この記事でわかること
- 特別支援学級の教育課程と「特別の教育課程」の基本
- 通常学級との違い
- 下学年の内容や特別支援学校(知的障害)の各教科を取り入れる場合の考え方
- 自立活動・交流及び共同学習の位置付け
- 教育課程を実際の時間割につなげる方法
- 特別支援学級の教育課程とは?
- 特別支援学級も小・中学校の学習指導要領が基本
- 「教育課程」と「時間割」は同じではない
- 通常学級と特別支援学級の教育課程の違い
- 「特別の教育課程」では何ができる?
- 教育課程は「子どもの実態」から考える
- 特別支援学級の教育課程を編成する基本的な流れ
- 特別支援学級の教育課程はどう編成する?
- 特別支援学級では「下学年の内容」を取り入れてもいい?
- 知的障害特別支援学級では、特別支援学校(知的障害)の各教科も検討する
- 「各教科等を合わせた指導」とは?
- 異学年・交流学級まで含めて教育課程を考える
- 特別支援学級の教育課程を考える5つの視点
- 特別支援学級の教育課程と自立活動
- そもそも「自立活動」とは?
- 自立活動は「6区分27項目」から考える
- 自立活動は「自立活動の時間」だけではない
- 自立活動は週に何時間?
- 自立活動と個別の指導計画をつなげる
- SSTは自立活動になる?
- 元・自閉症・情緒障害学級担任として感じたこと
- 特別支援学級の時間割はどう作る?
- 時間割は5つの手順で考える
- 「学級の時間割」+「児童別予定」で考える
- 時間割で避けたい3つの失敗
- 元・特別支援学級担任として感じる「時間割」のポイント
- 時間割を作ったら5つだけ確認する
- 特別支援学級では、どの教科をどの教育課程で学ぶ?
- 当該学年・下学年・特別支援学校(知的障害)の各教科はどう違う?
- 教科ごとに児童生徒の実態を見る
- 教育課程はどの順番で検討する?
- 知的障害学級では「各教科等を合わせた指導」も考える
- 自立活動は「教科の代わり」ではない
- 元・特別支援学級担任として感じること
- 教育課程を決めるときに確認したい5つのこと
- 教育課程と個別の指導計画はどうつなげる?
- 教育課程と個別の指導計画の違い
- 実態から日々の指導までをつなげる
- 教科の授業も個別の目標を育てる場になる
- 個別の指導計画は「評価」までつなげる
- 元・特別支援学級担任として感じること
- 教育課程と個別の指導計画をつなぐ5つの確認
- 複数学年の特別支援学級では、どう授業を組み立てる?
- ① 「同じ教科=同じ内容」にしない
- ② 「活動は共通、目標は個別」を活用する
- ③ 「教師一人で本当にできるか」を考える
- 「学級の時間割」と「児童別予定」を分ける
- 交流学級は「行ける時間」ではなく「学ぶ意味」で考える
- 元・特別支援学級担任として感じたこと
- 複数学年の時間割で確認したい4つのこと
- 特別支援学級で下学年の学習をしてもいい?知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の違い
- 知的障害学級と自閉症・情緒障害学級では考え方が異なる
- 「今の学年が難しいから下学年」では決めない
- 本人・保護者の願いと短期・長期の見通しを大切にする
- 下学年の学習は「後退」ではなく、次につなげるための選択
- 元・特別支援学級担任として大切にしてきたこと
- 下学年の学習を検討するときの5つの確認
- まとめ|「学年」ではなく、その子の次の学びにつながるかを見る
- 特別支援学級の教育課程でよくある疑問【FAQ】
- まとめ|特別支援学級の教育課程は「その子に必要な学び」から考える
特別支援学級の教育課程とは?
「特別支援学級では、通常学級と同じように授業をすればいいの?」
「下学年の内容を取り入れてもいい?」「自立活動はどこに位置付ける?」
初めて特別支援学級を担任すると、教育課程について迷うことは少なくありません。
特別支援学級の教育課程は、単に「通常学級の学習を簡単にしたもの」ではありません。
児童生徒の実態を把握し、その子に必要な学びを考え、各教科や自立活動などを教育課程の中に位置付けていくことが重要です。
私はこれまで、知的障害学級を2年間、自閉症・情緒障害学級を6年間担任してきました。この記事では制度だけでなく、実際に担任として教育課程をどう考えればよいのかという現場の視点も交えて解説します。
特別支援学級も小・中学校の学習指導要領が基本
特別支援学級は、小学校・中学校に設置される学級です。そのため、教育課程は小学校・中学校の学習指導要領を基本として編成します。
ただし、障害のある児童生徒の実態によっては、通常の教育課程をそのまま適用することが難しい場合があります。
そこで、特に必要がある場合には、学校教育法施行規則第138条に基づき「特別の教育課程」を編成することができます。
学習指導要領が基本
実態を踏まえる
特別の教育課程
文部科学省:学校教育法施行規則第138条「特別支援教育についての特例」
「教育課程」と「時間割」は同じではない
教育課程 ≠ 時間割
教育課程では「何を学ぶのか」「どのような力を育てるのか」を考え、それを年間指導計画や時間割、実際の授業へ具体化していきます。
特別支援学級では、いきなり時間割を埋めるのではなく、まず「この子にどんな力を育てたいのか」を考えることが大切です。
その上で、各教科、自立活動、交流及び共同学習などをどのように組み合わせるかを検討します。
通常学級と特別支援学級の教育課程の違い
大きな違いは、特別支援学級では、児童生徒の障害の状態や実態等を踏まえ、必要に応じて特別の教育課程を編成できることです。
| 項目 | 通常学級 | 特別支援学級 |
|---|---|---|
| 基本 | 小・中学校の学習指導要領 | 小・中学校の学習指導要領 |
| 教育課程 | 当該学年の目標・内容を基本とする | 必要に応じて特別の教育課程を編成 |
| 自立活動 | 通常の教育課程には領域として位置付けられていない | 教育課程に取り入れる |
| 教科の目標・内容 | 当該学年を基本とする | 実態等に応じ、下学年の内容等への変更を検討できる |
ただし、「特別支援学級なら自由に学習内容を変更できる」という意味ではありません。学習指導要領等を踏まえ、児童生徒の実態に応じて学校として適切に編成する必要があります。
「特別の教育課程」では何ができる?
