この記事でわかること
- 特別支援学級の「教育課程」とは何か
- 通常学級と特別支援学級の教育課程の違い
- 「特別の教育課程」とは何か
- 教育課程を編成するときの基本的な考え方
- 下学年の教科や特別支援学校の各教科を取り入れる場合の考え方
- 自立活動を教育課程にどう位置付けるか
- 実際の時間割をどのように考えればよいか
- 特別支援学級の教育課程とは?
- 特別支援学級にも「教育課程」がある
- そもそも「教育課程」とは何?
- 特別支援学級の教育課程は、通常学級と何が違う?
- 「特別の教育課程」とは?
- 特別支援学級の教育課程を考えるとき、最初に「時間割」を作らない
- 特別支援学級の教育課程を編成する基本的な流れ
- 特別支援学級の教育課程はどう編成する?
- 特別支援学級では「下学年の教科」を取り入れてもいい?
- 知的障害特別支援学級では「特別支援学校の各教科」を参考にできる
- 「各教科等を合わせた指導」とは?
- 異学年の子どもを同時に指導する難しさ
- 交流学級との時間調整も教育課程編成の重要なポイント
- 特別支援学級の教育課程を考えるときに大切なこと
- 特別支援学級の教育課程と自立活動
- そもそも「自立活動」とは?
- 自立活動は「6区分27項目」で整理されている
- 自立活動は「自立活動の時間」だけに行うものではない
- 「自立活動の時間」と「教育活動全体を通じた自立活動」の違い
- 自立活動の時間は週に何時間?
- 自立活動を時間割のどこに入れる?
- 自立活動と個別の指導計画はどうつながる?
- SSTは自立活動に位置付けられる?
- 元・自閉症・情緒障害学級担任として感じた「自立活動」の難しさ
- 自立活動の時間割を考えるときの具体例
- 自立活動の教育課程を考えるときのチェックポイント
- 自立活動は「何時間やるか」より「何のためにやるか」が大切
- 特別支援学級の時間割はどう作る?
- 特別支援学級の時間割を作る基本的な手順
- 特別支援学級の時間割モデル①|自閉症・情緒障害学級
- 特別支援学級の時間割モデル②|知的障害学級
- 特別支援学級では「時間割表」と「児童別予定表」を分けると考えやすい
- 特別支援学級の時間割で避けたい3つの失敗
- 元・特別支援学級担任として伝えたい「時間割」の考え方
- 特別支援学級の時間割を作るときのチェックリスト
- 特別支援学級の教育課程は「時間割」だけでは完成しない
- 特別支援学級では、どの教科をどの教育課程で学ぶ?
- 特別支援学級の教育課程は大きく3つの考え方で整理できる
- ① 当該学年の教科で学ぶ場合
- ② 下学年の教科に替えて学ぶ場合
- ③ 知的障害特別支援学校の各教科に替えて学ぶ場合
- では、下学年と特別支援学校の各教科、どうやって判断する?
- 教科によって教育課程が違ってもいい
- 自立活動は「教科の代わり」ではない
- 「教科」と「自立活動」を組み合わせて考える
- 知的障害特別支援学校の「各教科等を合わせた指導」とは?
- 私が特別支援学級担任として感じた「教科を決める難しさ」
- 特別支援学級の教育課程を決めるときのチェックポイント
- 特別支援学級の教育課程で一番大切なのは「何を選ぶか」だけではない
- まとめ|特別支援学級の教育課程は「一人ひとりに合わせて組み合わせる」
- 特別支援学級の教育課程と個別の指導計画はどうつなげる?【実例付き】
- そもそも「教育課程」と「個別の指導計画」は何が違う?
- 教育課程から個別の指導計画へ落とし込む4ステップ
- STEP1|まず「学級として何を学ぶのか」を決める
- STEP2|次に、一人一人の実態を見る
- STEP3|実態から個別の目標を設定する
- STEP4|個別の目標を日々の授業につなげる
- 【実践例】自閉症・情緒障害学級での教育課程と個別の指導計画
- 【実践例】学年が違う子どもを同時に指導する場合
- 「個別の指導計画」が授業づくりのヒントになる
- 教育課程と個別の指導計画を「別物」にしない
- 「評価」までつながって初めて教育課程が生きる
- 特別支援学級の教育課程を考えるときの実践チェックリスト
- まとめ|教育課程は「書類」ではなく、子どもの学びをつなぐ設計図
- 特別支援学級の時間割はどう作る?複数学年・交流学級・自立活動を組み合わせる方法
- 特別支援学級の時間割づくりが難しい5つの理由
- 時間割を作る前に「動かせない時間」を確認する
- ステップ1|交流学級との時間を最初に入れる
- ステップ2|次に「同時指導できる教科」を考える
- ステップ3|学習進度が違う場合は「同じ教科=同じ内容」にしない
- ステップ4|自立活動を「余った時間」に入れない
- 自立活動は「自立活動の時間」だけで指導するものではない
- 【実践コラム】私が特別支援学級の時間割づくりで難しいと感じたこと
- 【具体例】複数学年の特別支援学級の時間割
- 時間割を作ったら「教師が指導できるか」まで確認する
- 特別支援学級の時間割づくりで避けたい3つの失敗
- 特別支援学級の時間割を作るときのチェックリスト
- まとめ|特別支援学級の時間割は「一人一人の学び」を中心に考える
- 特別支援学級で下学年の学習をしてもいい?知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の違い
- まず押さえたい「知的障害学級」と「自閉症・情緒障害学級」の違い
- 「今の学年が難しいから下学年」だけでは不十分
- 下学年の学習を取り入れることは「学年を下げること」ではない
- 本人の願いを教育課程に反映させる
- 保護者の願いもしっかり聞く
- 「短期」と「長期」の両方から考える
- 【実践コラム】私自身も「下学年の学習が適切」と判断した経験があります
- 「表面的な学年」ではなく「本当の学び」を見る
- 下学年の学習を取り入れるときに確認したい5つのこと
- 「下学年の学習=後退」ではない
- ただし「下学年の内容にすれば解決」でもない
- 教育課程を決めるのは「学年」ではなく「教育的な必要性」
- まとめ|「何年生の学習か」より「その子にとって何が必要か」
- 特別支援学級の教育課程でよくある疑問【FAQ】
- Q1.特別支援学級の教育課程は、通常学級と同じですか?
- Q2.特別支援学級では、下学年の学習をしてもいいですか?
- Q3.自閉症・情緒障害学級では、必ず当該学年の学習をしなければいけませんか?
- Q4.特別支援学級では、自立活動を必ず行うのですか?
- Q5.自立活動と各教科の授業は、どのように分ければいいですか?
- Q6.特別支援学級の児童は、交流学級で授業を受けてもいいですか?
- Q7.交流学級と特別支援学級の時間割が合わない場合はどうすればいいですか?
- Q8.特別支援学級の時間割は、児童一人一人別に作る必要がありますか?
- Q9.特別支援学級では、すべての教科を特別支援学級で学ぶのですか?
- Q10.特別支援学級では、教科書を使わなくてもいいですか?
- Q11.個別の指導計画と教育課程は、どうつながっていますか?
- Q12.特別支援学級の教育課程は、毎年見直す必要がありますか?
- Q13.特別支援学級の教育課程で一番大切なことは何ですか?
- 特別支援学級の教育課程で迷ったときのチェックリスト
- まとめ|特別支援学級の教育課程は「その子の学び」を設計するもの
- 特別支援学級の教育課程について、さらに詳しく知りたい方へ
特別支援学級の教育課程とは?
「今年から特別支援学級の担任になったけれど、教育課程をどう考えればいいのかわからない」
「通常学級と同じように授業をすればいいの?」
「下学年の教科を取り入れてもいいの?」
「自立活動は、教育課程の中でどのように位置付けるの?」
特別支援学級を初めて担任すると、このような疑問を持つ先生は少なくありません。
私自身も、特別支援学級の担任として子どもたちの指導に携わる中で、教育課程について考える機会が何度もありました。
特別支援学級の教育課程は、単純に「通常学級の授業を少し簡単にする」というものではありません。
子どもの実態を把握し、その子に必要な学びを考え、それを学校の教育課程の中に位置付けていく。
この視点がとても重要です。
この記事で大切にする考え方
特別支援学級の教育課程について、制度だけを説明するのではなく、「実際に特別支援学級の担任になったら、どのように考えて教育課程を組み立てていけばよいのか」という学校現場の視点から解説します。
特別支援学級にも「教育課程」がある
まず押さえておきたいのは、特別支援学級も小学校・中学校の中にある学級の一つだということです。
そのため、特別支援学級だからといって、通常の小学校・中学校とはまったく別の教育課程で教育を行うわけではありません。
文部科学省も、特別支援学級について、基本的には小学校・中学校の学習指導要領に沿って教育を行うことを示しています。
一方で、障害のある児童生徒を対象とする特別支援学級では、通常の学級の教育課程をそのまま適用することが難しい場合があります。
そこで、児童生徒の実態に応じて「特別の教育課程」を編成することが認められています。
つまり、特別支援学級の教育課程を考えるときには、
教育課程
実態への配慮
「特別の教育課程」
という関係をイメージすると理解しやすくなります。
そもそも「教育課程」とは何?
「教育課程」という言葉を聞くと、「時間割のことかな?」と思う先生もいるかもしれません。
しかし、教育課程と時間割は同じものではありません。
教育課程 ≠ 時間割
時間割は、教育課程を実際の学校生活の中に落とし込んだものの一つです。教育課程を考えるときには、まず「子どもたちに何を学ばせるのか」「どのような力を育てるのか」「どのような指導を行うのか」を考え、その上で年間指導計画や時間割などに具体化していきます。
特別支援学級では、この順番を意識することが特に大切です。
いきなり時間割を作るのではなく、まず「この子たちに何を学んでほしいのか」を考える。
その上で、教科の学習、自立活動、交流及び共同学習などをどのように組み合わせていくのかを考えていきます。
特別支援学級の教育課程は、通常学級と何が違う?
では、通常学級と特別支援学級では、教育課程にどのような違いがあるのでしょうか。
大きなポイントは、児童生徒の障害の状態や学習上・生活上の困難さなどを踏まえて、教育課程を柔軟に編成できることです。
通常学級では、基本的にその学年の学習指導要領に示された各教科等の目標や内容に沿って学習を進めます。
一方、特別支援学級では、児童生徒の実態によっては、そのまま当該学年の学習内容を学ぶことが難しい場合があります。
そのような場合には、教育課程を工夫することができます。
| 項目 | 通常学級 | 特別支援学級 |
|---|---|---|
| 基本となる教育課程 | 小・中学校の学習指導要領 | 小・中学校の学習指導要領 |
| 児童生徒の実態への配慮 | 指導内容・方法等を工夫 | 実態に応じて特別の教育課程を編成 |
| 自立活動 | 通常の教育課程には特別支援学級のような位置付けはない | 教育課程に位置付ける |
| 教育課程の調整 | 指導方法等の工夫が中心 | 必要に応じて下学年の内容等を検討 |
ここで注意したいのは、「特別支援学級だから、何でも自由に変更してよい」という意味ではないということです。
教育課程の編成には学習指導要領や学校教育法施行規則などの根拠があり、児童生徒の実態を踏まえながら、学校として適切に編成する必要があります。
「特別の教育課程」とは?
特別支援学級の教育課程を理解する上で、避けて通れないのが「特別の教育課程」という言葉です。
特別の教育課程とは、特別支援学級に在籍する児童生徒の障害の状態や教育的ニーズなどを考慮し、通常の教育課程をそのまま適用することが難しい場合に、必要な教育上の特別な取扱いを行うための教育課程です。
国立特別支援教育総合研究所(NISE)の資料では、特別の教育課程を編成する際、児童生徒の実態を把握した上で、必要に応じて当該学年より下学年の各教科の目標・内容に替えたり、知的障害特別支援学校の各教科の目標・内容に替えたりすることなどが示されています。
また、自立活動を教育課程に取り入れることも重要なポイントです。
ここが重要です
「特別の教育課程」は、子どもに合わせて教育を適当に変えるための仕組みではありません。
学習指導要領等を根拠としながら、児童生徒の実態を丁寧に把握し、「この子にとって、どのような教育課程が必要なのか」を学校として検討していくための仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
特別支援学級の教育課程を考えるとき、最初に「時間割」を作らない
ここは、特別支援学級を担任してきた私が、特に大切だと感じているポイントです。
元・特別支援学級担任としての実践コラム
特別支援学級の教育課程を考えるとき、私は「月曜日の1時間目は国語、2時間目は算数……」と、最初から時間割を埋めていくことには注意が必要だと考えています。
先に考えたいのは、「この学級の子どもたちに、1年間でどんな力を身につけてほしいのか」ということです。
例えば、友達との関わりに難しさがある子どもがいたとします。
その子に必要なのが「友達と適切に関わる経験」だとすれば、それを自立活動で扱うのか、SSTとして扱うのか、学級活動や休み時間の指導とどうつなげるのか、各教科の学習の中でどのような場面を設定するのかを考えていきます。
つまり、「時間割に何を入れるか」ではなく、「子どもに必要な学びを、教育課程のどこに位置付けるか」という順番で考えることが大切だと思っています。
実際、NISEの資料でも、特別支援学級の教育課程編成では、まず児童生徒一人ひとりの障害の状態や興味・関心、各教科の習得状況や既習事項などを把握し、その上で特別の教育課程を検討するという流れが示されています。(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)
特別支援学級の教育課程を編成する基本的な流れ
ここまでの内容を整理すると、特別支援学級の教育課程は、次のような流れで考えると分かりやすくなります。
この順番で考えていくと、「とりあえず時間割を作って、あとから子どもに合わせて調整する」という状態を避けやすくなります。
では、具体的に「特別の教育課程では、どこまで教育内容を変えることができるのか」。
次の章では、特別支援学級の教育課程を考える上で特に重要な、「下学年の教科」や「知的障害特別支援学校の各教科」について詳しく見ていきます。
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特別支援学級の教育課程はどう編成する?
