「SST(ソーシャルスキルトレーニング)は知っているけれど、実際にはどのように進めればよいのだろう?」
「ロールプレイが大切と聞くけれど、具体的な授業の流れが分からない」「子どもが楽しみながら取り組める方法を知りたい」と悩んでいる先生や支援者、保護者の方も多いのではないでしょうか。
SSTは、子どもに「こうするといいよ」と伝えるだけでは十分な効果は期待できません。実際の生活場面を想定しながら何度も練習し、「できた」という成功体験を積み重ねることで、少しずつ日常生活の中でも使えるスキルへと育っていきます。
私は特別支援学級で長年SSTを実践してきましたが、同じ教材を使っていても「どのように進めるか」によって子どもの成長は大きく変わることを何度も経験してきました。
この記事では、SSTトレーニングの基本的な進め方から、授業ですぐに実践できる具体例、効果を高めるポイントまで、現場での経験を交えながら詳しく解説します。
この記事でわかること
- SSTトレーニングの基本的な進め方
- 効果を高める5つのステップ
- 学校や放課後等デイサービスですぐに実践できる方法
- 個別トレーニングと集団トレーニングの違い
- SSTを成功させるポイントと、よくある失敗例
なお、「SSTとは何か」「SSTが注目されている理由」について詳しく知りたい方は、先にSSTとは?目的や効果をわかりやすく解説をご覧ください。
本記事では、「実際にどのようにトレーニングを進めればよいのか」に焦点を当てて解説していきます。
- SSTトレーニングとは
- SSTトレーニングの基本的な進め方|5つのステップ
- 【実践コラム】私がSSTで一番大切にしていること
- 45〜60分でできるSSTトレーニングの授業実践例
- SSTトレーニングでよくある失敗と改善例
- 【実践コラム】私が授業で一番気を付けていること
- SSTトレーニングで使われる主な技法
- 個別トレーニングと集団トレーニングの違い
- 【実践コラム】私が「個別」にこだわりすぎなくなった理由
- 年齢・場面別|SSTトレーニングの実践例
- SSTの効果を高める家庭・学校・放課後等デイサービスの連携
- 【実践コラム】私が保護者の方へ必ず伝えていること
- SSTトレーニングに関するよくある質問(FAQ)
- SSTトレーニングのまとめ|大切なのは「学んだことを生活で使えるようにする」こと
SSTトレーニングとは
SSTトレーニングとは、日常生活で必要となるコミュニケーションや対人関係のスキルを、実際に練習しながら身に付けていく学習方法です。
例えば、次のような場面を取り上げ、子どもたちは先生や友達と一緒に練習を重ねます。
- 友達に仲間へ入れてもらう
- 「貸して」と上手に伝える
- 断られたときの気持ちを切り替える
- 困ったときに先生へ助けを求める
- 自分の気持ちを落ち着いて伝える
- 怒りを言葉で表現する
SSTは、知識を覚える授業ではありません。
例えば、自転車の乗り方は本を読むだけでは身に付かず、実際に何度も乗ることで少しずつ上達していきます。
ソーシャルスキルも同じです。説明を聞くだけでは身に付きにくく、実際にやってみることで初めて生活の中で使える力へと変わっていきます。
そのため、SSTでは「先生が話す時間」よりも、「子どもが練習する時間」をできるだけ多く確保することが重要です。
SSTトレーニングの基本的な進め方|5つのステップ
SSTトレーニングは、ただ「正しい行動」を教えるだけではありません。
基本的には、「教示 → モデリング → リハーサル(ロールプレイ)→ フィードバック → 般化」という流れで進めていきます。
例えば、「友達に貸してほしいと伝える」というスキルを身に付けたい場合、先生が「貸してって言おうね」と教えて終わるのではなく、お手本を見せ、実際に練習し、できたところを具体的に伝え、最後は本当の生活場面で使えるようにつなげていきます。
まずは、SSTトレーニングの基本となる5つのステップを確認してみましょう。
SSTトレーニングの基本5ステップ
- 教示:どのような行動をすればよいのかを知る
- モデリング:先生や友達のお手本を見る
- リハーサル:ロールプレイなどで実際にやってみる
- フィードバック:よかったところや改善点を確認する
- 般化:学んだスキルを実際の生活で使う
この5つを順番に行うことで、子どもは「知る」→「見る」→「やってみる」→「振り返る」→「生活で使う」という流れでソーシャルスキルを身に付けていきます。

SSTを始める前に「何を練習するか」を決める
5つのステップに入る前に、まず大切なのが「その子が今、どんなスキルを必要としているのか」を考えることです。
SSTというと、「あいさつ」「順番を守る」「相手の気持ちを考える」といった定番のテーマから始めたくなるかもしれません。
しかし、本当に大切なのは、教材に子どもを合わせるのではなく、子どもの困りごとにトレーニングを合わせることです。
例えば、休み時間になると友達とのトラブルが増える子がいたとします。
その子の様子をよく見ると、友達と遊びたい気持ちはあるものの、仲間への入り方が分からず、いきなり遊びに入ってしまうことでトラブルになっているのかもしれません。
この場合、「友達と仲良くする」という大きな目標ではなく、
- 「入れて」と言う
- 相手の返事を待つ
- 断られたときの対応を練習する
といったように、具体的な行動まで細かく分けて考えるとSSTを行いやすくなります。
ポイント
「コミュニケーション能力を高める」「友達と仲良くする」のような大きな目標ではなく、子どもが実際に行動できるレベルまで目標を具体化することがSSTを成功させる第一歩です。
STEP1|教示:どのように行動すればよいのかを伝える
最初のステップは「教示」です。