国立特別支援教育総合研究所(NISE)は、特別支援学級で特別の教育課程を編成する場合について、主に次のような考え方を示しています。
- 自立活動を取り入れる
- 必要に応じて、各教科の目標・内容を下学年のものに替える
- 必要に応じて、知的障害のある児童生徒を教育する特別支援学校の各教科の目標・内容に替える
- その場合、必要に応じて各教科等を合わせた指導も検討する
ただし、これらは「簡単な内容に変えるため」の仕組みではありません。
児童生徒の実態を把握した上で、その子に必要な学びを保障するために教育課程を編成することが基本です。
教育課程は「子どもの実態」から考える
特別支援学級担任として感じていること
私が教育課程を考えるときに大切にしてきたのは、最初から「月曜日の1時間目は国語、2時間目は算数……」と時間割を埋めないことです。
先に考えたいのは、「この子に1年間でどんな力を身に付けてほしいのか」ということです。
例えば、友達との関わりに困難があるなら、自立活動で何を指導するのか、教科や学級活動、日常生活の中でどうつなげていくのかを考えます。
「時間割に何を入れるか」ではなく、「必要な学びを教育課程のどこに位置付けるか」から考える。これが、特別支援学級の教育課程を組み立てる上で大切だと感じています。
特別支援学級の教育課程を編成する基本的な流れ
教育課程は、おおまかに次の順序で考えると整理しやすくなります。
NISEも、まず一人一人の障害の状態や興味・関心、各教科の習得状況・既習事項等を把握し、その上で特別の教育課程を検討する流れを示しています。
次の章では、「下学年の教科」や「知的障害特別支援学校の各教科」をどのように考えるのかを詳しく解説します。
この記事では「教育課程」に焦点を当てています。特別支援学級の対象や種類、授業、通常学級との違い、自立活動なども含めて全体像を知りたい方は、こちらの記事から読むと理解しやすいです。
特別支援学級の教育課程はどう編成する?
特別支援学級の教育課程を編成するとき、大切なのは「時間割」や「何年生の内容を教えるか」から考え始めないことです。
まず児童生徒の実態を把握し、「この子にどんな力を育てたいのか」を考え、そのために必要な各教科、自立活動、交流及び共同学習などを組み立てていきます。

① まず児童生徒の実態を把握する
教育課程の出発点は、一人ひとりの実態把握です。
- 現在の学習状況・既習事項
- 読み・書き・計算などの困難
- 得意なことや興味・関心
- コミュニケーションや対人関係
- 生活面で必要な支援
- 力を発揮しやすい学習方法や環境
同じ学年でも、学習状況や必要な支援は大きく異なります。だからこそ、「○年生だから○年生の内容」と学年だけで決めないことが重要です。
② 「この子にどんな力を育てたいか」を考える
実態を把握したら、次に目指す姿を考えます。
例えば算数なら、「計算問題が解ける」だけでなく、買い物でお金を扱うなど、学んだ力を生活の中でどう生かすかまで考えることがあります。
「何年生の内容を教えるか」より先に、「この子が今、何を学ぶ必要があるのか」を考える。
③ 各教科等で何を学ぶかを検討する
目指す姿を踏まえ、各教科等の目標・内容を検討します。
特別支援学級だからといって、すべての教科を一律に変更するわけではありません。当該学年の内容を学ぶことが適切な教科もあれば、実態に応じて下学年の目標・内容等を検討する教科もあります。
国立特別支援教育総合研究所(NISE)も、まず当該学年の学習を検討し、困難な場合には下学年の内容、さらに必要に応じて特別支援学校(知的障害)の各教科の目標・内容への変更を検討する流れを示しています。
特別支援学級では「下学年の内容」を取り入れてもいい?
児童生徒の実態に応じて、各教科の目標・内容を下学年のものに替えることを検討できます。
ただし、
「勉強が苦手だから、とりあえず下学年」
という考え方ではありません。
現在の習得状況や既習事項、学習上のつまずき、今後育てたい力などを踏まえ、なぜその内容を学ぶ必要があるのかを明確にすることが大切です。
教科ごとに考える
例えば小学5年生でも、国語は当該学年、算数は下学年の内容を検討するなど、教科によって学習状況が異なることがあります。
| 教科 | 実態の例 | 検討する視点 |
|---|---|---|
| 国語 | 文章理解に大きな困難 | 下学年の目標・内容等を検討 |
| 算数 | 当該学年の基礎が身に付いている | 当該学年の内容を検討 |
| 体育 | 集団参加に困難 | 内容だけでなく支援・環境を工夫 |
元・特別支援学級担任として
私自身、「どこまで下学年の内容を取り入れるのか」は何度も迷いました。子どもによって、そして教科によって学習進度が違うためです。学年だけで判断せず、現在地と今後の学びをつなげて考えることが大切だと感じています。
知的障害特別支援学級では、特別支援学校(知的障害)の各教科も検討する
知的障害のある児童生徒については、実態に応じて、特別支援学校(知的障害)の各教科の目標・内容に替えた教育課程を編成することも検討できます。
これは単に小学校・中学校の内容を「簡単にしたもの」ではありません。知的障害のある児童生徒の学習上の特性を踏まえ、生活とのつながりを重視して目標・内容が整理されています。
「各教科等を合わせた指導」とは?