ここまで、特別支援学級の教育課程には、通常の教育課程を基本としながら、児童生徒の実態に応じて「特別の教育課程」を編成できることを説明してきました。
では、実際に特別支援学級の教育課程を編成するときには、何を考えればよいのでしょうか。
大切なのは、最初から「何年生の教科を教えるか」「時間割をどう組むか」と考えるのではなく、児童生徒の実態から出発することです。
教育課程編成の基本
特別支援学級の教育課程は、次のような順番で考えると整理しやすくなります。
- 児童生徒の実態を把握する
- 身につけたい力・目指す姿を考える
- 各教科等で学ぶ内容を検討する
- 必要に応じて教育課程を調整する
- 自立活動を位置付ける
- 交流及び共同学習を位置付ける
- 年間指導計画や時間割に具体化する
①まず「子どもの実態」を把握する
特別支援学級の教育課程を考えるとき、最初に確認したいのが児童生徒の実態です。
例えば、次のようなことを把握します。
- 現在どの程度の学習内容を理解しているか
- どのような学習方法なら取り組みやすいか
- 読む・書く・計算などにどのような困難があるか
- コミュニケーションにどのような特徴があるか
- 友達との関わりにどのような難しさがあるか
- 生活面でどのような支援が必要か
- 得意なことや興味・関心は何か
- どのような環境で力を発揮しやすいか
特別支援学級では、同じ学年に在籍している子どもであっても、学習面や生活面の実態が大きく異なることがあります。
そのため、「小学○年生だから○年生の内容を教える」という学年だけを基準に考えるのではなく、一人ひとりの実態を踏まえて教育課程を考えることが重要になります。
②「この子にどんな力を身につけてほしいか」を考える
実態を把握したら、次に考えたいのが「目指す姿」です。
例えば、算数の計算が苦手な子どもがいたとしても、単純に「計算ができるようにする」だけが目標とは限りません。
買い物場面で必要なお金の計算ができるようになることが、その子にとって大切なのかもしれません。
あるいは、文章を読むことが苦手な子どもなら、教科書の文章を読めるようにすることだけではなく、必要な情報を読み取って生活の中で活用できるようにすることが重要になる場合もあります。
教育課程を「子ども」から考える
「何年生の内容を教えるか」だけではなく、「この子が学校生活や将来の生活を送るために、今どんな力を育てる必要があるのか」という視点を持つことが、特別支援学級の教育課程を考える上で重要です。
③各教科等で何を学ぶのかを検討する
次に、その目指す姿に向かうために、国語、算数・数学、生活、社会、理科、外国語などの各教科等で何を学ぶのかを考えます。
ここで重要なのは、特別支援学級だからといって、すべての教科を一律に変更する必要があるわけではないということです。
児童生徒の実態によっては、当該学年の学習内容を学ぶことが適切な場合もあります。
一方で、現在の実態と当該学年の学習内容との間に大きな隔たりがある場合には、下学年の目標・内容を取り入れることなどを検討します。
特別支援学級では「下学年の教科」を取り入れてもいい?
特別支援学級の教育課程について調べていると、多くの先生が気になるのが「下学年の教科を学習してもよいのか」という問題です。
結論からいうと、特別支援学級では、児童生徒の実態に応じて、当該学年より下の学年の各教科の目標・内容を取り入れることができます。
ただし、ここで大切なのは、
「この子は勉強が苦手だから、とりあえず下の学年にする」
という考え方ではないということです。
なぜその内容を取り入れる必要があるのか、児童生徒の実態や教育的な必要性を踏まえて考える必要があります。
「学年を下げる」のではなく「必要な内容を選ぶ」と考える
例えば小学5年生の児童がいたとします。
その児童が国語では小学3年生程度の内容を学ぶことが適切だとしても、算数や理科、社会まで一律に小学3年生の内容にする必要があるとは限りません。
教科によって学習状況が異なることもあります。
| 教科 | 児童の実態の例 | 教育課程を考える視点 |
|---|---|---|
| 国語 | 文章理解に大きな困難がある | 下学年の目標・内容を検討 |
| 算数 | 基本的な計算はできる | 当該学年の内容を検討 |
| 体育 | 集団活動への参加に課題がある | 内容だけでなく指導方法・環境を工夫 |
このように、「特別支援学級だから全部下学年」という考え方ではなく、教科等ごとに児童生徒の実態と目標・内容との関係を検討することが大切です。
ここは現場で迷いやすいところ
私自身、特別支援学級を担当していたとき、「どこまで下学年の内容にするのか」は難しい判断の一つでした。
子どもによって学習進度が大きく違うため、「学年」だけで一律に考えることができません。
だからこそ、現在の学習状況、これまでに学んできた内容、今後身につけたい力を見ながら、教科ごとに考えていく必要があります。
知的障害特別支援学級では「特別支援学校の各教科」を参考にできる
特別支援学級の教育課程を考えるとき、特に知的障害のある児童生徒について重要になるのが、知的障害特別支援学校の各教科等です。
児童生徒の実態によっては、小学校・中学校の各教科の目標・内容をそのまま扱うことが難しい場合があります。
その場合、知的障害特別支援学校の学習指導要領に示されている各教科の目標・内容を取り入れることが検討されます。
ここでも重要なのは、「知的障害学級なら全部を特別支援学校の教育課程にする」という単純な話ではないということです。
児童生徒の実態を踏まえ、学校として教育課程を検討する必要があります。
知的障害特別支援学校の各教科にはどのような特徴がある? 知的障害特別支援学校では、小学校・中学校とは異なる教育課程の考え方があり、知的障害のある児童生徒の学習上の特性を踏まえて、各教科の目標や内容が整理されています。 また、知的障害のある児童生徒の教育では、各教科等を合わせた指導として、「日常生活の指導」「遊びの指導」「生活単元学習」「作業学習」などが行われることがあります。 これらは、単に教科の内容を減らしたものではありません。 生活との関連を重視し、実際の活動を通して学ぶという考え方が大きな特徴です。
「各教科等を合わせた指導」とは?
知的障害特別支援教育について調べると、「各教科等を合わせた指導」という言葉が出てきます。
これは、各教科等を単独で指導するのではなく、児童生徒の生活や学習の実態に即した具体的な活動を通して、各教科等の内容を関連付けながら指導するものです。
例えば「買い物」という活動を考えてみましょう。
「買い物をする」という一つの活動
商品名を読む
金額を計算する
買い物の手順を知る
店員とのやり取り
このように、一つの具体的な活動の中に複数の学びを位置付けることができます。
ただし、「生活単元学習をすれば何でもよい」というわけではありません。
活動ありきではなく、その活動を通して児童生徒に何を学ばせるのかを明確にすることが重要です。
元・知的障害特別支援学級担任として
私は知的障害特別支援学級を2年間担当しました。
知的障害学級では、学年が違う子どもたちが同じ学級に在籍するため、「同じ時間に、同じ内容を、同じ方法で教える」という通常学級のような授業づくりが難しい場面があります。
一方で、子どもたちの実態に合わせて活動を組み立てることで、同じ活動の中でも、それぞれに異なる目標を設定することができます。
この「一つの活動の中に、一人ひとり異なる学びを位置付ける」という考え方は、特別支援学級の教育課程を考える上で、とても重要だと感じています。
異学年の子どもを同時に指導する難しさ
特別支援学級の教育課程を考える上で、もう一つ避けて通れないのが異学年の指導です。
例えば、1年生と4年生が同じ学級に在籍している場合、同じ時間に国語の授業を行うとしても、当然ながら学習内容は異なります。
さらに、同じ学年であっても学習進度が異なることがあります。
そのため、特別支援学級では、
- 学年が違う
- 教科が違う
- 学習進度が違う
- 必要な支援が違う
- 交流学級に参加する時間も違う
という複数の条件を同時に考えながら教育課程を編成することになります。
これは、特別支援学級担任が教育課程を考えるときの大きな難しさの一つです。
「一つの授業=全員が同じことをする」ではない
特別支援学級では、授業の中で全員が同じ活動をする必要はありません。
例えば算数の時間であっても、
- Aさんは繰り上がりのない足し算
- Bさんは九九
- Cさんは分数
というように、個々の実態に応じて異なる課題に取り組むことがあります。
このような指導を成立させるためには、教育課程の段階から「誰に、何を、どのように学ばせるのか」を考えておく必要があります。
交流学級との時間調整も教育課程編成の重要なポイント
特別支援学級では、交流及び共同学習も教育課程を考える上で重要な要素になります。
例えば、国語や算数は特別支援学級で学び、体育や音楽、図工、道徳、学級活動などでは交流学級で学ぶという場合があります。
しかし、ここでも単純に「交流学級に行ける時間を全部入れればいい」というわけではありません。
児童生徒の実態や学習上の目標、交流する教科の内容、学級担任同士の連携などを踏まえて考える必要があります。
現場で起こりやすい問題
特別支援学級の教育課程を考えるとき、交流学級との時間調整は想像以上に大きな問題になります。
「この時間は交流学級で授業を受ける」「でも別の子は自立活動」「さらに別の子は特別支援学級で算数」というように、児童によって予定が分かれるためです。
つまり、特別支援学級の時間割は、単純な「学級全体の時間割」ではなく、一人ひとりの教育課程と交流学級との関係を調整した結果として作られるものだと考えると分かりやすいでしょう。
特別支援学級の教育課程を考えるときに大切なこと
ここまでを整理すると、特別支援学級の教育課程を考える際には、次の5つの視点が重要です。
現在何ができ、何に困っているのか。
当該学年・下学年等のどの内容を学ぶのか。
障害による学習上・生活上の困難を改善・克服するために何が必要か。
どの教科・活動をどのように交流するのか。
同じ学級でも教育課程や指導内容が異なることを前提にする。
特別支援学級の教育課程は、通常学級の教育課程を単純に「簡単にしたもの」でも、「学年を下げたもの」でもありません。
児童生徒一人ひとりの実態と教育的ニーズを踏まえ、その子に必要な学びを教育課程の中にどう位置付けるか。
これが、特別支援学級の教育課程を考えるときの中心になる考え方です。
次に読む
ここまでで、特別支援学級の教育課程の基本的な考え方と、下学年の教科や知的障害特別支援学校の各教科との関係が見えてきました。
次は、特別支援学級の教育課程を考える上で特に重要な「自立活動」について詳しく解説します。自立活動とは何なのか、教育課程のどこに位置付けるのか、そして「自立活動の時間」と「教育活動全体を通じた自立活動」はどう違うのかを整理していきます。
特別支援学級の教育課程と自立活動
特別支援学級の教育課程を考えるとき、避けて通れないのが「自立活動」です。
特別支援学級の担任になったばかりの先生からは、
- 自立活動って、具体的に何をすればいいの?
- 自立活動は週に何時間やればいいの?
- 自立活動の時間を時間割のどこに入れればいい?
- 自立活動は「自立活動の時間」にしかやってはいけないの?
- SSTは自立活動になるの?
- 個別の指導計画と自立活動はどうつながるの?
といった疑問が出てきます。
私自身、自閉症・情緒障害特別支援学級を6年間担当してきましたが、自立活動を教育課程の中にどう位置付けるかは、実際の学級運営において非常に重要なテーマでした。
この記事で押さえたいポイント
自立活動は、単に「週に○時間、自立活動という授業をする」というだけのものではありません。
児童一人ひとりの障害による学習上・生活上の困難を把握し、その改善・克服に必要な指導を、教育課程の中にどう位置付けるかという視点から考えることが大切です。
そもそも「自立活動」とは?
自立活動は、特別支援教育における重要な指導領域の一つです。
特別支援学校の学習指導要領では、自立活動について、児童生徒が自立を目指し、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養うことを目標としています。
特別支援学級においても、児童生徒の障害の状態や特性などを踏まえ、自立活動を教育課程に位置付けて指導することが重要になります。
ここで大切なのは、「自立」という言葉を「何でも一人でできるようになること」と考えないことです。
自立活動で考えたい「自立」とは
例えば、
- 自分の気持ちを相手に伝える
- 困ったときに援助を求める
- 予定を確認して行動する
- 気持ちが高ぶったときに落ち着く方法を身につける
- 集団の中で安心して活動する
- 自分の得意なことや苦手なことを知る
といったことも、その子が学校生活や将来の生活を送る上で大切な「自立」につながります。
自立活動は「6区分27項目」で整理されている
自立活動の内容は、大きく6つの区分、27の項目に整理されています。
生活リズム、健康管理、病気の理解、身体の状態など
情緒の安定、状況理解、集団への参加など
他者との関わり、自己理解、集団への参加など
感覚、認知、情報の整理、環境への適応など
姿勢、運動、動作、作業など
意思の伝達、言語、コミュニケーション手段など
ただし、実際の指導では「この子は6区分のうち第2区分だから心理的な安定を指導する」というように、区分をそのまま授業にするわけではありません。
児童生徒の実態を把握し、必要な項目を選び、それらを関連付けながら具体的な指導内容を設定していきます。
自立活動は「自立活動の時間」だけに行うものではない
ここは、特別支援学級の教育課程を理解する上で非常に重要なポイントです。
自立活動というと、
「時間割に自立活動という時間を作って、その時間に指導するもの」
と考えてしまいがちです。
しかし、自立活動はそれだけではありません。
自立活動の時間における指導だけでなく、各教科、道徳科、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動など、学校の教育活動全体を通じて、自立活動の視点を生かした指導を行うことが重要です。
例えばこんな場面
| 国語 | 自分の考えを相手に分かるように伝える |
| 算数 | 手順を確認しながら課題に取り組む |
| 体育 | 集団のルールを理解して参加する |
| 学級活動 | 自分の困りごとを伝え、援助を求める |
| 休み時間 | 友達との適切な関わり方を経験する |
このように考えると、自立活動は「週に何時間やるか」だけで考えるものではないことが分かります。
「自立活動の時間」と「教育活動全体を通じた自立活動」の違い
では、時間割に自立活動の時間を設定する意味は何なのでしょうか。
簡単に整理すると、次のように考えると分かりやすいでしょう。
| 自立活動の時間 | 教育活動全体 | |
|---|---|---|
| 目的 | 自立活動の目標に焦点を当てて指導 | 各教育活動の中で自立活動の視点を生かす |
| 場面 | 時間割に設定した授業等 | 各教科・特別活動・学校生活など |
| 例 | 感情のコントロール、自己理解、コミュニケーション練習 | 授業中の援助要請、友達との関わり、予定変更への対応 |
つまり、自立活動の時間を設定したから、それ以外では自立活動をしなくてよいわけではありません。
逆に、自立活動の時間を設定せず、日常の教育活動の中だけで対応すればよい、と単純に考えるものでもありません。
児童生徒の実態や教育的ニーズを踏まえ、必要な指導を教育課程の中に適切に位置付けることが大切です。
自立活動の時間は週に何時間?