教示では、「こんなときは、どうするとよいのか」という基本的な考え方や行動を子どもに分かりやすく伝えます。
例えば、「友達が使っている色鉛筆を借りたい」という場面を考えてみましょう。
先生が最初から答えを教えるのではなく、まず子どもに問いかけてみます。
【実際のやり取りの例】
先生:「友達が使っている赤い色鉛筆を使いたいとき、どうしたらいいかな?」
子ども:「取る!」
先生:「そうか、使いたいんだね。でも、急に取ったら友達はどんな気持ちになるかな?」
子ども:「嫌な気持ち。」
先生:「そうだね。じゃあ、どうやって伝えたらいいかな?」
このように、子ども自身に考えてもらうことも大切です。
ただし、答えが出ないときに何度も考えさせる必要はありません。「貸してって言う方法もあるよ」と選択肢を示したり、絵カードなどを使ったりして、分かりやすく伝えます。
特に、抽象的な説明だけでは理解しにくい子どもには、「優しく言おう」「ちゃんと話そう」ではなく、「○○さん、貸して」と言うなど、具体的な言葉や行動として示すことが重要です。
STEP2|モデリング:お手本を見せる
次は「モデリング」です。

モデリングとは、先生や支援者、友達などがお手本となり、実際の行動を見せる方法です。
子どもにとって、「優しくお願いしましょう」と言葉だけで説明されるより、実際のお手本を見たほうが理解しやすいことがあります。
先ほどの色鉛筆の場面なら、先生同士や先生と子どもで次のように演じます。
【モデリングの例】
先生A:「○○先生、その赤い色鉛筆、使い終わったら貸してください。」
先生B:「いいですよ。」
先生A:「ありがとう。」
このとき、言葉だけでなく、
- 相手の近くまで行く
- 相手の様子を確認する
- 聞こえる声で伝える
- 相手の返事を待つ
- 借りられたら「ありがとう」と伝える
といったポイントも確認すると、子どもが具体的にイメージしやすくなります。
また、私は「よい例」だけでなく、あえて「うまくいかない例」を見せる方法もよく使います。
先生:「今から先生がやってみるから、どこを直したらもっとよくなるか見つけてね。」
先生が何も言わずに色鉛筆を取る。
先生:「今の先生、どうだった?」
子ども:「勝手に取った!」
先生:「本当だ。じゃあ、どうしたらよかったかな?」
子どもは「間違いを探す活動」が好きなことも多く、楽しみながらポイントに気付けます。
ただし、NG例を印象付けるだけで終わらないよう、最後には必ず望ましい行動のお手本を見せることが大切です。
STEP3|リハーサル:ロールプレイで実際にやってみる
お手本を確認したら、次は子ども自身が実際にやってみます。これが「リハーサル」です。

SSTでは、実際の場面を想定して役割を演じるロールプレイがよく使われます。
例えば、先生が「色鉛筆を使っている友達役」、子どもが「借りたい人役」になります。
【ロールプレイの例】
先生:「先生が色鉛筆を使っている友達になるね。どうやって借りるかやってみよう。」
子ども:「貸して。」
先生:「いいよ。」
子ども:「ありがとう。」
先生:「できたね!」
ここで重要なのは、最初から完璧を求めないことです。
声が小さかったとしても、まず「貸して」と伝えられたのであれば、その成功を認めます。
そのうえで、「今度はもう少し聞こえる声で言ってみようか」と、次の小さな目標を提示します。
SSTで大切なのは、一度で正しい行動を完成させることではありません。
「やってみた → できた → もう一度やってみたい」という流れを作ることが重要です。
ロールプレイが苦手な子には?
人前で演じることに強い抵抗がある子どもに、無理にロールプレイをさせる必要はありません。
最初は先生のお手本を見るだけでも構いません。選択肢から答える、カードを選ぶ、先生と一対一で練習するなど、参加しやすい方法から始めましょう。
STEP4|フィードバック:できたことを具体的に伝える
ロールプレイが終わったら、次は「フィードバック」を行います。
フィードバックとは、子どもができたことや、さらによくするためのポイントを振り返る時間です。
このときに大切なのは、「できなかったこと」よりも、「できたこと」を具体的に伝えることです。
例えば、「よくできたね!」だけでは、子どもは何がよかったのかを理解しにくいことがあります。
そこで、できた行動を具体的な言葉で伝えましょう。
【良いフィードバックの例】
- 「相手の顔を見て話せたね。」
- 「『貸してください』って最後まで言えたね。」
- 「返事を待てたのがとてもよかったよ。」
- 「借りたあとに『ありがとう』と言えたね。」
このように「何がよかったのか」を具体的に伝えることで、子どもは「次も同じようにやってみよう」と考えやすくなります。
一方で、改善点を伝えるときは注意が必要です。
できなかったことを次々と指摘すると、「また失敗した」「やりたくない」という気持ちにつながることがあります。
改善点は一度に一つだけに絞りましょう。
【改善点の伝え方の例】
✕「声が小さいし、顔も見てないし、ありがとうも言えなかったね。」
〇「『貸してください』と言えたのはとてもよかったね。次はもう少し大きな声で言えると、もっと伝わりやすくなるよ。」
このように、「できたこと → 次の目標」という順番で伝えることで、子どもは安心して次のチャレンジに取り組めます。
また、可能であれば子ども自身にも振り返ってもらいましょう。
先生からの問いかけ例
- 「今日、一番うまくできたことは何だった?」
- 「もう一回やるとしたら、どこを工夫したい?」
- 「実際の休み時間でもできそうかな?」
自分で振り返る習慣が身に付くと、少しずつ「自分で考えて行動を調整する力」も育っていきます。
STEP5|般化:学んだスキルを生活の中で使えるようにする
SSTトレーニングの最後のステップが「般化(はんか)」です。