特別支援学校(知的障害)の各教科等を取り入れた教育課程では、必要に応じて各教科等を合わせた指導を検討することがあります。
例えば「買い物」という活動なら、
商品名を読む
金額を扱う
手順を理解する
必要なやり取りをする
というように、一つの具体的な活動の中に複数の学びを位置付けることができます。
ただし、活動を行うこと自体が目的ではありません。「この活動を通して何を学ぶのか」を明確にすることが重要です。
各教科等を合わせた指導や学習評価については、NISEでも実践的な資料が公開されています。
参考:国立特別支援教育総合研究所「知的障害教育における学習評価」
異学年・交流学級まで含めて教育課程を考える
特別支援学級では、学年だけでなく、学習進度、必要な支援、交流学級へ行く時間も一人ひとり異なります。
例えば同じ算数の時間でも、
- Aさんは足し算
- Bさんは九九
- Cさんは分数
ということがあります。
さらに、その時間に別の児童が交流学級へ行くこともあります。
8年間の特別支援学級担任経験から
知的障害学級を2年間、自閉症・情緒障害学級を6年間担当する中で、特に難しかったのが、異学年・異なる学習進度・交流学級との時間調整を同時に成立させることでした。
だからこそ、学級全員を同じ内容に合わせるのではなく、「一緒に学ぶ部分」と「一人ひとりに合わせる部分」を整理することが重要だと感じています。
特別支援学級の教育課程を考える5つの視点
何ができ、何に困っているか
何を学ぶ必要があるか
どんな困難への指導が必要か
どこで、誰と学ぶか
今の学びを何につなげるか
特別支援学級の教育課程は、「通常学級の内容を簡単にする」「学年を下げる」というものではありません。
一人ひとりの実態を踏まえ、必要な学びをどのように教育課程へ位置付けるかを考えることが中心になります。
次に読む
次は、特別支援学級の教育課程で欠かせない「自立活動」について、時間数・時間割・個別の指導計画との関係を整理します。
特別支援学級の教育課程と自立活動
特別支援学級の教育課程を考えるうえで欠かせないのが「自立活動」です。
自立活動は、「週に○時間、何か特別な活動をする」というものではありません。児童生徒の障害による学習上・生活上の困難を把握し、その改善・克服に必要な指導を教育課程に位置付けることが基本です。
私自身、自閉症・情緒障害特別支援学級を6年間担当しましたが、「何を自立活動として指導するか」「時間割のどこに位置付けるか」は、何度も考えてきたテーマでした。
そもそも「自立活動」とは?
自立活動は、児童生徒が自立を目指し、障害による学習上または生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な力を育てることを目標とする、特別支援教育に特有の指導領域です。
ここでいう「自立」は、「何でも一人でできるようになる」という意味ではありません。
例えばこんな力も「自立」につながります
- 困ったときに援助を求める
- 自分の気持ちを相手に伝える
- 予定を確認して行動する
- 気持ちを落ち着かせる方法を身につける
- 自分の得意・不得意を理解する
自立活動は「6区分27項目」から考える
自立活動の内容は、特別支援学校学習指導要領で6区分27項目に整理されています。
ただし、27項目を順番に授業するわけではありません。児童生徒の実態から必要な項目を選び、関連付けながら具体的な指導内容を設定します。
具体的な指導内容の考え方は、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
▶ 自立活動の指導の流れ|実態把握から目標・指導内容の設定まで
自立活動は「自立活動の時間」だけではない
自立活動は、時間割上の「自立活動の時間」だけで完結するものではありません。
自立活動の時間における指導と、学校の教育活動全体を通じた指導を関連させることが重要です。
| 自立活動の時間 | 教育活動全体 | |
|---|---|---|
| 役割 | 個別の目標に焦点を当てて計画的に指導 | 実際の授業・生活場面で身につけた力を生かす |
| 例 | 援助要請、感情調整、コミュニケーション練習 | 授業中に質問する、友達と関わる、予定変更に対応する |
例えば、自立活動で「困ったときに助けを求める」練習をしたなら、国語や算数、交流学級での学習など、実際に困った場面でもその力を使えるようにつなげていきます。
自立活動は週に何時間?
「自立活動は週○時間」と全国一律に決められているわけではありません。
児童生徒の障害の状態や特性、教育課程全体などを踏まえて、必要な授業時数を適切に定めます。
ただし、文部科学省は、特別の教育課程を編成しているにもかかわらず、自立活動の時数を「0」とすることは学習指導要領上想定していないと示しています。
「週何時間?」より先に考えたいこと
この子には、どんな困難があり、どんな力を育てる必要があるのか。そこから必要な指導内容と時間を考えることが大切です。
参考:文部科学省「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用に関するQ&A」
自立活動と個別の指導計画をつなげる
自立活動では、児童生徒一人ひとりの実態に応じて目標・指導内容を設定します。
例えば、同じ「コミュニケーション」に課題があるように見えても、必要な指導は異なります。
| 実態 | 目標例 |
|---|---|
| 困っていても助けを求められない | 必要なときに援助を求める |
| 気持ちが高ぶると一方的に話してしまう | 気持ちを整理して相手に伝える |
つまり、「自立活動で何をするか」より先に「この子に何が必要か」を考えることが重要です。
SSTは自立活動になる?
SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、児童生徒の実態や自立活動の目標に応じて、指導方法の一つとして活用できます。
ただし、「SSTをすれば自立活動になる」というわけではありません。
例えば「困ったときに援助を求める」という目標があり、そのためにロールプレイで頼み方を練習する、という順序で考えます。
実態 → 目標 → 指導内容 → 必要ならSSTという順番で考えることがポイントです。
▶ 自立活動とは?自閉症・情緒障害学級での実践例を詳しく見る
元・自閉症・情緒障害学級担任として感じたこと
6年間の自閉症・情緒障害学級担任経験から
私が特に難しいと感じたのは、自立活動を時間割の中にどう位置付けるかでした。
コミュニケーションが課題の子、感情調整が必要な子、予定変更への対応を学ぶ必要がある子など、同じ学級でも課題は違います。さらに交流学級との時間調整もあります。
だからこそ、「全員で同じ自立活動をする」だけではなく、一人ひとりの目標を明確にし、自立活動の時間と日常の授業・生活をつなげることを大切にしてきました。
次に読む
では、各教科・交流及び共同学習・自立活動を、実際の「時間割」にどう落とし込めばよいのでしょうか。次に時間割づくりの基本を整理します。
特別支援学級の時間割はどう作る?
特別支援学級の時間割づくりが難しいのは、学年・学習進度・交流学級・自立活動・必要な支援が一人ひとり違うからです。
そのため、「学級全員の時間割」を先に作るのではなく、児童ごとの教育課程を重ね合わせて学級全体の時間割を作ると考えると整理しやすくなります。
時間割は5つの手順で考える
- 交流学級など動かしにくい時間を確認する
- 児童ごとの教科・学習内容を整理する
- 自立活動を位置付ける
- 一緒に指導できる時間を作る
- 担任の動きで成立するか確認する
① 交流学級の時間を先に確認する
交流及び共同学習の時間は、特別支援学級だけで自由に動かしにくいため、先に確認しておきます。
複数学年が在籍していれば、交流学級も児童ごとに異なります。体育・音楽などへの参加だけでなく、「なぜそこで学ぶのか」という目標も確認しておくことが大切です。
② 「誰が、何を学ぶか」を整理する
同じ「算数」の時間でも、全員が同じ内容を学ぶとは限りません。
| 児童 | 国語 | 算数 | 交流 |
|---|---|---|---|
| Aさん | 当該学年 | 実態に応じた内容 | 体育 |
| Bさん | 実態に応じた内容 | 当該学年 | 音楽・図工 |
| Cさん | 当該学年 | 当該学年 | 体育・音楽 |
時間割を組む前に、こうした児童別の学習内容と学ぶ場所を整理しておきます。
③ 自立活動は「空いている時間」に入れない
自立活動は、第3パートで整理した児童一人ひとりの目標から位置付けます。
「火曜日の4時間目が空いているから自立活動」ではなく、必要な指導を行うために、どこに時間を確保するかと考えます。
④ 「一緒に学べる部分」を探す
複数学年だからといって、すべてを完全に個別指導する必要はありません。
同じ活動・違う目標
例えば「買い物」という活動でも、
- Aさん:商品名を読む
- Bさん:金額を計算する
- Cさん:相手とのやり取りを練習する
同じ時間・活動を共有しながら、目標や課題を一人ひとり変えることで、異学年でも一緒に学べる場面を作れます。
⑤ 最後に「担任一人で成立するか」を確認する
教育課程上は成立していても、
- Aさんには新しい算数を個別指導
- Bさんには国語の読み取り指導
- Cさんには個別の行動支援
が同じ時間に重なれば、担任一人では成立しません。
時間割を作ったら、「教師がどこに立ち、誰を指導しているのか」までシミュレーションすることが重要です。
「学級の時間割」+「児童別予定」で考える
複数学年の特別支援学級では、学級全体の時間割だけでは実際の動きを把握しにくくなります。
そこで、
学級全体の時間割 + 一人ひとりの予定
の2つで考えると整理しやすくなります。
例えば学級全体では「国語」の時間でも、Aさんは文章読解、Bさんは漢字、Cさんは作文というように、実際の学習内容は異なることがあります。
時間割で避けたい3つの失敗
学年・実態の違いを無視しない。
目標から時間を位置付ける。
実際の子どもの姿から見直す。
元・特別支援学級担任として感じる「時間割」のポイント
8年間の担任経験から
私が時間割づくりで特に難しいと感じたのは、「一人ひとりに合わせること」と「学級全体の授業を成立させること」の両立でした。
学年も学習進度も交流学級へ行く時間も違います。だからといって、すべてを完全に個別化することも現実的ではありません。
そこで大切になるのが、「個別に学ぶところ」と「一緒に学ぶところ」を意図的に組み合わせることです。時間割は、教科を並べる表ではなく、「この学級で子どもたちがどう学ぶか」を設計するものだと考えています。
時間割を作ったら5つだけ確認する
- □ 児童ごとの教育課程・学習内容が反映されているか
- □ 交流及び共同学習の時間が整理されているか
- □ 自立活動が目標に基づいて位置付いているか
- □ 個別指導が同じ時間に重なりすぎていないか
- □ 担任の動きと児童の負担を考えて、実際に実施できるか
そして、時間割は一度作って終わりではありません。児童の成長や学習状況を見ながら、必要に応じて見直していきます。
次に読む
次のパートでは、当該学年・下学年・特別支援学校(知的障害)の各教科をどのように考え、教育課程へ位置付けるのかを整理します。
特別支援学級では、どの教科をどの教育課程で学ぶ?
