
「ひらがなを何度練習しても覚えられない」
「宿題の時間になると、親子でバトルになってしまう」

「学校の授業が始まってから、子どもが急に勉強についていけなくなった」
軽度知的障害や境界知能のある子どもの学習では、一般的な「書いて覚える」方法だけでは、負担が大きくなることがあります。
大切なのは、「もっと頑張って書こう」と繰り返すことではなく、その子がどのような方法なら理解しやすいのかを考えることです。
例えば、文字を書くことが難しくても、同じものを選んだり、カードを合わせたり、実物を動かしたりする活動なら理解できることがあります。
この記事では、
特別支援教育の実践をもとに、「マッチング」と「見て分かる手がかり」を取り入れた勉強方法を紹介します。家庭や特別支援学級で使える、マッチング教材やひらがな教材についても具体的に解説します。
この記事を読むと分かること
- 軽度知的障害のある子が学習につまずくときに確認したいこと
- 具体物やカードを使った学習の進め方
- 「書く」以外に「選ぶ・合わせる」方法を取り入れる考え方
- 生活動作やひらがなの学習に使えるマッチング教材
- 家庭や特別支援学級で使いやすい教材・支援ツール
軽度知的障害の学習では「具体的で分かりやすい提示」を意識する
まず、勉強方法を考える前に、子どもがどのような提示なら理解しやすいのかを見ることが大切です。

知的障害のある子どもの中には、言葉だけの説明や抽象的な課題よりも、実物・絵・写真・カードなど、目で確認できるものを使った方が理解しやすい子がいます。
また、学校で学ぶ内容を、実際の生活場面や本人がすでに知っているものと結びつけることで理解しやすくなる場合もあります。
「言葉だけ」で難しいときは、実際に動かして確かめる
例えば「3+2」を考えるとき、数字だけでは分かりにくくても、3個の物と2個の物を実際に合わせることで、「全部で5個」ということを確認できる子がいます。

「分からない」と判断する前に、説明の方法を変える、実際に動かせるようにする、見て確認できる手がかりを加えるといった工夫を試してみることが大切です。
参考情報
知的障害のある子どもの教育では、実際的・具体的な内容や、生活に結びついた学習を取り入れることが重視されています。
文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」
軽度知的障害の子が「勉強についていけない」ときに確認したいこと
小学校に入学し、学年が上がるにつれて、「授業についていけない」「宿題にとても時間がかかる」と感じることがあります。
そのときは、単純に学習量を増やす前に、どこで負担が大きくなっているのかを確認してみてください。
「勉強についていけない」の中身を分けて考える
- ひらがなの習得:文字と音を結びつけること、似た文字を見分けること、書くことなど、どこか一つの段階で負担が大きくなる場合があります。
- 数やことばの概念理解:目に見えない内容を頭の中だけで考えたり、文章から場面をイメージしたりすることが難しい場合があります。
ひらがなを何度練習しても覚えにくい場合はこちら
同じ文字を合わせる、2〜3枚から選ぶ、絵とはじめの文字を結びつけるなど、知的障害・軽度知的障害のある子のひらがな学習を段階的に紹介しています。
→ 知的障害・軽度知的障害のある子のひらがな覚え方を見るさらに、学校の授業では「黒板を見る→内容を覚える→ノートに写す」と、いくつもの作業を同時に行う場面があります。

子どもによっては、
- 覚えておくことが難しい:板書を見てからノートへ視線を移す間に、内容を忘れてしまう。
- 書くことに大きな力を使う:文字を書くことに集中し、内容を考える余裕が少なくなる。
- 課題量が多いと取り組みにくい:終わりが見えない課題や、同じ練習の繰り返しが負担になる。
といったことがあります。
そのため、「書いて答えられない=分かっていない」と判断せず、選ぶ・指さす・カードを置くなど、別の方法でも理解を確認してみることが大切です。
知的障害のある子の学習方法|「書く」以外に「選ぶ・合わせる」を取り入れる
では、具体的にどのような学習方法を取り入れればよいのでしょうか。
ポイントは、「書くこと」だけで理解を確認せず、「選ぶ・合わせる・指さす」など、負担の少ない方法でも分かっていることを確認することです。
マッチング学習とは?
マッチングとは、同じもの同士を合わせたり、関係のあるものを組み合わせたりする活動です。
例えば、「りんご」という文字を書かせる前に、「りんごの絵」と「りんごの文字カード」を合わせる課題に取り組みます。
この方法なら、文字を書くことへの負担を減らしながら、絵・ことば・文字の関係に注目できます。

