「SSTの場面カードを見せても、何を聞けばよいか迷う」「子どもが『分からない』と答えると、その先に進めない」「カードでは答えられるのに、日常の支援にどうつなげればよいか分からない」。放課後等デイサービスで、こうした迷いはありませんか。
SST場面カードを使うときは、絵に描かれた状況を一緒に確かめ、本人が使えそうな方法と、大人ができる支援を考えます。子どもが答えた内容だけでなく、何が分かりにくかったか、どんな表し方なら伝えやすかったかも大切な手がかりです。
この記事では、場面カードの基本的な使い方、聞き方の例、答えないときの対応を紹介します。玩具の順番・援助を求める場面・遊びを終える場面を、架空の例で具体的に考えます。
本文には、筆者が制作・販売している「放課後等デイサービス向け SST・コミュニケーション活動パック」の実物見本も掲載しています。お手元の場面カードや無料教材を使う場合にも、進め方の参考にしてください。
SST場面カードは、何のために使う?
SST場面カードは、友達とのやり取りや困った場面を絵で示し、状況や選択肢を一緒に考えるための教材です。口頭の説明を聞き続けるより、同じ絵を見ながら確かめる方が取り組みやすい場合があります。
例えば、玩具を借りたい場面なら、「誰が使っているか」「自分はどうしたいか」「どんな知らせ方や過ごし方があるか」を整理します。ただし、絵の表情から気持ちを一つに決めたり、全員に同じ答えを求めたりしないようにします。
また、場面について考えるカードと、今の本人の意思を知らせるカードは、役割が異なります。絵の中の人物について「休む方法もある」と話せても、本人が今休みたいとは限りません。本人の希望は、その都度確かめます。
場面カードを使う前に確認する3つのこと
1.本人が取り組むことを選べるか
始める前に、どんなことをするかを短く伝えます。「この絵を一緒に見てみる?」「見るだけでもいいよ」など、本人に分かる方法で確認します。見学、パス、途中で終えることも選択肢にします。
実際のトラブルの直後など、気持ちが高ぶっているときは、振り返りより安全と安心を優先します。落ち着いたように見えても、すぐに話せるとは限りません。
2.絵が何を表しているか伝わるか
最初は一つの場面を提示し、人物や物、起きていることを確かめます。「カードを見ない」「答えない」場合も、絵が複雑、言葉が難しい、何を聞かれているか分からないなどの可能性を考えます。
必要なら、短い説明や実物を添えます。絵より写真や実際のやり取りの方が伝わりやすい場合は、形式を変えて構いません。
3.本人に関係する場面か
教材の順番どおりに全部使うより、本人が経験している場面や、本人が取り組みたいことから選びます。学校の絵を放課後等デイサービスで使う場合は、場所や道具、人の役割の違いも説明します。
「この絵と同じことがあったよね」と決めつけず、似ているところと違うところを確かめましょう。
SST場面カードの使い方|基本の5ステップ
ステップ1.絵の中で起きていることを確かめる
まず、人物や物の動きなど、絵から確認できることを扱います。「この子は玩具を持っているね」「こちらの子はそばにいるね」と短く示し、本人の見方も聞きます。
「怒っている」「意地悪している」など、見た目だけでは決められない気持ちや意図は、事実と分けて扱います。
ステップ2.本人の受け取り方や希望を確かめる
「何が気になる?」「自分だったら、どうしたい?」など、本人に合う聞き方を選びます。広い質問が難しい場合は、「まだ使いたい? 別の遊びにする?」のように具体化します。
選択肢にない答えや、「分からない」「決めていない」も受け止めます。絵の人物の気持ちと、本人自身の気持ちは分けて確認します。
ステップ3.使えそうな方法を一緒に考える
本人の希望を手がかりに、言葉、指さし、カード、身振り、大人への相談などの方法を考えます。本人だけに解決を任せず、職員が順番を見えるようにする、道具を増やす、活動量を減らすといった調整も含めます。
