「うちの子は、発達障害のグレーゾーンなのかもしれない」
「友達とのトラブルが多い」「授業中に落ち着きがないと言われる」「何度注意しても忘れ物が減らない」
小学生のお子さんにこのような姿があると、保護者の方は心配になるのではないでしょうか。
一方で、普段は友達と楽しく遊んでいたり、好きなことには集中できたりするため、「本当に支援が必要なのだろうか」と迷うこともあると思います。
私は小学校教員として子どもたちと関わり、特別支援学級でも長く担任を経験してきました。その中で、診断の有無にかかわらず、学校生活でさまざまな困りごとを抱える子どもたちと出会ってきました。
そこで感じてきたのは、大人から見ると「困った行動」に見えても、子ども自身が困っている場合があるということです。
例えば、友達にきつい言葉をかけてしまった子が、「本当のことを言っただけなのに」と納得できずにいることがあります。
その子には相手を傷つけるつもりがなかったとしても、言われた友達が傷ついたことも事実です。どちらか一方の気持ちだけを考えていては、解決が難しくなる場合があります。
この記事では、発達障害のグレーゾーンという言葉の意味を整理したうえで、私が教育現場で経験した5つの場面を紹介します。
さらに、それぞれの行動の背景として考えられることや、家庭と学校でできる具体的な支援について解説します。
最初にお伝えしたいのは、診断名をはっきりさせることだけが、支援の出発点ではないということです。まずは、目の前のお子さんが何に困っているのかを一緒に考えていきましょう。
※この記事の事例は、筆者が学校現場で関わった経験をもとに、個人が特定されないよう表現を整理したものです。紹介する行動から発達障害の有無を判断することはできません。背景や支援方法は一例であり、診断や治療を目的とした記事ではありません。
グレーゾーンの小学生とは?発達障害との違い
「グレーゾーン」は、正式な医学的診断名ではありません。
一般的には、発達障害に関連する特性や困りごとが見られるものの、診断基準を満たさない場合や、現時点では診断が確定していない場合などを表す言葉として使われています。
ただし、使う人によって意味が異なる曖昧な言葉でもあります。診断されていない子どもを、一律に「グレーゾーン」と分類できるわけではありません。
発達障害の診断がなくても困っている子どもはいる
小学校では、次のような子どもの姿が見られます。
- 友達と会話がかみ合わず、トラブルになりやすい
- 予定やルールが変わると混乱する
- 授業中に集中が続かず、席を離れる
- 一度に複数の指示を受けると動けなくなる
- 忘れ物が多く、持ち物を整理することが難しい
- 読む、書く、計算するなど、特定の学習に強い負担を感じる
こうした行動は、発達障害のある子にも、診断のない子にも見られることがあります。また、睡眠不足や不安、学習内容の難しさ、周囲の環境など、さまざまな要因によって起こる場合もあります。
そのため、一つの行動だけで「発達障害だ」「グレーゾーンだ」と判断することはできません。
私が大切にしているのは、診断名や行動の名前ではなく、どのような場面で、何に困っているのかを見ることです。
グレーゾーンと境界知能は同じではない
「境界知能」という言葉と混同されることもありますが、同じ意味ではありません。
境界知能は、知的機能の水準に関して使われる言葉です。一方、発達障害のグレーゾーンという表現は、発達特性や診断の状況などに関して使われます。
知的機能の水準だけで、友達との関係や注意の向け方、気持ちの切り替えなどの特徴を説明できるわけではありません。
ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の違いについて詳しく知りたい方は、ASDとADHDの違いを解説した記事も参考にしてください。
グレーゾーンが気になる小学生に見られる5つの困りごと【教員の実体験】
ここからは、私が小学校で実際に関わった経験をもとに、子どもたちがつまずきやすい場面を5つ紹介します。
これらは「グレーゾーンの子どもに必ず見られる特徴」ではありません。診断の有無を判断するためのチェックリストでもありません。
同じような場面があっても、背景は一人ひとり異なります。お子さんの姿を理解するための参考として読んでいただければと思います。
① 相手の気持ちに気づかず、思ったことをそのまま言ってしまう
係活動を決めていたときのことです。
ある子が友達に、次のように伝えました。
