
「自立活動の実践例を知りたい」
「友達とのやり取りが苦手な子に、どんな活動をしたらいい?」
「コミュニケーションを楽しく練習できるゲームはないかな?」
特別支援学級で自立活動を担当していると、こうした悩みを感じることがあります。
コミュニケーションに関する困り方は、子どもによってさまざまです。
- 自分から友達に話しかけることに不安がある
- 相手の話を聞き続けることが難しい
- 自分の気持ちや考えを伝えにくい
- 相手に伝わる言葉を選ぶことが難しい
- 友達と考えが違ったときに困ってしまう
- 言葉以外の方法なら伝えられることがある
だからこそ、「コミュニケーションゲームをやればよい」と活動から考えるのではなく、目の前の子どもがどこで困っているのかを捉え、その子に必要な力や方法につながる活動を選ぶことが大切です。
この記事では、自立活動の中でもコミュニケーションに関わる実践に焦点を当て、小学校の教室で取り入れやすい10のゲーム・活動を紹介します。
活動の「ねらい」「進め方」だけでなく、コミュニケーションが苦手な子への支援、言葉以外の参加方法、活動後の振り返りまで具体的に解説します。
自立活動の6区分27項目全体から実践例を探したい方は、こちらの記事も参考にしてください。
自立活動の「コミュニケーション」とは?
自立活動の内容は、次の6区分27項目で整理されています。
- 健康の保持
- 心理的な安定
- 人間関係の形成
- 環境の把握
- 身体の動き
- コミュニケーション
このうち「コミュニケーション」には、コミュニケーションの基礎的能力、言葉の受け取りや表出、コミュニケーション手段の選択、状況に応じたコミュニケーションなどに関する内容があります。

ただし、自立活動では「今日はコミュニケーションの区分だけを指導する」と機械的に分けるわけではありません。
例えば、「友達に自分の気持ちを伝える」という活動であれば、コミュニケーションだけでなく、
- 相手との関わり方を考える「人間関係の形成」
- 自分の気持ちに気づき、行動を調整する「心理的な安定」
- 相手や場面の状況を捉える「環境の把握」
など、複数の区分・項目が関連することがあります。
大切なのは「どの区分のゲームをするか」ではなく、「この子のどんな困り感を減らしたいのか」から、必要な内容を選ぶことです。
コミュニケーションは「話すこと」だけではない
コミュニケーションというと、「上手に話す」「友達に自分から話しかける」といった姿をイメージしがちです。
しかし、コミュニケーションの方法は言葉だけではありません。
- 指差しで選ぶ
- 絵カードを使う
- ジェスチャーで伝える
- 文字で書く
- 相手の話を聞く
- 困ったときに助けを求める
これらも大切なコミュニケーションです。
「話せたか」だけで評価せず、その子に合った方法で相手とやり取りできたかを見ることが重要です。
自立活動の「コミュニケーション」について、ねらい・指導案の考え方・6区分27項目との関係から整理したい方はこちらをご覧ください。
自立活動のコミュニケーションゲーム・実践例10選
ここからは、小学校の教室で取り入れやすい10の実践例を紹介します。
すべて実施する必要はありません。子どもの実態と育てたい力を照らし合わせ、必要な活動を選んでください。
| 活動 | 主なねらい |
|---|---|
| 伝言ジェスチャー | 見る・非言語で伝える |
| なかま集め | 質問する・答える |
| ことばでロボット | 分かりやすく伝える |
| みんなで合わせましょう | 考えの違いに気づく |
| 協力お絵描きリレー | 相談する・協力する |
| 自己紹介ビンゴ | 共通点を見つける・やり取りする |
| わたしの〇〇ベスト3 | 自分の考えを整理して伝える |
| 人間知恵の輪 | 相談する・協力して問題を解決する |
| こころカルタ | 気持ちや考えを表現する |
| すきなのどっち? | 選ぶ・自分の好みを伝える |
1.伝言ジェスチャーゲーム|見る・伝える
言葉を使わず、ジェスチャーや体の動きを使ってお題を伝えるゲームです。

