特別支援学級の図工|授業で使える題材・ネタ30選と指導の工夫【小学校】
「特別支援学級の図工、何を題材にしたらいい?」
「異学年の子どもたちが一緒に取り組める図工ネタを知りたい」
「絵を描くのが苦手な子や、手先が不器用な子でも楽しめる活動はない?」
特別支援学級で図工の授業をするとき、このように悩む先生は少なくありません。
特に特別支援学級では、学年や発達段階、得意なこと、苦手なこと、興味のあることが一人ひとり違います。
通常学級のように「今日は全員で同じ作品を作りましょう」と題材を決めても、子どもによっては簡単すぎたり、反対に難しすぎたりすることがあります。
そこで大切になるのが、「同じ題材でも、一人ひとりが自分なりの方法で参加できるようにする」という考え方です。
私はこれまで、特別支援学級の担任として、子どもたちとさまざまな図工・制作活動に取り組んできました。
その中では、昆虫や動物など「好きなもの」を大きく描いたり、筆ではなく指先で絵の具をトントンと置いたり、実際の落ち葉を観察して絵を描いたりしました。
また、一人ひとりが作った作品を最後に一つの大きな作品へとつなげる共同制作にも取り組みました。
この記事では、こうした実践をもとに、特別支援学級で取り組みやすい図工の題材・ネタを30個紹介します。
さらに、単に題材を紹介するだけではなく、「なぜその方法にしたのか」「子どもが取り組みやすくなるために何を工夫したのか」についても、元特別支援学級担任の立場から詳しく紹介します。
この記事で分かること
- 特別支援学級で使いやすい図工ネタ30選
- 絵を描くことが苦手な子への工夫
- 手先が不器用な子が取り組みやすい表現方法
- 異学年で同じ図工に取り組むときの工夫
- 特別支援学級での共同制作の進め方
- 生活科・生活単元学習と図工を組み合わせる方法
- 子どもの「好き」や「つぶやき」を図工に生かす方法
- 特別支援学級の図工で大切にしたいこと
- 特別支援学級の図工ネタ30選
- ①好きな昆虫・動物を大きく描く
- ②指先でトントン色塗り
- ③落ち葉を観察して絵を描く
- ④落ち葉の形を生かしたデザイン
- ⑤デカルコマニー
- ⑥吹き絵
- ⑦スパッタリング
- ⑧ローラー・スポンジで模様を作る
- ⑨和紙を使った紙染め
- ⑩染め紙で紫陽花を作る
- ⑪染め紙を使ったちぎり絵
- ⑫染め紙コラージュ
- ⑬ちぎり絵
- ⑭折り紙・新聞紙を使ったコラージュ
- ⑮夏野菜スタンプ
- ⑯スタンプで花束を作る
- ⑰身近なものを使ったスタンプ
- ⑱シールで模様を作る
- ⑲紙皿を使った動物・生き物づくり
- ⑳紙コップを使った工作
- ㉑牛乳パックを使った工作
- ㉒廃材を使った自由工作
- ㉓段ボールを使った大型制作
- ㉔粘土・紙粘土で好きなものを作る
- ㉕落ち葉の共同制作
- ㉖落ち葉を切り取って、大きな作品にする
- ㉗子どもの「つぶやき」から作品を発展させる
- ㉘人数や役割を生かした共同制作
- ㉙誕生日メッセージブック
- ㉚季節のカレンダー作り
- 特別支援学級の図工でおすすめしたい「落ち葉の共同制作」
- 特別支援学級の図工で共同制作をするときの工夫
- 特別支援学級の図工で取り組みやすくする10の工夫
- 特別支援学級の図工で「描くのが苦手」な子への工夫
- 特別支援学級で異学年を一緒に図工指導する方法
- 特別支援学級の共同制作を成功させるポイント
- 特別支援学級の図工と生活単元学習を組み合わせるアイデア
- 特別支援学級の図工は「作品を作る時間」だけではない
- 特別支援学級の図工は「その子らしく表現できる題材」を選ぼう
- 45分でできる特別支援学級の図工ネタ
- 特別支援学級の図工に関するよくある質問
- まとめ|特別支援学級の図工は「できた!」を大切に
- 特別支援学級の授業づくりに役立つ関連記事
特別支援学級の図工で大切にしたいこと
特別支援学級の図工では、題材そのものを工夫することも大切ですが、それ以上に「その子がどうすれば参加しやすくなるか」を考えることが重要だと私は考えています。
同じ「絵を描く」という活動でも、ある子にとっては「好きなことを自由に描ける楽しい活動」になる一方で、別の子にとっては「何を描いたらいいか分からない」「線からはみ出さないようにしなければならない」と感じる難しい活動になることがあります。
だからこそ、教師が題材を決めるときには、完成作品だけを見るのではなく、子どもが制作の途中でどのような困難を感じるのかまで考えておく必要があります。
ここでは、私が特別支援学級で図工に取り組む中で大切にしてきた工夫を紹介します。
①子どもの「好き」を図工の題材にする
特別支援学級の図工では、子どもが興味をもっているものを題材にすると、制作への入り口を作りやすくなります。
例えば、昆虫が大好きな子がいたとします。
その子に「自由に絵を描きましょう」と言うよりも、
「好きな昆虫を一つ、大きく描いてみよう」
と伝えたほうが、何をすればいいのかが分かりやすくなります。
私の実践でも、昆虫が好きな子にはトンボなど、その子が興味をもっているものを題材にしました。
また、夏休みにザリガニを捕まえた経験がある子なら、その「実際に経験したこと」を絵の題材にすることもできます。
図工というと「絵を上手に描くこと」に目が向きやすいのですが、特別支援学級では、まず「描きたい」と思えることが大切です。
子どもの好きなものや実際の経験を題材にすると、「何を描けばいいのか分からない」という困り感を減らすことにもつながります。
②「大きく一つ描く」と取り組みやすくなる
絵を描くことが苦手な子にとって、「好きなものを自由に描いてください」という指示は、実はかなり難しいことがあります。
そこで私がよく意識していたのが、「一つのものを大きく描く」という方法です。
例えば四つ切り画用紙を使い、画用紙いっぱいに一匹の昆虫、一匹の動物、一つの植物などを描きます。
複雑な風景画を描く必要はありません。
「大きなトンボを描こう」
「ザリガニを画用紙いっぱいに描こう」
というように、題材を絞ります。
すると、子どもにとっては「何を描けばいいか」が明確になります。
さらに、画用紙いっぱいに描くことで、細かい部分をたくさん描き込まなくても、作品としての存在感が出ます。
元特別支援学級担任としてのポイント
「絵が苦手だから小さく簡単に描かせる」のではなく、「大きく一つ描くことで、表現しやすくする」という考え方もできます。
③「上手に作る」より「自分なりに表現する」ことを大切にする
特別支援学級の図工では、完成作品の見栄えだけを基準にしてしまうと、子どもの表現のよさを見落としてしまうことがあります。
線が曲がっていてもいい。
色が少しはみ出してもいい。
同じ題材でも、一人ひとり違う作品になっていい。
むしろ、その違いこそが図工のおもしろさだと思います。
教師が「こういう作品にしよう」と完成形を決めすぎると、子どもは教師の見本を再現する活動になってしまいます。
もちろん、見本を示すことが必要な場合もあります。
ただし、見本は「正解」ではなく、「こんな方法もあるよ」という選択肢として提示することを意識したいところです。
④道具や材料を工夫して「できる」を増やす
図工では、作品そのものだけでなく、道具を操作することにも難しさがあります。
例えば、筆を持って、絵の具をつけ、線からはみ出さないように塗る。
これは大人にとっては簡単に感じますが、手先の操作に苦手さがある子にとっては、いくつもの課題を同時に行う必要があります。
そこで、私の実践では「筆を使わず、指先で絵の具をトントンと置く」という方法を取り入れたことがあります。
四つ切り画用紙いっぱいに昆虫などを描き、その中を指先で「トントントントン」と押すようにして色をつけていきます。
筆を細かく操作する必要がないため、手先が不器用な子どもも前向きに取り組む姿が見られました。
また、指で絵の具を置くことで、色が少しずつ重なり、筆で塗った場合とは違う独特の表情が生まれます。
結果的に、「苦手な部分を補うための工夫」が、そのまま「おもしろい表現方法」にもなりました。
⑤「失敗」が目立たない仕組みを最初から作っておく
特別支援学級の図工では、子どもに「丁寧にやろう」と努力させるだけではなく、失敗が目立ちにくい教材や活動の仕組みを作っておくことも大切です。
例えば、先ほど紹介した指先での色塗りでは、白い画用紙ではなく、薄い黄色などの色画用紙を使いました。
白い画用紙に絵の具を塗ると、塗り残した部分が目立ちやすくなります。
一方、薄い黄色などの画用紙を使うと、多少の塗り残しがあっても作品全体になじみやすくなります。
これは「塗り残してもいい」とするだけではありません。
最初から塗り残しが気になりにくい環境を用意しておくという考え方です。
特別支援教育では、子どもに努力を求めるだけでなく、環境や教材を調整することで「できた」を増やしていくことができます。
特別支援学級の図工ネタ30選
ここからは、実際の授業で使いやすい図工の題材を30個紹介します。

