「知的障害のある子に、ひらがなをどう教えればいいのだろう?」
「何度練習しても文字を覚えられない」
「書く練習になると嫌がってしまう」
このような悩みを持つ保護者の方や、特別支援学級・放課後等デイサービスなどで支援に関わる方も多いと思います。
知的障害のある子のひらがな学習では、一般的なドリルを繰り返すよりも、「今どこまでできるのか」を確認し、課題を小さく分けることが大切です。
例えば、まだ「あ」と読めなくても、見本と同じ「あ」を探すことはできるかもしれません。
そこでこの記事では、特別支援学級での実践も踏まえながら、「見る・選ぶ・合わせる」マッチング学習から始めるひらがなの覚え方を紹介します。
まずは教材を使っている様子をご覧ください
この記事でわかること
・知的障害のある子がひらがなでつまずくときに確認したいこと
・「書く」前からできるひらがなの練習
・マッチングを使った段階的な覚え方
・最初の音に気づくための支援
・選択肢の減らし方や声かけ
・無料で試せるひらがな教材
・ひらがなからカタカナへ進むときの考え方
知的障害でひらがなが読めない?まず「どこまでできるか」を確認しよう
「もうすぐ小学生なのに、ひらがなが読めない」
「周りの子は読めるのに、うちの子はなかなか覚えられない」
このような姿を見ると、心配になるかもしれません。
ただし、ひらがなが読めないことだけで、知的障害や発達障害の有無を判断することはできません。
文字を読むためには、いくつかの力が関係しています。
- 文字の形を見分ける:「ぬ」と「め」などの違いに気づく
- ことばの音に気づく:「いぬ」の最初の音が「い」だと捉える
- 文字と音を結びつける:「い」を見て「い」と読める
- 覚えておく:一度学習した文字を次の場面でも思い出す
- 注意を向ける:必要な文字や手がかりを見る
同じ「ひらがなが読めない」という姿でも、難しいところは子どもによって異なります。
そのため、まずは、
同じ文字を合わせられる?
↓
2〜3枚から文字を選べる?
↓
文字を見て読める?
↓
ことばの最初の音が分かる?
↓
読めるけれど書けない?
というように、「何ができて、どこから難しくなるのか」を見てみてください。
年齢だけで「遅れている」と決めなくてもいい
幼児期の文字への興味や習得時期には個人差があります。
そのため、「○歳なら何文字読めなければいけない」と年齢だけで判断するよりも、今どのような方法なら文字に気づけるのかを見ることが大切です。
例えば、
- 自分の名前に入っている文字なら分かる
- 好きな食べ物の最初の文字なら分かる
- 見本があれば同じ文字を探せる
- 2択なら選べる
- 大人と一緒なら読める
といった姿も、すべて学習のスタート地点になります。
知的障害のある子の場合も、学年の学習内容に無理に合わせるのではなく、現在の理解に合った課題から少しずつ積み上げていくことが大切です。
「まだ全部読めない」という見方だけでなく、
「今は何ならできる?」
という視点で見てみてください。
知的障害のある子のひらがな覚え方|3つのステップ
私は、いきなり「読んで」「書いて」と求めるのではなく、まず文字を見て操作するところから始める方法をよく使います。
STEP1|同じ文字を「形」として合わせる
最初は文字の読み方が分からなくても構いません。
例えば、見本の「あ」に、同じ「あ」のカードを合わせます。
あ → あ
という活動です。
「文字を読む」のではなく、まず「同じ形を見つける」ところから始めます。
パズルや絵合わせに近いため、文字学習への入り口として使いやすい子もいます。


STEP2|「はじめの音」に気づく
同じ文字を見つける活動に慣れてきたら、ことばの音と文字を結びつけます。
例えば、
いぬ →「い」
あり →「あ」
ねこ →「ね」
というように、ことばの最初の音に注目します。

ここで大切なのは、子どもが文字を覚えていないからできないとは限らないことです。
例えば、「いぬ」ということばを聞いて、最初の音が「い」だと捉えること自体が難しい場合があります。
その場合は、文字カードを繰り返すだけでなく、ことばを音に分けたり、最初の音を探したりする遊びを取り入れる方法もあります。
濁音や拗音なども、子どもの理解に合わせて少しずつ広げていきます。


STEP3|身近なことばや生活と結びつける
文字だけを単独で覚えるのではなく、子どもが知っているものと結びつけます。
例えば、
- 色:あか・あお・きいろ
- 形:まる・さんかく・しかく
- 物:いぬ・ねこ・くるま
- 動作:はく・みがく・たべる
- 季節や曜日など、生活の中で繰り返し触れることば
などです。
子どもにとって意味のあることばと文字を結びつけることで、文字だけを覚える課題より取り組みやすくなることがあります。

