「SSTの教材は見つかるけれど、目の前の子にどれが合うか迷う」「プリントを用意しても、書くところで止まってしまう」「教材の準備だけでなく、職員の関わり方も共有したい」。放課後等デイサービスで活動を考えるとき、こうした迷いはありませんか。
SST教材は、取り組む場面と、本人が理解しやすい・表しやすい方法を組み合わせて選びます。プリント、絵カード、操作型教材のどれか一つが、すべての子どもに合うわけではありません。
この記事では、教材の使い分けと職員用ガイドの確認ポイントを、架空の使用例とともに紹介します。無料教材・手作り・教材パックから、目的に合うものを選ぶ手がかりとしてご活用ください。
本文には、筆者が制作・販売している「放課後等デイサービス向け SST・コミュニケーション活動パック」の見本も掲載しています。購入を前提にせず、お手元の教材を見直す際にも使える内容です。
SST教材を選ぶ前に確かめたい4つのこと
1.本人が困っている場面と、どうしたいか
まず、「順番を守らせたい」「最後まで参加させたい」といった大人側の目標だけで教材を決めないようにします。「遊びたいけれど順番が分からない」「続けたいのに終わりになった」など、本人から見た状況を確かめます。
言葉で聞いて分からない場合は、普段の様子や選択、身振りも手がかりにします。ただし、視線や沈黙だけで気持ちを決めつけず、確かめられないことは未確認として扱います。
2.絵・文字・実物のどれが分かりやすいか
文字が読めることと、文章で示された場面が分かることは同じではありません。絵カードでも、人物が多かったり、背景の情報が多かったりすると、注目する場所が分かりにくい場合があります。
短い言葉を添える、一度に見せる枚数を減らす、実際に使う道具を見せるなど、提示方法も合わせて考えます。診断名や学年だけで形式を決めず、本人がどう受け取っているかを確かめましょう。
3.書く・話す以外の答え方があるか
考えがあっても、文章を書くことや、その場で言葉にすることに負担がかかる場合があります。指さす、選んだカードを置く、物を差し出す、職員に代筆してもらうなど、別の方法を用意できるか確認します。
「分からない」「まだ決めていない」「今回はパスする」も選べると、答えを急がせずに本人の意思を確かめられます。
4.職員の応答と環境調整まで考えられるか
「手伝って」の伝え方を練習しても、実際に手伝ってもらえなければ、教材の中だけで終わってしまいます。「休みたい」が示されたときに休める場所があるか、担当者が変わっても合図を受け止められるかまで確認します。
教材を選ぶことと、大人の関わり方を整えることを一緒に進めるのが、日常につなげるための出発点です。

プリント・絵カード・操作型教材の使い分け
次の表は、形式を選ぶ際の目安です。一つに固定せず、同じ活動の中でも本人の様子に合わせて組み合わせます。
| 教材の形式 | 使う目的の例 | 選ぶときの確認点 |
|---|---|---|
| プリント・ワークシート | 自分の希望や経験を整理する | 読む量・書く量は適切か。指さしや代筆でも取り組めるか |
| 場面を描いた絵カード | 状況を一緒に見て、困りごとや選択肢を考える | 場面が伝わるか。一つの気持ちや答えに決めつけていないか |
| 意思表示カード | 休憩・援助・保留など、今の意思を知らせる | 意味が本人に伝わるか。示された意思に大人が応じられるか |
| 操作型教材 | カードを選ぶ・置く・並べる方法で考えを表す | 手の操作や配置のルールが負担にならないか。選択肢が多すぎないか |
特に区別したいのが、場面について考えるための絵カードと、本人が今の意思を伝えるためのカードです。友達との場面を見ながら考える活動と、「今は休みたい」と知らせることでは、使う目的も大人の応答も異なります。

この見本には、「どっちも」「どちらでもない」「わからない」「パス」「いやだ・やめたい」「やすみたい」「てつだって」「まだきめていない」を収録しています。最初から8種類すべてを並べず、使う場面に合わせて必要なものを選びます。
文字中心のカードなので、置くだけで意味が伝わるとは限りません。本人が分かる説明や普段の合図を使い、カードの使用を援助の条件にしないことが大切です。
また、操作型教材も、書かないから必ず取り組みやすいわけではありません。カードをつまむ、位置を合わせる、分類のルールを覚えるといった負担も確認します。
同じ「困った」でも、選ぶ教材は変わる|架空の使用例3つ
以下は、教材の選び方を説明するための架空の例です。実際の利用者の事例や、教材による効果を示すものではありません。
例1.宿題の途中で手が止まっている
宿題を前にして手が止まっている子に、すぐ「手伝ってと言って」と求めるのではなく、問題の難しさ、量、疲れ、説明の分かりにくさを確かめます。
意思表示カードが使えそうなら「てつだって」を手の届く位置に置きます。プリントを差し出す、困っている場所を指さすといった方法でも構いません。職員は「ここを一緒に見ようか」と確かめ、実際の手助けにつなげます。
この場面では、まず課題を減らす、説明を短くする、休むことが必要かもしれません。合図が出るまで援助を待つのではなく、本人の負担に気づいた大人が支援を調整します。
例2.友達との出来事を振り返りたい
友達とのやり取りについて、長い文章を書くことは難しいものの、絵を見ながらなら話せそうな場合を考えます。本人が落ち着き、振り返ることを望んでいるときに、近い状況の場面カードを少数提示します。
「どちらが悪い?」と答えを求めるより、「何が困った?」「次はどうしたい?」を一緒に確かめます。選択肢を指さす、カードを置く、職員が本人に確認しながら代筆するなど、表し方も選べます。
絵と実際の出来事が違う部分は、本人に確認します。振り返りを望まない場合には、無理に続けず、安心して過ごせるように整えることを優先します。
例3.楽しい遊びを終えることが難しい
ブロック遊びを終える時間になっても、まだ作りたい様子があるとします。このとき、片付けのプリントを追加する前に、終わりの見通しや、続きの残し方を見直します。
作品を残せる場所を用意する、続きが分かる写真を撮る、片付け始める物を少なくするなど、本人が選べる方法を考えます。実物や写真の方が伝わりやすければ、それを使います。
活動パックの日常への接続ガイド「楽しい遊びを終える」は、こうした場面で職員が関わり方を確認するための資料です。子どもに新しい課題をさせるだけでなく、終わり方や大人の応答を整えるためにガイドを選ぶという使い方もできます。
職員用ガイドは「子どもが答えないとき」まで確認する
教材を選ぶ際は、子どもが使うページだけでなく、職員向けの説明も確認してみてください。予定どおり進んだ場合の手順に加え、反応がない、断る、途中で休むといった場面で、どう応じるかが分かると準備に生かせます。
- 教材の出し方や、活動量を調整する手がかりがあるか。
- 発話以外の合図や、見るだけの参加も扱っているか。
- 拒否・休憩・保留が示されたときの応答があるか。
- 日常で使う場面と、職員が記録する内容を確認できるか。