「自立活動は週に何時間やればいいの?」という疑問も、特別支援学級の担任がよく抱く疑問の一つです。
しかし、ここで「自立活動は週○時間」と一律に決めてしまうのは適切ではありません。
自立活動の時間をどのように設定するかは、児童生徒の実態、教育課程全体、各教科等の授業時数、学校の実情などを踏まえて検討する必要があります。
つまり、重要なのは「何時間やったか」という数字だけではありません。
「週○時間」に飛びつかない
例えば、自立活動を週2時間設定したとしても、その時間に何を指導するのかが曖昧であれば、教育的な効果は十分に期待できません。
反対に、自立活動の時間を明確に設定した上で、日常の学校生活や各教科の中でも同じ目標に向かって継続的に指導することができれば、より意味のある指導につながります。
自立活動を時間割のどこに入れる?
ここは、実際に特別支援学級を担任すると悩みやすいところです。
私自身、自閉症・情緒障害特別支援学級を6年間担当してきましたが、「自立活動をどこに入れるか」は、時間割を作る際に考える必要のある重要なポイントでした。
特別支援学級では、
- 交流学級に参加する時間
- 特別支援学級で教科を学ぶ時間
- 個別に指導する時間
- 複数の児童が一緒に学ぶ時間
- 自立活動の時間
などを組み合わせる必要があります。
そのため、単純に「空いている時間に自立活動を入れる」という方法では、教育課程全体とのバランスが崩れてしまうことがあります。
自立活動の時間を設定するときに考えたいこと
個別に指導する必要がある課題は何か。
自立活動で何を身につけるのか。
教科や学級活動等とどうつなげるか。
交流の時間と重ならないように調整できるか。
自立活動の時間だけで終わらず、日常生活につなげられるか。
自立活動と個別の指導計画はどうつながる?
自立活動を考えるとき、もう一つ重要なのが個別の指導計画です。
自立活動では、学級全体に同じ内容を行うのではなく、児童生徒一人ひとりの実態に応じて指導目標や内容を設定することが重要になります。
例えば、同じ「コミュニケーション」という課題を抱えているように見える2人の児童がいたとしても、必要な指導は同じとは限りません。
| 児童 | 実態 | 自立活動の目標例 |
|---|---|---|
| Aさん | 困っていても助けを求められない | 困ったときに適切な方法で援助を求める |
| Bさん | 気持ちが高ぶると一方的に話してしまう | 自分の気持ちを整理し、相手に伝える |
| Cさん | 友達との距離感が分かりにくい | 相手との適切な距離を意識して関わる |
このように考えると、「自立活動の時間に何をするか」より先に、「この子にとって何が必要なのか」を考える必要があることが分かります。
SSTは自立活動に位置付けられる?
特別支援学級でよく行われる指導の一つに、SST(ソーシャルスキルトレーニング)があります。
例えば、
- 友達への話しかけ方
- 断り方
- 助けを求める方法
- 気持ちの伝え方
- トラブルになったときの解決方法
- 相手の気持ちを考える方法
などです。
これらは児童生徒の実態や指導目標によっては、自立活動の指導内容として位置付けて考えることができます。
ただし、「SSTをやれば自立活動」という単純な関係ではありません。
重要なのは、SSTという方法を使うことではなく、児童生徒の実態を踏まえて、どのような自立活動の目標を設定し、そのためにどのような指導を行うのかということです。
SSTを「目的」にしない
例えば「今日はSSTをやろう」から始めるのではなく、
「この子は、困ったときに『助けてください』と言えるようになる必要がある」
という実態と目標を先に考えます。
その上で、ロールプレイやソーシャルストーリー、カード教材などのSSTの方法を選択します。
元・自閉症・情緒障害学級担任として感じた「自立活動」の難しさ
現場で感じたこと
自閉症・情緒障害特別支援学級を6年間担当して、私が特に難しいと感じたことの一つが、「自立活動を時間割の中にどう位置付けるか」でした。
特別支援学級では、児童によって必要な支援が違います。
ある子にはコミュニケーションの指導が必要でも、別の子には感情のコントロール、さらに別の子には予定変更への対応や集団参加の練習が必要になることがあります。
しかも、交流学級との時間調整もあります。
そのため、単純に「この時間は全員で自立活動」とするだけでは、一人ひとりのニーズに十分対応できないことがあります。
だからこそ、私は自立活動について、「特別な時間に何かをする」という発想だけではなく、日常の授業や生活の中で、どのような力を育てるのかを明確にすることが大切だと考えています。
自立活動の時間割を考えるときの具体例
例えば、自閉症・情緒障害学級に複数の児童が在籍している場合、次のような時間割を考えることができます。
| 曜日 | 1時間目 | 2時間目 | 3時間目 | 4時間目 |
|---|---|---|---|---|
| 月 | 国語 | 算数 | 交流学級 | 自立活動 |
| 火 | 算数 | 国語 | 体育・交流 | 自立活動 |
| 水 | 交流学級 | 国語 | 算数 | 生活・総合 |
| 木 | 国語 | 自立活動 | 交流学級 | 算数 |
| 金 | 算数 | 国語 | 体育 | 学級活動 |
※時間割は「一例」です
上記は、自立活動を教育課程の中に位置付けるイメージを示すための例です。実際の授業時数や教育課程の編成は、学校や児童生徒の実態、学習指導要領等を踏まえて検討する必要があります。
さらに重要なのは、上の時間割に「自立活動」と書かれていない時間にも、自立活動の視点を持った指導が行われることです。
例えば、国語の時間に「自分の考えを相手に伝える」、体育で「ルールを理解して集団参加する」、休み時間に「友達との適切な距離を取る」といった指導を行うことがあります。
このように考えると、時間割に書かれた「自立活動」だけが自立活動ではないということが分かります。
自立活動の教育課程を考えるときのチェックポイント
自立活動を考えるときのチェックリスト
- □ 児童生徒の実態を具体的に把握している
- □ 自立活動で育てたい力が明確になっている
- □ 6区分27項目を踏まえて指導内容を検討している
- □ 個別の指導計画と自立活動の目標がつながっている
- □ 「自立活動の時間」だけで指導を完結させていない
- □ 各教科等の授業にも自立活動の視点を取り入れている
- □ 交流学級との学習との関係を考えている
- □ 自立活動の指導内容を定期的に見直している
自立活動は「何時間やるか」より「何のためにやるか」が大切
特別支援学級の教育課程を考えていると、「自立活動を週に何時間設定すればいいのか」という疑問に目が向きがちです。
もちろん、教育課程上の授業時数を適切に設定することは大切です。
しかし、それと同じくらい大切なのが、
「この子にとって、なぜ自立活動が必要なのか?」
という問いです。
例えば、
困ったことを伝えられない
↓
援助を求める力
予定変更で混乱する
↓
見通しを持つ・変更に対応する力
友達とトラブルになる
↓
相手との関わり方を学ぶ
気持ちが高ぶってしまう
↓
感情を調整する方法を身につける
というように、具体的な困難から必要な力を考えていきます。
そして、その力を育てるために、自立活動の時間、各教科、学級活動、交流及び共同学習、日常生活などをどう活用するかを考えます。
特別支援学級の教育課程を考えるときの一つの視点
「自立活動の時間を何時間入れるか」から考えるのではなく、
「この子が学校生活や将来の生活をよりよく送るために、どんな力が必要なのか」
というところから考えてみる。
これが、自立活動を教育課程に位置付けるときの基本的な考え方です。
次に読む
ここまで、自立活動の考え方や教育課程との関係について解説しました。
しかし、特別支援学級の教育課程を実際に組むときには、もう一つ大きな問題があります。
「では、実際に1週間の時間割をどう組めばいいの?」
次のパートでは、異学年・異進度の児童、交流学級、自立活動、教科指導をどのように組み合わせるのか、特別支援学級の時間割の作り方と具体例を詳しく解説します。

特別支援学級の時間割はどう作る?
特別支援学級の教育課程を考えるとき、多くの先生が最後に悩むのが「時間割をどう組むか」です。
通常学級であれば、基本的には学級全体で同じ教科を同じ時間に学習します。
しかし、特別支援学級ではそう簡単にはいきません。
例えば、同じ学級に1年生、3年生、5年生の児童が在籍している場合、それぞれの学年で学習する内容は異なります。
さらに、学年が同じでも学習進度が違うことがあります。
そこに、交流及び共同学習、自立活動、個別指導などが加わります。
特別支援学級の時間割が難しい理由
- 学年が違う
- 教科ごとの学習進度が違う
- 児童によって必要な支援が違う
- 交流学級に参加する時間が違う
- 自立活動を位置付ける必要がある
- 担任が一人で複数の児童を指導する場面がある
つまり、特別支援学級の時間割は、単純に「月曜日の1時間目は国語」という形で作るのではなく、一人ひとりの教育課程を重ね合わせながら作っていく必要があります。
特別支援学級の時間割を作る基本的な手順
私が特別支援学級の時間割を考えるなら、次の順番で整理します。
STEP 1
交流学級の時間を確認
まず交流及び共同学習の時間を把握します。
STEP 2
各教科の時間を整理
児童ごとに必要な教科・内容を確認します。
STEP 3
自立活動を配置
個々の実態に応じて必要な時間を位置付けます。
STEP 4
複数児童の学習を重ねる
同じ教科・活動を同時に学べるところを探します。
STEP 5
担任の動きを確認
一人の担任で指導可能かを確認します。
STEP1 まず交流学級の時間を確認する
特別支援学級の時間割を作るとき、最初に確認したいのが交流学級の時間割です。
なぜなら、交流及び共同学習の時間は、特別支援学級だけで自由に動かすことが難しいからです。
例えば、Aさんは3年1組、Bさんは4年1組、Cさんは5年1組に交流しているとします。
それぞれの交流学級の時間割が違えば、特別支援学級の時間割もそれに合わせて調整する必要があります。
| 時間 | Aさん | Bさん | Cさん |
|---|---|---|---|
| 1時間目 | 交流 | 国語 | 算数 |
| 2時間目 | 算数 | 交流 | 国語 |
| 3時間目 | 国語 | 算数 | 交流 |
このように、児童ごとに予定がバラバラになることがあります。
だからこそ、「特別支援学級の時間割を先に作って、あとから交流学級を入れる」のではなく、交流学級の時間を先に把握することがポイントになります。
STEP2 児童ごとに各教科の学習内容を整理する
次に、児童ごとに「何を学ぶのか」を整理します。
ここで重要なのが、同じ学級だからといって、全員が同じ学習内容をする必要はないということです。
例えば、3人の児童がいた場合、次のような教育課程になることがあります。
| 児童 | 国語 | 算数 | 交流 |
|---|---|---|---|
| Aさん | 当該学年 | 下学年の内容 | 体育・音楽 |
| Bさん | 下学年の内容 | 当該学年 | 体育 |
| Cさん | 当該学年 | 当該学年 | 音楽・図工 |
このように、児童によって教科ごとの学習内容が異なる場合があります。
そのため、時間割を作る前に、「誰が、何を学ぶのか」を整理しておくことが重要です。
STEP3 自立活動を配置する
各教科や交流学級の時間を整理したら、自立活動を位置付けます。
ただし、ここでも「空いている時間に自立活動を入れる」という考え方だけでは不十分です。
例えば、
- 気持ちを言葉で伝える
- 困ったときに援助を求める
- 予定変更に対応する
- 友達との適切な距離を保つ
- 集団活動に参加する
など、その児童に必要な自立活動の目標を明確にしてから、時間を位置付けます。
STEP4 できるだけ「同じ時間に指導できるもの」を探す
特別支援学級の時間割を作る上で、担任にとって大きなポイントになるのが、複数の児童を同時に指導できる時間を作ることです。
例えば、3人の児童がそれぞれ違う学年でも、
- 漢字の学習
- 読書
- 計算練習
- 生活に関する学習
- SST
- 制作活動
など、共通する活動を設定できる場合があります。
もちろん、全員が同じ課題に取り組む必要はありません。
重要なのは、同じ時間・同じ場を共有しながら、それぞれに異なる目標や課題を設定することです。
「同じ活動・違う目標」という考え方
例えば「買い物学習」を行う場合でも、
- Aさん → 商品の名前を読む
- Bさん → お金を計算する
- Cさん → 店員とのやり取りを練習する
というように、同じ活動の中で一人ひとりの学習目標を変えることができます。
STEP5 最後に「担任一人で指導できるか」を確認する
ここが、特別支援学級の時間割では非常に重要です。