「〇〇ちゃん、それだと字が汚くて読めないから変えてよ」
言われた友達は、悲しくなって泣き出してしまいました。
しかし、発言した子は困惑しています。
「本当のことを言っただけなのに……」
本人としては、係の仕事を進めるために、文字が読みにくいことを伝えたかったのかもしれません。
ところが、言われた相手には「字が下手だと責められた」「係を変われと言われた」と受け取られ、すれ違いが起きてしまいました。
ここで大人が「そんなことを言ったらダメでしょ」と注意するだけでは、本人は何が問題だったのか理解できない場合があります。
一方で、本人に悪気がなかったからといって、相手の傷ついた気持ちを軽く扱ってよいわけでもありません。
本人が伝えたかったことと、相手がどう受け取ったのか。その両方を整理することが大切です。

例えば、落ち着いた場面で次のように話します。
- 「文字が読みにくいと思ったんだね」
- 「でも、友達は自分の字を悪く言われたと感じたのかもしれないね」
- 「読みにくいことを伝えたいとき、ほかにどんな言い方があるかな?」
「もう少し大きく書いてもらえる?」「ここが少し読みにくいから、一緒に確認してもいい?」など、本人が使いやすい表現を一緒に考えます。
同時に、相手の子の気持ちも受け止め、必要に応じて大人が間に入ります。謝罪を無理に言わせることだけをゴールにせず、何が起こったのかを理解し、関係を修復する方法を考えます。
関連記事:小学生の友達トラブルへの対応|誰が悪いかより先に確認したいこと
言葉の言い換えを練習する場合は、ふわふわ言葉・ちくちく言葉の無料プリントと具体例も活用できます。
② ルールの変更を受け入れられず、強く怒ってしまう
ドッジボールをしていたときのことです。
友達が、前回とは違うルールで遊ぼうとしました。
すると、ある子が強い口調で反発しました。
「昨日はセーフだった!ルール違反だ!」
その後、ボールを投げることを拒否し、その場に座り込んでしまいました。
周囲の子どもから見ると、「少しくらいルールを変えてもいいのに」「自分の思い通りにならないから怒っている」と感じられるかもしれません。
しかし、本人にとっては、昨日まで正しかったルールが突然変わったように感じられた可能性があります。
ルールが決まっていることに安心感を持つ子にとって、予告のない変更は大きな負担になる場合があります。また、変更内容が十分に共有されていなければ、本人の疑問にも理由があります。
このような場面では、まず「いつ、誰が、どのようにルールを変更したのか」を確認することが重要です。
支援としては、次のような方法が考えられます。
- 遊ぶ前にルールを全員で確認する
- 前回との違いを言葉や図で説明する
- ルールを変えるときは、参加者の意見を聞く
- 気持ちが高ぶったときは、無理に参加を続けさせず落ち着ける時間を確保する
「ルールを守ることを大切にしている」という本人の思いは尊重しながら、みんなで相談してルールを変更することもあると伝えていきます。
なお、変更が苦手な子だけに我慢を求めるのではなく、周囲の子どもにも、ルールを共有することの大切さを伝えたいところです。
③ 授業中に突然立ち歩き、別のことを始めてしまう
算数の説明をしていたときのことです。
ある子が突然立ち上がり、教室の後ろにあるロッカーを探し始めました。
理由を尋ねると、次のように答えました。
「あ、消しゴムのカスを捨てたかったんだ」
ところが、その子の手には、消しゴムとは関係のない本がありました。
この様子だけを見ると、「授業を聞く気がない」「理由をごまかしている」と考えてしまうかもしれません。
しかし、本人の中では、最初に「消しゴムのカスを捨てたい」と思い、移動した先で別のものが目に入り、関心が移った可能性もあります。
もちろん、実際の理由は本人に確認しなければ分かりません。学習内容が難しかったり、長時間座っていることに負担を感じていたりすることも考えられます。
大切なのは、離席をした事実だけでなく、離席する前に何があったのか、何をしようとしていたのか、どのような声かけなら戻れたのかを確かめることです。
例えば、次のような工夫があります。
- 授業中に使う物の置き場所を分かりやすくする
- 説明を短く区切り、今することを明確にする
- 必要に応じて体を動かす機会をつくる
- 席に戻る際は、大声で叱るより次にする活動を具体的に示す
