
「低学年の子に、どんな自立活動をしたらいい?」
「準備が少なくて、楽しく取り組める活動を知りたい」
「体を動かす活動や、友達と関われるゲームはないかな?」
特別支援学級で自立活動を考えるとき、低学年の子どもには「楽しそう」「やってみたい」と思える活動を取り入れたいですよね。
ただし、自立活動は「低学年だからこのゲームをする」と決めるものではありません。
一人ひとりの学習上・生活上の困難や得意なこと、興味・関心などを捉え、育てたい力に合わせて活動を選ぶことが大切です。
この記事では、低学年の子どもにも取り入れやすい自立活動として、自己理解・コミュニケーション・感情理解・体の動きなどに関わる7つの実践例を紹介します。
「何を育てたいか」から活動を選べるように、ねらい・進め方・低学年での工夫まで具体的にまとめています。
すべて行う必要はありません。目の前の子どもの実態に合いそうなものを、一つ選ぶところから始めてみてください。
低学年の自立活動を考える前に大切なこと
自立活動は、障害による学習上または生活上の困難を改善・克服していくために必要な力を育て、心身の調和的な発達の基盤を培うための指導です。
内容は、次の6区分27項目で整理されています。
- 健康の保持
- 心理的な安定
- 人間関係の形成
- 環境の把握
- 身体の動き
- コミュニケーション
ただし、27項目を順番にすべて指導するわけではありません。
例えば、同じ1年生でも、
- 自分の気持ちを言葉にすることが難しい子
- 友達との距離感に困っている子
- 体の動きを調整することが難しい子
- 予定の変更や失敗で気持ちが大きく崩れる子
- 自分の好きなことや苦手なことをまだうまく捉えられない子
では、必要な指導内容は異なります。
「この活動をやりたい」から考えるのではなく、「この子のどんな困り感を減らしたいか」「どんな力を育てたいか」から活動を選ぶことが、自立活動を考えるうえで重要です。

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低学年向け自立活動の実践例7選
ここからは、低学年の子どもにも取り入れやすい7つの活動を紹介します。
「自己理解を深めたい」「自分で選ぶ経験を増やしたい」「友達とのコミュニケーションを練習したい」など、子どもの実態とねらいを照らし合わせながら選んでみてください。
1.【自己理解】「わたしのトリセツ」作り
自分の「好きなこと」「苦手なこと」「落ち着く方法」「手伝ってほしいこと」などを考え、自分について知る活動です。

【ねらい】
- 自分の好きなことや苦手なことに気づく
- 自分に合った方法や環境を考える
- 自分のことを相手に伝える経験を積む
低学年では、「自分の得意なことは?」と聞かれても、すぐに答えるのが難しいことがあります。
その場合は、文字だけで考えさせるのではなく、
- 絵や写真から選ぶ
- 「好き・ふつう・苦手」から選ぶ
- 教師が具体的な場面を思い出させる
- 教師と一緒に一つずつ書く
といった支援をすると取り組みやすくなります。
「大きな音が苦手」「静かな場所だと落ち着く」「ほめてもらうとうれしい」といった気づきは、その後の支援方法を考える手掛かりにもなります。
詳しい進め方とワークシートはこちらで紹介しています。
2.【コミュニケーション】スリーヒントクイズ
三つのヒントを聞いて答えを考えたり、自分でヒントを考えて相手に伝えたりするゲームです。

【ねらい】
- 相手の話を聞く
- 聞いた情報から答えを考える
- 相手に伝わる言葉を考える
- 語彙や表現の幅を広げる
例えば、答えが「りんご」なら、
「赤いものです」
「食べ物です」
「丸い形をしています」
といったヒントを出します。
ヒントを自分で考えることが難しい子には、「何色?」「どんな形?」「食べるもの?」「どこにある?」など、教師が視点を示すと考えやすくなります。
聞く・考える・伝えるというコミュニケーションのやり取りを、ゲームの中で練習しやすい活動です。
詳しいやり方やお題例はこちらで紹介しています。
3.【自己選択・自己決定】「どっちがすき?」ゲーム
二つの選択肢から、自分が好きな方を選ぶシンプルな活動です。