教育課程としては成立していても、実際の時間割にしてみると、
「この時間、担任一人では3人を見ることができない」
ということが起こります。
例えば、
- Aさんは個別に算数を指導
- Bさんは国語の読み取り
- Cさんはパニックになりやすいため個別対応
となっていたら、一人の担任が同時にすべてを指導するのは難しいでしょう。
そのため、時間割を作った後には、「担任の動き」を実際にシミュレーションすることが大切です。
特別支援学級の時間割モデル①|自閉症・情緒障害学級
ここでは、自閉症・情緒障害学級を想定した時間割の一例を紹介します。
実際には児童の実態や学校の教育課程によって異なるため、あくまで考え方を示すモデルです。
| 曜日 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 月 | 国語 | 算数 | 交流 | 自立活動 | 体育 | 学活 |
| 火 | 算数 | 国語 | 交流 | 自立活動 | 図工 | 総合 |
| 水 | 交流 | 国語 | 算数 | 体育 | 自立活動 | 委員会等 |
このような時間割の場合でも、実際には児童によって学習内容が異なることがあります。
例えば、同じ「国語」の時間でも、Aさんは当該学年の文章読解、Bさんは下学年の漢字、Cさんは作文に取り組む、といった形です。
特別支援学級の時間割モデル②|知的障害学級
知的障害学級では、児童の実態によって、各教科等を合わせた指導を教育課程に位置付けることもあります。
例えば、生活単元学習を中心に、複数の教科等の学習を関連付けることが考えられます。
| 曜日 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 月 | 日常生活 | 国語 | 算数 | 生活単元 | 体育 |
| 火 | 国語 | 算数 | 生活単元 | 自立活動 | 音楽 |
| 水 | 生活単元 | 生活単元 | 体育 | 自立活動 | 交流 |
例えば「学校祭の準備」という生活単元学習を設定した場合でも、
- 国語 → ポスターの文字を書く
- 算数 → 必要な材料の数を数える
- 生活 → 準備の手順を理解する
- コミュニケーション → 友達と相談する
- 身体の動き → 道具を使って制作する
というように、活動の中に複数の学びを位置付けることができます。
特別支援学級では「時間割表」と「児童別予定表」を分けると考えやすい
異学年の児童が複数在籍する場合、学級全体の時間割だけを見ていると、非常に複雑になります。
そこで、実際の運用では、
「学級全体の時間割」+「児童別の予定」
という2段階で考えると整理しやすくなります。
学級全体の時間割
まず、学級として何をする時間なのかを大まかに整理します。
児童別の予定
その上で、各児童が実際にどこで何を学ぶのかを整理します。
例えば月曜日1時間目
| 学級全体 | 国語 |
| Aさん | 3年生の文章読解 |
| Bさん | 2年生の漢字 |
| Cさん | 作文 |
こうすることで、「同じ国語の時間だけれど、学習内容は一人ひとり違う」という特別支援学級の授業を整理しやすくなります。
特別支援学級の時間割で避けたい3つの失敗
失敗①「空いているところに自立活動を入れる」
自立活動を単なる時間割の穴埋めとして扱ってしまうと、指導目標とのつながりが弱くなってしまいます。
まず児童の実態と目標を考え、その上で時間を位置付けることが重要です。
失敗②「全員同じ教科・同じ内容にする」
特別支援学級では、児童によって学年も学習進度も異なります。
担任が指導しやすいという理由だけで全員を同じ内容にしてしまうのではなく、児童一人ひとりに必要な学習内容を考えることが大切です。
失敗③「時間割を作って終わりにする」
実際に授業を始めてみると、
- この時間は担任が足りない
- 交流学級への移動時間が足りない
- 個別指導が必要な子が重なってしまう
- 予定変更に対応できない
- 児童の疲労が大きい
といった問題が出てくることがあります。
そのため、時間割は一度作ったら固定するものではなく、児童の実態や学校生活の状況を見ながら見直していくことも大切です。
元・特別支援学級担任として伝えたい「時間割」の考え方
8年間の特別支援学級担任経験から
私は、知的障害学級を2年間、自閉症・情緒障害学級を6年間、計8年間、特別支援学級の担任として勤務してきました。
その中で、教育課程や時間割を考えるときに特に難しいと感じたのが、「一人ひとりに合わせること」と「学級全体として授業を成立させること」の両立でした。
子ども一人ひとりを見れば、必要な学習内容も支援も違います。
しかし、担任が一人で複数の子どもを指導している以上、すべてを完全に個別化することも現実的ではありません。
だからこそ、
「個別化するところ」と「一緒に学ぶところ」を意図的に組み合わせる
という考え方が重要だと感じています。
特別支援学級の時間割づくりは、単に教科を時間に割り振る作業ではありません。「この学級で、子どもたちがどう学ぶのか」を設計する作業だと思っています。
特別支援学級の時間割を作るときのチェックリスト
時間割を作成したら確認してみましょう
- □ 交流学級の時間を確認した
- □ 児童ごとの教育課程を整理した
- □ 各教科の学習内容を確認した
- □ 必要な自立活動を位置付けた
- □ 同じ時間に複数児童を指導できる場面を作った
- □ 個別指導が必要な時間が重なっていない
- □ 交流学級への移動時間も考慮した
- □ 児童の疲労や集中力も考慮した
- □ 担任一人で実際に指導可能か確認した
- □ 実際の教育活動を踏まえて見直せるようにした
特別支援学級の教育課程は「時間割」だけでは完成しない
ここまで、特別支援学級の時間割の作り方について解説してきました。
しかし、時間割を作っただけで教育課程が完成するわけではありません。
実際には、
↓
↓
↓
↓
というように、それぞれをつなげて考える必要があります。
特に特別支援学級では、「教育課程で決めたこと」と「実際の子どもの姿」が一致しているかを日々確認することが重要です。
子どもの成長や変化によって、必要な支援や学習内容も変わるからです。
ここまでのまとめ
特別支援学級の時間割を作るときは、
- 交流学級の時間を確認する
- 児童ごとの教育課程を整理する
- 各教科の学習内容を整理する
- 自立活動を位置付ける
- 複数児童を同時に指導できる時間を作る
- 担任の動きをシミュレーションする
- 実際の教育活動を通して見直す
という流れで考えると、複雑な特別支援学級の時間割も整理しやすくなります。
次に読む
ここまでで、特別支援学級の教育課程を「時間割」という具体的な形に落とし込む方法を見てきました。
しかし、実際の教育課程編成では、もう一つ重要な問題があります。
「では、特別支援学級では、どの教科をどこまで教えればいいの?」
次のパートでは、当該学年の教科・下学年の教科・知的障害特別支援学校の各教科・各教科等を合わせた指導をどのように使い分けるのかを整理します。
特別支援学級では、どの教科をどの教育課程で学ぶ?
特別支援学級の教育課程について考えるとき、先生方からよく出てくる疑問があります。
「特別支援学級では、結局どの教科を教えればいいの?」
「通常学級と同じ教科を教えるの?」
「下の学年の教科を教えてもいいの?」
「知的障害特別支援学校の教科に替えることもできるの?」
実は、特別支援学級の教育課程を理解する上で、この部分は非常に重要です。
特別支援学級だからといって、最初からすべての教科を特別支援学校の教育課程にするわけではありません。
一方で、児童の実態によっては、当該学年の教科内容では学習が難しく、下学年の教科内容に替えたり、知的障害特別支援学校の各教科に替えたりすることもできます。
文部科学省も、特別支援学級について、障害の程度や学級の実態等を考慮し、各教科の目標や内容を下学年のものに替えたり、知的障害者である児童生徒に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなど、実態に応じて教育課程を編成することを示しています。[文部科学省]
つまり、重要なのは「特別支援学級だから何を教えるか」ではなく、「この児童にとって、どの教育課程が適切なのか」を考えることです。
特別支援学級の教育課程は大きく3つの考え方で整理できる
小学校の特別支援学級で各教科の教育課程を考えるとき、まず次の3つに整理すると分かりやすくなります。
①
当該学年の教科
在籍学年の学習指導要領に示された各教科の目標・内容を基本とする。
②
下学年の教科
児童の実態に応じて、各教科の目標・内容を下学年のものに替える。
③
知的障害特別支援学校の各教科
知的障害のある児童について、実態に応じて特別支援学校の各教科に替える。
ここで大切なのは、「どれか一つを学級全体で選ぶ」という考え方ではないということです。
例えば、同じ特別支援学級に在籍している児童でも、
- Aさん → 国語は当該学年、算数は下学年
- Bさん → 国語・算数ともに当該学年
- Cさん → 知的障害特別支援学校の各教科を中心に学習
というように、児童によって異なる教育課程を編成することがあります。
これは、私自身が特別支援学級を担任していたときにも、非常に重要だと感じていた部分です。
① 当該学年の教科で学ぶ場合
まず基本になるのが、在籍している学年の各教科の目標・内容です。
例えば小学5年生であれば、国語、算数、理科、社会などについて、基本的には5年生の学習内容を学びます。
特別支援学級に在籍しているからといって、必ず下学年の内容にする必要はありません。
児童の実態を見て、当該学年の内容を学ぶことが可能であれば、当該学年の教科を学ぶことになります。
例えば小学5年生のAさん
- 国語 → 5年生の内容を学習
- 算数 → 5年生の内容を学習
- 理科 → 5年生の内容を学習
- 社会 → 5年生の内容を学習
- 体育 → 交流学級で学習
- 自立活動 → 特別支援学級で実施
このように、特別支援学級に在籍していても、当該学年の各教科を学ぶことは十分に考えられます。
② 下学年の教科に替えて学ぶ場合
次に考えられるのが、下学年の教科内容への変更です。
例えば、小学5年生の児童が、5年生の算数の内容を学習することが難しい場合があります。
その場合、児童の実態を踏まえて、4年生や3年生など、下学年の算数の目標・内容に替えて指導することができます。
文部科学省は、特別支援学級において、児童生徒の障害の程度や学級の実態等を考慮し、各教科の目標や内容を下学年の教科の目標や内容に替えることを示しています。[文部科学省]
「下学年にする=全部の教科を下げる」ではない
ここは非常に重要です。
例えば小学5年生の児童だからといって、
「全部4年生の内容にする」
必要があるわけではありません。
例えば、
| 教科 | 教育課程 |
|---|---|
| 国語 | 5年生 |
| 算数 | 3年生 |
| 理科 | 5年生 |
| 社会 | 4年生 |
というように、教科ごとに児童の実態に応じて考えることができます。
実際、私が特別支援学級を担任していたときにも、児童によって教科ごとの学習進度はかなり違いました。
「この子は国語は当該学年でできるけれど、算数は下学年の内容から学び直した方がよい」ということは、決して珍しいことではありません。
③ 知的障害特別支援学校の各教科に替えて学ぶ場合
もう一つの選択肢が、知的障害特別支援学校の各教科に替えるという方法です。
これは、特に知的障害のある児童の教育課程を考える際に重要になります。
知的障害特別支援学校では、通常の小学校とは異なる、知的障害のある児童生徒の学習上の特性を踏まえた各教科の目標・内容が示されています。
特別支援学級でも、児童の実態に応じて、こうした知的障害特別支援学校の各教科に替えて教育課程を編成することができます。
下学年の教科と何が違うのか?
ここは現場で非常に混乱しやすいところです。
例えば、算数の学習が難しい小学5年生がいたとします。
その児童について、
「4年生の算数を教える」のか
「知的障害特別支援学校の算数に替える」のか
では、教育課程上の意味が異なります。
| 下学年の教科 | 知的障害特別支援学校の各教科 | |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 通常の学習指導要領の下学年の内容 | 知的障害の特性を踏まえた各教科 |
| イメージ | 5年生 → 3年生の算数 | 5年生 → 特別支援学校の算数 |
| 対象 | 児童の実態に応じて | 知的障害のある児童等の実態に応じて |
つまり、単純に「下学年の内容を教える」というだけではなく、児童の認知発達、学習状況、生活経験、学習上の特性などを踏まえて、どの教育課程が適切なのかを考えることが重要です。
では、下学年と特別支援学校の各教科、どうやって判断する?