特別支援学級の教育課程を考えるとき、迷いやすいのが「この子は、どの教科をどの教育課程で学ぶのか」という問題です。
基本になるのは、小学校・中学校の当該学年の各教科等です。ただし、児童生徒の障害の状態や実態等を踏まえ、特に必要がある場合には「特別の教育課程」を編成できます。
各教科については、大きく次の3つの考え方で整理すると分かりやすくなります。
在籍学年の各教科の目標・内容を基本に学ぶ。
必要に応じて、各教科の目標・内容を下学年のものに替える。
知的障害のある児童生徒について、実態に応じて目標・内容を替える。
重要なのは、学級全体でどれか一つを選ぶわけではないということです。
例えば一人の児童でも、「国語は当該学年、算数は実態に応じた下学年の内容、体育は交流学級、自立活動は特別支援学級」という組み合わせになることがあります。
当該学年・下学年・特別支援学校(知的障害)の各教科はどう違う?
| 教育課程 | 基本的な考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 当該学年 | 在籍する学年の目標・内容を学ぶ | 5年生 → 5年生の算数 |
| 下学年 | 小・中学校学習指導要領の下学年の目標・内容に替える | 5年生 → 3年生の算数 |
| 特別支援学校(知的障害)の各教科 | 知的障害の学習上の特性等を踏まえた各教科の目標・内容に替える | 特別支援学校小学部の算数等 |
特に、「下学年の教科」と「特別支援学校(知的障害)の各教科」は同じものではないことに注意が必要です。
特別支援学校(知的障害)の各教科は、単に小学校の内容を簡単にしたものではなく、知的障害のある児童生徒の学習上の特性や生活経験等を踏まえて構成されています。
教科ごとに児童生徒の実態を見る
特別支援学級だからといって、すべての教科を一律に下学年の内容へ替える必要はありません。
例えば、
- 国語 → 当該学年
- 算数 → 下学年の目標・内容を検討
- 理科 → 当該学年
- 体育 → 交流学級で学習
- 自立活動 → 特別支援学級で実施
ということもあります。
私自身、特別支援学級を担任していて、国語と算数でも学習進度が大きく違う子どもを何度も担当しました。
だからこそ、「この子は○年生程度」と一括りにするのではなく、教科ごとに現在地を捉えることが大切です。
教育課程はどの順番で検討する?
基本的には、次のような順序で考えると整理しやすくなります。
① 当該学年の目標・内容を基本に考える
↓
② 実態や教育的必要性から、必要に応じて下学年の目標・内容を検討する
↓
③ 知的障害のある児童生徒については、特別支援学校(知的障害)の各教科も検討する
↓
④ 自立活動や交流及び共同学習を含め、教育課程全体として整理する
ただし、特に自閉症・情緒障害学級で下学年の内容を取り入れる場合は、当該学年を基本とすることを踏まえながら、本人・保護者の願いや短期・長期の目標も含めて慎重に検討する必要があります。
この点は後半の「下学年の学習を取り入れる場合」で詳しく解説します。
参考:国立特別支援教育総合研究所「特別支援教育における教育課程に関する総合的研究」
知的障害学級では「各教科等を合わせた指導」も考える
知的障害のある児童生徒への指導では、教育課程に応じて、各教科等を合わせた指導を行うことがあります。
代表的なものに、日常生活の指導、遊びの指導、生活単元学習、作業学習などがあります。
例えば「買い物」の活動なら、
- 国語:商品名や表示を読む
- 算数:数量や金額を扱う
- 生活:買い物の手順を理解する
- 自立活動:必要に応じて援助を求める
というように、具体的な活動を通して複数の学びを関連付けることができます。
ただし、活動そのものを目的にするのではなく、「この活動で何を学ぶのか」を明確にすることが重要です。
自立活動は「教科の代わり」ではない
自立活動は国語や算数の代わりに行う教科ではありません。
例えば「算数が苦手だから、自立活動の時間に算数をする」という考え方ではなく、障害による学習上・生活上の困難に焦点を当てて目標・内容を設定します。
教科と自立活動を関連させる場合も、教科として何を学ぶのか、自立活動としてどのような力を育てるのかを区別しておくことが大切です。
▶ 自立活動の実態把握から目標・指導内容を設定する流れはこちら
元・特別支援学級担任として感じること
8年間の特別支援学級担任経験から
私は知的障害学級を2年間、自閉症・情緒障害学級を6年間担当しました。
その中で感じたのは、「何年生の内容を教えるか」だけでは子どもの学びは決められないということです。
学年だけを見るのではなく、現在の学習状況、困り感、本人の願い、将来必要になる力を踏まえ、「この子に今、何を学ぶ必要があるのか」を考えることが大切だと思っています。
教育課程を決めるときに確認したい5つのこと
- □ 当該学年の目標・内容で学べるか
- □ 教科ごとの実態を把握しているか
- □ 特別の教育課程にする教育的な理由が明確か
- □ 自立活動・交流及び共同学習との関係が整理されているか
- □ なぜその教育課程なのか、本人・保護者を含めて共有できているか
教育課程で大切なのは、「何を選んだか」だけでなく、「なぜそれを選んだのか」を説明できることです。
次に読む
次は、教育課程で決めた内容を「個別の指導計画」と日々の授業へどうつなげるかを整理します。
教育課程と個別の指導計画はどうつなげる?