般化とは、授業で練習したことを、学校生活や家庭、地域など実際の生活場面でも使えるようにすることをいいます。
私は、この般化こそがSSTで最も大切なステップだと考えています。
なぜなら、教室で上手にロールプレイができても、休み時間や家庭で使えなければ、本当の意味で身に付いたとは言えないからです。
例えば、「友達に『入れて』と言う練習」を授業で行ったとします。
授業中は笑顔で言えたとしても、実際の休み時間になると、恥ずかしさや緊張から何も言えなくなることがあります。
これは決して珍しいことではありません。
だからこそ、SSTは授業が終わってからが本番なのです。
般化を促す工夫
- 休み時間に先生がさりげなく声をかける
- 実際に友達と遊ぶ場面を作る
- 成功したらすぐに褒める
- 家庭でも同じ言葉掛けをお願いする
- 放課後等デイサービスとも目標を共有する
例えば、休み時間に遊んでいる友達を見つけたら、先生が小さな声で
「今が練習するチャンスだね。」
と背中を押してあげるだけでも、一歩踏み出せる子は少なくありません。
そして、「入れて」と言えたら、その場ですぐに認めます。

先生:「今、自分から『入れて』って言えたね!」
子ども:「うん。」
先生:「先生、とてもうれしかったよ。友達もちゃんと聞いてくれたね。」
このように、実際の生活場面で成功体験を積み重ねることが、ソーシャルスキルを定着させる一番の近道です。
【実践コラム】私がSSTで一番大切にしていること
これまで特別支援学級で多くの子どもたちとSSTに取り組んできましたが、私が一番大切にしていることは、「授業で上手にできること」をゴールにしないことです。
授業ではできるのに、休み時間になるとできない。
学校ではできるのに、家ではできない。
このような姿は決して珍しくありません。
だから私は、授業中のロールプレイだけで終わらせず、休み時間や給食、掃除、家庭など、「実際に使える場面」をできるだけ多く作るようにしています。
そして、子どもが生活の中で成功したときは、「できたね!」ではなく、「さっき自分からお願いできたね」「友達の返事を待てたね」というように、具体的な行動をその場で伝えるよう心掛けています。
SSTは、一回の授業で劇的に変わるものではありません。
小さな成功体験を積み重ね、それを学校・家庭・放課後等デイサービスで共有しながら少しずつ広げていくことで、子どもたちの「できる」は確実に増えていきます。
45〜60分でできるSSTトレーニングの授業実践例
「SSTの進め方は分かったけれど、実際の授業ではどのように進めればよいのだろう?」
そのように感じる先生も多いのではないでしょうか。
SSTは、特別な教材や長時間の授業がなければできない活動ではありません。
大切なのは、一つのテーマを繰り返し練習し、「生活の中で使える力」につなげることです。
ここでは、私が実際の指導でも意識している45〜60分程度の授業の流れを紹介します。
45〜60分の授業モデル
| 活動 | 時間 |
|---|---|
| ①導入・今日のテーマ確認 | 5分 |
| ②困る場面を考える | 5〜10分 |
| ③先生がお手本を見せる(モデリング) | 10分 |
| ④ロールプレイで練習する | 15〜20分 |
| ⑤振り返り・生活場面へつなげる | 10分 |

導入 → 場面確認 → お手本 → ロールプレイ → 振り返り → 実生活へ
①導入(5分)|今日のテーマを確認する
授業の最初は、「今日は何を練習する時間なのか」を子どもたちに分かりやすく伝えます。
例えば今日のテーマが「友達に仲間へ入れてもらう」なら、黒板やカードにテーマを書いておくと理解しやすくなります。
先生
「今日は、友達が遊んでいるときに、どうやって仲間へ入れてもらうかを練習します。」
「みんなは『入れて』って言えたことある?」
ここでは正解を求める必要はありません。
「言えた」「言えなかった」「恥ずかしかった」など、自分の経験を思い出せるだけでも十分です。
②困る場面をみんなで考える(5〜10分)
次に、今日のテーマに関係する困る場面を一緒に考えます。
例えば、こんな問い掛けをしてみましょう。
- どんなときに「入れて」と言えない?
- 断られたらどんな気持ちになる?
- 急に遊びへ入るとどうなる?
子どもたちが自由に話せる雰囲気をつくることが大切です。
もし意見が出ない場合は、イラストや写真、場面カードを見せるとイメージしやすくなります。
③先生がお手本を見せる(約10分)
ここでモデリングを行います。
先生同士や先生と子どもで、まずは良い例を見せましょう。
先生A
「一緒に遊んでもいい?」
先生B
「もちろん!」
先生A
「ありがとう!」
その後、「今の先生はどんなところが良かった?」と子どもたちへ質問します。
ここで
- 笑顔だった
- 相手を見ていた
- 返事を待っていた
- ありがとうと言えた
など、子ども自身に気付いてもらえると理想的です。
さらに、あえて悪い例を見せるのもおすすめです。
子どもたちは「どこがおかしいかな?」という活動が大好きです。
④ロールプレイで実際に練習する(15〜20分)
授業の中心となる活動です。
先生と一緒に練習した後、友達同士でも挑戦してみましょう。
ここで意識したいのは、全員の成功体験を作ることです。
できなかったところを探すのではなく、小さな成功を積み重ねます。
✔ 「入れて」と言えた
✔ 相手の返事を待てた
✔ 笑顔で話せた
✔ 「ありがとう」が言えた
一人一人の良かったところを具体的に伝えることで、次の挑戦への意欲につながります。
⑤振り返り・生活につなげる(10分)
最後は、授業で終わらせないことが大切です。
子どもたちに次のような質問をしてみましょう。
- 今日、一番うまくできたことは?
- 休み時間に挑戦できそう?
- 家でもやってみたいことは?