ここからが、実際の教育課程編成で一番悩むところです。
私は、次のような順番で考えると整理しやすいと思っています。
教育課程を考える判断の流れ
STEP 1
まず、当該学年の目標・内容で学習できるかを考える。
↓
STEP 2
難しい場合、下学年の目標・内容に替えることで学習が成立するかを考える。
↓
STEP 3
知的障害の特性を踏まえた教育課程の方が適切である場合は、知的障害特別支援学校の各教科への変更を検討する。
↓
STEP 4
さらに、自立活動の目標や指導内容を整理する。
↓
STEP 5
教育課程全体として、児童の成長につながる構成になっているかを確認する。
ただし、これは「学年を下げるか、特別支援学校の教科にするか」という単純な二択ではありません。
児童の実態を丁寧に把握し、「何を学ばせることが、その子の今後の学びや生活につながるのか」という視点から考えることが重要です。
教科によって教育課程が違ってもいい
特別支援学級の教育課程を考えるときに、ぜひ覚えておきたいのがこの考え方です。
一人の児童の中でも
「国語は当該学年」
「算数は下学年」
「自立活動を設定」
「体育は交流学級」
という教育課程を組むことができます。
これは、特別支援学級における「個に応じた教育」を考える上で、とても重要なポイントです。
児童の得意・不得意は教科によって違います。
例えば、
- 国語は学年相応に学習できる
- 算数は数の概念につまずきがある
- 体育は集団参加に課題がある
- 音楽は意欲的に参加できる
という児童がいたとします。
この児童に対して、すべての教科を一律に「下学年」にすることが、本当に適切でしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
「教科ごとに児童の実態を見る」ことが、教育課程を考える上で大切になります。
自立活動は「教科の代わり」ではない
ここも、特別支援学級の教育課程を理解する上で重要なポイントです。
自立活動は、国語や算数のような「教科」ではありません。
自立活動は、障害による学習上または生活上の困難を改善・克服し、自立を図るために必要な知識・技能・態度・習慣等を育てることを目指すものです。
そのため、
「算数が苦手だから、自立活動で算数を教える」
という考え方ではありません。
例えば、
- 困ったときに援助を求める
- 気持ちを適切に伝える
- 予定変更に対応する
- 集団参加の仕方を身に付ける
- 感情を調整する
など、障害による学習上・生活上の困難に焦点を当てて指導します。
なお、現在の特別支援教育の検討では、自立活動について「自立活動の時間」だけでなく、特別支援学級の教育活動全体を通じて指導することを明確にする方向も示されています。
「教科」と「自立活動」を組み合わせて考える
一方で、教科の学習と自立活動の内容は、学校生活の中で完全に切り離されているわけではありません。
例えば、国語の授業で「自分の気持ちを文章にする」という学習をするとします。
その中で、
- 自分の気持ちに気付く
- 適切な言葉を選ぶ
- 相手に伝わるように話す
といった学習を行うことがあります。
このとき、教科としては国語の目標を明確にしながら、児童の自立活動の目標とも関連させて指導することができます。
ここで大切なのは、「これは国語なのか、自立活動なのか」を曖昧にすることではなく、それぞれの目標を明確にすることです。
知的障害特別支援学校の「各教科等を合わせた指導」とは?
知的障害のある児童の教育課程を考えるとき、もう一つ知っておきたいのが、各教科等を合わせた指導です。
例えば、知的障害特別支援学校では、生活単元学習など、各教科等の内容を関連させながら学習する指導が行われています。
文部科学省の資料でも、知的障害特別支援学校では各教科別の指導だけでなく、各教科等を合わせた指導が行われていることが示されています。また、その場合でも、各教科等の目標を達成するために、育成を目指す資質・能力を明確にして指導計画を立てることが重要とされています。
例えば「買い物学習」を行う場合でも、
- 国語:商品名を読む、店員とやり取りする
- 算数:金額を確認する、お金を支払う
- 生活:買い物の手順を理解する
- 自立活動:困ったときに援助を求める
というように、一つの実生活に即した活動の中で、複数の学びを関連させることができます。
ただし、ここでも「楽しい活動をすれば、それだけで各教科等を合わせた指導になる」わけではありません。
何を学ぶのか、どの教科等の目標につながるのかを明確にする必要があります。
私が特別支援学級担任として感じた「教科を決める難しさ」
元・特別支援学級担任として
私は、知的障害学級を2年間、自閉症・情緒障害学級を6年間、計8年間、特別支援学級の担任として経験しました。
その中で感じたのは、「何年生の内容を教えるか」だけでは、子どもの学びを決められないということでした。
同じ学年の子どもでも、国語は比較的できるけれど算数では大きくつまずいている、ということがあります。
逆に、教科の学習そのものはできても、集団の中で参加することや気持ちを調整することに大きな困難を抱えている子どももいます。
だからこそ、私は教育課程を考えるときに、
「この子は何年生の勉強ができるか?」
だけを見るのではなく、
「この子に今、何を学ぶ必要があるのか?」
という視点を持つことが大切だと考えています。
特別支援学級の教育課程を決めるときのチェックポイント
教育課程を検討するときのチェックリスト
- □ 当該学年の教科内容で学習できるか
- □ 下学年の教科内容に替える必要があるか
- □ 下学年に替える場合、どの学年の内容が適切か
- □ 教科によって教育課程を変える必要がないか
- □ 知的障害特別支援学校の各教科を活用する必要があるか
- □ 自立活動の目標は明確になっているか
- □ 各教科と自立活動の目標を混同していないか
- □ 児童の生活上の困難と教育課程がつながっているか
- □ 個別の指導計画と教育課程がつながっているか
- □ 保護者や交流学級担任など、関係する教員と共通理解ができているか
特別支援学級の教育課程で一番大切なのは「何を選ぶか」だけではない
ここまで、
- 当該学年の教科
- 下学年の教科
- 知的障害特別支援学校の各教科
- 自立活動
- 各教科等を合わせた指導
について説明してきました。
しかし、最も大切なのは、どの教育課程を「選ぶか」だけではありません。
大切なのは、その教育課程を選んだ理由を説明できることです。
例えば
「この児童は算数が苦手だから3年生の内容にしています」
だけではなく、
「現在の学習状況やつまずきを踏まえると、当該学年の目標・内容を学習することが難しい。そのため、現在の実態に合った下学年の目標・内容に替え、基礎的な概念の理解を積み重ねることを目指している」
というように、児童の実態 → 教育課程 → 指導目標 → 指導内容がつながっていることが重要です。
まとめ|特別支援学級の教育課程は「一人ひとりに合わせて組み合わせる」
特別支援学級では、すべての児童が同じ教育課程で学ぶ必要があるわけではありません。
児童の実態に応じて、
などを組み合わせながら教育課程を編成していきます。
そして、その中心にあるのは「何年生の内容を教えるか」という学年ではなく、「その子にとって、今どのような学びが必要なのか」という視点です。
特別支援学級の教育課程は、一度決めたら終わりではありません。
児童の成長や学習状況を見ながら、必要に応じて指導内容や方法を見直していくことが大切です。
この記事のポイント
- 特別支援学級だからといって、すべての教科を下学年にするわけではない
- 児童の実態に応じて当該学年の教科を学ぶことができる
- 必要に応じて下学年の教科内容に替えることができる
- 知的障害のある児童については、知的障害特別支援学校の各教科に替えることもできる
- 教科によって教育課程が異なる場合もある
- 自立活動は教科の代わりではなく、障害による学習上・生活上の困難に対応する指導である
- 教育課程を選択した理由を、児童の実態と結び付けて説明できることが重要
次に読む
ここまで読むと、次に気になるのが「では、実際に教育課程を編成するとき、年間指導計画や個別の指導計画とはどうつなげればいいの?」ということではないでしょうか。
次のパートでは、特別支援学級の教育課程・年間指導計画・個別の指導計画・日々の授業をどのようにつなげるのかを、実際の学校現場をイメージしながら解説します。
特別支援学級の教育課程と個別の指導計画はどうつなげる?【実例付き】
特別支援学級の教育課程を作るとき、もう一つ悩みやすいのが、「個別の指導計画とどうつなげればいいのか」という問題です。
教育課程を作成して、個別の指導計画も作成する。
しかし、実際の学校現場では、
- 教育課程には「自立活動」と書いてある
- 個別の指導計画には「気持ちを適切に伝える」と書いてある
- 年間指導計画には「SST」と書いてある
- 日々の授業では、その日の子どもの様子を見ながら指導している
というように、それぞれが別々の書類になってしまうことがあります。
しかし、本来はそうではありません。
教育課程
↓
個別の指導計画
↓
年間・学期ごとの指導
↓
日々の授業・支援
このように、教育課程から日々の指導までが一本の線でつながっていることが大切です。
この記事では、特別支援学級担任として知的障害学級を2年間、自閉症・情緒障害学級を6年間、計8年間経験した立場から、このつながりをできるだけ具体的に説明します。
そもそも「教育課程」と「個別の指導計画」は何が違う?
まず、この2つを整理しておきましょう。
| 教育課程 | 個別の指導計画 | |
|---|---|---|
| 対象 | 学校・学級の教育全体 | 一人一人の児童 |
| 主な内容 | 何を、いつ、どのように学ぶか | その児童に何を目標として指導するか |
| 視点 | 教育全体の設計 | 個別の実態と目標 |
| イメージ | 「学級としてどんな教育をするか」 | 「この子に何を身に付けてほしいか」 |
つまり、教育課程が「全体の設計図」だとすれば、個別の指導計画は「その子のための具体的な設計図」と考えると分かりやすいでしょう。
どちらか一方だけを作ればよいのではなく、両者をつなげることが重要です。
教育課程から個別の指導計画へ落とし込む4ステップ
実際に考えるときは、次の4段階にすると整理しやすくなります。
STEP 1
教育課程
学級として、どの教育課程で何を学ぶのかを決める。
STEP 2
実態把握
児童の学習面・生活面・対人面などの実態を把握する。
STEP 3
個別の目標
その児童に必要な具体的な目標を設定する。
STEP 4
具体的な指導
授業や自立活動、学校生活の中で実際に指導する。
STEP1|まず「学級として何を学ぶのか」を決める
個別の指導計画を作る前に、まず教育課程全体を整理します。
例えば、特別支援学級で次のような教育課程を編成したとします。
ある小学校の特別支援学級
- 国語 → 各児童の実態に応じた内容
- 算数 → 各児童の実態に応じた内容
- 生活 → 実生活と関連させた学習
- 体育 → 一部を交流学級で学習
- 音楽 → 交流学級と連携
- 自立活動 → 学級で計画的に実施
ここではまだ、「Aさんは○○ができるようになる」といった個人目標までは決めません。
まず、学級全体としてどのような教育活動を行うのかを整理します。
STEP2|次に、一人一人の実態を見る
教育課程が決まったら、次に児童一人一人の実態を見ていきます。
例えば、同じ小学5年生の特別支援学級に在籍している2人の児童がいたとします。
Aさん
- 国語は5年生程度
- 算数は3年生程度の内容を学習
- 友達とのトラブルが多い
- 自分の気持ちを言葉にすることが苦手
- 予定変更に強い不安がある
Bさん
- 国語は4年生程度
- 算数は4年生程度
- 学習への取り組みは安定
- 集団の中で発言することが苦手
- 困ったときに援助を求めることが難しい
この2人は同じ学級にいます。
しかし、必要な支援や目標は同じではありません。
だからこそ、個別の指導計画では、「学級で何をするか」から「この子に何が必要か」へ視点を移す必要があります。
STEP3|実態から個別の目標を設定する
ここで初めて、その児童に合わせた目標を設定します。
例えばAさんの場合、
「友達と仲良くする」
という目標だけでは、少し抽象的です。
これを具体化すると、
長期的な目標
困ったときや嫌な気持ちになったときに、自分の気持ちを適切な方法で相手に伝えたり、援助を求めたりすることができる。
短期的な目標
嫌なことがあったときに、「やめて」「困っています」「先生に相談します」など、決められた言葉を使って気持ちを伝えることができる。
ここまで具体化すると、次に「では、どの場面で指導するのか?」が見えてきます。
STEP4|個別の目標を日々の授業につなげる
個別の指導計画を作って終わりではありません。
むしろ、ここからが実際の指導です。
先ほどのAさんなら、例えば次のような場面を設定できます。
| 場面 | 指導内容 |
|---|---|
| 朝の会 | 今日の予定を確認し、変更がある場合の対応方法を確認する |
| 自立活動 | 困ったときの伝え方をロールプレイで練習する |
| 休み時間 | 友達との関わりを観察し、必要に応じて支援する |
| 授業 | 困ったときに援助を求める機会を意図的につくる |
| 振り返り | 「今日はどう伝えた?」と振り返る |
このように考えると、個別の指導計画が「書類」ではなく、日々の指導を決めるための道具になってきます。
【実践例】自閉症・情緒障害学級での教育課程と個別の指導計画
元・特別支援学級担任の実践から
私は、特別支援学級の担任として、知的障害学級を2年間、自閉症・情緒障害学級を6年間経験しました。
自閉症・情緒障害学級では、児童によって学習面の課題と生活面の課題が大きく異なります。
そのため、教育課程を考えるときにも、単純に「この学年だからこの内容」と決めるのではなく、教科の学習と、自立活動を含めた生活上の課題をどう組み合わせるかを考える必要がありました。
特に難しかったのが、学年が違う子どもたちを同時に指導しながら、それぞれの教育課程と個別の目標を成立させることです。
【実践例】学年が違う子どもを同時に指導する場合
特別支援学級では、同じ学級に異なる学年の児童が在籍することがあります。
例えば、
- 2年生 → 算数は2年生の内容
- 3年生 → 算数は2年生の内容
- 5年生 → 算数は4年生の内容
- 6年生 → 算数は5年生の内容
というように、同じ「算数」という時間でも、実際には異なる内容を学んでいることがあります。
ここで担任にとって大きな課題になるのが、「一人一人に違う内容を教えながら、どうやって授業を成立させるか」です。
私自身も、特別支援学級担任として、この問題にはかなり悩みました。
特に難しかったのは、
- 学年が違う
- 学習内容が違う
- 学習進度も違う
- 交流学級との時間調整も必要
- 自立活動の時間も確保する必要がある
という状況を同時に考えなければならないことです。
「個別の指導計画」が授業づくりのヒントになる
このような状況では、個別の指導計画が重要になります。