例えば、「座りなさい!」と繰り返す代わりに、「今は算数の問題を一つ解く時間だよ。席に戻って、最初の問題を一緒に確認しよう」と伝える方法があります。
座っていること自体を唯一の目標にするのではなく、学習に参加するために何が必要かを考えます。
④ 複数の指示を聞くと、何をすればいいか分からなくなる
授業中、教師が次のように指示しました。
「教科書を開いて、3ページの問題をノートにやって、終わったら先生に見せに来てください」
多くの子どもは、この指示を聞いて活動を始めます。
ところが、ある子は教科書を開いたまま動きませんでした。ノートは白紙のまま、時間だけが過ぎていきます。
このような姿を見ると、「話を聞いていなかったのでは」「やる気がないのでは」と考えてしまうことがあります。
しかし、実際には最初の指示は理解できても、その後の指示を覚えておくことが難しい場合があります。
また、「問題をノートにやる」という指示が、どこから書き始めればよいのか分からないという状態につながっている可能性もあります。
そんなときは、指示を細かく分ける方法が有効な場合があります。
例えば、最初は「教科書の3ページを開こう」と伝えます。できたら「1番の問題をノートに書こう」と次の指示を示します。
さらに、黒板や手元に次のような手順を書いておく方法もあります。
- 教科書の3ページを開く
- ノートに1番の問題をする
- 終わったら先生に見せる

このように、「何をするのか」「どこまでやればよいのか」を分かりやすくすることが、活動に取り組む助けになる場合があります。
家庭でも、宿題や身支度をするときには、まず一つの行動から伝えてみるとよいでしょう。
関連記事:発達障害の子に指示が通らない本当の理由|3段階で見極める対応法
⑤ 忘れ物が多く、ランドセルや持ち物を整理できない
翌日の時間割を合わせる場面でも、困っている子どもがいます。
教科書をランドセルに押し込んだため、筆箱や下敷きが曲がっていたり、連絡帳やプリントが底の方でクシャクシャになっていたりします。
必要な物を探していても見つからず、毎日のように忘れ物をしてしまうこともあります。
本人は「探しているけれど見つからない」と困惑しています。

このような姿に対して、「ちゃんと整理しなさい」「毎日確認しなさい」と注意しても、なかなか改善しない場合があります。
なぜなら、本人にとっては「整理する」「確認する」という行動そのものが難しい可能性があるからです。
持ち物を分類すること、決められた場所にしまうこと、必要な物を探すことなど、整理整頓には複数の力が必要になります。
そのため、具体的な手順を示すことが役立つ場合があります。
- ランドセルの中で入れる場所を決める
- プリント専用のファイルを用意する
- 翌日の持ち物を写真やチェックリストで確認する
- 最初は大人と一緒に準備し、慣れたら確認を少しずつ減らす
「忘れ物をしないように頑張ろう」という目標だけでは、何をすればよいのか分かりにくいことがあります。
「連絡帳はこのポケット」「プリントはこのファイル」と、行動を具体的にすることで、本人が取り組みやすくなるかもしれません。
忘れ物を本人の責任だけにせず、使いやすい仕組みを一緒につくることが大切です。
グレーゾーンの小学生への対応で大切にしたいこと
ここまで5つの場面を紹介しました。
一見すると、「友達にひどいことを言う」「わがままを言う」「授業を聞かない」「指示に従わない」「忘れ物を繰り返す」といった行動に見えるかもしれません。
しかし、子どもの側から見ると、違う景色が見えてくることがあります。
| 周囲から見える姿 | 考えられる困りごと | 支援の方向性 |
|---|---|---|
| 友達にきつい言葉を言う | 伝え方や受け取られ方の違いに気づきにくい | 伝えたい内容と言い方を分けて考える |
| ルール変更に怒る | 変更の理由や見通しが分からない | 変更内容を事前に共有する |
| 授業中に立ち歩く | 注意が移る、学習に参加しにくい | 環境や課題、動く機会を調整する |
| 指示を聞いても動かない | 複数の指示を保持しにくい | 指示を区切り、手順を示す |
| 忘れ物を繰り返す | 整理や確認の手順が分かりにくい | 置き場所や確認方法を決める |
もちろん、この表にある背景が、すべての子どもに当てはまるわけではありません。本人の話や実際の状況を確かめながら考える必要があります。
私は、特別支援教育では「みんなに同じ対応をすること」が、必ずしも公平な支援になるとは考えていません。