【ねらい】
- 相手の動きに注目する
- 自分の考えをジェスチャーで表現する
- 言葉以外にも伝える方法があることを知る
【準備するもの】
- 動物・スポーツ・食べ物などの簡単なお題カード
【進め方】
- 教師がお題カードを1枚見せます。
- 子どもは声を使わず、動きでお題を表現します。
- 次の子がその動きを見てまねし、順番に伝えていきます。
- 最後の子がお題を考えます。
人数が少ない支援学級なら、伝言形式にせず、教師と子どもが交互に「表現する人」「考える人」になっても構いません。
正解することより、「どこを見た?」「どうしたらもっと伝わりそう?」と伝え方を一緒に考えることを大切にします。
人前でジェスチャーをすることに強い抵抗がある子には、無理にさせず、カードを選ぶ側や答える側から参加できるようにしましょう。
2.なかま集めゲーム|質問する・答える
友達に質問しながら、自分と同じものが好きな人や、違う答えの人を見つける活動です。

【ねらい】
- 相手に質問する経験を積む
- 自分のことを相手に伝える
- 自分と友達の共通点や違いに気づく
【活動例】
教師が「好きな果物を友達に聞いてみよう」とお題を出します。
「好きな果物は何ですか?」
「私はいちごが好きです」
などとやり取りします。
「同じ人を必ず3人見つける」などの条件をつけると、答えによっては一人だけ残ってしまうことがあります。
そのため、「同じ人がいたら見つけよう」「違う答えも見つけよう」程度にしておくと、誰かが取り残されにくくなります。
自分から質問することが難しい子には、質問カードを見ながら話したり、教師と一緒に聞きに行ったり、最初は二人組で取り組んだりする方法があります。
3.ことばでロボットゲーム|分かりやすく伝える
一人が「ロボット役」、もう一人が「案内役」になり、言葉の指示を聞きながら動くゲームです。

【ねらい】
- 相手に分かりやすい言葉を考える
- 相手の指示を聞いて行動する
- 分からないときに聞き返す
【進め方】
- 二人一組になります。
- 一人がロボット役、もう一人が案内役になります。
- 案内役が「前に2歩」「右を向く」「赤い輪の前で止まる」など、言葉で指示を出します。
- ロボット役は、聞いた指示に合わせて動きます。
- 終わったら役割を交代します。
安全面を考え、目隠しをせずに行います。
「あっち」「もう少し」ではなく、「右に1歩」「机の横で止まる」のように具体的に伝えると、相手に分かりやすくなることを体験できます。
「どんな言葉が分かりやすかった?」
「分からないときはどうした?」
と振り返ると、日常のコミュニケーションにつなげやすくなります。
4.みんなで合わせましょうゲーム|友達との違いに気づく
お題を聞いて、それぞれが思い浮かべた答えを同時に発表するゲームです。

【ねらい】
- 自分の考えを表現する
- 友達の考えに注目する
- 同じお題でも人によって答えが違うことに気づく
例えば、
- 「夏に食べたいものといえば?」
- 「好きな動物といえば?」
- 「休み時間にしたいことといえば?」
などのお題を出し、「せーの」で答えます。
答えがそろうと盛り上がりますが、本当のねらいは全員の答えを同じにすることではありません。
「私はアイスだけど、〇〇さんはスイカなんだね」のように、友達との共通点や違いに気づくことを大切にします。
5.協力お絵描きリレー|相談する・協力する
数人で一枚の絵を完成させる活動です。

