「自立活動でコミュニケーションを扱いたいけれど、何を目標にすればいい?」
「ゲームは思いつくけれど、指導案にはどんなねらいを書けばいいのだろう?」
「話すことが苦手な子にも参加しやすい活動を考えたい」
特別支援学級で自立活動を担当していると、こうした悩みを感じることがあります。
コミュニケーションの自立活動というと、「友達と話すゲーム」や「発表する活動」を思い浮かべやすいかもしれません。
しかし、自立活動では活動を先に決めるのではなく、まず目の前の子どもがどのような場面で困っているのかを整理することが大切です。
コミュニケーションの自立活動を考える基本
子どもの困り感
↓
指導目標を考える
↓
関連する自立活動の項目を選ぶ
↓
具体的な指導内容を決める
↓
その手段としてゲームや活動を選ぶ
この記事では、小学校教員としての実践経験と特別支援学級での経験をもとに、コミュニケーションに関する自立活動の考え方、指導案の組み立て方、ねらいの例、実際に使いやすい5つの活動をまとめます。
小学校を中心に紹介しますが、テーマや発問を年齢に合わせて調整すれば、中学校の特別支援学級でも考え方は活用できます。
この記事で分かること
・自立活動の「コミュニケーション」で何を指導するか
・子どもの実態から「ねらい」を決める方法
・指導案に書ける目標・支援・評価の考え方
・小学校・中学校の支援学級で使いやすい活動例
・話すことだけに頼らないコミュニケーション支援
「まずコミュニケーションのゲームや実践例をたくさん見たい」という方は、こちらの記事に10種類まとめています。
- 自立活動の「コミュニケーション」とは?
- コミュニケーションの自立活動は「話せるようにする授業」だけではない
- 特別支援学級の自立活動|コミュニケーションの指導案を考える5ステップ
- 自立活動「コミュニケーション」の指導案例
- コミュニケーションを育む自立活動5つの活動例
- 活動例① 自己紹介ビンゴ|友達へ質問するきっかけを作る
- 活動例② わたしの〇〇ベスト3|自分の考えを整理して伝える
- 活動例③ 人間知恵の輪|協力しながら相談する
- 活動例④ こころカルタ|自分の気持ちを伝え、友達の話を聞く
- 活動例⑤ 「すきなのどっち?」|選択からコミュニケーションを始める
- 小学校と中学校ではコミュニケーション活動のテーマを調整する
- コミュニケーションの自立活動で避けたい3つの考え方
- 指導案に書く評価は「できた・できない」だけにしない
- コミュニケーションのゲーム・実践例をもっと探したい方へ
- まとめ|自立活動のコミュニケーションは「活動」より先に「困り感」を考える
- 参考資料
自立活動の「コミュニケーション」とは?
自立活動は、子どもの学習上・生活上の困難を踏まえて、必要な指導内容を一人ひとりに設定していくものです。
現在の自立活動は6区分27項目で整理されており、その一つが「6 コミュニケーション」です。
「コミュニケーション」には、次の5項目があります。
- コミュニケーションの基礎的能力に関すること
- 言語の受容と表出に関すること
- 言語の形成と活用に関すること
- コミュニケーション手段の選択と活用に関すること
- 状況に応じたコミュニケーションに関すること
ここで注意したいのは、「コミュニケーションの授業だから、この5項目を全部行う」という考え方ではないことです。
例えば、「困ったときに言葉が出にくい」という子でも、背景は一人ひとり異なります。
- 何と伝えればよいか分からない
- 強く緊張すると話し言葉が出にくい
- 相手の話を理解することに負担がある
- 言葉よりもカードや指差しの方が伝えやすい
- 誰に、いつ伝えればよいか分からない
必要な支援は、それぞれ違います。
そのため、まず子どもの姿を整理し、目標を決めた上で必要な項目を選びます。
また、実態によっては「コミュニケーション」だけでなく、「人間関係の形成」「心理的な安定」など、複数の区分を関連付けて考える場合もあります。
コミュニケーションの自立活動は「話せるようにする授業」だけではない
コミュニケーションというと、「自分から話す」「大きな声で話す」「人前で発表する」といった目標を設定しやすくなります。
しかし、コミュニケーションの方法は話し言葉だけではありません。
- 話し言葉
- 文字
- 指差し
- 身振り・ジェスチャー
- 表情
- 写真や絵カード
- コミュニケーションカード
- タブレットなどのICT機器
など、さまざまな方法があります。
「話せたか」だけを見るのではなく、本人が自分の思いや要求、困り感を周囲へ伝えられる方法を増やすという視点を大切にします。
特別支援学級の自立活動|コミュニケーションの指導案を考える5ステップ