ただし、30個すべてを同じ方法で行う必要はありません。
特別支援学級では、子どもの実態に合わせて、材料、道具、制作時間、完成形などを調整してみてください。
題材を選ぶときのポイント
- 子どもが興味をもてるか
- 45分程度で区切れるか
- 途中まででも「できた」と感じられるか
- 異学年でも参加できるか
- 道具を操作することが難しすぎないか
- 作品の完成形を一つに決めすぎていないか
①好きな昆虫・動物を大きく描く
まずおすすめしたいのが、「好きなものを一つ、大きく描く」という活動です。

昆虫が好きな子ならトンボ、動物が好きなら好きな動物、魚が好きなら魚というように、子どもの興味を題材にします。
画用紙は四つ切り程度の大きなものを使い、できるだけ画面いっぱいに描きます。
「小さく上手に描く」のではなく、「大きく、思い切って描く」ことを目標にします。
色塗りでは、筆だけでなく、スポンジや指など別の方法を選べるようにしてもよいでしょう。
こんな子におすすめ
- 昆虫や動物など好きなものがはっきりしている子
- 自由画で何を描けばよいか分からなくなる子
- 細かい絵を描くことが苦手な子
- 大きな画面のほうが表現しやすい子
②指先でトントン色塗り
絵の具を筆で塗ることに難しさがある場合には、指先を使って色を置いていく方法もあります。

私が特別支援学級で取り組んだときには、四つ切り画用紙いっぱいに一つの昆虫などを描き、その中を指先で「トントントントン」と押すようにして色をつけていきました。
筆を細かく動かす必要がないため、手先の不器用さがある子どもも取り組みやすい方法でした。
また、鉛筆で描いた線を角でこすった状態で絵の具を重ねることで、鉛筆の線と絵の具が少し混ざり、独特の深みのある表現になりました。
私の学級では、絵の具に指をつけることに抵抗を示す子はいませんでした。そのため実施できましたが、感触への抵抗がある子には、無理に指で行わせる必要はありません。
スポンジ、綿棒、タンポ、手袋など、別の方法も用意できます。
③落ち葉を観察して絵を描く
季節を感じられる題材として、落ち葉を使った絵もおすすめです。
私が実践したときは、ちょうど2年生の児童がいたため、生活科の学習で公園に出かけ、実際に落ち葉を見たり、写真を撮ったりしました。
その経験を図工につなげ、実際に集めた葉を手本にして、一人ひとりが葉っぱの絵を描きました。
ここで意識したのは、「実物をそのまま見て描いてもいいし、葉っぱを画用紙の上に置いて、なぞってもいい」と伝えることです。
「自分で葉っぱの形を正確に描かなければいけない」と考えると、抵抗感が出てしまう子もいます。
そこで、最初から複数の方法を認めておくことで、制作への入り口を広げました。
④落ち葉の形を生かしたデザイン
落ち葉を単に描くだけではなく、葉っぱの形そのものを作品の一部として利用する方法もあります。
例えば、葉っぱを複数描き、それを切り取って、画面の上に並べてみます。
葉っぱ同士を重ねることで、思いがけない形が生まれます。
「何に見えるかな?」と子どもたちに問いかけると、そこから新しい発想が生まれることがあります。
この活動は、後述する「落ち葉の共同制作」にもつながります。
⑤デカルコマニー
紙に絵の具を置き、紙を折って押し広げることで左右対称の模様を作るデカルコマニーも、特別支援学級で取り組みやすい表現方法です。
自分で細かな絵を描く必要がないため、絵を描くことに苦手意識がある子も参加しやすくなります。
さらに、紙を開いた瞬間にどんな模様が現れるか分からないため、「やってみたらどうなるだろう?」という楽しさもあります。
模様を作った後、それを蝶や花、動物などに見立てて作品に発展させてもよいでしょう。
⑥吹き絵
絵の具を紙の上に垂らし、ストローなどで息を吹きかけて模様を広げます。
偶然できた形を楽しめるため、細かな描画技術を必要としない活動として使いやすい題材です。
ただし、ストローを使った活動では、衛生面や誤飲など、子どもの実態に応じた配慮が必要です。
ストローを使うことが難しい場合は、道具を変更するなど、無理なく参加できる方法を考えます。
⑦スパッタリング
絵の具を細かな粒として飛ばし、画面に模様をつけるスパッタリングもおすすめです。
例えば、夜空、星、雨、雪、花びらなどの表現に利用できます。
「きれいに描く」ことよりも、道具を使って色や形が変化することを楽しむ活動として設定すると、取り組みやすくなります。
⑧ローラー・スポンジで模様を作る
筆の代わりにローラーやスポンジを使って、画用紙に色をつける活動です。
手首を細かく動かして線を描くことが難しい子でも、道具を押したり転がしたりする動作なら取り組みやすい場合があります。
スポンジの形を変えたり、複数の色を使ったりすると、さまざまな模様を作ることができます。
⑨和紙を使った紙染め
私が特別支援学級で行った制作の中でも、特に印象に残っている活動の一つが和紙の紙染めです。
和紙の中にビー玉を入れてアクセントをつけ、そこに自分の好きな色水を吸わせて染めていきました。

「何色にしようかな」と自分で色を選べるため、子ども自身の選択を取り入れやすい活動です。
また、ビー玉を入れることで、単純に一色で染めるだけではない模様が生まれます。
この活動のもう一つのポイント
私の場合、染めた和紙をその時間だけで使い切るのではなく、その後の作品にも再利用しました。
紫陽花を作ったり、ちぎり絵にしたり、デッサンした作品にアクセントとして貼り付けたりするなど、年間を通して活用しました。
一度作った素材を別の作品に生かすことで、「前に自分が作ったもの」が次の制作につながります。
これは、特別支援学級の図工で大切にしたい「一つの活動を次の活動につなげる」という考え方にもつながります。
⑩染め紙で紫陽花を作る
紙染めで作った和紙は、季節の制作にも活用できます。
例えば、紫陽花の花びらを作り、染め紙を貼り合わせて紫陽花を表現します。
自分で染めた紙を使うことで、単に用意された折り紙を貼るだけではなく、「自分で作った素材を次の作品に使う」という経験になります。
紫陽花の形を一つに決めすぎず、色や形、貼り方をそれぞれ変えてみると、一人ひとり違った作品になります。

⑪染め紙を使ったちぎり絵
染めた和紙を手でちぎり、別の画用紙に貼って作品を作る活動です。
「紙をきれいな形に切る」という技術を必要としないため、手でちぎることそのものを表現として利用できます。
細かくちぎる子、大きくちぎる子など、仕上がりにも個性が出ます。
⑫染め紙コラージュ
染め紙を好きな形に切ったり、ちぎったりして、別の作品のアクセントとして利用します。
例えば、動物の背景、花、空、模様などに使うことができます。
私自身も、染めた和紙をデッサン作品のアクセントとして利用しました。
このように、「一度作った素材を別の作品に再利用する」という方法は、年間の図工計画を考えるときにも役立ちます。