例えば、4人の児童がいるとします。
| 児童 | 教科学習 | 個別の目標 |
|---|---|---|
| Aさん | 3年生算数 | 援助を求める |
| Bさん | 4年生算数 | 集中時間を伸ばす |
| Cさん | 5年生算数 | 文章題の情報を整理する |
| Dさん | 4年生算数 | 分からないときに質問する |
この場合、教師が「算数を教える」だけでは不十分です。
それぞれの児童について、
「今日の算数の時間に、この子の目標をどう入れるか?」
まで考える必要があります。
例えばAさんなら、分からない問題が出たときにすぐ教師が答えを教えるのではなく、「分からないときはどうする?」→「先生に聞く」という行動を促すことができます。
つまり、教科の授業そのものが、個別の指導計画に設定した目標を達成する場にもなります。
教育課程と個別の指導計画を「別物」にしない
特別支援学級の教育課程でありがちな問題があります。
ありがちな状態
- 教育課程 → 書類として作成
- 個別の指導計画 → 別の書類として作成
- 年間指導計画 → 前年度のものを修正
- 日々の授業 → その日の状況で決定
結果として、それぞれがつながっていない。
これでは、書類をいくら丁寧に作っても、教育の質を高めることにはつながりにくくなります。
理想的なのは、
教育課程
↓
児童の実態
↓
個別の指導計画
↓
年間・学期の目標
↓
日々の授業・支援
↓
評価・見直し
↓
次の教育活動
という循環を作ることです。
「評価」までつながって初めて教育課程が生きる
もう一つ忘れてはいけないのが、評価です。
個別の指導計画に目標を書いたら、学期末や年度末に、
「できた・できなかった」
だけを見るのではありません。
例えば、
目標
困ったときに教師に援助を求めることができる。
↓
実際の様子
以前は黙ってしまうことが多かったが、教師が「どうする?」と声をかけると、「教えてください」と言える場面が増えた。
↓
次の目標
教師からの声かけがなくても、自分から援助を求められるようにする。
このように、評価は次の目標につながります。
つまり、個別の指導計画は、
「目標を書いて終わる書類」
ではなく、
「指導→評価→次の指導」をつなぐためのツール
として活用することが大切です。
特別支援学級の教育課程を考えるときの実践チェックリスト
教育課程と個別の指導計画のつながりを確認
- □ 学級全体の教育課程が明確になっている
- □ 児童一人一人の実態を把握している
- □ 教育課程と個別の指導計画がつながっている
- □ 個別の指導計画の目標が具体的になっている
- □ 目標を日々の授業で扱う場面がある
- □ 自立活動の目標が具体的になっている
- □ 教科の目標と自立活動の目標を区別している
- □ 交流学級での学習にも個別の目標を関連させている
- □ 学期ごとに評価している
- □ 評価を次の目標や指導に反映している
まとめ|教育課程は「書類」ではなく、子どもの学びをつなぐ設計図
特別支援学級の教育課程を考えるとき、教育課程と個別の指導計画を別々に考えてしまうと、どうしても書類作成が中心になってしまいます。
しかし、本当に大切なのは、
教育課程
↓
児童の実態
↓
個別の指導計画
↓
具体的な授業・支援
↓
評価
↓
次の目標
というつながりを作ることです。
特別支援学級では、学年も違えば、学習進度も違い、得意なことも苦手なことも違います。
だからこそ、教育課程を「全員同じにするためのもの」と考えるのではなく、一人一人の学びを成立させるための土台として考えることが大切です。
私自身、知的障害学級2年、自閉症・情緒障害学級6年の計8年間、特別支援学級の担任を経験してきましたが、実際の現場では、教育課程を作ること以上に、「それをどう日々の授業に落とし込むか」に難しさがあります。
特に、学年の違う児童を同時に指導する場合には、交流学級との時間調整、児童ごとの学習進度、自立活動の時間、教科ごとの教育課程など、さまざまな要素を同時に考える必要があります。
だからこそ、「教育課程→個別の指導計画→授業」という一本の線を作っておくことが、特別支援学級の担任にとって大きな助けになります。
次に読む
ここまでで、特別支援学級の教育課程と個別の指導計画のつながりが見えてきました。
しかし、実際に担任になった先生が次に困るのが、「じゃあ、これを1年間の時間割にどう落とし込めばいいの?」という問題です。
特に、複数学年の児童が在籍している場合は、交流学級との交流及び共同学習、自立活動、各教科の学習、休み時間などを組み合わせながら時間割を作らなければなりません。
次のパートでは、特別支援学級の「時間割・年間指導計画」を具体例を使って解説します。
特別支援学級の時間割はどう作る?複数学年・交流学級・自立活動を組み合わせる方法
特別支援学級の教育課程を考えるとき、多くの担任が頭を悩ませるのが「時間割をどう組むか」ではないでしょうか。
通常学級なら、基本的には学年ごとに時間割を組むことができます。
しかし、特別支援学級では、
- 異なる学年の児童が同じ学級に在籍している
- 児童によって学習する内容が異なる
- 交流学級との時間を合わせる必要がある
- 自立活動の時間も確保する必要がある
- 児童によって学習進度が大きく違う
- 教科によっては通常の学級で学ぶこともある
という複数の条件を同時に考えなければなりません。
特別支援学級の時間割づくりは、「教科を並べる作業」ではありません。
「一人一人の学びをどう成立させるか」を考える教育課程編成の作業です。
私は、特別支援学級担任として知的障害学級を2年間、自閉症・情緒障害学級を6年間経験しました。
その経験から感じるのは、特別支援学級の時間割は、最初から完璧な形を作ろうとするよりも、いくつかの条件を整理してから組み立てるほうがうまくいくということです。
特別支援学級の時間割づくりが難しい5つの理由
まず、なぜ特別支援学級の時間割は難しいのでしょうか。
大きく分けると、次の5つがあります。
①
学年が違う
同じ時間に複数の学年を指導する必要がある。
②
学習進度が違う
同じ学年でも、学ぶ内容や進度が異なる。
③
交流学級との調整
交流及び共同学習の時間を合わせる必要がある。
④
自立活動
児童の実態に応じた自立活動を時間割に位置付ける必要がある。
⑤
個別性が高い
同じ学級でも必要な指導が一人一人違う。
つまり、特別支援学級の時間割は、通常学級の時間割をそのまま縮小したものではありません。
時間割を作る前に「動かせない時間」を確認する
特別支援学級の時間割を作るとき、最初から「月曜日の1時間目は国語……」と考え始めると、途中でほぼ確実に混乱します。
まず確認したいのが、「動かせない時間」です。
例えば、次のような時間です。
先に確認しておきたい時間
- 交流学級で学習する時間
- 学年全体で行う行事・活動
- 体育など、施設や教師の配置が関係する授業
- 音楽など専科教員との時間
- 学校行事・クラブ・委員会などの固定時間
- 給食・清掃・朝の会・帰りの会
これらを先に時間割へ配置します。
その後に、特別支援学級で行う教科学習や自立活動を入れていきます。
ポイント
「入れたい授業」から考えるのではなく、「動かせない時間」から埋める。
ステップ1|交流学級との時間を最初に入れる
特別支援学級では、交流及び共同学習をどの時間に設定するかが、時間割全体に大きく影響します。
例えば、3年生の児童が体育を交流学級で学び、5年生の児童が音楽を交流学級で学ぶとします。
| 時間 | Aさん・3年 | Bさん・5年 |
|---|---|---|
| 1時間目 | 国語 | 国語 |
| 2時間目 | 体育(交流) | 算数 |
| 3時間目 | 算数 | 音楽(交流) |
このような場合、担任は「Aさんが交流学級に行っている間、Bさんには何をさせるか」まで考えなければなりません。
つまり、時間割は「学級単位」だけでなく、児童一人一人の動きを見る必要があります。
ステップ2|次に「同時指導できる教科」を考える
複数学年の児童が在籍する特別支援学級では、すべての授業を一人ずつ完全に個別指導することは現実的ではありません。
そこで重要になるのが、「どこまで一緒に学べるか」という視点です。
例えば、学年は違っていても、
- 同じテーマを扱える
- 教材を共通化できる
- 学習活動の流れを共有できる
- 到達目標だけ個別に設定できる
という場合があります。
この場合は、完全に別々の授業にする必要はありません。
例えば「文章を書く」活動なら
共通:写真を見て文章を考える
Aさん:「いつ・どこで・何をした」を使って3文書く
Bさん:主語と述語を意識して5文書く
Cさん:理由や気持ちを加えて文章を書く
→ 活動は共通、目標と課題のレベルは個別
この考え方を持っていると、複数学年でも授業を成立させやすくなります。
ステップ3|学習進度が違う場合は「同じ教科=同じ内容」にしない
特別支援学級では、同じ学年の児童であっても、学習進度が大きく異なることがあります。
例えば小学4年生の児童が2人いたとしても、
- Aさんは九九を復習している
- Bさんは割り算を学習している
ということがあります。
この場合、時間割上は「算数」と設定できます。
しかし、実際の学習内容は異なります。
時間割
4年生 算数
↓
実際の指導
- Aさん → 九九の定着
- Bさん → 2桁÷1桁の計算
ここで重要なのは、時間割上の教科と、個々の児童が実際に学習する内容は必ずしも同じではないということです。
特別支援学級では、この柔軟性が非常に重要になります。
ステップ4|自立活動を「余った時間」に入れない
特別支援学級の時間割を考えるとき、もう一つ重要なのが自立活動です。
自立活動について、現場では、
「授業が早く終わったら自立活動をする」
という扱いになってしまうことがあります。
しかし、自立活動は「余った時間に行う活動」として考えるものではありません。
児童の実態や課題を踏まえ、意図的・計画的に指導することが重要です。
例えば、
- 気持ちを適切に伝える
- 困ったときに援助を求める
- 予定変更に対応する
- 相手の話を聞く
- 感情を調整する
- 身の回りのことを自分で行う
など、児童の実態に応じた課題を、自立活動の目標として設定します。
そして、その目標に合わせて時間を確保します。
自立活動は「自立活動の時間」だけで指導するものではない
ここは、特別支援学級の教育課程を考えるうえで特に大切なポイントです。
自立活動の指導は、時間割に設定した自立活動の時間だけで完結するわけではありません。
例えば、
| 場面 | 自立活動につながる指導 |
|---|---|
| 朝の会 | 一日の予定を確認する |
| 国語 | 分からないときに援助を求める |
| 休み時間 | 友達との関わり方を学ぶ |
| 体育 | ルールを確認し、集団に参加する |
| 自立活動 | 特定の課題を取り上げて、意図的に指導する |
つまり、時間割に位置付けた自立活動と、学校生活全体で行う自立活動の視点をつなげることが重要です。
【実践コラム】私が特別支援学級の時間割づくりで難しいと感じたこと
元・特別支援学級担任として
私は知的障害学級を2年間、自閉症・情緒障害学級を6年間、担当しました。
実際に特別支援学級の時間割を組んでいて難しいと感じたのは、単純に「教科の数が多い」ということではありません。
「一人一人に必要な学習を保障しながら、学級全体として授業を成立させること」でした。
特に、
- 学年が違う子どもたちを同時に指導する
- 交流学級との時間を調整する
- 自立活動をどこに位置付けるか考える
- 児童によって学習進度が大きく違う
という条件が重なると、時間割は一気に複雑になります。
だからこそ、私は「すべての時間を児童ごとに完全に別々にする」のではなく、一緒に学べる部分と個別に学ぶ部分を整理することが大切だと考えています。
【具体例】複数学年の特別支援学級の時間割
ここまでの考え方を、実際の時間割に当てはめてみましょう。
例えば、3年生・4年生・5年生の3人が在籍する学級を想定します。
| 時間 | 3年生 | 4年生 | 5年生 |
|---|---|---|---|
| 1時間目 | 国語 | 国語 | 国語 |
| 2時間目 | 算数 | 算数 | 交流・音楽 |
| 3時間目 | 交流・体育 | 算数 | 算数 |
| 4時間目 | 生活 | 自立活動 | 国語 |
| 5時間目 | 自立活動 | 国語 | 社会 |
この表を見ても分かるように、「学級全体の時間割」と「児童一人一人の時間割」が重なっているのが特別支援学級の特徴です。
担任は、学級全体を見ながら、同時に個々の児童の学習内容も把握する必要があります。
時間割を作ったら「教師が指導できるか」まで確認する
ここも非常に重要です。
時間割上は成立していても、実際には担任一人では指導できない場合があります。
例えば、
同じ時間に
- Aさん → 新しい算数の内容を教師と学習
- Bさん → 国語の文章読解を個別指導
- Cさん → 自立活動で対人関係の練習
- Dさん → 交流学級へ移動
これを担任一人で同時に行うことは現実的でしょうか。
このような視点から時間割を見直す必要があります。
特別支援学級の時間割は、児童の学習内容だけでなく、「教師の指導可能性」まで含めて考える必要があります。
特別支援学級の時間割づくりで避けたい3つの失敗
失敗① 通常学級の時間割をそのまま当てはめる
特別支援学級では、一人一人の実態に応じた教育課程を編成します。
そのため、通常学級と同じ教科・同じ進度で一律に時間を配置しようとすると、児童の実態と合わなくなることがあります。
失敗② 自立活動を「空き時間」にする
自立活動を、教科の授業が終わった後の「余った時間」に行うようにすると、計画性が失われやすくなります。
児童の実態と目標から、自立活動を意図的に位置付けることが重要です。
失敗③ 児童全員に同じ内容をさせようとする
同じ学級だからといって、全員に同じ内容を同じ方法で学ばせる必要はありません。
「活動は一緒、課題は個別」という授業づくりも可能です。
特別支援学級の時間割を作るときのチェックリスト
時間割完成前の10項目チェック
- □ 交流学級の時間を確認した
- □ 学校行事・固定時間を確認した
- □ 児童一人一人の学習内容を確認した
- □ 学習進度の違いを考慮した
- □ 同時指導できる教科・活動を整理した
- □ 自立活動を計画的に位置付けた
- □ 教師一人で指導可能か確認した
- □ 児童が無理なく移動できるか確認した
- □ 交流学級との行き来が過密になっていないか確認した
- □ 個別の指導計画の目標と時間割がつながっている
まとめ|特別支援学級の時間割は「一人一人の学び」を中心に考える
特別支援学級の時間割づくりでは、単純に国語・算数・体育……と教科を並べるだけでは十分ではありません。
大切なのは、
① 交流学級などの動かせない時間を確認する
↓
② 児童一人一人の教育課程を確認する
↓
③ 一緒に学べる時間を整理する
↓
④ 個別に学ぶ時間を確保する
↓
⑤ 自立活動を計画的に位置付ける
↓
⑥ 教師が実際に指導できるか確認する
という順番で考えると、時間割を整理しやすくなります。