ひらがなの読みから詳しく確認したい場合はこちら
「読めない」と「書けない」を分けて考えながら、マッチングから始める方法を詳しく紹介しています。
軽度知的障害のある子には「量を減らす」「選択肢を減らす」工夫を
教材そのものが同じでも、どのように提示するかによって難しさは大きく変わります。
例えば、46文字の中から「あ」を探すことが難しい子でも、
「あ」と「い」の2枚なら選べる
ことがあります。
その場合は、最初から多くの選択肢を見せる必要はありません。
2枚から選ぶ
↓
3枚に増やす
↓
5枚に増やす
↓
少しずつ探す範囲を広げる
「5枚ではできなかった。でも2枚ならできた」
これは大切な学習の情報です。
「できない」とまとめて考えるのではなく、どの程度の支援があればできるのかを見ていきます。
1回の課題量も減らしていい
1回に10問取り組む必要はありません。
集中が続きにくい子なら、最初は2問、3問でも構いません。
たくさん取り組んで嫌になって終わるよりも、
「できた」と感じられるところで終わる
ことを優先する場合もあります。
「一人でできる」だけをゴールにしない
最初は大人と一緒だった。
次は2択ならできた。
その次はヒントだけでできた。
最後に一人でできた。
このように、必要な支援が減っていること自体が成長です。
ひらがなマッチング教材|書く前から使える全140ページ
こうした考え方をもとに作成したのが、ひらがなマッチング教材です。
文字を書くことだけを目的にせず、
- 同じ文字を探す
- 絵とことばを合わせる
- はじめの文字を選ぶ
- 色や形などの概念とことばを結びつける
- 濁音・半濁音・拗音などへ広げる
といった課題に段階的に取り組めるようにしています。
教材の3つの特徴
- 書き込み式ではない:カードを選んで置いたり貼ったりできるため、書字とは別の方法で理解を確認できます。
- 繰り返し使いやすい:ラミネートや面ファスナーを使えば、同じ課題に繰り返し取り組めます。
- スモールステップで調整できる:教材を全部順番に進める必要はなく、子どもの現在の理解に合うページだけを選べます。
「教材の難易度に子どもを合わせる」のではなく、子どもに合わせて教材の出し方を変えることを大切にしてください。
マジックテープ教材の作り方
教材は紙のままでも使えますが、繰り返し使用する場合は、ラミネートとマジックテープ(面ファスナー)を使う方法があります。
作り方
- PDFを印刷する
- 教材本体と切り取りカードをラミネートする
- カードを枠に沿って切る
- 教材側とカードの裏側に面ファスナーを貼る
面ファスナーは、私は丸型とロール型を用途によって使い分けています。
- 丸型:剥がしてそのまま貼れるため、少量の教材を作るときに便利
- ロール型:必要な大きさに切れるため、大量制作や接着面の調整に便利
間違えたときの声かけ|すぐに「違う」と言う前に
子どもが間違えたとき、すぐに答えを伝えるのではなく、ヒントを一段ずつ出す方法があります。
例えば「いぬ」の文字を選ぶ課題なら、
ヒント①
「この絵は何かな?」
ヒント②
「い・ぬ。最初は何の音かな?」
ヒント③
「『い』と『う』ならどっちかな?」
ヒント④
「これは『い』だよ。いぬの『い』だね」
大切なのは、正解するまで困らせ続けることではありません。
少しの支援があればできる状態を作り、慣れてきたら支援を減らすことです。
ほめるときは「何ができたか」を具体的に
「すごい!」だけでなく、
- 「同じ文字を自分で見つけたね」
- 「最初の音をよく聞けたね」
- 「今日は2枚から一人で選べたね」
- 「前より先生のヒントが少なくてもできたね」
と、何ができるようになったのかを具体的に伝えてみてください。
【無料サンプル】ひらがな教材5枚をダウンロード
「この学習方法が合うか試してみたい」という方向けに、ひらがな教材の無料サンプル5枚を用意しています。
ひらがなマッチング教材 完全版+指導書
無料サンプルを使ってみて、
「もう少したくさんのことばで取り組みたい」
「濁音・半濁音・拗音などにも広げたい」
「どのように支援すればよいかも知りたい」
という場合は、完全版も用意しています。
完全版は全140ページで、教材だけでなく、実際の指導で使うための資料もセットにしています。
ひらがなが少しずつ定着してきたら、カタカナへ
ひらがなを少しずつ読めるようになってきたら、次にカタカナへ進む子もいます。
カタカナでも考え方は同じです。
いきなり何度も書くのではなく、
見る → 選ぶ → 合わせる → 貼る → 読む
という活動から始めることができます。
ひらがなの次にカタカナへ進む場合はこちら
同じ文字を合わせるところから、はじめの文字、長音・小さい文字、ことば作りまで段階的に取り組める無料教材を紹介しています。
まとめ|知的障害のある子のひらがな学習は「できるところ」から
知的障害のある子がひらがなを覚えにくいとき、何度も書くことだけが方法ではありません。
まずは、
同じ文字を探せる?
2枚なら選べる?
最初の音に気づける?
カードなら答えられる?
と、今できるところを探してみてください。
そして、
見る → 探す → 選ぶ → 合わせる → 読む → 書く
と活動を細かく分け、できるところから一段ずつ進めていきます。
「2択ならできた」
「昨日よりヒントが少なくなった」
「先生と一緒なら読めた」
それもすべて、次の学習につながる大切な成長です。
できない部分だけを見るのではなく、前よりできるようになったことを一緒に見つけていく。
その積み重ねを大切にしていきたいですね。
参考・関連情報


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