選択肢を増やしすぎると迷いやすいため、必要なものを少数から提示します。どれも合わなければ、別の方法を考えます。
ステップ4.本人が望めば、短く試す
職員が見本を示したり、本人が希望する方法を一往復だけ試したりします。例えば、プリントを差し出す合図に対して、職員が「ここを一緒に見る?」と応じる形です。
同じ言葉の復唱や、目を合わせることを必須にしません。見るだけ、試さない、途中で終える選択も尊重します。
ステップ5.日常で同じ表現を受け止める
活動で使った合図を、宿題や自由遊びでも職員が受け止めます。「誰に知らせるか」「カードはどこに置くか」「職員はどう応じるか」を共有しておきます。
練習で説明できたことを、援助を受ける条件にはしません。合図が出ない場合も、大人が困り感に気づいたら支援を調整します。
聞き方に迷ったときの声かけ例
質問は一度に一つにし、本人が受け取り、表す時間を確保します。次の表は言い換えの例です。すべてを順番に質問するための台本ではありません。
| 進め方の見直し例 | 代わりに確かめること |
|---|---|
| 「この子、悲しいよね?」と気持ちを決める | 「この絵では、何が起きているように見える?」 |
| 「貸してあげるのが正解だよね?」と誘導する | 「まだ使いたいとき、どう知らせる方法がありそう?」 |
| 「何と言えばいいの?」と発話だけを求める | 「言う、指さす、カードを見せるなら、どれが使いやすそう?」 |
| 「答えられるまで考えて」と続ける | 「絵が分かりにくい? 今日はここで終わりにする?」 |
言葉を変えても負担が続く場合は、質問を減らす、実物を使う、活動を終えるなど、進め方そのものを見直します。沈黙を同意や拒否と決めつけないことも大切です。
放課後等デイサービスでの使用例3つ
以下は、使い方を説明するための架空例です。実際の利用者の事例や、教材による成果を示すものではありません。
例1.玩具の順番を考える
一人が玩具を使い、もう一人がそばにいる絵を見ます。「そばにいる子は借りたいのかな。見ているだけかもしれないね」と、絵だけでは分からない部分を残しながら場面を確かめます。
本人が「使いたい」と表したら、「大人に知らせる」「順番を確認する」「別の遊びをしながら待つ」など、使えそうな方法を考えます。使っている子の意思も確認し、一方だけに譲ることを求めません。
日常では、職員が順番や交代の見通しを分かる形にします。待つ負担が大きければ、別の道具や過ごし方も用意します。「貸して」と言う練習に加え、大人が調整する部分まで考える例です。
例2.工作や宿題で援助を求める
問題や道具を前にして手が止まっている場面を扱います。「何と言えばよい?」とすぐに聞くより、本人がどこを見せたいか、どんな援助なら受けたいかを確かめます。
例えば、プリントを見せる、止まったところを指す、カードで知らせる方法があります。職員は「最初を一緒にやる?」「やり方を見る?」と短く確認し、実際の手助けにつなげます。

この見本では、同じ場面について、書く欄のある標準版と、選択肢を示したやさしい版を掲載しています。両方を続けて行う必要はなく、本人に合う一方を選びます。指さしや合図で表す方法も使えます。
援助を受ける前に、説明や発話を完成させる必要はありません。職員が困り感に気づいた場合には、問題量や道具、説明も調整します。
例3.楽しい遊びを終える
遊びを終える場面を見ながら、「まだ続けたいとき、どうしたい?」を確かめます。絵に描かれた活動と、本人が日常で楽しんでいる遊びが違う場合は、その違いを説明します。
「作品を残す」「写真で残す」「一緒に片付け始める」など、実際にできる方法を大人が確認してから提示します。保存できない物や、まだ決まっていない予定について、実現できない約束をしないようにします。
日常では、終了前に本人に分かる予告を行い、残す場所や片付けの最初の一つを整えます。カードで終わり方を話したことだけを理由に、すぐに気持ちを切り替えられると考えないことが大切です。
答えない・選ばない・話したくないときは?