同じ活動に参加するために、ある子には短い指示が必要かもしれません。別の子には、見通しを示すことや静かな場所で考える時間が必要かもしれません。
必要な支援が一人ひとり違っていてもよいのです。
家庭でできる5つの支援方法
学校での困りごとを、家庭でもすべて解決しようとする必要はありません。
まずは、本人が困っている場面を一つ選び、負担の少ない方法から試してみてください。
① 一度にたくさんのことを伝えない
「宿題をして、明日の準備をして、お風呂に入ってね」と一度に伝えると、どこから始めればよいのか分からなくなる子もいます。
そんなときは、まず「宿題のノートを出そう」と一つだけ伝えてみます。
本人が取り組めたら、次の行動を伝えます。必要に応じて、することを紙に書いておく方法もあります。
大切なのは、何度も指示を繰り返すことよりも、本人に伝わる方法を探すことです。
② 持ち物や生活の流れを見えるようにする
毎日の準備が難しい場合は、写真やチェックリストを使う方法があります。
例えば、ランドセルに入れる物を机に並べて写真を撮り、それを見ながら準備する方法です。
文字だけのチェックリストでも分かりやすい子もいれば、写真や実物の方が使いやすい子もいます。
本人に合う方法を確かめながら、少しずつ自分で確認できる仕組みを整えていきます。
③ 気持ちを無理に言葉にさせない
友達とトラブルになったとき、「どうしてそんなことを言ったの?」「相手はどんな気持ちだったと思う?」と質問を重ねたくなることがあります。
しかし、気持ちが高ぶっているときや、自分の気持ちを言葉にすることが苦手な子にとっては、質問そのものが負担になる場合があります。
まずは落ち着ける時間をつくり、必要であれば「困った」「悲しかった」「怒っている」などの言葉やカードから選べるようにします。
話すことだけでなく、指差しや書くことなど、本人が使いやすい表現方法を認めることも大切です。
④ 予定やルールが変わるときは、理由と見通しを伝える
予定の変更が苦手な子には、「今日はいつもと違うよ」と伝えるだけでは不十分な場合があります。
「今日は雨が降っているから、外遊びの代わりに体育館で遊ぶよ」「昨日と違うのは、このルールだけだよ」というように、何が変わり、何が変わらないのかを具体的に説明します。
急な変更が避けられない場合は、気持ちを落ち着ける時間や、可能な範囲で選択できる方法を用意することも考えられます。
⑤ できなかったことより、困った理由を一緒に考える
例えば、忘れ物をした子に「また忘れたの?」と伝えるだけでは、次にどうすればよいのか分からないかもしれません。
「昨日はどこまで準備できた?」「何を探すのが難しかった?」と確認することで、次の支援を考えやすくなります。
ただし、本人が困りごとをうまく説明できない場合もあります。そのときは大人が一緒に準備をして、どの段階で手が止まるのかを確かめてもよいでしょう。
一度にすべてを改善しようとせず、まず一つの困りごとから取り組んでいくことをおすすめします。
グレーゾーンの小学生は、学校でどんな支援を受けられる?
「発達障害の診断がなければ、学校では支援してもらえないのでしょうか?」
このように心配される保護者の方もいると思います。
しかし、診断がついていないからといって、学校で困りごとへの対応を相談できないわけではありません。
文部科学省も、通常の学級に在籍する障害のある子どもについて、一人ひとりの実態に応じて指導内容や方法を工夫することを示しています。
まずは担任に「具体的な困りごと」を相談する
学校へ相談するときは、「うちの子はグレーゾーンだと思います」と伝えるだけでなく、具体的に困っている場面を共有すると、支援を考えやすくなります。
例えば、次のような伝え方です。
「家では、一度に何個もお願いすると途中で分からなくなってしまうことがあります。一つずつ伝えると取り組みやすいようです。学校でも指示の理解に困っている場面がないか、教えていただけるとありがたいです」
家庭でうまくいった方法を伝えることも、学校で支援を考えるための手がかりになります。
反対に、家庭では見られない困りごとが学校で起こっていることもあります。集団の人数、音や刺激の多さ、学習の進み方など、環境が違えば子どもの姿も変わるからです。
家庭と学校のどちらかが正しいと考えるのではなく、それぞれの場面での様子を共有することが大切です。
通常学級でも相談できる支援の例
学校の状況や本人の必要性によって異なりますが、次のような工夫を相談できます。