そして最後に、先生から一つだけ宿題を出します。
今日のチャレンジ
休み時間に一回だけ「入れて」と言ってみよう。
このように、授業と生活をつなぐ小さな目標を設定することで、SSTは「授業だけの学習」ではなく、実際の生活に生かせる力へと変わっていきます。
授業準備の時間を短縮したい先生へ
SSTの授業では、場面カードやワークシートを一から作るだけでも多くの時間がかかります。
私は実際の授業で活用してきた「こんなときどうする?」SSTカード(50場面)やSSTワークシート(全50枚・指導書付き)を教材としてまとめています。
「明日の授業ですぐ使える教材がほしい」「場面設定を考える時間を減らしたい」という先生は、ぜひ活用してみてください。
SSTトレーニングでよくある失敗と改善例
SSTは、教材が良ければ必ず効果が出るというものではありません。
同じ教材を使っていても、「進め方」や「先生の関わり方」によって、子どもの反応は大きく変わります。
私自身も、特別支援学級でSSTを始めた頃は、「うまくいかなかったな」と感じる授業を何度も経験しました。
その経験を振り返ると、共通する失敗パターンがいくつかあります。
ここでは、現場でよくある失敗例と、その改善方法を紹介します。
失敗① 「教えること」が目的になってしまう
初めてSSTを行う先生によくあるのが、説明の時間が長くなってしまうことです。
「こういうときは、こう言いましょう。」
「友達には優しくしましょう。」
先生が一生懸命説明している間、子どもたちは静かに聞いています。
しかし、授業が終わると実際の生活では同じことを繰り返してしまう……ということは珍しくありません。
これは、知識として理解できても、実際に使う経験が不足しているためです。
改善のポイント
SSTは「先生が話す授業」ではなく、「子どもが練習する授業」です。
説明は短くし、できるだけ早くロールプレイやゲーム、実際のやり取りへ移りましょう。
目安は「先生が話す時間3割・子どもが活動する時間7割」です。
失敗② 一度にたくさん教えようとしてしまう
例えば、「友達に物を借りる」というテーマで、次のように指導してしまうことがあります。
- 相手の顔を見る
- 笑顔で話す
- 「貸してください」と言う
- 返事を待つ
- 借りたら「ありがとう」と言う
- 使い終わったら返す
どれも大切なことですが、一度に全部を意識するのは子どもにとって負担が大きくなります。
結果として、「何を頑張ればよいのか」が分からなくなってしまうことがあります。
改善のポイント
一回の授業では「今日の目標は一つ」を意識しましょう。
例えば今回は「『貸してください』と言うことができたら成功」と決めます。
その目標が定着してから、次の授業で「相手の返事を待つ」「ありがとうを伝える」と、少しずつステップアップしていくほうが、子どもは成功体験を積み重ねやすくなります。
失敗③ できなかったことばかり指摘してしまう
SSTでは、「もっと大きな声で」「相手を見て」「ありがとうも言おうね」と、つい改善点をたくさん伝えたくなります。
もちろん改善点を伝えることは大切ですが、そればかりになると、子どもは「また注意された」と感じてしまいます。
すると、「もうやりたくない」「失敗するのが嫌だ」という気持ちにつながることもあります。
改善のポイント
まずは、できたことを具体的に認めましょう。
例えば、
- 「自分から声を掛けられたね。」
- 「最後まで言えたね。」
- 「相手の返事を待てたね。」
と伝えたうえで、改善点は一つだけ伝えます。
子どもが「次もやってみよう」と思えるフィードバックを意識することが大切です。
失敗④ ロールプレイだけで終わってしまう
授業中は上手にできたのに、休み時間になると全く使えない。
これは、多くの先生が経験することではないでしょうか。
実は、SSTで一番重要なのは授業が終わった後です。
授業の中でできることと、実際の生活でできることには大きな違いがあります。
改善のポイント
授業の最後には、生活につながる小さな目標を設定しましょう。
- 休み時間に一回だけ「入れて」と言ってみる。
- 給食で「ありがとう」を伝えてみる。
- 家でお手伝いをお願いするときに「お願いします」と言ってみる。
そして、実際にできたら、その場ですぐに認めることが大切です。
失敗⑤ 先生だけで頑張ってしまう
SSTは、週に一回の授業だけでは定着しにくいことがあります。
子どもがスキルを身に付けるためには、学校だけでなく、家庭や放課後等デイサービスなど、さまざまな場面で同じ目標を意識することが重要です。
例えば、「困ったときは『手伝ってください』と言う」という目標なら、学校でも家庭でも同じ言葉を使って練習できると、子どもは安心して挑戦できます。
改善のポイント
保護者や支援者と、今取り組んでいるSSTのテーマを共有しましょう。
「今週は『貸してください』を練習しています。」
「家でもお願いする場面があれば、ぜひ声を掛けてみてください。」
このような一言だけでも、般化につながる機会が大きく増えていきます。
【実践コラム】私が授業で一番気を付けていること
私がSSTの授業で一番意識しているのは、「成功して終わる授業にすること」です。
以前は、「もっとこうしたらよかったね」と改善点をたくさん伝えてしまうことがありました。
すると、子どもは頑張ったにもかかわらず、「またできなかった」と感じてしまうことがありました。
それ以来、私は授業の最後に必ず「今日できるようになったこと」を子どもと一緒に確認するようにしています。
「今日は自分からお願いできたね。」
「今日は相手の返事を待てたね。」
そんな小さな成功を積み重ねた子どもほど、休み時間や家庭でも少しずつチャレンジする姿が増えていきました。
SSTは、一回で劇的な変化を求める活動ではありません。
小さな成功を積み重ね、その成功を生活の中へ広げていくこと。
それが、子どもの「できる」を増やす一番の近道だと感じています。
SSTトレーニングで使われる主な技法
SSTトレーニングでは、一つの方法だけを繰り返すのではなく、子どもの発達段階や特性、学習する内容に合わせてさまざまな技法を組み合わせながら進めます。
例えば、先生がお手本を見せるほうが理解しやすい子もいれば、ゲームを通して楽しみながら学ぶほうが意欲的に取り組める子もいます。
ここでは、学校や放課後等デイサービスでよく使われる代表的な技法を紹介します。
① ロールプレイ|実際の場面を再現して練習する
ロールプレイは、SSTで最もよく使われる技法です。
実際に起こりそうな場面を設定し、それぞれの役になりきって会話や行動を練習します。
例えば、次のようなテーマがよく使われます。
- 友達に「入れて」と伝える
- 物を貸してもらう
- 断られたときの対応
- 困ったときに先生へ助けを求める
- 嫌なことを言われたときの返し方
ロールプレイの良いところは、「知っている」だけではなく、「実際にできる」へつなげやすいことです。
また、何度でも繰り返し練習できるため、自信を付けやすいというメリットもあります。
こんな子におすすめ