⑬ちぎり絵
折り紙や和紙、新聞紙などを手でちぎって貼り付けるちぎり絵も、特別支援学級で取り入れやすい活動です。
細かな線を描くことが難しくても、紙をちぎる、選ぶ、貼るという複数の工程から自分に合った活動を楽しめます。
題材は、花、動物、季節の風景など、子どもの実態に合わせて設定できます。

⑭折り紙・新聞紙を使ったコラージュ
折り紙だけでなく、新聞紙、広告、包装紙など、身近な紙を材料として利用します。
色や模様を選ぶこと自体が活動になるため、「描く」こととは違った表現方法を経験できます。
異学年で行う場合も、低学年は紙を選んで貼る、高学年は形を切って構成するなど、役割を変えることができます。
⑮夏野菜スタンプ
野菜の断面を利用してスタンプを楽しむ活動です。
野菜を切ってみると、普段食べている野菜から思いがけない形が現れます。
生活科や生活単元学習で野菜を育てた経験がある場合には、そこから図工につなげることもできます。
私が行った夏野菜スタンプについては、実際の活動の流れや作品づくりを別の記事で詳しく紹介しています。
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⑯スタンプで花束を作る
スタンプを使って花を表現し、最後に花束としてまとめる活動です。
一人ひとりが違う色や形の花を作ることができるため、共同制作にも発展させやすい題材です。
「花を上手に描く」必要がなく、スタンプを押すことで花らしい形ができるため、絵を描くことに苦手意識がある子にも取り入れやすいでしょう。
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⑰身近なものを使ったスタンプ
スタンプは、専用の道具を用意しなくても、身近にあるものを使って楽しむことができます。
例えば、ペットボトルのキャップ、スポンジ、段ボール、梱包材など、身の回りにあるものをスタンプとして使ってみます。
「これはどんな形になるかな?」と試しながら、画用紙に模様をつけていきます。
この活動のよいところは、「上手な絵を描く」という課題から離れて、押す・並べる・重ねるといった操作そのものを楽しめることです。
異学年で取り組む場合も、同じ材料を使いながら、低学年は自由にスタンプを楽しみ、高学年は模様を組み合わせて作品にするなど、難易度を調整できます。

⑱シールで模様を作る
丸や四角、星などのシールを画用紙に貼り、模様や絵を作ります。
シールを貼るだけなら、絵を描くことに苦手意識がある子でも参加しやすくなります。
「好きなところに貼る」だけでも十分ですが、慣れてきたら、色を交互にしたり、形をそろえたり、シールを組み合わせて花や動物などを表現したりすることもできます。
手先の操作に課題がある場合には、シールの大きさを変えるなど、材料そのものを調整すると取り組みやすくなります。
⑲紙皿を使った動物・生き物づくり
紙皿をベースにして、動物や昆虫、魚などを作る工作です。
例えば、紙皿を魚の体に見立て、画用紙でヒレや目をつけます。
昆虫が好きな子なら、カブトムシやクワガタ、トンボなどに発展させてもよいでしょう。
ポイントは、完成形を一つに決めすぎないことです。
教師が作った見本をそのまま再現するのではなく、「紙皿を何に変身させようか?」と問いかけることで、一人ひとりの発想を生かすことができます。
⑳紙コップを使った工作
紙コップは、特別支援学級の工作でも扱いやすい材料の一つです。
動物、ロケット、けん玉、人形など、さまざまな作品に発展させることができます。

紙コップに色を塗る、シールを貼る、画用紙をつけるなど、子どもの実態に合わせて工程を調整できます。
例えば、絵を描くことが難しい子はシール中心、高学年の子は自分でパーツを考えるなど、同じ材料でも活動内容を変えることができます。
㉑牛乳パックを使った工作
牛乳パックは、丈夫で加工しやすく、立体作品を作るときにも便利な材料です。
車、船、動物、家、ペン立てなど、子どもの興味に合わせて題材を選べます。
ただし、カッターやはさみを使う工程では、安全面への配慮が必要です。
教師があらかじめ切っておく部分を作ったり、切りやすい部分だけ子どもに任せたりすることで、「全部自分で作る」から「自分ができる工程を担当する」という考え方に変えることができます。
㉒廃材を使った自由工作
空き箱、トイレットペーパーの芯、段ボール、ペットボトルなどを集めて、自由に工作します。
この活動では、完成形を教師が決めすぎないことがポイントです。
「何を作ってもいい」と言われると難しい子もいるため、必要に応じて、
- 乗り物を作ろう
- 生き物を作ろう
- 住んでみたい家を作ろう
- 学校にあったらいいものを作ろう
など、テーマを設定してもよいでしょう。
㉓段ボールを使った大型制作
小さな作品を作ることが難しい子どもには、思い切って大きな材料を使う方法もあります。
段ボールを組み合わせて、大きな家、秘密基地、乗り物、動物などを作ります。
大型制作では、一人ですべてを完成させる必要がありません。
「色を塗る」「テープを貼る」「飾りを作る」など、一人ひとりが得意な役割を担当することで、共同制作にもつながります。
㉔粘土・紙粘土で好きなものを作る
粘土は、平面の絵とは違う立体的な表現を楽しめる題材です。
食べ物、動物、昆虫、乗り物など、子どもの好きなものを題材にできます。
「本物そっくりに作る」ことだけを目標にせず、丸める、伸ばす、つぶす、ちぎる、くっつけるといった粘土の感触や操作そのものを楽しむことも大切です。
粘土の感触が苦手な子がいる場合は、無理に触らせる必要はありません。道具を使ったり、別の素材を選んだりするなど、参加方法を調整します。
㉕落ち葉の共同制作
特別支援学級の図工で、私自身がとても印象に残っている実践の一つが、一人ひとりが描いた落ち葉を使った共同制作です。
この活動は、生活科での学習ともつながっていました。
公園で実際に落ち葉を集め、その落ち葉を手本にして、一人ひとりが葉っぱの絵を描きました。
ここで最初から「自分で葉っぱの形を上手に描きましょう」とはしませんでした。
私が子どもたちに伝えたこと
- 葉っぱを置いて、その形をなぞってもいい
- 葉っぱをよく見ながら描いてもいい
- 自分が描きやすい方法で描いていい
こうすることで、「絵を描くのが苦手だからできない」という抵抗感をできるだけ減らしました。
色塗りについては、水を使うことで絵の具をにじませる方法を紹介しました。
子どもたちには、分かりやすいYouTube動画を見せて、まず「こんなふうに色をにじませることができるんだ」というイメージをもってもらいました。
その後、手順を一つずつ確認しながら、最初の1枚は教師と一緒に丁寧に取り組みました。
1枚目で方法が分かったら、2枚目、3枚目と、子どもの意欲に合わせて制作を続けます。
ここでも、「全員3枚作りましょう」と一律に決めるのではなく、子どもの意欲や実態に合わせて制作量を調整することを大切にしました。
㉖落ち葉を切り取って、大きな作品にする
落ち葉の制作で、もう一つ大切にしたかったのが、「一人ひとりの作品を、そのまま終わらせない」ということでした。
子どもたちが描いた葉っぱには、線からはみ出した部分もありました。
色塗りのときに、葉っぱの線から絵の具がはみ出したものもあります。
そこで、完成した葉っぱを切り取りました。
切り取ってしまえば、多少のはみ出しはそれほど気になりません。
そして、四つ切り画用紙を横に2枚並べて、横長の大きな画面を作りました。
そこに、一人ひとりが描いた落ち葉を並べていきます。
ここからが、共同制作のおもしろいところです。
「この葉っぱはどこに置こうか?」
「こっちに置いたほうがいいかな?」
と、子どもたちと一緒にレイアウトを考えました。
㉗子どもの「つぶやき」から作品を発展させる
落ち葉を並べていると、子どもたちからいろいろなつぶやきが出てきました。
「なんか、この形は亀みたいだね」
「トンボみたい」
「空から落ち葉がパラパラ降ってるみたい」
「ここを青く塗ったら、空を飛んでいるみたいになるんじゃない?」
私は、このような子どものつぶやきを大切にしました。
教師が最初から「ここに葉っぱを貼って、背景は青にしましょう」と決めてしまうのではなく、子どもが見つけた「おもしろい」を拾って、作品づくりにつなげていくのです。
結果として、単に「落ち葉を描いて貼った作品」ではなく、子どもたち自身が形を見ながら発想し、レイアウトを考え、作品を発展させる時間になりました。
この実践で私が大切だと感じたこと
図工では、教師が「正しい答え」を教えるだけではなく、子どもが見つけたものを教師が拾うことにも大きな意味があります。
「亀に見える」「トンボに見える」というつぶやきが、そのまま作品づくりのアイデアになりました。
㉘人数や役割を生かした共同制作
共同制作では、単純に「みんなで一つの絵を描く」という方法だけではありません。
一人ひとりに役割をもたせることで、共同制作に参加しやすくすることもできます。
私が実践した中に、山梨を題材にした共同制作があります。
山梨を題材にした絵を、二つの場面に分けて制作しました。
その中に登場するカニの数と、ちょうど当時のクラスの児童数が一致していました。
カニは、お父さん、お兄ちゃん、弟などを含めて6匹。
そして、クラスの子どもも6人。
そこで、一人1匹ずつカニを担当することにしました。
さらに、それ以外の部分についても、描く場所や役割を分担しました。
「みんな同じものを描く」のではなく、一人ひとりが作品の一部を担当するという方法です。
自分の担当が明確になることで、活動の見通しをもちやすくなります。
そして完成したときには、「自分のカニも、この大きな作品の一部になっている」という実感をもつことができます。
㉙誕生日メッセージブック
図工の活動は、必ずしも「図工の時間だけ」に行う必要はありません。
私は誕生日会の活動の中で、誕生日を迎える子へのメッセージブックを作ったことがあります。
誕生日の子に向けて手紙を書き、そこに相手のことを考えたイラストを描きます。
この活動では、細かな描き方などを教師が指導するのではなく、基本的には子どもたちに任せました。
一人1ページを担当します。
人数分のページができたら、それを重ねて本のようにまとめ、誕生日を迎える子にプレゼントします。
これは、図工だけでなく、生活単元学習や学級活動と組み合わせることができる制作活動です。
「誰かのために作る」という目的が明確なので、単に「絵を描きましょう」と言われるよりも、制作への意味を感じやすい子もいます。
㉚季節のカレンダー作り
年間を通して取り組みやすい題材として、カレンダー作りもおすすめです。
季節ごとの絵を描いたり、スタンプを使ったり、染め紙を貼ったりしながら、月ごとの作品を作っていきます。
例えば、
- 4月:桜
- 5月:こいのぼり
- 6月:紫陽花
- 7月:夏野菜
- 9月:月・秋の虫
- 10月:落ち葉
- 11月:秋の風景
- 12月:クリスマス
- 1月:お正月
- 2月:節分
- 3月:ひな祭り
というように、生活や季節と関連させながら制作できます。
カレンダーは、完成した作品を教室に掲示したり、家庭に持ち帰ったりすることもできます。
また、年間を通して作品が残るため、「自分が作ったものが生活の中で使われる」という経験にもつながります。
特別支援学級の図工でおすすめしたい「落ち葉の共同制作」
ここでは、先ほど紹介した落ち葉の制作について、もう少し詳しく紹介します。
この活動は、私自身が特別支援学級で実践して、「個人制作」と「共同制作」をつなげる方法として、とてもよかったと感じている活動です。