- 指示を短く区切る
- 手順を黒板や手元に示す
- 集中しやすい座席を一緒に考える
- 課題の量や取り組み方を調整する
- 予定の変更を事前に知らせる
- 友達とのトラブルの際に、大人が状況整理を手伝う
どの方法が適切かは、本人の困りごとや学級の状況に応じて考えます。必ずしもすべての支援が必要になるわけではありません。
特別支援教育コーディネーターにも相談できる
担任だけで対応を考えることが難しい場合は、校内の特別支援教育コーディネーターなどと連携する方法があります。
学校全体で情報を共有し、本人に必要な支援を考えることが大切です。
担任との面談で「校内の特別支援教育の担当の先生にも相談できますか」と尋ねてみてもよいでしょう。
通級指導教室や特別支援学級という選択肢もある
通常学級での工夫に加えて、通級による指導などを検討する場合もあります。
通級による指導は、通常の学級に在籍しながら、障害に応じた特別な指導を受ける仕組みです。
文部科学省の手引では、通級による指導の対象となるかどうかを判断する際、医学的な診断の有無だけにとらわれず、総合的に判断する必要があると示されています。
ただし、診断がない子ども全員が通級を利用できるという意味ではありません。本人の教育的ニーズや制度上の対象、地域の教育体制などを踏まえて検討されます。
特別支援学級についても、本人の状態や教育的ニーズ、本人・保護者の意向などを踏まえた就学相談や判断が必要です。
まずは通常学級でできる支援を考え、必要に応じて学びの場について相談することが大切です。
関連記事:通級とは?通級指導教室の基本と特別支援学級との違い
参考:文部科学省「障害に応じた通級による指導の手引 Q&A」
グレーゾーンかもしれないと思ったら、どこに相談する?
お子さんの発達について気になることがあっても、すぐに診断を受けるべきなのか、どこへ相談すればよいのか迷うことがあると思います。
まずは、困っていることや心配なことを整理し、相談しやすい窓口につながることをおすすめします。
① 学校の担任・特別支援教育コーディネーター
学校生活での困りごとについては、担任に相談することが第一歩になります。
家庭と学校での様子を共有し、どのような支援が必要なのかを一緒に考えることができます。
② 自治体の発達相談窓口・教育相談窓口
市区町村には、子どもの発達や子育て、教育について相談できる窓口があります。
窓口の名称や対象年齢、相談方法は自治体によって異なるため、お住まいの自治体のホームページなどで確認してみてください。
③ 発達障害者支援センター
発達障害者支援センターも相談先の一つです。
発達障害情報のポータルサイトでは、発達障害の診断がなくても相談できることや、本人だけでなく家族などからの相談も受け付けていることが案内されています。
必要に応じて、医療機関などの情報提供を受けることもできます。診断そのものは医療機関で行うため、センターの相談と医療機関での診断は区別して考えましょう。
参考:発達障害情報のポータルサイト「相談できる窓口を教えて欲しい」
④ 小児科や発達を専門とする医療機関
日常生活や学校生活に大きな支障が出ている場合、本人のつらさが強い場合、医療的な評価が必要か迷う場合などは、小児科や発達を専門とする医療機関に相談することも選択肢です。
相談先が分からない場合は、まずかかりつけ医や自治体の相談窓口に尋ねてもよいでしょう。
診断を受けるかどうかを考えることと、今ある困りごとへの支援を始めることは、分けて考えられます。
診断の結果を待つ間にも、本人が困っている場面を減らすための工夫を考えていきたいところです。
友達との関わりが苦手な小学生には、SSTも選択肢の一つ
友達とのトラブルが続いたり、自分の気持ちを伝えることが難しかったりする場合には、SST(ソーシャルスキルトレーニング)を取り入れる方法もあります。
SSTは、人との関わりや生活の中で必要になる方法を、具体的な場面を通して考えたり練習したりする活動です。
例えば、今回紹介した「字が汚くて読めないから変えてよ」という場面なら、相手に伝えたい内容を整理し、別の伝え方を一緒に考える活動ができます。
ただし、SSTは子どもを大人の望む行動に一方的に合わせるためのものではありません。
「嫌なことは嫌だと伝える」「困ったときに助けを求める」「相手と意見が違うときに相談する」など、本人が自分の気持ちを大切にしながら、使える方法を増やしていくことが重要だと考えています。