- 会話の経験が少ない子
- 実際の場面になると緊張してしまう子
- 相手の気持ちを考える練習をしたい子
▶ ロールプレイの具体例は、下記のnote記事をで詳しく解説しています。

② モデリング|先生や友達がお手本を見せる
モデリングとは、先生や支援者、友達が望ましい行動のお手本を見せる方法です。
「相手の目を見て話しましょう」と言葉だけで説明されるよりも、実際のやり取りを見たほうが理解しやすい子どもは多くいます。
私は授業で、良い例だけでなく、あえて「うまくいかない例」も演じることがあります。
「先生のどこを直したらもっとよくなるかな?」と問い掛けると、子どもたちは楽しみながらポイントを見つけてくれます。
モデリングで確認したいポイント
- 相手の近くまで行く
- 聞こえる声で話す
- 返事を待つ
- 借りられたら「ありがとう」を伝える
行動を細かく分けて見せることで、子どもは「何をすればよいか」を具体的にイメージできるようになります。
③ ゲーム形式|楽しみながらソーシャルスキルを学ぶ
「勉強」と聞くと消極的になる子でも、ゲームになると積極的に参加できることがあります。
そのため、SSTではゲーム形式の活動もよく取り入れられています。
例えば、次のような活動があります。
- 場面カードを使ったクイズ
- すごろく形式で会話を練習するゲーム
- 気持ちカードを使った感情当てゲーム
- ジェスチャーゲーム
- 協力ゲーム
ゲーム形式の活動は、「勝ち負け」だけが目的ではありません。
順番を待つことや、相手を応援すること、ルールを守ることなど、さまざまなソーシャルスキルを自然に学べるのが魅力です。
実践のポイント
ゲームが盛り上がるほど、「何を練習するゲームなのか」が分からなくなることがあります。
活動の最後には、「今日は何を練習したかな?」と振り返る時間を必ず設けましょう。
④ ワークシート|考えを整理し、振り返りにつなげる
ワークシートは、自分の気持ちや考えを整理したり、授業を振り返ったりするときに役立つ教材です。
例えば、
- 困った場面を書く
- そのときの気持ちを書く
- どうすればよかったか考える
- 次に挑戦したいことを書く
といった内容を記入することで、自分の行動を客観的に振り返ることができます。
また、書いた内容を先生や保護者と共有することで、学校と家庭が同じ目標に向かって支援しやすくなるというメリットもあります。
文字を書くことが苦手な子には、イラストや選択肢を取り入れたワークシートがおすすめです。
ワークシートを使うタイミング
- 授業の導入
- ロールプレイの前
- 授業の振り返り
- 家庭への持ち帰り
おすすめのワークシートはこちらです↓

子どもに合わせて技法を組み合わせることが大切
SSTには、「この方法が一番良い」という正解はありません。
例えば、人前で話すことが苦手な子に、いきなりロールプレイをさせると、大きな負担になることがあります。
その場合は、先生のお手本を見るところから始めたり、カードを選ぶ活動やワークシートで考えを整理したりしてから、少しずつロールプレイへつなげるほうが安心して参加できます。
大切なのは、教材に子どもを合わせるのではなく、子どもに合わせて教材や技法を選ぶことです。
授業ですぐ使えるSST教材を探している先生へ
「場面設定を考える時間がない」「すぐに授業で使える教材がほしい」という先生向けに、私が実際の授業で活用してきた教材をまとめています。
- SSTカード「こんなときどうする?」
50の生活場面を収録。ロールプレイや話し合い活動ですぐに使えます。 - SSTワークシート(全50枚・指導書付き)
導入・振り返り・家庭との連携まで活用できる実践教材です。
どちらも「明日の授業からすぐ使えること」を目的に作成しています。
個別トレーニングと集団トレーニングの違い
SSTトレーニングは、大きく分けると「個別トレーニング」と「集団トレーニング」の2つの方法があります。
「どちらのほうが効果的ですか?」という質問をいただくことがありますが、実際にはどちらが優れているというものではありません。
大切なのは、子どもの発達段階や現在の困りごとに合わせて選ぶことです。
まずは、それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 比較項目 | 個別トレーニング | 集団トレーニング |
|---|---|---|
| 対象人数 | 先生と子どもの1対1 | 2〜6人程度のグループ |
| 進め方 | 一人一人の課題に合わせやすい | 友達とのやり取りを通して学ぶ |
| メリット | 安心して練習できる | 実際のコミュニケーションに近い |
| デメリット | 実生活への般化が課題になりやすい | 緊張して参加しにくい子もいる |
| 向いている子 | 初めてSSTに取り組む子、人前が苦手な子 | 基本的なスキルが身に付き始めた子 |
個別トレーニングのメリット
個別トレーニングは、先生や支援者と1対1で行うため、子どものペースに合わせて進められることが大きな特徴です。
例えば、人前で話すことに強い不安がある子や、新しい活動への抵抗感が強い子でも、安心できる環境で少しずつ練習できます。
また、その子が困っている場面だけを取り上げられるため、目標を細かく設定しやすいというメリットもあります。
個別トレーニングが向いているケース
- 初めてSSTに取り組む子
- 人前で話すことに強い緊張がある子
- 自分の気持ちを言葉で表現することが苦手な子
- 一つずつ丁寧に練習したい子
一方で、先生とのやり取りだけでは、実際の友達とのコミュニケーションとは状況が異なります。
そのため、「先生とはできるけれど、友達相手になるとうまくいかない」ということも少なくありません。
個別トレーニングだけで終わらせず、生活場面へつなげていく視点が大切です。
集団トレーニングのメリット
集団トレーニングでは、友達と一緒に活動しながらソーシャルスキルを学びます。
実際のコミュニケーションは相手がいて初めて成り立つため、集団での練習はより実生活に近い経験になります。
例えば、
- 順番を待つ
- 相手の話を最後まで聞く
- 友達の気持ちを考える
- 協力して活動する
などは、集団だからこそ学びやすい内容です。
また、友達の良い行動を見ること自体が「モデリング」となり、お互いに学び合えることも集団活動の魅力です。
集団トレーニングが向いているケース
- 基本的なあいさつや会話ができる子
- 友達とのやり取りを増やしたい子
- ゲームやグループ活動が好きな子
- 生活場面へつなげたい子
ただし、集団になると周囲の刺激が増えるため、不安が強い子や初めて参加する子にとっては負担になることがあります。
その場合は、無理に参加させるのではなく、見学から始めたり、先生と一緒に活動したりするなど、安心して参加できる工夫が必要です。
私がおすすめするのは「個別→集団」のステップアップ
これまで特別支援学級でSSTを実践してきた中で、私が最も効果を感じているのは、個別トレーニングから始め、少しずつ集団へ広げていく方法です。