【ねらい】
- 友達と相談する
- 自分の考えを伝える
- 友達の考えを受け止める
- 役割や順番を意識して活動する
【準備するもの】
- 大きめの紙
- クレヨンや色鉛筆
- 「海の中」「動物園」などのお題
【進め方】
- グループで描くテーマを確認します。
- 最初に「何を描きたい?」と簡単に相談します。
- 一人ずつ絵を描き加えていきます。
- 完成後、みんなで作品を見ます。
教師がすぐ役割を決めるのではなく、困ったときに「どうやって決めたらいいかな?」と支援し、子ども同士のやり取りにつなげます。
6.自己紹介ビンゴ|質問する・共通点を見つける
「好きな色」「好きな食べ物」「好きな遊び」などについて友達と質問し合い、共通点や違いを見つける活動です。
【ねらい】
- 友達へ質問するきっかけを作る
- 自分の好きなことを相手へ伝える
- 友達との共通点や違いに気づく
大切なのは、「全員に質問する」「必ずビンゴにする」ことではありません。
ペアで行う、教師と一緒に質問する、カードを指差す、文字で伝える、見学するなど、その子に合った参加方法を選べるようにします。
無料プリントや45分授業の進め方はこちらの記事で詳しく紹介しています。
7.わたしの〇〇ベスト3|自分の考えを整理して伝える
「好きな給食」「好きな遊び」「行ってみたい場所」など、一つのテーマについて自分なりのベスト3を考える活動です。
【ねらい】
- 自分の好みや考えに気づく
- 考えを整理する
- 自分に合った方法で相手に伝える
- 友達の考えを知る
必ず「3つ」考えたり、みんなの前に立って発表したりする必要はありません。
一つだけ選ぶ、絵や写真から選ぶ、紙に書いて見せる、教師に代読してもらうなど、子どもに合わせて参加方法を調整できます。
活動例やテーマの作り方はこちらです。
8.人間知恵の輪|相談する・協力する
数人で手をつなぎ、絡まった状態から相談しながら輪へ戻っていく協力ゲームです。
【ねらい】
- 友達と相談する
- 相手の動きを見ながら自分の動きを調整する
- 言葉や身振りを使って方法を伝える
- グループで一つの課題に取り組む
身体接触が苦手な子に無理に参加させる必要はありません。
「どこを動かしたらよさそうか伝える」「外から見てヒントを出す」など、直接手をつながない参加方法も考えられます。活動時は転倒や無理な姿勢にも注意します。
人間知恵の輪の具体的なやり方はこちらです。
9.こころカルタ|気持ちや考えを知る
気持ちや経験について書かれたカードをきっかけに、自分のことを話したり、友達の話を聞いたりする活動です。
【ねらい】
- 自分の気持ちや経験に気づく
- 話したいことを自分なりの方法で伝える
- 友達の感じ方や考え方を知る
気持ちや経験に関する質問には、答えたくない内容が含まれることもあります。
「パスしてもよい」「理由まで話さなくてよい」ことを最初に確認しておくと、参加方法を自分で選びやすくなります。
こころカルタを使った実践はこちらで詳しく紹介しています。
10.すきなのどっち?|「選ぶ」からコミュニケーションを始める
「犬と猫ならどっちが好き?」「カレーとラーメンならどっち?」のように、二つの選択肢から好きな方を選ぶシンプルな活動です。
【ねらい】
- 自分の好みに気づく
- 選んだものを相手へ伝える
- 友達の好みを知る
- 慣れてきたら理由や質問へやり取りを広げる
言葉で答えることが難しい場合は、写真やイラストを指差すだけでも参加できます。
「どうして?」と理由を求めることが負担になる子には、選ぶだけで終えて構いません。
具体的な授業方法はこちらの記事で紹介しています。
🃏 二者択一からコミュニケーションを始めたい方へ

「すきなのどっち?」カード50枚+指導書
二つの選択肢から自分の好きな方を選び、相手に伝える活動に使えるカード教材です。まずは指差しやカード選択から始め、慣れてきたら理由や質問へ発展させることもできます。
自立活動で使えるコミュニケーション教材2選
ゲームだけでなく、カード教材を使うと、気持ちや実際の学校生活の場面について落ち着いて考えることができます。
1.気持ちカード|感情を選んで伝える
自分の気持ちを言葉だけで説明するのが難しい子には、表情や感情の言葉が描かれたカードが役立つことがあります。
例えば、活動の最初や振り返りで、
「今の気持ちに近いものはどれ?」
と問い、カードから選んでもらいます。
理由まで話せる場合は聞いてもよいですが、必ず理由を言わせる必要はありません。
まずは、自分の気持ちに気づき、本人が使いやすい方法で相手に伝えられたことを大切にします。
関連する教材はこちらです。
2.場面カード|「こんなときどうする?」を考える
コミュニケーションの練習を学校生活へつなげるために使いやすいのが、具体的な場面を示したカードです。
例えば、
- 友達の物を借りたい
- 廊下で友達とぶつかった
- 遊びに入りたい
- 嫌なことをされた
- 順番を代わってほしい
といった場面を見せて、
「この子はどうしたらいいかな?」
「どんな言い方ができそう?」
「ほかの方法もあるかな?」
と考えます。
「正解はこの言葉だけ」と一つの言い方を覚えさせるのではなく、その場で使えそうな複数の方法を一緒に考えることが大切です。
無料で使える感情・場面カードはこちらの記事でも紹介しています。
🃏 学校生活の具体的な場面から考えたい方へ