最初は一人ひとりの作品を作る
共同制作だからといって、最初から全員で一つの作品を作る必要はありません。
私の場合は、まず一人ひとりに八つ切り画用紙を渡し、それぞれが落ち葉を描きました。
実物の落ち葉を見ながら描いてもいい。
落ち葉を画用紙の上に置いて、輪郭をなぞってもいい。
このように、複数の方法を認めました。
これによって、描画が苦手な子も制作に入りやすくなります。
最初の1枚は教師と一緒に丁寧に作る
色塗りについては、いきなり「自由にやってみよう」とはしませんでした。
水を使って絵の具をにじませる方法を動画で確認し、最初の1枚は教師と一緒に手順を確認しながら進めました。
「水をつける」
↓
「絵の具をつける」
↓
「色がどう変化するかを見る」
というように、工程を分けて確認します。
一度やり方が分かれば、2枚目、3枚目は子ども自身の意欲に任せます。
この「最初は教師と一緒に、分かってきたら自分で」という流れは、特別支援学級の図工で使いやすい方法だと思います。
完成した作品を切り取る
子どもたちが描いた落ち葉には、線からはみ出しているものもありました。
しかし、それを「線からはみ出しているから失敗」とは考えませんでした。
完成した作品を切り取ってしまえば、はみ出した部分は作品全体の中ではそれほど気にならなくなります。
つまり、制作の途中で起きた「失敗」を、次の工程によって作品の一部に変えてしまうのです。
大きな画面に並べてみる
切り取った落ち葉を、四つ切り画用紙を横に2枚並べた大きな画面に置いていきました。
ここでは、まだすぐに貼りません。
まずは置いてみます。
「ここかな?」
「こっちのほうがいいかな?」