例えば、「友達に『入れて』と言う」ことを目標にする場合、次のような流れで進めます。
おすすめのステップ
- 先生と1対1で練習する
- 先生と友達1人で練習する
- 2〜3人の小集団で練習する
- 休み時間に実際に挑戦する
- 先生は見守りながら必要なときだけ支援する
このように段階的に進めることで、子どもは安心感を保ちながら成功体験を積み重ねられます。

反対に、いきなり大人数の前でロールプレイを行うと、「恥ずかしい」「失敗したくない」という気持ちが強くなり、本来の力を発揮できないこともあります。
大切なのは「どちらを選ぶか」ではなく「どう組み合わせるか」
個別トレーニングにも集団トレーニングにも、それぞれ良さがあります。
そのため、「個別だけ」「集団だけ」と決めるのではなく、子どもの様子に合わせて柔軟に組み合わせることが重要です。
例えば、新しいスキルを学ぶときは個別で丁寧に練習し、その後は集団活動や休み時間の中で繰り返し使う機会を増やしていくと、生活の中へ定着しやすくなります。

現場で意識したいポイント
- 新しいスキルは個別で安心して学ぶ
- 慣れてきたら小集団へ広げる
- 最後は学校生活や家庭で実際に使う
- 成功した場面をすぐに認め、自信につなげる
【実践コラム】私が「個別」にこだわりすぎなくなった理由
以前の私は、「まずは個別で完璧にできるようになってから集団へ」と考えていました。
しかし、実際には先生となら上手に話せても、友達が相手になると緊張して何も言えなくなる子が多くいました。
その経験から、「完璧になってから次へ進む」のではなく、少しできるようになった段階で、安心できる小集団へ広げることを意識するようになりました。
もちろん失敗することもあります。
それでも、友達とのやり取りの中で得られる学びは、先生との練習だけでは得られないものがあります。
SSTは「失敗しないようにする学習」ではなく、安心して挑戦し、小さな成功を積み重ねる学習です。
そのためにも、個別と集団を上手に組み合わせながら、一人一人に合ったステップで支援していくことが大切だと感じています。
年齢・場面別|SSTトレーニングの実践例
SSTトレーニングは、どの年齢でも同じ内容を行うわけではありません。
子どもの発達段階や生活環境によって、必要なソーシャルスキルは大きく異なります。
例えば、小学校低学年では「あいさつ」や「順番を待つこと」が中心になりますが、高学年になると「相手の気持ちを考える」「トラブルを話し合いで解決する」といった、より複雑なスキルも必要になります。
ここでは、年齢や場面ごとに取り組みやすいテーマを紹介します。
幼児期(年中〜年長)のSST
幼児期は、「ルールを理解する」「気持ちを言葉で表現する」といった基本的なソーシャルスキルを育てる時期です。
この年代では、長い説明よりも、遊びや絵本、ゲームを通して学ぶ活動が効果的です。
おすすめのテーマ
- あいさつをする
- 順番を待つ
- 貸して・ありがとうを言う
- 友達と一緒に遊ぶ
- 気持ちを言葉で伝える
「できた・できない」を評価するよりも、「やってみよう」と思える経験を増やすことが大切です。
小学校低学年(1〜3年)のSST
小学校低学年は、友達との関わりが一気に増える時期です。
そのため、学校生活ですぐに使える内容を取り上げると、学んだことを生活へ生かしやすくなります。
おすすめのテーマ
- 友達を遊びに誘う
- 仲間へ入れてもらう
- 困ったときに先生へ伝える
- 負けても気持ちを切り替える
- ありがとう・ごめんなさいを伝える
- 給食や掃除で協力する
特に低学年では、ロールプレイやゲーム形式を取り入れると、楽しみながら繰り返し練習できます。
▶ 小学生向けの実践例は、SST小学生向け実践例まとめで詳しく紹介しています。
小学校高学年(4〜6年)のSST
高学年になると、人間関係がより複雑になります。
そのため、「正しい答え」を覚えるだけではなく、「相手の立場を考える」「自分で解決方法を選ぶ」といった活動が重要になります。
おすすめのテーマ
- 断り方・頼み方
- SNSやオンラインゲームでのやり取り
- 友達とのトラブル解決
- 怒りとの付き合い方
- 相手の気持ちを考える
- 話し合いで折り合いをつける
一つの正解を教えるのではなく、「自分ならどうする?」「他の方法はあるかな?」と考える時間を設けることが大切です。

放課後等デイサービスでのSST
放課後等デイサービスでは、学校とは異なるメンバーや活動内容を生かしたSSTができます。
自由遊びや集団活動の中で、実際のコミュニケーション場面をつくりやすいことが大きな特徴です。
おすすめの活動
- 協力ゲーム
- SSTすごろく
- 場面カードで話し合う活動
- 買い物学習
- 調理活動
- 地域への外出活動
学校・家庭・放課後等デイサービスで同じ目標を共有すると、学んだスキルが定着しやすくなります。
▶ 放課後等デイサービスでの実践例は、放課後等デイサービスのSST実践ガイド
をご覧ください。
家庭でもできるSSTトレーニング
SSTは、学校や放課後等デイサービスだけで行うものではありません。
家庭にも、ソーシャルスキルを練習できる場面はたくさんあります。
家庭で取り組みやすい例
- 買い物で店員さんへ「お願いします」と伝える
- 食事の前後に「いただきます」「ごちそうさま」を言う
- 兄弟で順番を決める
- 家族へお願いするときに「〇〇してください」と伝える
- ゲームで負けたときの気持ちを話し合う
特別な教材がなくても、日常生活そのものがSSTの練習になります。
保護者の方は、「できなかったこと」を注意するよりも、「自分から言えたね」「順番を待てたね」と、小さな成功を認めることを意識すると、子どもの自信につながります。
年齢よりも「今困っていること」を大切に
ここまで年齢別に紹介しましたが、実際の支援では「○年生だからこの内容」と決める必要はありません。
例えば、小学校5年生でも「友達に入れてと言えない」ことが課題の子もいますし、小学校2年生でも気持ちの切り替えが上手な子もいます。
大切なのは年齢ではなく、「今、その子がどんな場面で困っているのか」です。
困りごとに合わせてテーマを選ぶことで、SSTは子どもの生活に直結する学びになります。
SSTの効果を高める家庭・学校・放課後等デイサービスの連携
SSTは、週に1回の授業だけで身に付くものではありません。
授業で学んだことを、学校生活や家庭、放課後等デイサービスなど、さまざまな場面で繰り返し使うことで、少しずつ「できること」として定着していきます。
そのため、SSTの効果を高めるには、学校・家庭・放課後等デイサービスが同じ目標を共有することがとても大切です。

「学校ではできるのに家ではできない」「放課後等デイサービスではできるのに学校では難しい」ということは珍しくありません。
環境が変わると、子どもにとって求められる行動や人間関係も変わるためです。
だからこそ、それぞれの支援者が同じ方向を向いて関わることが重要になります。
学校で取り組んでいる目標を共有する