反応がないときは、同じ質問を繰り返す前に、活動の条件を確認します。「やる気がない」と理由を決めず、職員が変えられる部分から見直しましょう。
- 場面が伝わっているか:絵を一枚に絞る、短い説明や実物を添える。
- 質問が広すぎないか:一度に一つ、具体的な問いにする。
- 表し方が合っているか:話す以外に、指さし・選択・代筆を用意する。
- 今取り組める状態か:疲れ、刺激、時間帯を確認し、休憩や終了も選べるようにする。
「分からない」「話したくない」が示されたら、その表現を受け止めます。返事がない場合も、同意したことにせず、いったん止める、負担を減らすなどの調整をします。
場面カードの練習を日常につなぐには
活動後は、子どもが選んだ方法と、それに対する職員の応答を共有します。「上手に答えた」で終わらせず、どの場面で、誰が、どう支えるかを具体的にします。

このガイドでは、短い練習に加え、終わりにくさに応じた環境調整や、日常で確認することを扱っています。教材だけでなく、職員がどう応じるかを一緒に準備するために使えます。
記録では、見聞きした事実と職員の解釈を分けます。例えば、次のように残します。
【架空の記録例】終了予告後、本人が作品を持って棚を指した。職員が「ここに残す?」と確認すると、本人がうなずいた。棚に置いた後、職員と一緒に道具を一つ戻した。次回も保存場所を選べるようにする。
この記録から本人の気持ち全体を断定することはできません。ただ、どんな表現があり、大人がどう応じたかを残すことで、次の職員も確かめながら支援できます。
活動全体の組み立て方は、放課後等デイサービスのSST実践ガイドで紹介しています。
無料の場面カードから試したい方へ
最初から多くの教材をそろえる必要はありません。取り組みたい場面を一つ選び、無料教材やお手元の教材で、絵の分かりやすさと進め方を確認する方法もあります。
無料のSST絵カード・指導資料の記事では、学校生活の「あいさつ」を扱った教材と使い方を紹介しています。放課後等デイサービスで使う際は、本人が経験する場面との違いを確かめてください。
場面教材と職員用ガイドを一緒に準備したい方へ
放課後等デイサービス向け SST・コミュニケーション活動パック
場面教材を用意しても、子どもが答えないときや、日常で困ったときの関わり方に迷うことがあります。この活動パックでは、子どもが使う教材と、本人の意思確認・大人の応答を考える職員用ガイドを一緒に確認できます。
12の活動を軸に、ワーク、絵カード、場面プリント、操作型教材、日常への接続ガイドなどを収録した、筆者作成の有料PDF教材です。収録内容は163本のPDF・合計488ページ。PDF本数はファイル数であり、カード枚数や活動数ではありません。
教材を一から作る作業を減らし、本人に合わせた教材選びや関わり方の準備に使いたい方は、実物見本をご確認ください。印刷・切り分けや、本人に合わせた調整は必要です。
価格・利用条件・ダウンロード方法は、販売ページでご確認ください。教材の使用による特定の成果を保証するものではありません。
SST場面カードの使い方でよくある質問
登場人物の気持ちには、正解がありますか?
絵だけでは、気持ちを一つに決められない場合があります。「こう感じる人もいる」と可能性を考え、実際の相手の気持ちは確認が必要だと扱います。気持ちの言葉を当てるだけで終わらず、本人の希望や使えそうな方法につなげます。
言葉で答えなくても参加できますか?
指さし、カードを置く、身振り、職員による代筆などの方法を用意できます。ただし、選択肢の意味が本人に伝わっているかを確認します。表情や視線だけで意思を断定せず、普段使っている方法も大切にします。
実際に起きたトラブルを、集団で振り返ってもよいですか?
本人が話したくない経験を公にしたり、特定の子を責める場にしたりしない配慮が必要です。本人の意思とプライバシーを確かめ、個別で扱う、架空の場面を使う、今回は扱わないなどの方法を検討します。集団の前で説明や謝罪を求めるために使わないようにします。
活動中に答えられたら、日常でもできると考えてよいですか?
絵を見ながら考える場面と、実際に疲れたり困ったりしている場面では条件が異なります。職員の声かけ、道具の置き場所、待ち時間などを調整し、その場で必要な支援を行います。教材での回答だけで、日常の力や支援の必要性を判断しません。
一つの場面から、本人と職員の方法を考える
SST場面カードを使うときは、本人がどう受け取り、何を望み、どんな方法なら表しやすいかを確かめます。そして、その表現に職員がどう応じるかまで一緒に考えます。
まずは本人に関係する一つの場面を選び、短く試してみてください。言葉で答える、指さす、見るだけにする、今回は終えるなど、その子が選べる方法を用意するところから始められます。
複数の場面教材と職員向けの進め方をまとめて確認したい方は、SST・コミュニケーション活動パックの収録内容と見本をご覧ください。

コメント