- 間違えてもやり直しやすい:カードを置き直せるため、消しゴムで何度も消す必要がありません。
- 選択肢を調整できる:2枚から始め、3枚、5枚と少しずつ選択肢を増やせます。
- 「できた」が分かりやすい:カードが所定の位置にそろうため、課題の終わりを目で確認できます。

もちろん、すべての子にマッチング教材が合うわけではありません。
「2択ならできる」「見本があればできる」「カードなら答えられる」など、その子が今できる方法を見つけ、そこから少しずつ次の段階へ進むことを大切にします。
軽度知的障害の学習に使えるマッチング教材の例
ここからは、私が作成している教材の中から、生活やことばの理解に使える教材と、ひらがな学習に使える教材を紹介します。
完成した教材をそのまま全て使う必要はありません。必要なページだけ印刷したり、選択肢を減らしたりして、子どもの実態に合わせて調整してください。
【教材1】発達支援・生活学習のためのマッチング教材
一つ目は、生活に関係することばや概念を学ぶための発達支援マッチング教材です。
この教材には、次のような内容があります。
- 色のマッチング
- 形のマッチング
- 季節や曜日の理解
- 生活動作と言葉の理解
- 自分に関する情報を整理する活動
サンプル紹介|生活動作と言葉を結びつける
① 生活動作のマッチング:「服を きる」「手袋を はめる」
「着る」「履く」「かぶる」「はめる」など、生活の中で使う動詞は、ことばだけでは違いが分かりにくいことがあります。
イラストとことばを組み合わせながら確認することで、実際の動作とことばを結びつける活動にできます。

② 形のマッチング
丸・三角・四角などの形を見比べたり、同じ形を合わせたりします。
「ボールは丸」「おにぎりは三角」のように、身近な物と形を結びつける活動にも発展できます。

机上の課題だけで終わらせず、教材で確認したことを実際の生活の中でも見つけると、学習内容を広げやすくなります。

【教材2】ひらがなマッチング教材
二つ目は、ひらがなの読みや、絵・音・文字の対応を学ぶためのひらがなマッチング教材です。
いきなり五十音を書いて覚えるのではなく、
- 同じ文字を見つける
- 絵とことばを合わせる
- ことばの最初の文字を考える
- 文字を一つずつ組み合わせる
など、段階を分けて取り組めます。
サンプル紹介|ことばと文字を合わせる
③ ことばのペアを作る
「えほん」「あさ」「いぬ」など、身近なことばを使って、同じ文字の並びを探します。
まだ一文字ずつ読めなくても、同じ文字の形や並びを見比べる活動から始められます。
ここにサンプル画像を挿入
(「まど」「みみ」「むし」などの絵があり、それに対応する文字カードを貼るページ)
④ 色と文字を一致させる
「あか」「あお」「きいろ」など、すでに意味を知っていることばと文字を結びつけます。