まず大切なのは、「今、どんなソーシャルスキルを練習しているのか」を家庭や放課後等デイサービスへ伝えることです。
例えば、学校で「困ったときに『手伝ってください』と伝える」ことを練習しているなら、その目標を保護者や支援員にも共有します。
共有の例
- 今週は「入れて」と伝える練習をしています。
- 困ったときは「手伝ってください」と言うことを目標にしています。
- 断られたときに気持ちを切り替える練習を始めました。
目標を共有するだけでも、家庭や放課後等デイサービスで同じ声掛けがしやすくなります。
「同じ言葉掛け」を意識する
支援する人によって伝え方が大きく違うと、子どもは混乱してしまうことがあります。
例えば、学校では「困ったら『手伝ってください』と言おうね」と伝えているのに、家庭では「自分で頑張りなさい」と言われてしまうと、どちらを意識すればよいのか分からなくなります。
もちろん、家庭ごとの考え方を無理に変える必要はありません。
ただ、SSTで練習している言葉や行動については、できるだけ同じ表現を使うことで、子どもは安心して挑戦しやすくなります。
例
- 「困ったら『手伝ってください』と言ってみよう。」
- 「ありがとうを伝えられたね。」
- 「順番を待てたね。」
同じ言葉を繰り返し聞くことで、子どもは場面が変わっても行動を思い出しやすくなります。
できなかったことより「できたこと」を共有する
保護者面談や連絡帳では、「今日はトラブルがありました」「今日はうまくいきませんでした」といった報告が多くなりがちです。
もちろん課題を共有することは大切ですが、それだけでは子どもも保護者も前向きな気持ちになりにくいことがあります。
私はできるだけ、小さな成功も一緒に伝えるようにしています。
共有の例
- 今日は自分から「貸してください」と言えました。
- 先生に助けを求めることができました。
- 友達の返事を最後まで待つことができました。
- 怒る前に深呼吸を思い出せました。
こうした成功体験を家庭でも共有すると、「家でも挑戦してみよう」という前向きな雰囲気が生まれます。
生活の中で練習できる場面を増やす
SSTは、特別な時間だけで行うものではありません。
日常生活には、ソーシャルスキルを練習できる場面がたくさんあります。
家庭で取り組みやすい場面
- 買い物で店員さんに「お願いします」と伝える
- 家族に「手伝ってください」とお願いする
- ゲームで負けたときに気持ちを切り替える
- 兄弟で順番を決める
- 食事の前後にあいさつをする
放課後等デイサービスでも、おやつの時間や自由遊び、外出活動などはSSTを実践する絶好の機会です。
「今日は授業で練習したことを一回だけやってみよう。」
そんな小さな目標を作るだけでも、般化につながりやすくなります。
無理に「できる」を求めすぎない
SSTに取り組み始めると、「早くできるようになってほしい」と期待する気持ちが強くなることがあります。
しかし、ソーシャルスキルは知識ではなく、経験を積み重ねながら少しずつ身に付いていく力です。
今日は先生と一緒に言えた。
次は友達にも言えた。
その次は家族にも言えた。
このように、小さな成功を積み重ねることが、将来の大きな自信につながります。
【実践コラム】私が保護者の方へ必ず伝えていること
保護者の方から、「家ではなかなかできません」「学校では本当にできていますか?」と相談を受けることがあります。
そのとき、私が必ずお伝えするのは、「学校で一度でもできたことは、大きな一歩です」ということです。
最初は先生と一緒でなければできなかったことも、繰り返し経験することで、少しずつ友達へ、そして家庭へと広がっていきます。
だからこそ、私は「まだできないこと」よりも、「今日はここまでできた」という成長を一緒に喜びたいと思っています。
SSTは、短期間で結果を求める学習ではありません。
学校・家庭・放課後等デイサービスが同じ目標を共有し、小さな成功を積み重ねていくことで、子どもの「できる」は少しずつ増えていきます。
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SSTトレーニングに関するよくある質問(FAQ)
Q1. SSTトレーニングは何歳から始められますか?
明確な年齢の基準はありませんが、一般的には4〜5歳頃(年中・年長)から始められることが多いです。
ただし、「何歳だから始める」のではなく、「友達との関わりで困りごとが見られる」「自分の気持ちを伝えることが難しい」といったタイミングが始めどきと考えるとよいでしょう。
幼児期は遊びを通した活動、小学生以降はロールプレイやワークシートなどを取り入れると、年齢に応じた学びにつながります。
Q2. 家庭だけでもSSTトレーニングはできますか?
はい、家庭でも取り組めます。
特別な教材がなくても、買い物や食事、兄弟との遊びなど、日常生活にはソーシャルスキルを練習できる場面がたくさんあります。
例えば、「お願いします」「ありがとう」を伝えることや、順番を待つことも立派なSSTです。
ただし、家庭だけでは友達とのやり取りを十分に経験できないこともあるため、学校や放課後等デイサービスと連携しながら取り組むと、より効果が期待できます。
Q3. SSTトレーニングはどれくらい続けると効果がありますか?
個人差はありますが、数回の授業だけで大きな変化が現れることは多くありません。
SSTは「知識」を学ぶのではなく、「生活の中で使えるスキル」を身に付ける学習です。
学校や家庭で繰り返し練習し、小さな成功体験を積み重ねることで、少しずつ定着していきます。
短期間で結果を求めるのではなく、長い目で見守ることが大切です。
Q4. ASD(自閉スペクトラム症)以外の子にも効果がありますか?
もちろんです。
SSTはASDのある子どもだけでなく、ADHDや知的障害のある子ども、人間関係に不安を感じている子どもなど、さまざまな子どもに活用されています。
また、通常学級でも、友達との関わり方やコミュニケーションを学ぶ活動として取り入れられることがあります。
大切なのは診断名ではなく、「どのような場面で困っているか」に合わせて内容を考えることです。
Q5. SSTに向いていない子はいますか?
「SSTが向いていない子」というよりも、進め方を工夫したほうがよいケースがあります。
例えば、人前で話すことへの不安が強い子は、最初から集団でロールプレイを行うと負担が大きくなることがあります。
その場合は、先生との個別練習やカード教材、ゲーム形式など、安心して参加できる方法から始めると取り組みやすくなります。
Q6. SSTではどんな教材を使うと効果的ですか?
学ぶ内容によって適した教材は異なります。
- ロールプレイを行うなら場面カード
- 考えを整理するならワークシート
- 楽しく学ぶならゲーム教材
- 気持ちを理解するなら感情カード
大切なのは、「教材を使うこと」が目的ではなく、「子どもが生活の中で使えるようになること」を目的に教材を選ぶことです。
Q7. 学校と家庭では、どちらを優先すればよいですか?