と、子どもたちと一緒に考えます。
この時間を私はとても大切にしていました。
制作の「完成」に向かって急ぐのではなく、作品を見ながら考える時間そのものを図工の学びとして捉えることができるからです。
子どものつぶやきを拾う
葉っぱを重ねたり、向きを変えたりしていると、子どもたちからさまざまな言葉が出てきます。
「亀みたい」
「トンボみたい」
「落ち葉が降ってるみたい」
「空みたいに青くしたらいいんじゃない?」
こうしたつぶやきは、教師が用意した答えではありません。
子どもが作品を見て、自分で感じたことです。
だからこそ、教師が「それ面白いね」「じゃあ、やってみようか」と拾うことで、さらに表現が広がります。
特別支援学級の図工では、「教師が教える」だけでなく、「子どもの発見を教師が拾う」という関わりも大切だと感じています。
特別支援学級の図工で共同制作をするときの工夫
共同制作は、特別支援学級の図工と相性のよい活動の一つです。
ただし、「みんなで一つの作品を作る」と言っても、子どもによっては参加しにくい場合があります。
そこで、共同制作をするときには、いくつかの工夫をしておくと活動が進めやすくなります。
一人ひとりが担当する部分を作る
共同制作では、最初に「誰が何をするのか」をある程度明確にしておくと、活動の見通しをもちやすくなります。
私が実践した山梨を題材にした共同制作では、作品に登場するカニの数とクラスの児童数がちょうど一致していました。
そこで、一人1匹ずつカニを担当しました。
さらに、それ以外の場所についても役割を分担しました。
このように、「自分の担当がある」ことで、共同制作の中でも自分の役割を感じやすくなります。
役割は子どもの実態に合わせて変える
全員に同じ難易度の役割を与える必要はありません。
例えば、
- 大きな部分を塗る
- 小さなパーツを作る
- スタンプを押す
- 紙を貼る
- 線を描く
- 作品を並べる
など、さまざまな役割があります。
「絵が得意な子は絵を描く」「絵を描くことが苦手な子は紙を貼る」という単純な分け方ではなく、本人が「これならやってみたい」と思える役割を考えていくことが大切です。
完成形を教師だけで決めない
共同制作では、教師が完成形を決めてしまうと、子どもは指示された場所に作品を貼るだけになってしまいます。
もちろん、全体の構成を教師が考える必要がある場合もあります。
しかし、可能であれば、
「どこに置いたら面白いかな?」
「こっちとこっち、どっちがいい?」
と、子どもに問いかける場面を作ります。
先ほど紹介した落ち葉の共同制作でも、この「一緒にレイアウトを考える時間」が活動の大きなポイントになりました。
特別支援学級の図工で取り組みやすくする10の工夫
ここまで紹介した図工ネタを、特別支援学級でより取り組みやすくするためには、題材そのものだけでなく、「活動の設定」にも工夫が必要です。
私が特別支援学級の担任として図工に取り組んできた中で、特に大切だと感じた10の工夫をまとめます。
①子どもの好きなものを題材にする
まずは、その子が何に興味をもっているのかを考えます。
昆虫が好きなら昆虫、魚が好きなら魚、乗り物が好きなら乗り物。
子どもの「好き」は、図工への入り口になります。
特別支援学級では、全員に同じ題材を与えるだけでなく、同じ活動の中に、それぞれの「好き」を入れられる余地を作ることが重要です。
②「自由に描いていい」だけにしない
自由に描くことが得意な子もいれば、「自由に」と言われることで困ってしまう子もいます。
その場合には、
- 好きな動物を一つ描く
- 好きな昆虫を描く
- 丸を使って生き物を作る
- 好きな色を3色選ぶ
など、選択肢を用意すると活動に入りやすくなります。
③「なぞってもいい」という選択肢を用意する
描くことに抵抗がある子には、「なぞってもいい」という方法を用意することもできます。
落ち葉の制作では、実物の葉を画用紙の上に置いて、その輪郭をなぞってもよいことにしました。
これは、子どもの「できない」を教師が代わりにやってしまうこととは違います。
自分で制作するための方法を増やすという支援です。
④最初の1枚は教師と一緒に作る
初めて経験する技法の場合は、最初から「やってみよう」と任せるよりも、教師と一緒に一度経験してみるほうが分かりやすいことがあります。
私が落ち葉の色塗りを行ったときも、最初の1枚は手順を確認しながら一緒に取り組みました。
その後、方法が分かった子から自分で進めていきます。
これは、「教師と一緒に→一人で」という支援の段階を作る方法です。
⑤筆以外の表現方法も用意する
絵の具は「筆で塗るもの」と決める必要はありません。
指、スポンジ、綿棒、ローラー、タンポなど、さまざまな道具があります。
特に手先の操作に難しさがある子の場合、道具を変えるだけで取り組みやすくなることがあります。
ただし、感触への過敏さなどがある場合には、無理に触らせる必要はありません。
「その子に合う方法を探す」ことが大切です。
⑥最初から「失敗しにくい」材料を選ぶ
教材を工夫することで、子どもが感じる困難を減らすことができます。
例えば、白い画用紙では塗り残しが目立つ場合、薄い黄色などの画用紙を使う方法があります。
また、多少線からはみ出しても、後で切り取ったり、別の素材を重ねたりすることができる題材を選ぶ方法もあります。
大切なのは、「失敗しないように頑張らせる」のではなく、「失敗しても作品として成立する環境を作る」ことです。
⑦制作工程を細かく分ける
図工では、最終的な作品を見ると簡単そうに見えても、実際には複数の工程があります。
例えば、
- 題材を決める
- 下書きをする
- 色を選ぶ
- 絵の具を準備する
- 色を塗る
- 乾かす
- 切る
- 貼る
というように、多くの手順があります。
これを一度に説明するのではなく、「今はここまで」と一つずつ進めると、活動の見通しをもちやすくなります。
⑧完成までの時間を長くしすぎない
子どもの実態によっては、何時間もかけて一つの作品を作ることが負担になる場合があります。
そのため、活動を小さく区切ります。
今日は描く。
次の時間に色を塗る。
その次に切る。
最後に貼る。
というように、工程を分けることができます。
一方で、子どもが集中している場合には、予定より長く制作することもあります。
時間割に合わせるだけでなく、子どもの集中や意欲も見ながら調整することが大切です。
⑨個人制作を共同制作につなげる
特別支援学級の図工では、個人制作と共同制作を別々に考えなくてもよいと思います。
例えば、
一人ひとりが葉っぱを描く
↓
葉っぱを切り取る
↓
大きな画面に並べる
↓
みんなでレイアウトを考える
↓
一つの作品にする
という流れです。
こうすると、「自分の作品」と「みんなの作品」の両方を経験できます。
⑩子どものつぶやきを作品づくりに生かす
最後に、私が特に大切にしたい工夫です。
それは、子どもの何気ないつぶやきを拾うことです。
落ち葉を並べたときの、
「亀みたい」
「トンボみたい」
「空から降っているみたい」
という言葉。
教師からすれば、授業の本筋から少し外れた「つぶやき」に聞こえるかもしれません。
しかし、そこには子どもが作品を見て感じたことや、新しい発想が含まれています。
だからこそ、
「それ、面白いね」
「じゃあ、やってみようか」
と、教師がその発想を受け止めることがあります。
私は、こうした子どもの発見を教師が拾い、作品づくりに生かしていく時間も、特別支援学級の図工の大切な学びだと考えています。
図工は、完成した作品だけを評価する時間ではありません。
材料に触れる。
色を選ぶ。
試してみる。
友達の作品を見る。
「これ、○○みたい」と感じる。
そして、その思いつきを誰かに伝える。
こうした一つひとつの経験そのものが、図工の学びになっていくのだと思います。
特別支援学級の図工で「描くのが苦手」な子への工夫
特別支援学級で図工をしていると、「絵を描くことが苦手」という子どもに出会うことがあります。