特別支援学級では、教育課程、個別の指導計画、年間指導計画、日々の授業が別々の書類になってしまうことがあります。
しかし、本来は、
教育課程 → 個別の指導計画 → 日々の授業 → 評価・見直し
という一本の流れでつながっていることが重要です。

教育課程と個別の指導計画の違い
| 教育課程 | 個別の指導計画 | |
|---|---|---|
| 視点 | 学校・学級全体の教育をどう組み立てるか | その児童生徒に何を、どう指導するか |
| 中心 | 各教科等・自立活動などの編成 | 実態・目標・具体的な指導・評価 |
教育課程が「全体の設計図」なら、個別の指導計画は「その子の学びを具体化する設計図」と考えると分かりやすいでしょう。
実態から日々の指導までをつなげる
例えば、次のような児童を想定します。
実態
困ったことがあっても言葉で伝えられず、黙ったりその場を離れたりすることがある。
個別の目標
困ったときに「教えてください」「手伝ってください」などの言葉で援助を求める。
具体的な指導
自立活動で頼み方を練習し、国語や算数、交流学級など実際に困る場面でも使えるように支援する。
評価・次の目標
教師の声かけがあれば援助を求められるようになった → 次は自分から伝えることを目指す。
このように、実態→目標→指導→評価がつながることで、個別の指導計画が「作って終わる書類」ではなくなります。
教科の授業も個別の目標を育てる場になる
個別の指導計画の目標は、自立活動の時間だけで指導するものではありません。
例えば「援助を求める」という目標なら、算数で分からない問題が出たときも指導の機会になります。
教師がすぐに答えを教えるのではなく、
↓
「先生、教えてください」
と行動につなげることで、教科学習と個別の目標を関連させることができます。
ただし、教科の目標と自立活動の目標を混同せず、それぞれ何を育てているのかを明確にすることが大切です。
個別の指導計画は「評価」までつなげる
評価では、「できた・できなかった」だけではなく、
目標:困ったときに援助を求める
変化:教師に促されると「教えてください」と言える場面が増えた
次の目標:教師からの促しがなくても、自分から援助を求める
というように、子どもの変化を次の指導につなげることが重要です。
▶ 個別の指導計画「自立活動」の書き方・目標・支援・評価の具体例はこちら
元・特別支援学級担任として感じること
8年間の担任経験から
教育課程や個別の指導計画は、丁寧に作るほど書類としては立派になります。
しかし、私が大切だと感じているのは、その内容を翌日の授業で使えるかということです。
「この子の目標は何か」「今日の授業のどこでその力を育てるか」を担任が分かっている状態を作ることが、個別の指導計画を生かすことにつながります。
教育課程と個別の指導計画をつなぐ5つの確認
- □ 児童生徒の実態と目標がつながっている
- □ 教育課程と個別の指導計画がつながっている
- □ 目標を実際に指導する場面がある
- □ 教科の目標と自立活動の目標を区別している
- □ 評価を次の目標・指導へ反映している
教育課程→個別の指導計画→日々の授業→評価という流れができると、書類と実践がつながります。
次に読む
次は、複数学年の児童が在籍する特別支援学級で、一人ひとりの教育課程を実際にどう運用するのかを見ていきます。
複数学年の特別支援学級では、どう授業を組み立てる?
特別支援学級では、同じ教室に異なる学年の児童が在籍し、さらに学習進度や交流学級へ行く時間も異なることがあります。
時間割の基本的な作り方は前の章で説明しました。
ここでは、実際に複数学年を指導するときに重要な3つの考え方に絞って紹介します。

① 「同じ教科=同じ内容」にしない
例えば、同じ時間割上の「算数」でも、
- Aさん → 足し算
- Bさん → 九九
- Cさん → 割り算
- Dさん → 分数
ということがあります。
大切なのは、全員を同じ問題にそろえることではなく、一人ひとりに必要な内容を学べるようにすることです。
そのため、「学級の時間割」とは別に、一人ひとりが実際に何を学ぶのかを整理しておくと運用しやすくなります。
② 「活動は共通、目標は個別」を活用する
一方、すべての授業を完全に個別化すると、担任一人では成立しません。
そこで役立つのが、同じ活動の中に異なる目標を位置付ける考え方です。
例えば「文章を書く」活動
- Aさん → 「いつ・どこで・何をした」を使って3文書く
- Bさん → 主語・述語を意識して書く
- Cさん → 理由や気持ちを加えて書く
これなら、教師は全体に同じ活動を提示しながら、一人ひとりの目標に応じて支援できます。
知的障害学級で生活単元学習などを行う場合にも、同じ活動に異なる教科や個別の目標を位置付けるという考え方が役立ちます。
③ 「教師一人で本当にできるか」を考える
特別支援学級の時間割で見落としやすいのが、教師の指導可能性です。
例えば同じ時間に、
- Aさん → 新しい算数を個別指導
- Bさん → 国語の文章読解を個別指導
- Cさん → 対人関係の自立活動
- Dさん → 交流学級への移動支援
となっていれば、時間割上は成立していても、担任一人では難しい可能性があります。
時間割を作ったら、「この時間、教師はどこにいて、誰を指導しているのか」まで想像してみることが大切です。
「学級の時間割」と「児童別予定」を分ける
複数学年の学級では、次の2つを分けて考えると整理しやすくなります。
その時間に学級として何を行うか
誰が・どこで・何を学ぶか
例えば月曜日1時間目が学級全体では「国語」でも、
| Aさん | 文章読解 |
| Bさん | 漢字 |
| Cさん | 作文 |
というように、実際の内容は異なることがあります。
交流学級は「行ける時間」ではなく「学ぶ意味」で考える
複数学年の時間割では、交流学級との調整が非常に複雑になります。
ただし、単に時間割が合うから参加するのではなく、
「この教科を、この集団で学ぶことにどんな意味があるのか」
を考えることが重要です。
交流学級で学ぶ内容・必要な支援・本人の負担なども含めて、教育課程全体の中で位置付けます。
元・特別支援学級担任として感じたこと
複数学年を指導して感じたこと
私が特別支援学級の時間割で一番難しいと感じたのは、一人ひとりに合わせることと、学級全体として授業を成立させることの両立でした。
学年も学習進度も違う子どもたちを、すべて完全に別々に指導するのは現実的ではありません。
だからこそ、「ここは一緒に学ぶ」「ここは個別にする」を意図的に分けることが重要だと感じています。
複数学年の時間割で確認したい4つのこと
- □ 一人ひとりが必要な内容を学べているか
- □ 一緒に指導できる場面を作れているか
- □ 個別指導が同じ時間に集中していないか