【ねらい】
- 自分の「好き」に気づく
- 自分で選択する経験を積む
- 選んだものを相手に伝える
- 友達との違いに気づく
例えば、「犬と猫」「夏と冬」「カレーとラーメン」など、子どもがイメージしやすい二つの選択肢を提示します。
まずは、指差しやカードを取るだけでも構いません。
慣れてきたら、
「私は犬が好きです」
「走るのが速いからです」
のように、選んだものや理由を言葉で伝える活動へ発展させることもできます。
また、友達と答えが違ったときには、「好きなものは人によって違っていい」ということを自然に学ぶ機会にもなります。
🃏 「どっちがすき?」をすぐに実践したい方へ

『すきなのどっち』カード
食べ物・動物・遊び・もしも系など、子どもが選びやすいテーマを使って自己選択やコミュニケーションを練習できる教材です。言葉で答えることが難しい場合は、指差しやカード選択から始めることもできます。
4.【感情理解】怒りの気持ちと付き合うアンガーマネジメント
低学年では、怒ったときに「どうして怒っているのか」「今どのくらい怒っているのか」をうまく言葉にできないことがあります。
そこで、自分の怒りに気づき、気持ちが大きくなったときの対処方法を一緒に考えていきます。

【ねらい】
- 自分が怒りを感じる場面に気づく
- 怒りの強さを捉える
- 自分に合ったクールダウンの方法を知る
- 困ったときに適切な方法で気持ちを伝える
例えば、怒りの温度計を使って「今の怒りは1〜5のどのくらい?」と考えたり、
- 深呼吸する
- 静かな場所へ移動する
- ゆっくり数を数える
- 先生に伝える
- 水を飲む
など、本人に合う方法を一緒に探します。
大切なのは、「怒らないようにする」ことを目標にするのではなく、怒りに気づいて安全な方法で対処できるようにすることです。
😤 怒りの場面を使って具体的に考えたい方へ

アンガーマネジメント教材
怒りを感じる場面や怒りの強さ、許す・許さないといったテーマについて、カードを使いながら具体的に考えられる教材です。SSTや自立活動、学級活動などで活用できます。
5.【身体の動き】動物ものまねゲーム
ウサギ・ペンギン・ワニなど、動物の動きをまねしながら体を動かす活動です。

【ねらい】
- 体全体を使って動く
- 相手の動きを見てまねる
- 動きの大きさや速さを調整する
- 簡単なルールに沿って活動する
【準備するもの】
- 動物の絵や写真が描かれたカード
【活動例】
- 教師または子どもが動物カードを1枚選びます。
- 「ウサギなら両足ジャンプ」「ペンギンなら小さな歩幅」など、その動物をイメージした動きを決めます。
- 決めた場所まで動物になりきって移動します。
- 慣れてきたら、友達の動きを見てまねたり、自分で動きを考えたりします。
リレー形式にすることもできますが、勝敗が気になって活動が崩れやすい場合は、「みんなで全部の動物に挑戦する」協力型にするのもおすすめです。
また、走る・跳ぶ活動を行う場合は、子ども同士がぶつからないよう十分なスペースを確保し、子どもの運動面の実態に合わせて動きを調整しましょう。
6.【感情理解・コミュニケーション】表情ジェスチャーゲーム
「うれしい」「かなしい」「おこっている」「びっくり」などの気持ちを、表情やジェスチャーで表現する活動です。
【ねらい】
- 感情を表す言葉を増やす
- 気持ちを表情や動きで表現する
- 相手の表現に注目する
- 同じ場面でも感じ方が違うことに気づく
【準備するもの】
- 感情を表す言葉やイラストが描かれたカード
【活動の流れ】
- 一人が感情カードを1枚選びます。
- カードの気持ちを、表情やジェスチャーで表現します。
- 他の子は、どんな気持ちを表しているのか考えます。
- 「どこを見てそう思った?」「どんなときにその気持ちになる?」と話を広げます。
ここで注意したいのは、「この表情だから絶対にこの気持ち」と決めつけないことです。
同じ「うれしい」でも、大きく笑う人もいれば静かに喜ぶ人もいます。表情や感じ方には個人差があることも一緒に確認すると、より丁寧な感情理解につながります。
表情を作ること自体に負担がある子には、無理に演じさせず、イラストカードを選ぶ・教師の表情を見て考えるなど、参加方法を変えて構いません。
7.【観察・行動調整】リーダーさがしゲーム
みんなで同じ動きをしながら、「誰が動きを変えているリーダーなのか」を探すゲームです。