このガイドでは、進行だけでなく、本人が物やカードを示したとき、合図が出ないとき、職員がすぐには手伝えないときの応答も確認できます。
職員間では、「このカードを使う」だけでなく、「この合図があったら、こう確かめて応じる」まで共有します。活動後も、答えられたかだけでなく、どの方法なら表しやすかったか、どんな援助が合ったかを残すと、次の関わりを考える材料になります。
活動の組み立て方も確認したい方は、放課後等デイサービスのSST実践ガイドをご覧ください。この記事では教材の形式を、実践ガイドでは活動例や進め方を紹介しています。
無料教材・手作り・教材パックをどう選ぶ?
一つの場面から試したいなら、無料教材
取り組みたい場面が決まっていて、少ない枚数で試したいなら、無料教材が選択肢になります。内容や利用条件を確認し、本人に合う見せ方や答え方を考えて使います。
SST絵カードと指導資料の無料ダウンロード記事では、「あいさつ」の教材と使い方を紹介しています。学校生活を扱った教材なので、放課後等デイサービスで使う際は、本人が経験する場面に合うかを確かめてください。
本人の生活に合わせたいなら、手作り
いつもの遊具、片付ける棚、休憩場所など、実際の物や場所を示したいときは、写真や簡単な手作りカードが役立つ場合があります。見栄えを整えるより、本人に意味が伝わるかを優先します。
事業所で使う写真は、他の子どもの写り込みや個人情報にも配慮します。すべてを新しく作らず、必要な場面の一枚から始める方法もあります。
複数の教材と進め方をそろえたいなら、教材パック
複数の活動を準備したい、担当職員間で進め方を共有したい場合は、教材とガイドがまとまったパックも選択肢になります。枚数だけでなく、使いたい場面の教材があるか、本人に合わせて参加方法を変えられるかを見本で確認します。
パックでも、印刷・切り分け・教材の選択や、本人に合わせた準備は必要です。無料教材や手作りの写真と組み合わせても構いません。購入したものを全部使うことを目標にせず、必要な部分を選びましょう。
教材と職員用ガイドをまとめて準備したい方へ
放課後等デイサービス向け SST・コミュニケーション活動パック
筆者が制作した、子どもが使う教材と職員用ガイドをまとめた有料PDF教材です。12の活動を軸に、ワーク、絵カード、場面プリント、操作型教材、日常への接続ガイドなどを収録しています。
収録内容は163本のPDF・合計488ページです。PDF本数はファイル数であり、カードの枚数や活動数ではありません。
「どの教材を出すか」に加えて、「本人がどう参加できるか」「大人がどう応じるか」を確認しながら準備したい方に向けた構成です。販売ページでは、実際の教材とガイドの見本を掲載しています。
価格・収録内容・利用条件・ダウンロード方法は、リンク先のnoteでご確認ください。教材の使用による特定の成果を保証するものではありません。
SST教材の選び方でよくある質問
文字が読めない場合も使えますか?
教材によります。文字中心のものは、読み上げるだけでなく、絵・実物・職員の見本などで意味が伝わるかを確かめます。指さしや物を示す方法も選択肢にし、カードを使うこと自体を必須にしません。
集団では、全員に同じ教材を使った方がよいですか?
同じテーマでも、全員が同じ枚数・同じ方法で取り組む必要はありません。書く、選ぶ、見る、途中で休むなどの方法を用意します。発表や個人的な経験の共有も一律に求めず、本人の意思を確かめます。
まず無料教材から始めてもよいですか?
はい。一つの場面で試し、教材の内容や提示方法が本人に合うかを確かめるところから始められます。必要な場面が増えたり、職員向けの説明をまとめて用意したくなったりしたときに、追加の教材を検討してください。
教材パックがあれば、アセスメントや個別支援計画も作れますか?
この活動パックは、アセスメントや個別支援計画の作成を代替する商品ではありません。本人の希望や生活状況を確かめ、支援の目標や方法を検討する過程は別に必要です。教材は、その支援の中で選んで使う道具として位置付けます。
まずは一つの場面と、一つの教材から
SST教材を選ぶときは、「何枚できるか」より、本人が困っていることを知らせたり、自分の希望を表したりできる方法があるかを確かめます。その表現に職員がどう応じるかまで考えると、教材選びと日常の関わりを結び付けられます。
まずは一つの場面を選び、無料教材・手作り・お手元の教材で試してみてください。複数の教材と職員用の進め方をまとめて確認したい場合は、活動パックの収録内容と見本もご覧いただけます。


コメント