新年度が始まり、初めて特別支援学級の担任になった先生の中には、

「まず何から確認すればいいんだろう?」

「教材、時間割、自立活動、個別の指導計画……全部やらないといけないの?」
と不安を感じる方も多いと思います。
私も初めて特別支援学級を担当したときは、何を優先すればよいのか分からず、前年度の資料を見たり、周りの先生に聞いたりしながら一つずつ準備していきました。
ただ、最初から時間割も教材も個別の指導計画も、すべて完成させる必要はありません。
最初に大切なのは、「その子がどのような場面で学びやすく、どのような場面で困りやすいのか」を知ることです。
4月1日に優先して確認したいこと
- 児童の実態と、前年度までの支援
- 健康・安全面で学校として共有すべき情報
- 今年度の教育課程と教材
- 交流学級との時間割・連携方法
- 教室環境と支援体制
- 自立活動と個別の指導計画の方向性
この記事では、初めて特別支援学級を担任する先生に向けて、年度初めに確認しておきたいことを、実際の学校現場での流れに沿って整理します。
① まずは児童理解──「どんな子?」ではなく「どこで困る?」を見る
特別支援学級の年度初めで、私が最も大切だと考えているのが児童の実態を把握することです。
障害名や診断名だけを見ても、必要な支援は分かりません。同じ障害名であっても、得意なこと、苦手なこと、安心できる環境、学習の進み方、コミュニケーションの方法は一人ひとり違います。

前年度の資料から確認する
- 個別の指導計画
- 個別の教育支援計画
- 通知表や指導要録などの記録
- 前年度の時間割
- 使用していた教科書・教材・プリント
- 交流学級への参加状況
- 有効だった支援や環境調整
個別の指導計画と個別の教育支援計画は同じものではありません。
個別の指導計画は、学校での具体的な指導目標・指導内容・支援方法・評価などを整理するものです。一方、個別の教育支援計画は、教育だけでなく、必要に応じて福祉・医療などとの連携も含め、中長期的な支援を整理するものです。
両方を確認しながら、今年度の指導に引き継ぐべきことを整理していきます。
前担任・交流学級担任・支援員から聞く
書類だけでは分からないこともたくさんあります。前年度に関わっていた先生から、できるだけ具体的な場面を聞いておくと、新年度の支援を考えやすくなります。
- どんな場面では一人で取り組めていたか
- どんな場面で困りやすかったか
- 困ったとき、どのような支援が役立っていたか
- 言葉・絵カード・文字・ジェスチャーなど、伝わりやすい方法は何か
- 音・におい・人の多さなど、環境面で配慮していたことはあるか
- 休憩やクールダウンはどのようにしていたか
- 交流学級では、どの教科・活動にどのように参加していたか
「落ち着きがありません」「こだわりがあります」といった抽象的な情報だけでなく、「いつ・どこで・何が起きたときに困りやすいのか」まで確認できると、支援につなげやすくなります。
健康・安全面の情報も最優先で確認する
学習面より先に確認しておきたいのが、学校生活に関わる健康・安全上の情報です。
- アレルギーや持病など、学校として共有すべき健康情報
- 服薬・医療的ケア等がある場合の校内での対応手順
- 緊急時の連絡・対応方法
- 登下校や引き渡しなどで特別な確認が必要か
- 校内で特に安全面への配慮が必要な場面があるか
具体的な対応は、養護教諭や管理職、校内の担当者と確認し、学校で定められた手順に沿って共有しておきます。
保護者の願いも確認する
必要に応じて早い時期に保護者とも話し、家庭での様子や今年度の願いを確認します。
たとえば、
- 「自分から困ったことを伝えられるようになってほしい」
- 「身支度を少しずつ自分でできるようになってほしい」
- 「安心して学校へ通ってほしい」
- 「友達と関わる方法を増やしてほしい」
などです。
保護者の願いをそのまま学校の目標にするのではなく、学校で把握した実態や教育課程と照らし合わせながら、今年度の指導目標を考えていきます。
② 教育課程と教材を確認する──障害名だけで決めない
次に確認したいのが、今年度どのような内容を学習するのかという教育課程と、それに使用する教材です。
特別支援学級でも、基本となるのは小学校の教育課程です。ただし、児童の実態に応じて、特別支援学校の学習指導要領を参考にした特別の教育課程を編成する場合があります。
そのため、
「自閉症・情緒障害学級だから通常学級と同じ教材」
あるいは、
「知的障害学級だから下学年の教材」
と障害種だけで教材を決めるのではなく、その児童に設定されている教育課程と指導目標、現在の学習状況を確認することが大切です。