【ねらい】
- 周囲の動きに注目する
- 見た動きをまねる
- 注意を向け続ける
- 簡単なルールに沿って集団活動に参加する
【活動の流れ】
- 全員で輪になります。
- 一人、リーダーを探す役を決めます。
- 探す役に見えないように、残った子どもの中からリーダーを決めます。
- リーダーが手拍子・頭を触る・腕を動かすなど、簡単な動きを始めます。
- 他の子はリーダーの動きをまねします。
- 探す役は、みんなの動きを観察してリーダーを考えます。
低学年では、最初から「気づかれないように動きを変える」ことが難しい場合があります。
その場合は、教師が最初のリーダーを担当したり、動きを3種類程度に絞ったりすると分かりやすくなります。
また、当てられる・当てられないことが負担になる子がいる場合は、勝敗を強調せず、「みんなの動きをよく見つけられたね」と観察した過程を評価すると参加しやすくなります。
体を動かしながら「止まる・動く」の切り替えを練習したい場合は、ストップ&ゴーもおすすめです。
低学年の自立活動をうまく進める5つのポイント
同じ活動でも、提示の仕方やルールによって、子どもの取り組みやすさは大きく変わります。
① ルールは短く、見て分かるようにする
低学年では、長い説明だけでは活動のイメージを持ちにくいことがあります。
教師が実際にやって見せたり、絵カードや手順カードを使ったりして、「何をすればいいか」が見て分かる状態を作りましょう。
② 最初は選択肢を少なくする
選択肢が多すぎると、考えること自体が負担になる子もいます。
最初は二択から始め、慣れてきたら少しずつ選択肢を増やすと取り組みやすくなります。
③ 勝ち負けより「できたこと」を見る
ゲーム形式は楽しく取り組みやすい一方で、負けることへの不安が強い子もいます。
「勝った・負けた」だけではなく、
- 最後まで参加できた
- 友達の話を聞けた
- 自分で選べた
- 困ったときに先生へ伝えられた
といった、その子の目標に沿った姿を評価することが大切です。
④ 「できなかった」理由を観察する
活動中にうまくできない姿が見られたときは、「やる気がない」と捉えるのではなく、何が難しかったのかを考えます。
- 説明が長かったのか
- 刺激が多かったのか
- 友達との距離が近すぎたのか
- 失敗することが不安だったのか
- 言葉だけでは理解しにくかったのか
こうした観察が、次の支援を考える材料になります。
⑤ 活動後に短く振り返る
活動をして終わりではなく、最後に短い振り返りを入れることで、自分の学びに気づきやすくなります。
低学年では長い文章を書かせる必要はありません。
「楽しかった?」
「できたことは?」
「次はどうしたい?」
と問いかけ、表情マークや三段階評価、指差しなどで答える方法でも十分です。
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今回は、低学年の子どもにも取り入れやすい自立活動の実践例を7つ紹介しました。
- わたしのトリセツ作り|自己理解
- スリーヒントクイズ|コミュニケーション
- どっちがすき?ゲーム|自己選択・自己決定
- アンガーマネジメント|感情理解・行動調整
- 動物ものまねゲーム|身体の動き・模倣
- 表情ジェスチャーゲーム|感情理解・コミュニケーション
- リーダーさがしゲーム|観察・行動調整
どの活動も、実施すること自体が目的ではありません。
「この子は今、何に困っているのか」
「どんな力が身につくと、学校生活が少し過ごしやすくなるのか」
を考え、その目標につながる活動を選ぶことが大切です。
そして、活動中の子どもの姿をよく観察し、うまくいったことや難しかったことを次の支援へつなげていきましょう。
まずは、目の前の子どもが「やってみたい」と思えそうな活動を一つ選び、無理のないところから取り入れてみてください。
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