでもよいのでしょうか?
本人が選んで見学しているなら、その時間に何を見て、どのように過ごしているかを確かめます。見学を一律に「参加できていない」と評価せず、本人の希望を聞きながら、途中参加や別の役割も選べるようにしておきます。
誘っても「やらない」と言うときは、もう声をかけない方がよいですか?
その場で繰り返し誘うことは控え、まず本人の選択を受け止めます。活動内容が分かっているか、休みたいのか、別の方法なら関わりたいのかを、落ち着いた場面で確かめます。後で本人から関心を示したときに選び直せるようにします。
集団に入ることを個別支援計画の目標にしてはいけませんか?
本人や保護者の意向と支援上の必要性を踏まえて検討します。ただし「毎回、全員と同じ方法で最後まで参加する」ことだけを目標にすると、本人の希望や参加しやすさを見落とすおそれがあります。どんな条件や支援があれば本人が望む関わり方を選べるかまで具体化することが大切です。
まとめ|「入れたか」より、本人が選べる環境を考える
集団活動に参加しない姿だけで理由を決めることはできません。本人の意思を確かめ、音や人数、見通し、疲れなどの条件を見直し、見学・途中参加・役割選択・別の活動・休憩を選べるようにします。
活動後は、参加の有無だけでなく、本人が示した希望、職員が試した調整、その後の反応を記録します。その積み重ねを職員間で共有し、必要に応じて個別支援計画につなげることで、その子に合った過ごし方を探し続けられます。

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