教材を見るときのポイント
- 今年度、その児童が学習する目標・内容は何か
- 現在どこまで理解しているか
- 一度に扱う問題量は適切か
- 読む・書く・聞く・話すなど、どこに負担があるか
- 具体物・図・写真・文字など、どの手掛かりが理解につながりやすいか
- ICTを使うことで参加しやすくなる場面はあるか
- 補助教材を使う場合、その教材で何を学ばせたいのか
たとえば、「書く量が多いと学習内容を考える前に疲れてしまう」という児童なら、記述量を調整したり、選択肢やICTを活用したりすることが考えられます。
逆に、書くこと自体が指導目標なのであれば、単純に記述を減らせばよいわけではありません。
「何が苦手か」だけではなく、「何を学ばせたいのか」までセットで考えることが教材選びのポイントです。
教材の注文期限も確認する
- 教科書・副教材の使用状況
- 昨年度の注文履歴
- 学校で使用できる予算
- 教材注文の締め切り
- 校内にある教材・教具
このあたりは早めに確認しておくと、始業後に慌てにくくなります。
③ 交流学級と時間割を確認する
特別支援学級では、児童によって交流及び共同学習への参加状況が異なるため、時間割の調整が複雑になりやすいです。
まずは、交流学級の担任と情報を共有し、「どの時間に・どのように学ぶのか」を整理します。
交流学級について確認すること
- どの教科・活動へ参加する予定か
- その時間にどのような学習内容を扱うか
- 教材や持ち物はどうするか
- 必要な配慮や支援を誰が担当するか
- 困ったときにどこへ戻るか、誰に伝えるか
- 行事・学年集会・係活動などへの参加方法

年度初めは、交流学級の先生も非常に忙しい時期です。それでも、交流学級の予定が分からないと支援学級の時間割も組めません。できれば校内で「いつまでに予定を共有するか」を共通理解しておくと、毎週の調整がかなり楽になります。
支援学級の時間割を作る
交流学級の予定が見えてきたら、特別支援学級で学習する時間を組み立てます。
- 教科の学習時間をどこに置くか
- 自立活動をどこに位置付けるか
- 異学年を同時に指導する時間をどうするか
- 他の特別支援学級と一緒に活動する時間があるか
- 移動が続き過ぎたり、本人の負担が大きくなったりしていないか
- 学校行事や学年活動へ参加しやすい時間割になっているか
4月1日の時点で完全な時間割を作れない学校もあります。まず大枠を作り、交流学級の時間割や児童の様子を確認しながら調整していけば大丈夫です。
④ 教室環境と支援体制を整える
特別支援学級では、教材だけでなく環境そのものが支援になることがあります。
ただし、すべての児童にパーテーションが必要だったり、教室から掲示物をなくしたりすればよいわけではありません。
一人ひとりの学び方や困り方を踏まえて、必要な環境調整を考えます。
教室環境で確認すること
- 黒板や教師を見やすい座席になっているか
- 周囲の人や物が気になりやすい場合、座席配置を調整できるか
- 教材や持ち物の置き場所が分かりやすいか
- 予定や手順を確認する手掛かりが必要か
- 休憩や気持ちを整える場所が必要か
- 音・光・においなど、学習を妨げる刺激がないか
- 安全に移動できる動線になっているか
クールダウンスペースを設ける場合も、「困った行動をしたら入る場所」ではなく、必要なときに休憩したり気持ちを整えたりするための選択肢として位置付けます。
支援員・交流学級担任・校内の先生と役割を共有する
- 児童の現在の目標
- 有効だった支援
- 困ったときの対応
- どこまで待つか、どのタイミングで支援するか
- 交流学級で必要な配慮
- 情報をどのように共有するか
支援員さんに「この子をお願いします」と任せるだけではなく、何を目標に、どのような支援をするのかを担任と共有することが大切です。
⑤ 自立活動の準備──「何をする?」より先に「何に困っている?」を考える
初めて特別支援学級を担任した先生が特に迷いやすいのが自立活動です。
自立活動は、単にSSTやゲームをする時間ではありません。
障害による学習上または生活上の困難を改善・克服するために必要な力を育て、心身の調和的な発達の基盤を培うための指導です。
内容は次の6区分27項目で整理されています。
- 健康の保持
- 心理的な安定
- 人間関係の形成
- 環境の把握
- 身体の動き
- コミュニケーション
ただし、27項目を順番に教えたり、すべて扱ったりするわけではありません。
基本となる流れは、
- 児童の実態を把握する
- 学習上・生活上の困難を整理する
- 指導目標を考える
- 6区分27項目から必要な項目を選ぶ
- 必要な項目を関連付ける
- 具体的な活動や教材を決める
です。
つまり、「SSTカードがあるからSSTをする」ではなく、「この子のこの困りごとに対して、SSTという方法が使えそうだから取り入れる」という順番で考えます。
自立活動で考えられる活動の例
- 予定変更を確認し、自分に合った方法で次の行動へ移る練習
- 自分の体調や疲れに気づき、休憩や援助を求める練習
- 感情の状態に気づき、自分に合った落ち着き方を探す活動
- 相手とのやり取りを練習するSST
- 絵カード・文字・AACなど、自分に合ったコミュニケーション手段を使う練習
- 感覚の特徴に気づき、自分で環境を調整したり支援を求めたりする活動
- 姿勢、移動、手指の操作など、生活や学習に必要な動きを練習する活動
同じゲームやSSTを行っていても、児童によって目標は異なります。
たとえば同じ「すごろく」を使っていても、ある子は「順番を確認する」、別の子は「分からないときに質問する」、別の子は「気持ちを言葉やカードで伝える」といったように、個別の指導目標は変わります。
楽しい活動=自立活動ではなく、個別の指導目標と結びついているかを確認することが重要です。
自立活動の具体例をさらに探したい方は、こちらの記事も参考にしてください。