どちらか一方ではなく、両方で取り組むことが理想です。
学校では友達とのやり取りを経験し、家庭ではその日の学びを繰り返し練習することで、ソーシャルスキルはより定着しやすくなります。
学校・家庭・放課後等デイサービスが同じ目標を共有し、小さな成功を積み重ねることが、SSTの効果を高めるポイントです。
SSTトレーニングのまとめ|大切なのは「学んだことを生活で使えるようにする」こと
ここまで、SSTトレーニングの基本的な進め方から、具体的な技法、個別・集団での取り組み方、年齢別の実践例、家庭・学校・放課後等デイサービスの連携まで紹介してきました。
最後に、SSTトレーニングを実践するときに押さえておきたいポイントを3つにまとめます。
この記事の3つのポイント
①「教える」だけで終わらず、実際に練習する
SSTでは、先生がソーシャルスキルについて説明するだけでは十分ではありません。
教示 → モデリング → リハーサル → フィードバック → 般化という流れを意識し、実際に子どもが「やってみる」時間を確保することが大切です。
特に、授業の中でできたことを、休み時間や家庭などの実生活につなげていくことを意識しましょう。
② 子どもに合わせて「個別」と「集団」を使い分ける
個別トレーニングと集団トレーニングには、それぞれメリットがあります。
初めて取り組む場合や、人前での緊張が強い場合は個別から始め、少しずつ小集団へ広げていく方法もあります。
「どちらが正しいか」ではなく、「今の子どもにどの方法が合っているか」を考えることがポイントです。
③ 小さな成功を積み重ね、生活の中へ般化させる
SSTの最終的な目的は、SSTの授業中に上手にできるようになることではありません。
学んだスキルを、学校生活や家庭、放課後等デイサービスなど、実際の生活の中で使えるようにすることが大切です。
「今日は自分から言えた」「先生と一緒ならできた」という小さな成功を積み重ねることが、次の挑戦につながります。
SSTは「できないことを直すため」だけのトレーニングではありません
SSTに取り組んでいると、「この子は友達と上手に話せるようになってほしい」「トラブルを減らしたい」と、できないことに目が向きやすくなります。
もちろん、困っていることを減らしていくことは大切です。
しかし、それだけを目標にしてしまうと、子どもにとってSSTが「できないことを指摘される時間」になってしまうことがあります。
大切なのは、その子が自分らしく人と関わり、困ったときに助けを求めたり、自分の気持ちを伝えたりできる力を育てることです。
だからこそ、「できなかったこと」だけではなく、「今日はここまでできた」という小さな変化にも目を向けてみてください。
最初は先生と一緒ならできた。
次は友達と一緒にできた。
そして、いつか自分一人でできるようになった。
その一歩一歩を支えることが、SSTトレーニングの大切な役割です。
明日の授業から、まず一つだけ始めてみましょう
「SSTをやってみたいけれど、何から始めればいいのか分からない」と感じている先生もいるかもしれません。
そんなときは、最初から完璧なSSTプログラムを作る必要はありません。
まずは、子どもたちが学校生活で困っている場面を一つだけ取り上げてみてください。
例えば、
- 「友達に入れて」と言えない
- 「貸して」とお願いできない
- 嫌なことがあったときに先生へ相談できない
- 負けたときに気持ちを切り替えられない
そして、その一つの場面について、先生がお手本を見せ、子どもが練習し、最後に「次は実際の生活でどこで使えそう?」と考えてみましょう。
小さく始めることが、SSTを継続する一番のコツです。
🟠 支援級で使える教材をまとめて準備したい先生へ
SSTを始めると、次第にこんな悩みが出てきます。
- 「場面カードを毎回作るのが大変……」
- 「SST以外の自立活動の教材も必要……」
- 「個別の指導計画や支援に使える資料もまとめてほしい……」
- 「明日の授業ですぐ使える教材を揃えたい……」
そこで、支援学級で日々使うことを想定して、さまざまな教材をまとめた「支援級コンプリートBOX」を用意しています。
SSTだけでなく、支援学級での指導や自立活動など、日々の実践を支える教材をまとめて準備したい先生におすすめです。
一つずつ教材を探して、印刷して、作り直して……という時間を減らし、子どもと向き合う時間を増やしたい先生へ。
SSTをもっと具体的に実践したい方はこちら
この記事ではSSTトレーニング全体の進め方を解説しました。
さらに具体的な教材の使い方や実践例を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
SSTとは?目的・対象・効果をわかりやすく解説
SSTの基本的な考え方や目的について、詳しく知りたい方はこちら。
SSTのロールプレイ実践例
実際の場面を想定したロールプレイの進め方や具体例を紹介しています。
SSTで使えるワークシート・プリント
授業や個別支援ですぐに使えるワークシートを紹介しています。
小学生向けSSTの実践例
小学校低学年・高学年に合わせたSSTのテーマや活動例を紹介しています。
放課後等デイサービスのSST実践ガイド
放課後等デイサービスでSSTを実践するときの具体的な進め方を解説しています。
まとめ|SSTは「できる」を少しずつ増やしていくトレーニング
SSTトレーニングでは、子どもに正しい行動を一方的に教えることだけが目的ではありません。
子ども自身が、「やってみよう」「これならできそう」と思える環境をつくり、実際に練習し、小さな成功を積み重ねていくことが大切です。
そして、授業の中でできたことを、学校生活や家庭、放課後等デイサービスなどの実生活へ少しずつ広げていきます。
「できない」から「できる」へ。
さらに、
「できる」から「自分でできる」へ。
その一歩一歩を支えることが、SSTトレーニングの大きな役割です。
まずは、目の前の子どもが今困っている場面を一つ選び、明日の授業で小さな練習を始めてみてください。
その小さな一歩が、子どもの「人と関わることができた」という自信につながっていきます。
📚 SSTだけでなく、支援学級の教材をまとめて準備したい方へ
支援学級では、SST以外にも自立活動、学習支援、生活スキル、個別の指導計画など、準備する教材がたくさんあります。
「教材を探す時間を減らして、子どもと向き合う時間を増やしたい」という先生のために、支援学級で活用できる教材をまとめています。

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