ここからは、実際に指導案を考えるときの流れを紹介します。
① 日常生活のどこで困っているかを見る
最初に見るのは「できる・できない」だけではなく、どんな場面で困り感が生じているかです。
例
・休み時間に友達へ声をかけられない
・分からない問題があっても教師へ聞けない
・自分の話を続けてしまい、相手の話を聞くことが難しい
・嫌なことがあっても黙って我慢してしまう
・言葉で説明する負担が大きく、気持ちを伝えられない
② 「なぜ難しいのか」を考える
同じ「友達に話しかけられない」という姿でも、理由は同じとは限りません。
言葉が思いつかないのか、いつ話しかければよいか分からないのか、失敗への不安が強いのか、本人がそもそも会話を必要としていないのか。
本人とのやり取りや普段の様子から考えます。
③ 育てたい力を具体的にする
「コミュニケーション力を高める」だけでは、目標としては広すぎます。
例えば、
- 自分の好きなことを、選択肢から選んで相手へ伝える
- 困ったときに「教えてください」と教師へ伝える
- 友達の話を聞き、分かったことを一つ答える
- カード・指差し・言葉の中から自分に合う方法で要求を伝える
- 相手の返事を聞いてから次の行動を選ぶ
など、実際の行動として考えると活動や評価につなげやすくなります。
④ 目標に合う活動を選ぶ
ここで初めて、ゲームや教材を選びます。
例えば、友達へ質問する経験を増やしたいなら「自己紹介ビンゴ」、自分の好みを伝える経験なら「すきなのどっち?」というように、目標に合う活動を手段として選びます。
⑤ 日常生活で使えたかを見る
授業中に上手にできたかだけでなく、その後の学校生活で使えたかを見ます。
例えば授業で「助けを求める」練習をした後、算数で分からない問題があったときに本人から教師へ伝えられたら、
「今、分からないって自分から伝えられたね」
と具体的に振り返ります。
自立活動「コミュニケーション」の指導案例
ここでは、指導案を考えるイメージが持てるよう、簡単な例を紹介します。
| 児童の姿 | 自分から話し始めることへの負担が大きいが、二択であれば自分の好みを選ぶことができる。 |
|---|---|
| ねらい | 自分の好きなものを選び、本人が使いやすい方法で相手へ伝える経験を増やす。 |
| 関連する項目の例 | 「6 コミュニケーション」のうち、実態に応じて「言語の受容と表出」「コミュニケーション手段の選択と活用」「状況に応じたコミュニケーション」などを検討する。 |
| 活動 | 「すきなのどっち?」ゲーム |
| 教師の支援 | 写真やイラストを提示する。発話だけでなく、指差しやカード選択でも答えられるようにする。理由を答えることは必須にしない。 |
| 評価の視点 | 本人が選びやすい方法を使い、自分の好みを相手へ伝えようとしたか。 |
これはあくまで一例です。同じ活動でも、児童の実態や指導目標が違えば、ねらいや評価も変わります。
「このゲームなら自立活動のこの項目」と固定するのではなく、児童の実態から逆算して指導案を作ることが大切です。
コミュニケーションを育む自立活動5つの活動例
ここからは、私が特別支援学級で取り入れてきた活動の中から、コミュニケーションの自立活動として使いやすい5つを紹介します。
活動そのものを目的にせず、「この子に何を経験してほしいのか」を決めてから使ってください。
より多くのゲーム・実践例を探している方は、こちらの記事をご覧ください。
活動例① 自己紹介ビンゴ|友達へ質問するきっかけを作る
自己紹介ビンゴは、友達に質問しながらカードを埋めていく活動です。
「何を話せばいいか分からない」という子にも、質問内容が決まっていることで、会話のきっかけを作りやすくなります。

ねらいの例
- 友達へ質問する経験をする
- 相手の答えを聞く
- 自分と友達の共通点や違いに気づく
支援のポイント
「自由に友達へ質問して」と言われると負担が大きい子には、質問カードを用意したり、最初は教師が一緒に相手を探したりします。
話し言葉だけに限定せず、質問カードを見せる、指差す、教師が言葉を補うなどの方法も使えます。
また、全員の前での発表を必須にする必要もありません。
自己紹介ビンゴの詳しい進め方はこちらです。
活動例② わたしの〇〇ベスト3|自分の考えを整理して伝える
「好きな給食」「好きな遊び」「行ってみたい場所」など、一つのテーマについて自分のベスト3を考える活動です。
自由に話すよりも「3つ選ぶ」という枠があるため、自分の考えを整理しやすくなります。

ねらいの例
- 自分の好みや考えに気づく
- 相手に伝わるように表現する
- 友達の考えを聞き、自分との違いに気づく
支援のポイント