「何を描いたらいいか分からない」
「うまく描けないからやりたくない」
「友達みたいに描けない」
そんな気持ちから、最初から鉛筆を持とうとしない子もいます。
私は特別支援学級の担任をしてきた中で、こうした子どもに対して、「絵が上手になるように指導する」だけが支援ではないと考えるようになりました。
大切なのは、まず「これならできそう」「やってみようかな」と思える入口を作ることです。
「上手に描く」ことを最初の目標にしない
図工というと、「上手な絵を描くこと」が目的になってしまうことがあります。
しかし、特別支援学級では、子どもによって描画経験も、手先の操作性も、イメージのもちやすさも違います。
そのため、全員に「見本と同じように描きましょう」と求めると、図工が苦手な子にとっては、最初からハードルの高い活動になってしまいます。
そこで私は、「上手に描く」よりも「自分なりに表現する」ことを大切にしていました。
例えば、昆虫が大好きな子がいたら、細かな風景画を描かせるのではなく、四つ切り画用紙いっぱいに大きなトンボやザリガニなど、一つの対象を描いてみる。
子どもが興味をもっているものを、できるだけ大きく描かせることで、作品づくりへの抵抗感を減らすことができます。
好きなものを「大きく」描く
私が実践していて効果を感じたのが、「好きなものを大きく描く」という方法です。
例えば、昆虫が好きな子なら、
- トンボ
- カブトムシ
- クワガタ
- ザリガニ
- チョウ
などを題材にします。
そして、四つ切り画用紙いっぱいに、一つの生き物を描きます。
複雑な背景や細かな風景を描かせるのではありません。
「好きなものを、一つ、大きく」というシンプルな設定にします。
これなら、絵を描くことが苦手な子でも、「何を描いたらいいのか分からない」という困り感が小さくなります。
指を使って色を塗る「指スタンプ風」の表現
そのときの色塗りでは、筆だけに限定せず、指先を使って絵の具をトントンと押すように色をつける方法も取り入れました。
絵の具を指先につけ、画用紙をトントントンと押すように色をつけていきます。
筆を細かく動かす必要がないので、筆の操作が難しい子でも取り組みやすい方法です。
また、指先を使うことで、絵の具のつき方に微妙な違いが生まれます。
そのため、単純に塗りつぶしただけではない、独特の風合いが出ます。
鉛筆の線と絵の具が混ざることで作品に味が出る
この実践では、鉛筆で描いた下書きの線を、完全に消すことはしませんでした。
むしろ、線が残った状態で絵の具を重ねていきました。
すると、鉛筆の線と絵の具が少し混ざり、作品に独特の深みが生まれます。
子どもが多少線からはみ出して色を塗っても、それが作品の味になります。
これは、特別支援学級の図工ではとても大切な考え方だと思っています。
「はみ出した=失敗」にしない
少しくらい線からはみ出しても作品として成立するように、題材や材料、色の塗り方を工夫しておく。そうすることで、子どもが「失敗した」と感じにくい制作環境を作ることができます。
白い画用紙ではなく、色のついた画用紙を使う
もう一つ工夫したのが、画用紙の色です。
白い画用紙では、絵の具を塗っていない部分が目立ちます。
そのため、薄い黄色などの画用紙を使いました。
すると、多少の塗り残しがあっても目立ちにくく、作品全体がまとまりやすくなります。
これは、子どもに「きれいに塗りなさい」と要求するのではなく、教材の側を工夫することで、子どもの負担を減らす方法です。
版画も「無理に難しくしない」
版画をするときも、全員に複雑な彫刻を求める必要はありません。
私自身、版画では、子どもの実態に合わせて線画を中心にした表現にすることがありました。
「本格的な版画作品を作らなければならない」と考えると、指導する側も子ども側も負担が大きくなります。
大切なのは、版画という表現方法を使って、
- 線を表現する
- 形を楽しむ
- インクをつけて刷る
- 紙に写った結果を見る
といった経験をすることです。
子どもの実態に合わせて題材や技法の難易度を調整することで、版画も十分に特別支援学級の図工の題材になります。
「なぞる」「型を使う」ことも立派な表現
描くことが苦手な子に対して、「自分の力だけで描きなさい」とする必要はありません。
例えば、
- 実物をなぞる
- 型を使う
- 写真を見ながら描く
- 教師が用意した輪郭を使う
- スタンプを使う
- シールを使う
など、表現するための方法を増やしていきます。
「自分でゼロから描くこと」だけを表現と考えないことが、特別支援学級の図工では重要だと思います。
特別支援学級で異学年を一緒に図工指導する方法
特別支援学級では、通常学級とは違い、異なる学年の子どもたちが同じ教室で学習することがあります。
そのため、図工でも「同じ題材を全員に同じ方法で取り組ませる」という指導が難しい場面があります。
では、異学年の子どもたちをどのように一緒に指導すればよいのでしょうか。
題材は同じ、目標や表現方法は変える
私が大切にしていたのは、「題材を共有して、取り組み方は個別化する」という考え方です。
例えば、「秋の葉っぱ」をテーマにした場合でも、
- 低学年:葉っぱの形をなぞる
- 中学年:葉っぱの形や模様を見ながら描く
- 高学年:葉っぱを組み合わせて構図を考える
というように、同じ題材でも難易度を変えることができます。
これなら、教師が全員に別々の授業を用意する必要がありません。
「できるところまで」で参加できるようにする
異学年で一緒に活動するときには、作品の完成度をそろえる必要はありません。
例えば、ある子は葉っぱを1枚完成させる。
別の子は3枚作る。
さらに別の子は、作った葉っぱを切り取ってレイアウトまで考える。
このように、同じ活動の中で、それぞれのゴールを変えることができます。
私は、落ち葉の制作でも、1枚目は一緒に丁寧に取り組み、その後は子どもの意欲に合わせて2枚、3枚と制作を進めました。
全員に同じ枚数を要求しないことで、子どもの「もっとやりたい」という気持ちも大切にできます。
教師が一人の子に付きっきりにならない仕組みを作る
異学年指導では、教師が一人の子に付きっきりになってしまうと、他の子が待ち時間になってしまいます。
そこで、活動を次のように分けておくと進めやすくなります。
- 教師と一緒に取り組む活動
- 一人で取り組める活動
- 終わった子が取り組める発展活動
例えば、教師が一人の子に色の塗り方を説明している間、他の子は葉っぱの形を描く。
描き終わった子は、切り取ったり、色を選んだりする。
このように、「教師が今見ていなくても進められる工程」を用意しておくと、異学年指導がかなりしやすくなります。

見本は「答え」ではなく「参考」にする
特別支援学級では、教師が作った見本をそのまま真似することが難しい子もいます。
そのため、見本を一つだけ示して「このように作りましょう」とするよりも、複数の作品例や材料を見せて、選択できるようにする方法があります。
「この色にしてもいい」
「こっちの形でもいい」
「違うものを作ってもいい」
という余白を残します。
見本は「正解」ではなく、「こんなことができるよ」という情報として使うと、子どもの表現が広がります。
特別支援学級の共同制作を成功させるポイント
共同制作には、一人で作品を作るのとは違った魅力があります。
一方で、「みんなで一つのものを作る」ことが、すべての子にとって簡単とは限りません。
そこで、共同制作ではいくつかのポイントを意識します。

①最初から全員で作らなくてもいい
共同制作だからといって、最初から全員で同じ画用紙に向かう必要はありません。
むしろ、
個人制作 → パーツを作る → 集める → 並べる → 共同制作
という流れのほうが、特別支援学級では取り組みやすい場合があります。
落ち葉の制作がまさにこの方法でした。
②「自分の作品」が残るようにする
共同制作では、完成すると全員の作品が一つにまとまります。
しかし、子どもによっては「自分が何を作ったのか」が分かりにくくなることがあります。
そのため、個人で作ったパーツを残しておき、それを共同作品の中に配置する方法がおすすめです。
「これは自分が描いた葉っぱ」
「これは自分が作ったカニ」
と分かることで、自分の作品と集団の作品の両方を実感できます。
③役割分担を「能力」で固定しない
共同制作では、「絵が得意な子は絵を描く」「苦手な子は簡単な作業」という分け方をしてしまうことがあります。
しかし、それだけではありません。
「今日はここをやってみたい」という子どもの意思を大切にすることもできます。
また、得意なことが違うからこそ、それぞれの力を持ち寄って一つの作品を作ることができます。
④レイアウトを子どもと一緒に考える
共同制作で特におすすめしたいのが、「貼る前に並べる」ことです。
すぐにのりで貼ってしまうのではなく、まずは机の上や大きな画用紙の上に置いてみます。
「こっちに置いたらどう?」
「これを上にしたら?」
と話しながら動かしてみます。
この時間が、子どもたちにとって意外と面白い活動になります。
落ち葉の制作でも、子どもたちが形を見ながら、「亀みたい」「トンボみたい」と新しい発想を出してくれました。
⑤子どもの発言を作品に取り入れる
教師が「正しい構図」を教えるのではなく、子どもから出てきたアイデアを作品に取り入れてみます。
例えば、
「ここを青くしたら空みたい」
という発言があったら、本当に背景を青くしてみる。
「ここを重ねたら動物みたい」
という発言があったら、実際に重ねてみる。
そうすることで、「自分の考えが作品になった」という経験が生まれます。
特別支援学級の図工と生活単元学習を組み合わせるアイデア
特別支援学級の図工は、生活単元学習などの他の学習と組み合わせることで、さらに取り組みやすくなることがあります。
特におすすめしたいのが、「実際に体験したことを図工で表現する」という流れです。