私も初めて自立活動を担当した頃は、まず「何の活動をしよう?」と教材から考えていました。今は、子どもの困りごとや目標を整理してから、活動を選ぶようにしています。活動そのものより、「なぜこの活動をするのか」が大切です。
⑥ 個別の指導計画──まずは「実態→目標→手立て」で考える
年度が始まると、多くの学校で個別の指導計画を作成・更新します。
初めて担当すると、
- 「目標はどう書けばいい?」
- 「支援の手立てには何を書く?」
- 「自立活動の6区分27項目とどう結び付ける?」
と迷うと思います。
ここでも、昨年度の文章をそのまま写すのではなく、まず現在の実態から考えます。
個別の指導計画を考える基本の流れ
- 現在できていること・困っていることを整理する
- 背景として考えられることを整理する
- 今年度大切にしたい目標を絞る
- 具体的な支援方法を考える
- どのような姿を見取れば評価できるか考える
目標は、必ず「週○回」「○分間」と数値化しなければならないわけではありません。
大切なのは、実際の児童の姿を観察して、指導の成果を振り返れる表現になっていることです。
たとえば、
実態
予定が急に変わると、次に何をすればよいか分からなくなり、活動への参加が難しくなることがある。
目標例
予定が変更されたときに、変更内容を確認し、必要に応じて教師へ質問しながら次の活動へ移る。
手立て例
変更前後の予定を視覚的に示し、分からない場合に使える質問の仕方を一緒に確認する。
のように、実態・目標・手立てがつながっていると、指導もしやすく、評価もしやすくなります。
📋 個別の指導計画の文例を探している先生へ
個別の指導計画 文例集・コンプリートセット
1〜6年生と自立活動に対応した文例を、目標や支援方法を考える際の参考としてまとめています。文例をそのまま当てはめるのではなく、目の前の児童の実態に合わせて調整して使える構成です。
文例集の詳しい内容を見る⑦ 4月1日に全部完成させなくていい
ここまで読むと、
「結局、やることがたくさんある……」
と感じるかもしれません。
しかし、4月1日の段階で児童のことを完全に理解することはできません。
書類から分かることと、実際に一緒に過ごして初めて分かることは違います。
年度初めは、まず、
- 安全に関わることを確認する
- 昨年度までの情報を整理する
- 今年度の教育課程と大まかな時間割を確認する
- 教室環境を準備する
- 子どもと実際に関わりながら実態把握を進める
ところまでできれば十分です。
授業を始めた後に、
「思っていたより一人でできる」
「この方法では分かりにくそうだ」
「この環境だと集中しやすい」
と分かることもあります。
その情報を使って、時間割・教材・自立活動・個別の指導計画を少しずつ調整していきます。
年度初めの引き継ぎに使える無料メモ
前担任から話を聞くときは、あとから確認できるよう、必要な情報を項目ごとに整理しておくと便利です。
年度初めの情報整理に使える「特別支援学級 引き継ぎメモ」を無料で置いています。必要に応じてご活用ください。
まとめ|4月1日は「完成させる日」ではなく「情報を集める日」
初めて特別支援学級を担任すると、教材、時間割、自立活動、個別の指導計画など、初めて聞く言葉や仕事が一気に増えます。
だからこそ、最初からすべてを完璧にしようとするのではなく、まずは目の前の児童を知るための情報を集めることから始めてください。
私が年度初めに特に大切にしている順番は、
- 児童の実態を知る
- 安全面を確認する
- 教育課程・教材を確認する
- 交流学級と時間割を調整する
- 教室環境と支援体制を整える
- 実態をもとに自立活動と個別の指導計画を考える
という流れです。
実際に子どもたちと過ごし始めれば、書類だけでは分からなかったことがたくさん見えてきます。
その姿を見ながら、「この子の困りごとを少しでも減らすには、何ができるだろう」と考え、必要な支援を一つずつ組み立てていくことが、特別支援学級担任の大切な仕事だと私は考えています。

まずは子どもたちのことを知るところから。実際の姿を見ながら、必要な支援を一緒に探していけば大丈夫です。
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