- □ 交流学級を含め、教師と児童の動きが実際に成立するか
時間割は、一度完成したら終わりではありません。
実際に授業を行い、子どもの疲れ方、集中のしやすさ、交流学級での様子、教師の指導のしやすさなどを見ながら必要に応じて調整していくことが大切です。
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次は、教育課程で特に判断が難しい「下学年の学習を取り入れる場合」について、知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の違いも含めて慎重に整理します。
特別支援学級で下学年の学習をしてもいい?知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の違い
特別支援学級の教育課程で、特に判断が難しいのが「当該学年の内容では難しい子どもに、下学年の内容を取り入れてよいのか」という問題です。
ここでは、知的障害学級と自閉症・情緒障害学級の違いを踏まえながら、制度上の考え方と実際の教育的判断を整理します。
知的障害学級と自閉症・情緒障害学級では考え方が異なる
特別支援学級は、小学校・中学校の学習指導要領を基本としながら、児童生徒の実態に応じて特別の教育課程を編成することができます。
その中で、必要に応じて各教科の目標・内容を下学年のものに替えたり、知的障害のある児童生徒については特別支援学校(知的障害)の各教科に替えたりすることができます。
| 知的障害学級 | 自閉症・情緒障害学級 | |
|---|---|---|
| 基本 | 実態に応じた特別の教育課程を編成 | 当該学年の目標・内容を基本に考える |
| 下学年 | 実態に応じて検討 | 必要性を慎重に検討 |
| 知的障害特別支援学校の各教科 | 実態に応じて替えることを検討できる | 知的障害のない児童に一律に適用するものではない |
文部科学省の令和6年調査では、小学校6年生の知的障害学級では60.6%が「下学年の目標・内容中心」でした。
一方、自閉症・情緒障害学級では、69.8%が「当該学年中心」、21.3%が「下学年中心」となっています。
つまり、自閉症・情緒障害学級では当該学年の学習を基本としながらも、実際には児童の実態に応じて下学年の目標・内容を中心とした教育課程が編成されているケースもあります。
ここは誤解しないようにしたいところ
「自閉症・情緒障害学級でも21.3%が下学年中心だから、自由に下学年へ変更できる」という意味ではありません。当該学年を基本としたうえで、その児童にとって特別の教育課程を編成する教育的な必要性があるのかを検討することが重要です。
「今の学年が難しいから下学年」では決めない
下学年の内容を検討するとき、単純に「今の問題が解けないから学年を下げる」と考えるのは適切ではありません。
まず、次のような点を確認します。
- どこでつまずいているのか
- 既習事項のどこが十分に身に付いていないのか
- 支援や教材の工夫によって当該学年の学習に参加できないか
- 読み書き・注意・不安など、教科内容以外の困難が影響していないか
- 下学年の内容を学ぶことが、その後の学習につながるか
学習が難しい原因が読み書きの困難や不安、見通しの持ちにくさなどにある場合は、学年を下げるだけでは解決しないこともあります。
合理的配慮、教材・指導方法の工夫、自立活動なども含めて考えることが必要です。

本人・保護者の願いと短期・長期の見通しを大切にする
ここは、私自身が特別支援学級を担任する中で特に大切にしてきたことです。
教師が「この子には下学年の内容が合っている」と考えても、それだけで決めるのではなく、
何を学びたいか、どうなりたいか
学校生活や将来に何を望んでいるか
今の学習を成立させるには何が必要か
数年後・将来にどんな力が必要か
を総合的に考えることが重要です。
特に自閉症・情緒障害学級で下学年の内容を取り入れる場合には、なぜ当該学年ではなく、その内容を学ぶことが本人にとって必要なのかを丁寧に説明する必要があります。
法令上、一律の形式的な「保護者同意手続」が定められているという意味ではありませんが、実際の学校教育では、本人や保護者の思いを十分に受け止め、学校の考えを説明し、本人・保護者・学校が納得できる共通理解のもとで進めることがとても大切だと私は考えています。
下学年の学習は「後退」ではなく、次につなげるための選択
例えば小学5年生の児童が、算数では3~4年生の内容を学ぶことが適切だと判断されたとします。
このとき大切なのは、
「5年生なのに3年生の勉強をしている」
ではなく
「次の学びに必要な土台を、現在地から積み上げている」
と考えることです。
基礎となる内容を丁寧に学び直すことで、「分かる」「自分でできる」という経験を積み、その後の学習につながることがあります。
「どこまで戻るか」ではなく、「どこにつなげるために、この内容を学ぶのか」を考えることが重要です。
元・特別支援学級担任として大切にしてきたこと
私自身の経験から
私自身、児童の実態を見ながら、下学年の内容を取り入れることが適切だと判断した経験があります。
その際に大切にしていたのは、「今の学年が難しいから下げる」という考え方ではありません。
本人はどうしたいのか。保護者は何を願っているのか。現在の学習状況はどうか。この学習が1年後、数年後に何につながるのか。
これらを考え、学校の考えを丁寧に説明し、本人・保護者・学校が共通理解を持ったうえで、その子にとってよりよい学びを選択することを大切にしてきました。
下学年の学習を検討するときの5つの確認
- □ 当該学年の学習を基本として検討したか
- □ つまずきの原因と現在の学習状況を把握したか
- □ 支援・教材・合理的配慮で対応できないか検討したか
- □ 本人・保護者の願いと短期・長期の目標を踏まえたか
- □ なぜその内容を学ぶのか、学校として説明できるか
まとめ|「学年」ではなく、その子の次の学びにつながるかを見る
特に自閉症・情緒障害学級では、当該学年の学習を基本として考えることが大切です。
そのうえで、児童の実態や障害による困難、支援方法、本人・保護者の願い、短期・長期の見通しを踏まえ、必要に応じて特別の教育課程を慎重に検討します。
本人の願い + 保護者の願い + 実態把握 + 教育的判断 + 将来の見通し
↓
その子にとって必要な学びを考える
教育課程は、「何年生の内容をやっているか」をそろえるためのものではありません。
その子の現在地から、次の学びや将来へどうつなげるか。そこを考えることが、特別支援学級の教育課程づくりでは重要だと考えています。
特別支援学級の教育課程でよくある疑問【FAQ】
最後に、特別支援学級の教育課程について特に迷いやすいポイントをQ&A形式で整理します。
Q1.特別支援学級は通常学級と同じ教育課程ですか?