生活科で見つけた落ち葉を図工で描く
先ほど紹介した落ち葉の共同制作は、その一例です。
まず生活科の学習で公園に行き、実際に落ち葉を集めます。
そして学校に戻って、その落ち葉をよく観察します。
「この葉っぱはギザギザしている」
「こっちは丸い」
「赤いところがある」
など、実物を見ながら特徴を見つけます。
その後、図工で葉っぱを描きます。
このように、「体験→観察→表現」という流れを作ると、題材が子どもにとって身近なものになります。
季節の学習と図工を組み合わせる
季節をテーマにした制作も、生活単元学習との相性がよい題材です。
例えば、
| 季節 | 生活単元学習 | 図工 |
|---|---|---|
| 春 | 学校周辺の春探し | 桜・花の制作 |
| 夏 | 野菜を育てる | 野菜スタンプ |
| 秋 | 公園で落ち葉探し | 落ち葉の絵・共同制作 |
| 冬 | 冬の生活を知る | 季節の壁面制作 |
夏野菜を育てて、スタンプにする
私自身、生活単元学習と図工を組み合わせて、夏野菜のスタンプにも取り組みました。
野菜を育てる。
野菜を観察する。
収穫する。
そして、その野菜を図工の材料として使う。
この流れがあることで、「図工のために用意された材料」ではなく、「自分たちが育てたものを使って表現する」という活動になります。
例えば、オクラやピーマンなど、切ったときに面白い形になる野菜は、スタンプとしても楽しめます。
スタンプした模様を使って、花束やカードなどに発展させることもできます。
紙染めを年間の作品づくりに活用する
私が実践した中で、特におすすめしたいのが和紙の紙染めです。
和紙の中にビー玉を入れ、ビー玉をアクセントとして使いながら、子ども自身が好きな色水を選んで和紙に吸わせます。
すると、一人ひとり違った模様や色合いの紙ができます。
ここで終わらせないことが、この活動の面白いところです。
染めた和紙を年間を通して保管しておき、別の制作に再利用します。
例えば、
- 紫陽花を作る
- ちぎり絵にする
- デッサン作品のアクセントとして貼る
- 季節の壁面制作に使う
- カードや飾りに使う
など、さまざまな作品に活用できます。
これは、単発の「紙染め」という図工ネタではありません。
一度作った素材を、その後の作品づくりに何度も活用するという年間を通した教材として考えることができます。

修学旅行や校外学習の経験を作品にする
生活単元学習や学校行事の経験も、図工の題材になります。
例えば、修学旅行で見たものを絵にする。
校外学習で見つけたものを描く。
遠足で撮影した写真を見ながら作品を作る。
こうした活動では、子ども自身が実際に経験したことを題材にできるため、イメージをもちやすくなります。
特に、「何を描けばいいか分からない」という子には、自分の経験を手がかりにして表現する方法が有効です。
誕生日会と図工を組み合わせる
先ほど紹介した誕生日メッセージブックも、生活単元学習や学級活動と図工を組み合わせた活動です。
誕生日を迎える友達に手紙を書く。
相手の好きなものを考える。
その子のためにイラストを描く。
ページをまとめて本にする。
そして、誕生日会でプレゼントする。
ここには、図工だけではなく、
- 相手を意識する
- 文字を書く
- 絵で表現する
- 友達と協力する
- 完成したものを渡す
という、さまざまな学習があります。
特別支援学級では、このように複数の学習を一つの活動としてつなげることで、子どもにとって意味のある制作活動を作ることができます。
特別支援学級の図工は「作品を作る時間」だけではない
ここまで、30個の図工ネタと、特別支援学級で図工を行うときの工夫について紹介してきました。
私自身、特別支援学級の担任として図工をしてきて感じるのは、図工は単純に「きれいな作品を完成させる時間」ではないということです。
もちろん、完成した作品を見ることは楽しいです。
教室に飾れば、子どもたちも嬉しそうにします。
保護者に見てもらえば、「こんな作品を作ったんだ」と喜んでもらえることもあります。
でも、それだけではありません。
材料を触ってみる。
色を選ぶ。
「この色にしたい」と決める。
思ったようにならない。
もう一度やってみる。
友達の作品を見る。
「これ、亀みたい」と言う。
友達のアイデアを聞いて、自分も試してみる。
そして、最後にみんなの作品が一つになる。
こうした一つひとつの経験に、特別支援学級の図工の価値があるのだと思います。
「できないこと」から題材を考えない
特別支援学級では、子どもの苦手なことや困難さに目が向きやすくなります。
しかし、図工の題材を考えるときには、逆の方向から考えてみることも大切です。
「この子は何ができないか」ではなく、「この子は何が好きなのか」「何ならやってみたいのか」から題材を考えてみます。
昆虫が好きなら、昆虫を大きく描く。
自然が好きなら、落ち葉を使う。
色が好きなら、紙染めをする。
工作が好きなら、廃材を使う。
友達と関わることが好きなら、共同制作をする。
人に何かをプレゼントすることが好きなら、メッセージカードを作る。
このように、子どもの「好き」や「得意」を図工の入口にすると、活動への参加の仕方が変わることがあります。
特別支援学級の図工は「その子らしく表現できる題材」を選ぼう
特別支援学級の図工では、通常学級と同じ題材をそのまま行うことが難しい場合があります。
しかし、だからといって図工の活動を簡単なものだけにする必要はありません。
題材や材料、工程、道具、完成までの方法を少し工夫することで、一人ひとりが自分なりの方法で表現できるようになります。
今回紹介した30個の図工ネタも、そのまま全員に同じ方法で実施する必要はありません。
子どもの実態に合わせて、
- 題材を変える
- 材料を変える
- 道具を変える
- 工程を減らす
- 選択肢を増やす
- 個人制作と共同制作を組み合わせる
- 生活単元学習や学校行事とつなげる
といった調整をしてみてください。
そして、何より大切にしたいのが、「上手に作れたか」だけで子どもの図工を見ないことです。
「やってみた」
「自分で色を選んだ」
「友達と一緒に作った」
「面白い形を見つけた」
「もう一枚作りたいと言った」
そんな姿も、図工の大切な学びです。
特別支援学級だからこそ、子ども一人ひとりの「好き」「やってみたい」「こうしたい」を生かした図工の時間を作っていきたいものです。
特別支援学級の図工で大切にしたいこと
上手に作ることだけを目標にしない。
その子が「やってみたい」と思える入口を作る。
そして、その子なりの表現を大切にする。
「できた!」が一人ひとりに生まれる図工を。
45分でできる特別支援学級の図工ネタ
特別支援学級の図工では、通常学級以上に「授業時間内にどこまでできるか」を考えて題材を選ぶことが大切です。
特に45分程度の授業では、材料を準備する時間、教師の説明、制作、片付けまで考える必要があります。
そのため、初めて取り組む題材では、「45分で完成する作品」よりも「45分で一つの区切りまで進められる作品」を選ぶと授業が安定します。