家庭でも、短い会話から始められる
例えば、絵本や日常の出来事を使って、次のような会話をしてみます。
- 「このとき、どんなことが起こったのかな?」
- 「自分だったら、どう伝えたい?」
- 「ほかには、どんな方法があるかな?」
一つの正解を答えさせることよりも、さまざまな考え方や方法に触れることを大切にします。
本人が疲れているときや、取り組みたくないときに無理に練習させる必要はありません。
詳しい方法は、発達障害の子どもへの家庭でできるSST|具体的なやり方・遊び方・声かけ例で紹介しています。
無料プリントを使いたい方へ
当サイトでは、小学生向けのSST・自立活動の無料プリントも紹介しています。
気持ちを選ぶ、困った場面で使えそうな方法を考える、出来事を振り返るなど、目的に応じて教材を選べます。
無料プリントを使う場合も、すべての問題に取り組ませる必要はありません。本人が必要としていることや、取り組みやすさに合わせて、一つの場面から使ってみてください。
グレーゾーンの小学生についてよくある質問
Q. グレーゾーンの小学生は、成長すると困りごとがなくなりますか?
成長や経験、環境の変化によって困りごとの現れ方が変わることはあります。ただし、必ずなくなるとは言えません。
学年が上がると、自分で予定を管理したり、友達同士で相談したりする場面が増えるため、新しい困りごとが見えてくる場合もあります。
「いつかできるようになる」と様子を見るだけではなく、今必要な支援を考えながら成長を見守ることが大切です。
Q. 発達障害の診断を受けた方がよいのでしょうか?
診断の必要性は、本人の困りごとの程度や生活への影響、相談の目的などによって異なります。
診断を受けることで、特性への理解や支援の検討につながる場合もあります。一方で、診断の有無だけで支援方法が決まるわけではありません。
迷う場合は、学校や自治体の相談窓口、医療機関などに相談しながら考えてみてください。
Q. グレーゾーンの子どもは通常学級で学び続けられますか?
グレーゾーンと呼ばれることだけを理由に、通常学級で学べないと判断されるわけではありません。
通常学級で必要な支援を受けながら学ぶ子どももいます。
大切なのは、本人が安心して学べているか、学習や生活上の困難に対して適切な支援が受けられているかを確認することです。
必要に応じて、通級による指導や学びの場について相談することもできます。
Q. 子どもの困りごとは、親の育て方が原因なのでしょうか?
忘れ物が多い、気持ちの切り替えが難しい、友達とのトラブルが繰り返されるといった行動だけで、親の育て方が原因だと判断することはできません。
発達に関わる特性や、本人の経験、生活環境、学校での負担など、さまざまな要因を考える必要があります。
関わり方を工夫することは大切ですが、それは保護者に責任があるからではなく、今より本人が過ごしやすくなる方法を見つけるためです。
家庭だけで対応しきれない場合は、学校や専門機関と役割を分担することも大切です。
まとめ|大切なのは診断名よりも、子どもの困りごとを理解すること
今回は、グレーゾーンが気になる小学生の特徴や困りごとについて、教育現場での実体験をもとに紹介しました。
この記事でお伝えしたかったことをまとめます。
- グレーゾーンは正式な医学的診断名ではない
- 診断の有無にかかわらず、学校生活で困っている子どもはいる
- 同じ行動でも、その背景にある困りごとは一人ひとり違う
- 家庭では、指示の出し方や環境を工夫することから始められる
- 学校や相談機関と連携しながら、必要な支援を考えることができる
私は、子どもへの支援を考えるとき、「どうすればこの行動をやめさせられるだろう」と考える前に、一度確認したいことがあります。
「この子は、今、何に困っているのだろう?」
本人は友達に事実を伝えたつもりでも、相手が傷ついてしまう。
授業に参加しようと思っていても、次に何をすればよいのか分からない。
忘れ物をしないように探しているのに、必要な物が見つからない。
このような姿には、周囲の大人が気づきにくい困りごとが隠れているかもしれません。
もちろん、すべての行動を特性だけで説明できるわけではありませんし、相手を傷つけた場合には、その子への支援と同時に相手への配慮も必要です。
それでも、本人の困りごとに目を向けることで、叱ることだけでは見つからなかった支援の方法が見えてくる場合があります。
まずは、お子さんが困っている場面を一つ選び、「何が難しいのか」「どんな方法なら取り組みやすいのか」を一緒に考えてみてください。
その小さな工夫が、家庭でも学校でも、本人が安心して過ごすための第一歩になると考えています。
家庭でできる支援を、もう少し具体的に知りたい方へ
友達との関わり方や気持ちの伝え方について、家庭で取り組めるSSTを別の記事で紹介しています。
難しい準備をしなくても、日常の会話や遊びの中で取り入れられる方法があります。
また、気持ちの整理や困った場面への対応を考えるための無料プリントも公開しています。


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