私自身、特別支援学級を8年間担当してきましたが、特別支援学級の時間割づくりで大切なのは、「きれいな時間割を作ること」ではなく、「子どもたちが実際に学べる時間割を作ること」だと感じていました。
特に複数学年の学級では、児童によって学習する内容も進度も異なります。
だからこそ、全員を同じ枠に当てはめるのではなく、共通して学べる部分と、一人一人に合わせる部分を整理することが重要です。
次に読む
特別支援学級の時間割を作るとき、もう一つ大きな悩みになるのが、
「そもそも、教科の内容をどこまで下学年のものにしていいの?」
という問題です。
例えば、小学5年生の児童が在籍していても、算数では3年生程度の内容を学習している場合があります。
では、その場合、教育課程上はどのように考えればよいのでしょうか。
次のパートでは、特別支援学級で特に悩みやすい「学年より下の学年の教科内容を学習する場合」について、教育課程との関係を詳しく解説します。
特別支援学級で下学年の学習をしてもいい?知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の違い
特別支援学級の教育課程を考えていると、多くの担任が一度は悩むことがあります。
「この子は今の学年の学習内容では難しい。
下の学年の内容を学習したほうがよいのでは?」
これは、特別支援学級の教育課程を考えるうえで、非常に重要な問題です。
特に、知的障害学級と自閉症・情緒障害学級では、教育課程を考える際の基本的な考え方に違いがあります。
一方で、実際の子どもの姿を見れば、制度上の原則だけでは簡単に判断できないケースも少なくありません。
ここでは、制度上の位置付けを確認したうえで、私自身が知的障害学級2年、自閉症・情緒障害学級6年の特別支援学級担任として経験してきたことも踏まえながら、下学年の学習をどう考えればよいのかを整理します。
まず押さえたい「知的障害学級」と「自閉症・情緒障害学級」の違い
最初に大切なのは、特別支援学級だからといって、すべて同じ教育課程で学ぶわけではないということです。
特別支援学級では、児童生徒の障害の状態や学級の実態等を考慮し、特別の教育課程を編成することができます。
文部科学省も、特別支援学級について、小学校・中学校の学習指導要領を基本としながら、児童生徒の実態に応じて、各教科の目標や内容を下学年のものに替えたり、知的障害のある児童生徒を対象とする特別支援学校の各教科に替えたりするなど、特別の教育課程を編成できることを示しています(文部科学省)。
そのため、教育課程を考えるときには、まずその児童がどの障害種の特別支援学級に在籍しているのかを踏まえる必要があります。
知的障害学級の場合
知的障害学級では、知的障害のある児童生徒の学習上の特性等を踏まえた教育課程を編成することができます。
例えば、各教科について、通常の小学校の学年別の目標・内容ではなく、知的障害のある児童生徒を対象とする特別支援学校の各教科を取り入れる教育課程を編成することもできます(文部科学省)。
また、実態に応じて、下学年の目標や内容を中心とした教育課程を編成することもあります。
実際、文部科学省の令和6年の調査では、小学校第6学年の知的障害学級において、「下学年の目標及び内容を中心に編成している教育課程」が60.6%と最も多くなっています(文部科学省)。
自閉症・情緒障害学級の場合
一方、自閉症・情緒障害学級では、基本的には小学校の当該学年の各教科等の目標・内容を基に教育するという考え方が基本になります。
そのため、「自閉症・情緒障害学級だから、いつでも下学年の教科内容を学習してよい」と考えるのは適切ではありません。
まずは当該学年の学習を基本とし、その児童の障害の状態や学習上・生活上の困難、学級の実態等を踏まえて、必要に応じて特別の教育課程を編成することになります。
実際、文部科学省の令和6年調査でも、小学校第6学年の自閉症・情緒障害学級では、69.8%が「当該学年の目標・内容中心」となっています(文部科学省)。
ただし、同じ調査では21.3%が「下学年の目標・内容中心」となっています(文部科学省)。
この数字は、非常に重要なことを示しています。
「原則」と「実際の教育的判断」は、分けて考える必要がある。
自閉症・情緒障害学級では当該学年の学習を基本としながらも、児童の実態によっては、下学年の目標・内容を中心とした教育課程が編成されているケースも実際にあります。
「今の学年が難しいから下学年」だけでは不十分
ここで、非常に大切なことがあります。
下学年の学習を取り入れるかどうかを判断するとき、
「今、この問題が解けるかどうか」
だけで決めてはいけません。
特別支援学級の教育課程を考えるときには、もっと長い視点が必要です。
考えたい3つの視点
- 今、この子に何が必要なのか
- 数か月後・1年後に何ができるようになってほしいのか
- 将来の生活や学習につながるのは、どの学習なのか
例えば、小学5年生の児童が、5年生の算数の内容をほとんど理解できていないとします。
だからといって、すぐに「3年生の算数に戻しましょう」と判断するのではありません。
まず、
- どこでつまずいているのか
- 既習事項のどこが不足しているのか
- どの程度の支援があれば当該学年の学習に参加できるのか
- 学習内容そのものが難しいのか
- 読み書きや注意、見通しなど別の要因があるのか
- 本人は何を学びたいと思っているのか
などを見ていく必要があります。
下学年の学習を取り入れることは「学年を下げること」ではない
ここも誤解されやすいところです。
例えば小学5年生の児童が、算数について小学3年生程度の内容を学習するとします。
このとき、
「5年生なのに3年生の勉強をしている」
という見方だけをすると、児童本人にとっても、保護者にとっても、教師にとっても、マイナスの意味に感じられてしまうことがあります。
しかし、本当に大切なのは学年ではありません。
「その子にとって、今どの学習をすることが最も学びにつながるのか」です。
例えば
小学5年生の児童が、現在の5年生の算数ではほとんど理解できず、学習への自信を失っている。
一方で、小学3~4年生程度の内容なら、既習事項を生かしながら自分で考えることができる。
この場合、下学年の内容を学ぶことによって、「分かる」「できる」「自分で考える」という学習経験を積み直すことが、その児童にとって大きな意味を持つ可能性があります。
つまり、下学年の学習は、単に「簡単な問題をさせる」ということではありません。
その児童の現在地から、次の学びにつなげるための教育的な選択として考えることが大切です。
本人の願いを教育課程に反映させる
私が特別支援学級の担任として、特に大切だと感じていたのが、本人の願いを聞くことです。
教師から見ると、
「この内容を学習したほうがいい」
と思っていても、本人がどう感じているのかは別問題です。
例えば、
- 「みんなと同じ勉強がしたい」
- 「5年生の算数をやってみたい」
- 「難しいから違う問題をやりたい」
- 「できるようになりたい」
- 「将来○○をしたいから、これを勉強したい」
など、子どもによって思いは違います。
だからこそ、教育課程を考えるときには、教師だけで「この子にはこれ」と決めるのではなく、本人がどうなりたいのかをできる限り捉えることが重要です。
保護者の願いもしっかり聞く
そして、もう一つ欠かせないのが保護者の願いです。
保護者も、それぞれ異なる考えを持っています。
例えば、
- できるだけ同学年の学習を経験してほしい
- 将来を考えて基礎学力を身に付けてほしい
- 学校生活を楽しく過ごしてほしい
- 読み書き計算をしっかり身に付けてほしい
- 友達との関わり方を身に付けてほしい
- 本人が自信を持って学習できるようになってほしい
など、願いはさまざまです。
教師が「この子には下学年の学習が適している」と考えていたとしても、保護者がどのような願いを持っているのかを確認せずに進めてはいけません。
大切なのは「教師が正解を持っている」と考えないこと
教師には教育的な専門性があります。
一方で、保護者には家庭での生活やこれまでの成長を見てきた経験があります。
そして、本人には本人の思いや願いがあります。
それぞれの情報を持ち寄り、「この子にとって今後どのような学びが最もよいのか」を一緒に考えることが重要です。
「短期」と「長期」の両方から考える
下学年の学習を取り入れるかどうかを判断するとき、私は短期的な視点と長期的な視点の両方が必要だと考えます。
| 短期的な視点 | 長期的な視点 |
|---|---|
| 今の学習で理解できるか | 将来必要になる力につながるか |
| 学習への意欲を保てるか | 次の学年の学習につながるか |
| 基礎的な内容を定着できるか | 中学校・高校・卒業後を見据えて必要な力は何か |
| 「分かった」「できた」を経験できるか | 自立した生活につながる力になるか |
この両方を考えたうえで、「今、この子には何を学ぶことが最も必要なのか」を判断します。
【実践コラム】私自身も「下学年の学習が適切」と判断した経験があります
元・特別支援学級担任として
私自身、特別支援学級の担任として、児童の実態を見ながら、下学年の学習を取り入れることが適切だと判断した経験があります。
そのときに大切にしていたのは、単純に「今の学年の内容が難しいから下げる」という考え方ではありません。
本人がどう感じているのか。
保護者は何を願っているのか。
書籍や専門的な知識、短期・長期の見通しを踏まえ、その子にとってどの学習内容を選択することが最もよいのか。
これらを考えたうえで、本人・保護者・学校が共通理解を持ち、納得したうえで学習内容を決めることを大切にしていました。
「表面的な学年」ではなく「本当の学び」を見る
特別支援学級の教育課程を考えるとき、私が大切だと思うのは、「何年生の内容をやっているか」だけで教育の質を判断しないことです。
例えば、
表面的な見方
「5年生なのに3年生の算数をやっている」
→ 学年より遅れている
教育的な見方
「今の本人に必要な基礎を学び直している」
→ 次の学習につながる土台を作っている
同じ学習を見ても、意味は大きく違います。
大切なのは、その学習が何のために行われているのかを明確にすることです。
下学年の学習を取り入れるときに確認したい5つのこと
教育課程を検討するときのチェックポイント
- 本人の実態を把握する
どこでつまずいているのか、何ならできるのかを具体的に把握する。 - 本人の願いを聞く
「何を学びたいか」「どうなりたいか」をできる限り確認する。 - 保護者の願いを確認する
家庭での様子や将来への願いを共有する。 - 短期・長期の目標を考える
今だけでなく、数年後を見据えて学習内容を検討する。 - 学校と家庭で共通理解を持つ
なぜその学習内容を選ぶのかを説明し、本人・保護者・学校が納得できる形を目指す。
「下学年の学習=後退」ではない
もう一つ、教師自身が持っておきたい視点があります。
それは、下学年の内容を学習することを「後退」と捉えないことです。
学習には、積み上げが必要な内容があります。
例えば、算数なら、
数の理解
↓
計算の基礎
↓
文章題
↓
より複雑な数量関係
というように、基礎となる学習が、その後の学習を支えています。
上の学年の内容に無理に進むよりも、必要な基礎を丁寧に学ぶことで、結果として、その後の学習につながることもあります。
だからこそ、下学年の内容を取り入れる場合には、「どこに戻るか」ではなく、「どこにつなげるために戻るのか」を考えることが大切です。
ただし「下学年の内容にすれば解決」でもない
ここも重要です。
学習が難しいからといって、単純に下学年の内容へ変更すれば、すべての問題が解決するわけではありません。
例えば、学習につまずいている原因が、
- 読みの困難
- 書くことの困難
- 注意を持続することの難しさ
- 見通しを持つことの難しさ
- 不安の強さ
- コミュニケーションの難しさ
などにある場合、教材の学年を下げるだけでは十分ではないことがあります。
その場合には、自立活動や合理的配慮、指導方法・教材の工夫などを含めて考える必要があります。
つまり、
「できない」
↓
「だから下学年」
と短絡的に考えない。
ということです。
教育課程を決めるのは「学年」ではなく「教育的な必要性」
ここまでの話を整理すると、特別支援学級の教育課程を考えるときには、次のような視点が重要になります。
教育課程を考えるときの問い
- この子は今、何を学ぶ必要があるのか?
- この学習によって、何ができるようになるのか?
- 本人は何を学びたいと思っているのか?
- 保護者は何を願っているのか?
- 1年後には、どんな姿を目指すのか?
- 数年後の生活を考えたとき、どんな力が必要なのか?
- 当該学年の内容で学ぶために、どのような支援や配慮が必要なのか?
- 下学年の内容を取り入れることが、本当に本人の学びにつながるのか?
こうした問いを一つ一つ考えたうえで、教育課程を編成していきます。
まとめ|「何年生の学習か」より「その子にとって何が必要か」
特別支援学級で下学年の学習を取り入れるかどうかは、簡単に答えを出せる問題ではありません。
特に自閉症・情緒障害学級では、当該学年の学習を基本とすることを踏まえる必要があります。
そのうえで、児童の障害の状態や学習上・生活上の困難、学級の実態等を踏まえ、教育的な必要性を慎重に検討することになります。
そして、実際の教育では、制度上の原則だけでは判断できない子どもたちがいます。
だからこそ、
本人の願い
+
保護者の願い
+
教師による実態把握・教育的判断
+
短期・長期の見通し
↓
その子にとって最も適切な学びを考える
というプロセスが大切なのだと思います。
私自身、特別支援学級の担任として、下学年の学習を取り入れることが適切だと判断した経験があります。
そのときも、単純に「学年相応の学習ができないから」という理由ではなく、本人の願い、保護者の願い、現在の実態、短期的な目標、長期的な見通しを踏まえ、その子にとってどの学習が最もよいのかを考えていくことを大切にしました。
教育課程は、児童を学年という枠に当てはめるためにあるのではありません。
一人一人の子どもが、その子なりの学びを積み重ね、将来の生活につながる力を身に付けていくために、教育課程をどう編成するのか。
そこを考えることが、特別支援学級の教育課程づくりでは何より大切なのだと思います。
特別支援学級の教育課程でよくある疑問【FAQ】
ここまで、特別支援学級の教育課程について、教育課程の基本的な考え方から、教科の学習、自立活動、交流学級との学習、下学年の内容を取り入れる場合の考え方まで解説してきました。
最後に、特別支援学級の担任や保護者からよく聞かれる疑問を、Q&A形式で整理します。
この記事のFAQで分かること
- 特別支援学級は通常学級と同じ教育課程なのか
- 特別支援学級では下学年の学習ができるのか
- 自閉症・情緒障害学級と知的障害学級の教育課程は違うのか
- 自立活動は必ず時間割に入れる必要があるのか
- 交流学級ではどの教科を学ぶのか
- 特別支援学級の時間割はどのように作ればよいのか
- 個別の指導計画と教育課程はどうつながるのか
Q1.特別支援学級の教育課程は、通常学級と同じですか?