⑤ 一文字ずつの構成を確認する
ことば全体を見たあとに、「あり」は「あ」と「り」でできている、というように、一文字ずつに注目する活動にも進めます。

大切なのは、最初からすべてのカードを並べることではありません。
2択なら選べる→3択にする→少しずつ選択肢を増やすというように、子どもの現在の理解に合わせて難易度を調整します。
ひらがなの教え方を詳しく知りたい方へ
知的障害・軽度知的障害のある子がひらがなを覚えにくいときの、選択肢の減らし方や、マッチング教材を使う順番を詳しく解説しています。
→ 知的障害・軽度知的障害のある子のひらがな覚え方|マッチング教材と指導のコツ
生活・ことば・ひらがなを組み合わせて使う
発達支援教材とひらがな教材は、別々に取り組むだけでなく、関連づけて使うこともできます。
- 発達支援教材で、色・形・動作などの意味を確認する。
- ひらがな教材で、そのことばを文字として見たり選んだりする。
意味を理解する活動と文字を学ぶ活動を関連づけることで、教材で学んだことを生活の中でも使いやすくなります。
紹介した教材をまとめて確認したい方はこちらです。

動画で見る|マジックテープ教材の使い方
実際にカードを選び、貼ったり剥がしたりして取り組む様子はこちらです。
マジックテープ式の教材には、次のような特徴があります。
- 操作を伴う活動にできる:カードを剥がす・選ぶ・貼るという具体的な操作が加わるため、紙に書く課題とは違った方法で取り組めます。
- 手指を使う活動にもなる:カードをつまむ・動かす・所定の位置に貼るといった操作を行います。
- 課題の終わりが分かりやすい:1枚のシートに取り組む量を絞ることで、「ここまでできた」と確認しやすくなります。
ただし、マジックテープの音や感触が苦手な子もいます。紙のカードを置くだけにするなど、本人の様子に合わせて調整してください。
大人の支援方法も教材と一緒に考える
教材があっても、難易度や声かけが子どもに合っていなければ、取り組みにくくなることがあります。

教材に付属する指導書では、例えば次のような点を確認できます。
- 選択肢の調整:最初は2枚から始め、できるようになったら少しずつ増やす。
- ヒントの出し方:すぐに答えを伝えるのではなく、見本を示す、選択肢を減らすなど段階的に支援する。
- できたことの伝え方:「前よりヒントが少なくできたね」など、具体的な変化を言葉にする。
最初は大人と一緒に取り組み、慣れてきたら少しずつ支援を減らしていく方法があります。
「一人でできたか」だけでなく、「どのくらいの支援があればできたか」を見ることも大切です。
マッチング教材を作るときに使いやすい道具
マッチング教材は、紙のカードを置くだけでも使えます。
繰り返し使用したい場合は、ラミネート加工や面ファスナーを使う方法もあります。
面ファスナーは、丸型とロール型を用途によって使い分けると便利です。
丸型はカードを1枚ずつ貼る教材に使いやすく、ロール型は長さを調整したい場合に便利です。
ラミネーターがあると、絵カードやスケジュール表など、ほかの教材づくりにも活用できます。
※当ページにはAmazonアソシエイトのリンクを含みます。
まとめ|「書けない」だけで学習の理解を判断しない
軽度知的障害のある子どもの学習では、一般的な方法では負担が大きくなることがあります。
そんなときは、
実物を使う
↓
見本を見せる
↓
2〜3枚から選ぶ
↓
同じものを合わせる
↓
少しずつ選択肢を増やす
↓
必要に応じて読む・書く活動へ進む
というように、課題を分けてみてください。
「全部からは選べないけれど2択ならできる」「文字は書けないけれど同じ文字なら見つけられる」ことも、大切な学習の現在地です。
今できることを見つけ、そこから次の一歩を作る。
そのための一つの方法として、マッチング教材や具体物を使った学習を取り入れてみてください。
基本の生活・概念を学ぶ教材
色・形・生活動作などを、カードを選んで合わせながら学べます。
ひらがなの学習に使う教材
同じ文字を探すところから、絵と文字の対応、ことば作りなどへ段階的に取り組めます。
ひらがなの教え方をさらに詳しく知りたい方へ
知的障害・軽度知的障害のある子がひらがなを覚えにくい場合の、練習の順番や選択肢の調整方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
ひらがなの読み書きにつまずく背景を、より広く確認したい場合はこちらです。




コメント