A.小学校・中学校の学習指導要領を基本としますが、必要に応じて特別の教育課程を編成できます。
特別支援学級だから、最初からまったく別の教育課程になるわけではありません。
児童生徒の障害の状態や実態等を踏まえ、自立活動を取り入れたり、必要に応じて各教科の目標・内容を下学年のものに替えたりするなど、特別の教育課程を編成します。
Q2.特別支援学級では下学年の学習をしてもいいですか?
A.児童生徒の実態や教育的な必要性を踏まえ、特別の教育課程として検討することができます。
ただし、「勉強が苦手だから下学年」と単純に決めるものではありません。
特に自閉症・情緒障害学級では当該学年の学習を基本とし、支援方法、本人・保護者の願い、短期・長期の見通しなども踏まえて慎重に検討します。
Q3.自閉症・情緒障害学級では必ず当該学年を学ぶのですか?
A.当該学年の目標・内容を基本として考えますが、児童の実態によって特別の教育課程を編成することは可能です。
文部科学省の令和6年調査でも、小学校6年生の自閉症・情緒障害学級では69.8%が当該学年中心である一方、21.3%は下学年の目標・内容中心の教育課程となっています。
重要なのは、この数字を「自由に下学年へ変更してよい」という根拠にすることではなく、なぜその児童に特別の教育課程が必要なのかを明確にすることです。
Q4.自立活動は必ず時間割に入れる必要がありますか?
A.特別の教育課程を編成する特別支援学級では、自立活動を教育課程に取り入れます。
自立活動は学校の教育活動全体を通じて行いますが、文部科学省は、特別の教育課程を編成しているにもかかわらず自立活動の時数が「0」であることは想定していないとしています。
一方、「全国一律に週○時間」と決められているわけではありません。児童生徒の実態や教育課程全体を踏まえて設定します。
参考:文部科学省「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用に関するQ&A」
Q5.自立活動と教科の授業はどう区別しますか?
A.それぞれの「目標」を明確にします。
例えば算数では数量や計算など、算数として育てる力があります。
一方、算数の時間に「分からないときに援助を求める」という自立活動の目標を関連させることもできます。
教科として何を学ぶのか、自立活動としてどのような困難の改善・克服を目指すのかを区別したうえで関連付けることが大切です。
Q6.特別支援学級の児童は交流学級で授業を受けてもいいですか?
A.はい。児童生徒の実態や教育的ニーズを踏まえて交流及び共同学習を行います。
体育・音楽・図工などを交流学級で学ぶこともありますが、「交流できるから参加する」のではなく、その場で何を学ぶのかを考えることが重要です。
交流学級で学ぶ内容、必要な支援、本人の負担などを含めて教育課程の中に位置付けます。
Q7.特別支援学級の時間割はどう作ればいいですか?
A.児童一人ひとりの教育課程を整理してから、学級全体の時間割へ重ねていきます。
基本的には、
交流学級など固定時間を確認
↓
児童ごとの教科・内容を整理
↓
自立活動を位置付ける
↓
一緒に学べる時間を作る
↓
教師一人で成立するか確認
という順序で考えると整理しやすくなります。
Q8.教育課程と個別の指導計画はどうつながりますか?
A.教育課程で定めた学びを、一人ひとりの実態・目標・具体的な指導へ落とし込むのが個別の指導計画です。
教育課程
↓
児童生徒の実態
↓
個別の指導計画
↓
日々の授業・支援
↓
評価・見直し
教育課程も個別の指導計画も、一度作成したら固定するものではありません。児童生徒の成長や学習状況を評価し、必要に応じて次の指導へつなげていきます。
まとめ|特別支援学級の教育課程は「その子に必要な学び」から考える
特別支援学級の教育課程には、当該学年、下学年、特別支援学校(知的障害)の各教科、自立活動、交流及び共同学習など、さまざまな選択肢があります。
しかし、制度や時間割だけを見ていても答えは出ません。
「この子に今、何を学ぶ必要があるのか」
「その学びは、次の成長や将来にどうつながるのか」
ここから教育課程を考えることが大切です。
私自身、知的障害学級、自閉症・情緒障害学級を担任する中で、教育課程や時間割に何度も悩んできました。
その経験から感じるのは、制度を正しく理解することと、目の前の子どもの姿を見ることの両方が必要だということです。
本人の願い、保護者の願い、現在の実態、将来の姿を踏まえながら、学校として「なぜこの教育課程なのか」を説明できる形にしていくことが大切だと考えています。


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