A.基本的には小学校・中学校の学習指導要領を踏まえますが、児童生徒の実態に応じて特別の教育課程を編成することができます。
特別支援学級は、通常学級とは異なる教育課程を編成することが可能です。
ただし、「特別支援学級だから、通常学級とは全く違う勉強をする」という意味ではありません。
小学校・中学校の学習指導要領を基本としながら、児童生徒の障害の状態や学習上・生活上の困難、学級の実態などを考慮して、教育課程を編成します。
そのため、特別支援学級の教育課程を考えるときには、
- 通常の教育課程をどのように学ぶのか
- どのような支援が必要なのか
- 自立活動をどう位置付けるのか
- 必要に応じて教育内容をどのように調整するのか
という視点が重要になります。
Q2.特別支援学級では、下学年の学習をしてもいいですか?
A.障害種や児童生徒の実態を踏まえて、教育的な必要性を検討する必要があります。
特に注意したいのは、知的障害学級と自閉症・情緒障害学級では教育課程の考え方が同じではないということです。
知的障害学級では、知的障害のある児童生徒を対象とする特別支援学校の各教科等を取り入れる教育課程や、実態に応じて下学年の目標・内容を中心とする教育課程を編成することがあります。
一方、自閉症・情緒障害学級では、基本的には在籍する学年の各教科等の目標・内容を基に学習することが基本となります。
したがって、「特別支援学級だから下学年の勉強をしてよい」と一括りに考えるのは適切ではありません。
そのうえで、児童生徒の実態を丁寧に把握し、本人や保護者の願い、短期・長期の目標などを踏まえ、その子にとってどのような教育課程が適切なのかを検討することが大切です。
Q3.自閉症・情緒障害学級では、必ず当該学年の学習をしなければいけませんか?
A.当該学年の学習を基本とすることが重要ですが、実態に応じた教育課程の編成について慎重に検討する必要があります。
自閉症・情緒障害学級では、知的障害学級とは教育課程の考え方が異なります。
そのため、「学習が難しいから、すぐに下学年の内容にする」という考え方ではなく、まずは当該学年の学習に参加するために、どのような支援や教材の工夫、学習方法の調整ができるのかを考えることが重要です。
そのうえで、児童の実態や教育的な必要性を踏まえ、教育課程全体を検討していきます。
ポイント
「当該学年か、下学年か」という二択で考えるのではなく、「この子にとって、どのような学び方・学習内容が教育的に適切なのか」という視点から検討することが大切です。
Q4.特別支援学級では、自立活動を必ず行うのですか?
A.自立活動は、特別支援学級の教育課程を考えるうえで重要な位置を占めます。
自立活動は、障害による学習上または生活上の困難を改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養うことを目標としています。
そのため、特別支援学級では、児童生徒の実態に応じて自立活動の目標や内容を設定し、教育課程の中に位置付けていくことが大切です。
ただし、「自立活動=毎週○時間、教室で一斉に行う授業」とだけ考える必要はありません。
児童の実態や学校の教育課程によって、時間割上の特設された時間として行う場合もあれば、各教科等の学習と関連させながら指導する場合もあります。
大切なのは、「自立活動の時間を確保したか」だけではなく、「その子のどのような困難を改善・克服するための指導なのか」が明確になっていることです。
Q5.自立活動と各教科の授業は、どのように分ければいいですか?
A.「教科か自立活動か」という二択ではなく、それぞれの目標を明確にして考えることが大切です。
例えば、算数の時間に「文章題を解く」という教科の目標があるとします。
その児童が、文章を読むことや、必要な情報を整理することに困難を抱えている場合、教科の学習を進めながら、実態に応じた自立活動の視点を取り入れることがあります。
一方で、感情を言葉で表現することや、気持ちを切り替えること、対人関係など、教科の目標だけでは十分に扱えない課題については、自立活動として計画的に指導することも考えられます。
つまり、「何を教える時間なのか」「どんな力を育てる時間なのか」を明確にすることが大切です。
Q6.特別支援学級の児童は、交流学級で授業を受けてもいいですか?
A.はい。児童生徒の実態や教育的ニーズを踏まえ、交流及び共同学習を行うことができます。
特別支援学級に在籍していても、すべての学習を特別支援学級で行うわけではありません。
例えば、
- 体育
- 音楽
- 図工
- 家庭科
- 外国語
- 学級活動
- 学校行事
など、児童の実態や教科の特性を考慮して、交流学級で学習することがあります。
ただし、交流学級で授業を受けること自体を目的にするのではなく、その児童にとって、交流学級で学ぶことにどのような教育的な意味があるのかを考えることが大切です。
Q7.交流学級と特別支援学級の時間割が合わない場合はどうすればいいですか?
A.特別支援学級の教育課程全体を見ながら、交流学級との時間を調整します。
これは、特別支援学級の担任にとって非常に現実的な課題です。
特別支援学級では、複数の学年の児童が在籍していることがあります。
そのため、
- 1年生は国語
- 3年生は算数
- 5年生は交流学級で体育
というように、それぞれの学習内容や交流学級の時間割を調整しなければならないことがあります。
さらに、自立活動の時間も確保する必要があります。
そのため、特別支援学級の時間割は、通常学級のように「学年の時間割をそのまま当てはめる」だけでは作れません。
児童一人一人の教育課程を縦に見ながら、学級全体の時間割を横に組み合わせていくことが必要になります。
Q8.特別支援学級の時間割は、児童一人一人別に作る必要がありますか?
A.児童一人一人の教育課程を踏まえて考える必要がありますが、実際の時間割は学級全体の指導体制とのバランスも重要です。
特別支援学級では、児童によって学年も学習進度も異なります。
例えば、同じ算数の時間でも、
- Aさんは2年生の内容
- Bさんは4年生の内容
- Cさんは5年生の内容
ということが普通にあります。
そのため、「全員が同じ教材を使って同じ授業を受ける」という時間割だけでは、児童の実態に合わなくなる場合があります。
一方で、すべてを完全に個別化すると、担任一人では指導が難しくなることもあります。
そこで、
共通して学ぶ時間
+
学年・実態別に分かれて学ぶ時間
+
個別に学ぶ時間
+
交流学級で学ぶ時間
を組み合わせながら、学級の実態に合わせて時間割を設計することが現実的です。
Q9.特別支援学級では、すべての教科を特別支援学級で学ぶのですか?
A.いいえ。教科や児童の実態、学校の教育課程によって、交流学級で学ぶ場合もあります。
例えば、国語や算数は特別支援学級で学習し、体育や音楽などは交流学級で学習するという形もあります。
もちろん、どの教科をどこで学ぶのかは、学校や児童生徒の実態によって異なります。
大切なのは、単純に「この教科は支援学級」「この教科は交流学級」と固定することではありません。
その児童にとって、どの場で学ぶことが最も学習効果や教育的意義につながるのかを考えることが重要です。
Q10.特別支援学級では、教科書を使わなくてもいいですか?
A.教育課程の編成や学習内容に応じて、教科書以外の教材を活用することがあります。
特別支援学級では、児童の実態に合わせて教材を工夫することが重要です。
例えば、
- 写真やイラストを多く使った教材
- 具体物を使った教材
- スモールステップに分けたプリント
- ICT教材
- 実生活と関連した教材
- 児童が理解しやすいように再構成した教材
などを活用することがあります。
ただし、「特別支援学級だから教科書は必要ない」と単純に考えるのではなく、教育課程との関係や使用する教材について、学校として適切に判断することが必要です。
Q11.個別の指導計画と教育課程は、どうつながっていますか?
A.教育課程が「学級・学校として何を学ぶのか」という大きな枠組みだとすれば、個別の指導計画は「その子に何を、どのように指導するのか」を具体化するものと考えると分かりやすいでしょう。
例えば、教育課程の中で国語を学習するとしても、児童によって目標は異なります。
教育課程
↓
国語の学習を行う
↓
個別の指導計画
「この児童は、○○という力を身に付けることを目標とする」
というように、教育課程と個別の指導計画をつなげて考えることが大切です。
教育課程を作成して終わりではなく、児童一人一人の目標や実態に落とし込み、実際の授業につなげていく必要があります。
Q12.特別支援学級の教育課程は、毎年見直す必要がありますか?
A.児童生徒の実態や教育的ニーズの変化を踏まえ、継続的に見直していくことが大切です。
子どもは1年間で大きく変化します。
4月には難しかったことが、10月にはできるようになっていることもあります。
逆に、学年が上がることで学習内容が難しくなり、新たな困難が生じることもあります。
そのため、教育課程を一度決めたら、そのまま固定するのではなく、
- 児童の成長
- 学習の進捗
- 生活面の変化
- 本人の願い
- 保護者の願い
- 将来の見通し
などを踏まえながら、必要に応じて見直していくことが重要です。
Q13.特別支援学級の教育課程で一番大切なことは何ですか?
A.「その子にとって、どのような学びが必要なのか」を考え続けることだと私は考えています。
特別支援学級の教育課程を考えていると、
「当該学年の内容にするべきか」
「下学年の内容にするべきか」
「自立活動を何時間入れるべきか」
「交流学級に何時間行かせるべきか」
といった、制度や時間割の問題に目が向きやすくなります。
もちろん、これらは非常に重要です。
しかし、その先にいるのは、一人一人違う子どもです。
だからこそ、最終的には、
この子は何を学ぶ必要があるのか?
この子は何を学びたいのか?
この子が将来、自分らしく生活するために必要な力は何か?
そのために、今どのような教育課程を編成するのか?
という問いに戻ってくるのだと思います。
教育課程は、単なる時間割ではありません。
「この子に、学校でどのような学びを保障するのか」を具体的に形にしたものです。
だからこそ、特別支援学級の教育課程づくりでは、制度を理解することと同時に、目の前の子どもをよく見ることが欠かせません。
特別支援学級の教育課程で迷ったときのチェックリスト
最後に、教育課程を考えるときに確認したい項目をまとめます。
教育課程チェックリスト
- □ 児童の障害の状態や学習上・生活上の困難を把握している
- □ 学習上のつまずきの原因を考えている
- □ 当該学年の学習でどこまで参加できるか検討している
- □ 必要な合理的配慮や指導方法の工夫を検討している
- □ 自立活動の目標が明確になっている
- □ 交流学級で学ぶことの教育的な意味を考えている
- □ 本人の願いを確認している
- □ 保護者の願いを確認している
- □ 短期的な目標だけでなく長期的な見通しを持っている
- □ 個別の指導計画と教育課程がつながっている
- □ 実態の変化に応じて教育課程を見直している
まとめ|特別支援学級の教育課程は「その子の学び」を設計するもの
特別支援学級の教育課程には、通常学級とは異なる難しさがあります。
異なる学年の児童を同時に指導しなければならない。
交流学級との時間を調整しなければならない。
自立活動をどのように位置付けるか考えなければならない。
児童によって学習進度も大きく異なります。
だからこそ、特別支援学級の教育課程づくりは、単純に学習指導要領の内容を時間割に配置するだけではありません。
私自身、知的障害学級を2年間、自閉症・情緒障害学級を6年間担任してきましたが、実際の現場では、子ども一人一人に合わせて教育課程を考えることの難しさを何度も感じてきました。
そして同時に、そこに特別支援学級の教育の面白さもあると感じています。
「何年生だから、この内容」
「特別支援学級だから、この内容」
ではなく、
「この子にとって、今どんな学びが必要なのか」
を考える。
その積み重ねが、一人一人の子どもに合った教育課程につながっていくのだと思います。
特別支援学級の教育課程に「唯一の正解」があるわけではありません。
大切なのは、制度を正しく理解したうえで、児童の実態、本人の願い、保護者の願い、そして将来の姿を見据えながら、学校としてよりよい教育課程を考え続けることです。
この記事を読んでくださった先生へ
特別支援学級の担任になったばかりの頃は、教育課程や時間割をどう組めばよいのか分からず、悩むことも多いと思います。
私自身も、異学年の児童を同時に指導しながら、交流学級との時間を調整し、自立活動をどこに入れるのか、教科の内容をどこまで下学年にするのか、そして一人一人違う学習進度にどう対応するのか、何度も考えてきました。
この記事が、特別支援学級の教育課程を考える先生方にとって、「自分の学級ではどうするか」を考えるための一つの材料になればうれしく思います。
特別支援学級の教育課程について、さらに詳しく知りたい方へ
特別支援学級の教育課程について考えると、次に出てくるのが「では、実際に時間割をどう組めばいいのか」という問題です。
特に、
- 異学年の児童が在籍している
- 交流学級との時間が違う
- 自立活動の時間を確保したい
- 個別指導の時間も必要
- 教科ごとに学習進度が違う
という特別支援学級では、時間割づくりそのものが大きな課題になります。
そこで、実際の特別支援学級の時間割を考えるときには、「教育課程→児童一人一人の学習→学級全体の時間割」という順番で考えることが重要です。

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