45分で完結しやすい題材
比較的短時間で取り組みやすい図工ネタには、次のようなものがあります。
- 野菜スタンプ
- 紙皿を使った制作
- 折り紙を使った季節の制作
- シールを使った作品
- ちぎり絵
- 簡単なコラージュ
- スタンプ遊び
- 指を使った色塗り
- 葉っぱの模様を写す活動
- 季節のカード制作
45分で完結させたい場合には、「材料を配る→説明する→作る→片付ける」という流れが分かりやすい題材がおすすめです。
特に、スタンプやシール、ちぎり絵などは、子どもによって制作のスピードが違っても調整しやすいというメリットがあります。
2時間以上かけて取り組む題材
一方で、時間をかけるからこそ完成したときの達成感が大きくなる題材もあります。
例えば、
- 大きな共同制作
- 版画
- 大きな動物や昆虫の絵
- 紙染め
- ちぎり絵の大作
- 季節の壁面制作
- カレンダー制作
- 学校行事をテーマにした作品
- 落ち葉を使った共同制作
- 複数のパーツを組み合わせる作品
などです。
こうした題材では、最初から「今日完成させる」と考えず、工程をいくつかに分けることがポイントです。
例えば「落ち葉の共同制作」なら
- 落ち葉を観察する
- 葉っぱを描く
- 色を塗る
- 切り取る
- 大きな画用紙に並べる
- レイアウトを考える
- 貼り付ける
- 背景を制作する
このように工程を分ければ、1回の授業で一つの工程を終わらせることができます。
むしろ特別支援学級では、一つの作品を何時間もかけて少しずつ完成させていくことが、子どもにとって分かりやすい場合もあります。
最初の1時間で全員が「できた」を感じる工夫
時間のかかる題材で特に大切なのが、最初の授業で「できた!」を経験させることです。
例えば、共同制作なら、初回から完成作品を目指すのではなく、まず一人ひとりが一つのパーツを完成させます。
「今日は葉っぱを1枚完成させた」
「今日はカニを1匹描いた」
「今日は自分の好きな色で紙を染めた」
これだけでも十分です。
その小さな「できた」を積み重ねることで、次の授業への見通しが生まれます。
私自身、落ち葉の制作では、最初から大きな共同作品を完成させるのではなく、まず一人ひとりが葉っぱを描き、色を塗るところから始めました。
そして、できた葉っぱを切り取り、大きな画用紙に並べていきました。
この「自分の作品が、少しずつ大きな作品になっていく」という感覚が、共同制作の面白さにつながります。
特別支援学級の図工に関するよくある質問
ここでは、特別支援学級で図工を担当するときによく考える疑問についてまとめます。
特別支援学級で簡単にできる図工ネタは?
短時間で取り組みやすい題材としては、野菜スタンプ、ちぎり絵、シール制作、スタンプ、折り紙、季節のカード、指を使った色塗りなどがあります。
ただし、「簡単な図工」とは、単純で幼い活動という意味ではありません。
子どもの実態に合わせて、材料や工程を調整し、「自分でできた」と感じられる活動にすることが大切です。
特別支援学級の図工でおすすめの題材は?
おすすめの題材は、子どもの興味や得意なことによって変わります。
例えば、
- 自然が好きな子→落ち葉・木の実・草花
- 生き物が好きな子→昆虫・魚・動物
- 色が好きな子→紙染め・にじみ絵
- 工作が好きな子→廃材制作
- 友達と活動するのが好きな子→共同制作
というように、「子どもが好きなもの」から題材を考えると、活動への意欲につながりやすくなります。
異学年でも一緒にできる図工は?
季節の制作、共同制作、スタンプ、コラージュ、紙染め、落ち葉制作などは、異学年でも取り組みやすい題材です。
ポイントは、全員に同じ完成作品を求めないことです。
例えば同じ「落ち葉」をテーマにしても、葉っぱをなぞる子、見ながら描く子、色を工夫する子、レイアウトを考える子など、取り組み方を変えることができます。
題材は共有し、目標や方法は個別化する。
これが異学年で図工を行うときの基本的な考え方です。
絵を描くのが苦手な子におすすめの図工は?
絵を描くことに苦手意識がある子には、スタンプ、型、なぞり、コラージュ、指を使った色塗り、好きなものを大きく描く活動などがおすすめです。
特に、最初から「自由に絵を描いてください」とするのではなく、実物や写真、型などを手がかりにすると取り組みやすくなります。
私自身も、昆虫が好きな子には、複雑な風景画ではなく、四つ切り画用紙いっぱいに好きな昆虫を一つ大きく描く活動を行いました。
「何を描けばいいか分からない」という状態を避けるだけでも、子どもの取り組み方は変わります。
手先が不器用な子におすすめの工作は?
手先の操作が難しい子には、大きめの材料を使う、工程を減らす、握りやすい道具を使う、貼る・押す・ちぎるなどの操作を取り入れるといった工夫ができます。
例えば、細かな切り紙だけを課題にするのではなく、紙をちぎって貼る活動にする方法があります。
また、筆を細かく動かすことが難しい場合には、指先で絵の具をトントンと押すように色をつける方法もあります。
「できないから簡単な作品にする」のではなく、「できる方法に変える」という視点が大切です。
45分でできる図工ネタは?
45分程度で取り組みやすいのは、野菜スタンプ、スタンプ制作、ちぎり絵、シールアート、季節のカード、簡単なコラージュ、指を使った色塗りなどです。
ただし、説明や片付けの時間も必要なので、制作時間だけを45分として考えないようにします。
また、完成までに時間がかかる題材でも、「今日は葉っぱを描く」「今日は色を塗る」のように工程を分ければ、45分の授業で十分取り組むことができます。
知的障害のある子どもにおすすめの図工は?
知的障害のある子どもに限らず、図工の題材は一人ひとりの発達段階や経験、興味、得意なことに合わせて考える必要があります。
そのうえで、操作が分かりやすく、結果が目に見えやすい活動は取り組みやすい場合があります。
- スタンプ
- 紙染め
- ちぎり絵
- 粘土
- 大きな画用紙への色塗り
- 季節の制作
- 自然物を使った制作
- 共同制作
ただし、学年や障害の種類だけで活動を決めるのではなく、実際の子どもの姿を見て教材を調整することが重要です。
特別支援学級の図工で共同制作をするときのポイントは?
共同制作では、最初から全員で一つの作品を作ろうとせず、「個人制作→パーツを集める→レイアウトを考える→共同作品にする」という流れがおすすめです。
例えば、落ち葉を一人ひとり描き、それを切り取って大きな画用紙に並べます。
すると、一人ひとりの作品が残ったまま、一つの大きな作品を作ることができます。
また、子どもたちから出てきた「亀みたい」「トンボみたい」「空を飛んでいるみたい」といったつぶやきを拾いながら、みんなでレイアウトを考えることも大切です。
教師が完成形をすべて決めるのではなく、子どもたちの発想を作品に取り入れる。
これが共同制作を「一緒に作業しただけ」で終わらせないポイントだと思います。
まとめ|特別支援学級の図工は「できた!」を大切に
特別支援学級の図工では、「何を作るか」だけではなく、「どうすれば、その子が参加できるか」を考えて題材を選ぶことが大切です。

今回紹介した図工ネタも、すべての子どもに同じ方法で取り組ませる必要はありません。
子どもの実態に合わせて、材料や道具、工程、完成までの方法を変えていきます。
特別支援学級の図工を考える5つのステップ
① 題材を選ぶ
↓
② 子どもに合わせて方法を工夫する
↓
③ 一人ひとりが自分なりに表現する
↓
④ 友達と一緒に作品を作る
↓
⑤ 生活につながる活動として活用する
例えば、生活科で見つけた落ち葉を描く。
その葉っぱを切り取る。
みんなで並べる。
「これ、亀みたいだね」と話す。
子どものアイデアを取り入れて作品を完成させる。
この一連の活動には、図工だけではなく、観察すること、考えること、伝えること、友達と協力することなど、さまざまな学びがあります。
また、紙染めで作った和紙を、後日の紫陽花やちぎり絵、デッサン作品などに再利用するように、一つの制作活動を次の活動につなげていくこともできます。
図工の時間に大切なのは、必ずしも「きれいな作品を完成させること」だけではありません。
「自分で色を選んだ」
「好きなものを描けた」
「友達と一緒にできた」
「もう一枚作りたい」
「こんな形に見える!」
そんな子どもたちの姿こそ、大切にしたい図工の学びです。
特別支援学級の図工は、一人ひとりの「できた!」を積み重ねながら、その子らしい表現を楽しめる時間にしていきたい。
そのためには、難しい題材を簡単にするだけではなく、題材、材料、道具、工程、友達との関わり方を工夫することが大切です。
ぜひ、今回紹介した図工ネタの中から、子どもたちが「これならやってみたい」と思えそうなものを一つ選んで、実践してみてください。
特別支援学級の授業づくりに役立つ関連記事
特別支援学級では、図工だけでなく、生活単元学習や自立活動、SSTなどを関連付けながら授業を組み立てることがあります。
今回の記事とあわせて、次の記事も参考にしてください。
▶ 特別支援学級の自立活動
自立活動の考え方や具体的な実践についてはこちら。
▶ 特別支援学級の生活単元学習
生活経験を生かした学習活動を考えるときにおすすめです。
▶ 特別支援学級のSST
子ども同士の関わりやコミュニケーションを育てる実践はこちら。
▶ 夏野菜を使ったスタンプ制作
生活単元学習と図工を組み合わせた実践として紹介しています。
▶ 和紙の紙染めを使った制作
紙染めした和紙を、その後の作品づくりにも活用するアイデアを紹介しています。

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