SSTカード「こんなときどうする?」
友達との関わりや学校生活などの具体的な場面を見ながら、「どんな気持ち?」「どうしたらいい?」と考えるためのSST教材です。
自立活動の実践を「ゲームをして終わり」にしない4つのポイント
コミュニケーションゲームは、自立活動の一つの手段です。
活動そのものを実施することが目的にならないよう、次の視点を大切にします。
① 子どもの実態からねらいを決める
まず、「このゲームで何をするか」ではなく、子どもの困り感を整理します。
例えば、同じ「友達とのコミュニケーションが苦手」に見えても、
- 声をかけるタイミングが分からない
- 言いたい言葉が思いつかない
- 相手の話を聞き続けることが難しい
- 断られたときの気持ちの切り替えが難しい
- 場面に応じて言い方を変えることが難しい
では、必要な支援は違います。
「なぜその行動になるのだろう?」と子どもの困り感を考え、そこから目標を設定することが、自立活動の出発点です。
② 参加方法を一つに限定しない
コミュニケーションの活動だからといって、全員に同じ方法で話させる必要はありません。
- 言葉で話す
- 選択肢から選ぶ
- カードを指差す
- 教師と一緒に伝える
- 書いて伝える
- ジェスチャーやAACを使う
など、その子が使いやすい方法を用意します。
「自分から大きな声で発表できた子だけが成功」という活動にしないことが大切です。
③ 活動中の姿を観察する
自立活動では、ゲームの勝ち負けよりも活動中の子どもの姿に大切な情報があります。
- どの場面なら自分から関われたか
- どんな支援があると参加できたか
- どの場面で困っていたか
- 友達の言葉や行動をどのように受け止めたか
- 困ったときにどう行動したか
こうした姿を観察することで、次の指導内容や支援方法が見えてきます。
④ 振り返りから日常生活へつなげる
活動後には、短い振り返りを行います。
「できたことは何だった?」
「どんな方法が分かりやすかった?」
「困ったときはどうした?」
「学校のどんな場面で使えそう?」
低学年や言葉での振り返りが難しい子なら、表情マークや選択式でも構いません。
例えば、ロボットゲームで「具体的に伝える」ことを練習したなら、
「図工で道具の場所を友達に教えるときにも使えそうだね」
と学校生活の場面へつなげます。
活動で学んだことを実際の生活場面へつなげていく視点が大切です。
ワークシートを使ってコミュニケーションを考える方法もある
コミュニケーションの練習は、ゲームだけで行う必要はありません。
具体的な場面をワークシートで見ながら、
- どんな気持ちか
- 何に困っているか
- どんな行動ができそうか
- どんな言葉や方法で伝えられそうか
を落ち着いて考える方法もあります。
✏️ SST・自立活動をプリントでも取り組みたい方へ
SST・自立活動ワーク19枚+教師用指導書
学校生活で起こりやすい場面や、気持ち・行動・コミュニケーションについて、子ども自身が考えられるワークをまとめています。ゲームで経験したことを、場面に置き換えて振り返る活動にも活用できます。
※この教材は支援級パックにも収録されています。
19枚セットの詳しい内容を見るまとめ|コミュニケーションの自立活動は「困り感」から選ぼう
今回は、自立活動の中でもコミュニケーションに関わる実践例として、10の活動を紹介しました。
- 伝言ジェスチャーゲーム|見る・伝える
- なかま集めゲーム|質問する・答える
- ことばでロボットゲーム|分かりやすく伝える
- みんなで合わせましょうゲーム|友達との違いに気づく
- 協力お絵描きリレー|相談する・協力する
- 自己紹介ビンゴ|質問する・共通点を見つける
- わたしの〇〇ベスト3|考えを整理して伝える
- 人間知恵の輪|相談する・協力する
- こころカルタ|気持ちや考えを知る
- すきなのどっち?|選ぶ・自分の好みを伝える
どの活動も、行うこと自体が自立活動の目的ではありません。
「この子はどんな場面で困っているのか」
「どんな力や方法があると、学校生活が少し過ごしやすくなるのか」
を考え、その目標につながる活動を選ぶことが重要です。
そして、言葉で話すことだけをコミュニケーションのゴールにせず、カード・指差し・文字・ジェスチャーなど、その子に合った方法も大切にしてください。
活動で経験した方法を実際の学校生活へ少しずつつなげていくことで、自立活動で学んだことを日常でも使いやすくしていきます。
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