なかなか思いつかない子には、写真や選択肢を用意します。
「前に出て発表する」こと自体が目標でなければ、座ったまま話す、教師が代読する、カードを見せるといった方法でも構いません。
詳しい活動例はこちらです。
活動例③ 人間知恵の輪|協力しながら相談する
人間知恵の輪は、グループで相談しながら絡まった手をほどいていく活動です。
自然に「次どうする?」「こっちを通ってみよう」といった相談が生まれやすく、言葉だけではなく身振りや視線なども使います。
ねらいの例
- 仲間へ自分の考えを伝える
- 友達の提案を聞く
- 複数人で一つの課題に取り組む
支援のポイント
身体接触への負担が大きい子に、参加を無理に求めないことが重要です。
相談役、動きを確認する役、時間を計る役など、直接手をつながなくても参加できる方法を用意できます。
また、安全に動ける場所を確保し、ゆっくり動くことを最初に確認します。
人間知恵の輪の詳しい実践はこちらです。
活動例④ こころカルタ|自分の気持ちを伝え、友達の話を聞く
こころカルタは、気持ちや自分の経験について、カードをきっかけに話す活動です。
何もない状態から「自分の気持ちを話して」と求めるよりも、カードが会話のきっかけになります。
ねらいの例
- 自分の気持ちや経験について表現する
- 友達の感じ方や考えを知る
- 人によって感じ方が異なることに気づく
支援のポイント
自分の経験や気持ちを話す活動では、「パスしてもよい」ことを最初に確認します。
言いたくないことまで話す必要はありません。
また、友達の答えを笑ったり否定したりしないというルールも共有しておきます。
こころカルタを使った実践はこちらにまとめています。
活動例⑤ 「すきなのどっち?」|選択からコミュニケーションを始める
「犬と猫、どっちが好き?」「カレーとラーメンならどっち?」など、二つの選択肢から好きな方を選ぶ活動です。
自由回答よりも答える負担が少なく、コミュニケーションの最初の一歩として使いやすい活動です。
ねらいの例
- 自分の好みを選ぶ
- 自分の選択を相手へ伝える
- 友達の好みに関心を持つ
支援のポイント
答え方は発話だけに限定しません。
写真を指差す、カードを選ぶ、二つの場所のどちらかへ移動するなど、本人が参加しやすい方法を選びます。
慣れてきたら「どうして?」と理由を聞くこともできますが、理由を説明することまで必須にはしません。
詳しい活動はこちらです。
📘 選ぶことから会話を始めたい先生へ
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二つの選択肢から選ぶ活動を使って、自己表現や他者理解につなげるSST教材です。自由回答への負担が大きい子にも使いやすい形にしています。
※この教材は支援級パックにも収録されています。最新の収録内容・利用条件は販売ページでご確認ください。
小学校と中学校ではコミュニケーション活動のテーマを調整する
今回紹介した考え方や活動は、小学校だけに限定されるものではありません。
ただし、中学校では年齢に合ったテーマへ調整することが大切です。
例えば「すきなのどっち?」でも、小学校低学年なら「犬・猫」「カレー・ラーメン」などで十分ですが、中学生なら、
- 休日は家で過ごす?外出する?
- 一人で取り組む方が好き?誰かと一緒が好き?
- 困ったときは自分で考える?誰かに相談する?
- 将来やってみたいことは?
など、本人の生活や興味に近いテーマに変えることができます。
活動名をそのまま使うことより、その年齢・本人の生活上の困り感に合った課題へ調整することが重要です。
コミュニケーションの自立活動で避けたい3つの考え方
① 「全員がたくさん話すこと」を目標にする
話す量が多いことと、コミュニケーションが成立していることは同じではありません。
指差しやカードも含め、その子に合った方法で伝えられることを考えます。
② 診断名だけで活動を決める
同じ診断名であっても、得意なこと、苦手なこと、経験、環境は一人ひとり異なります。
「この診断だからこの活動」ではなく、実際の困り感から考えます。
③ ゲームが盛り上がれば成功と考える
自立活動では、ゲームが盛り上がったかよりも、設定した目標に対してどのような姿が見られたかを見ます。
静かにカードを一枚選べたことが、その子にとって大きな一歩の場合もあります。
指導案に書く評価は「できた・できない」だけにしない
コミュニケーションの評価では、「発表できた」「質問できた」といった結果だけに注目しないことも大切です。
例えば、
- 教師の選択肢があれば自分で選べた
- 友達の話を聞いて視線を向けていた
- カードを使えば自分から要求を伝えられた
- 最初は教師と一緒だったが、2回目は一人でできた
- 授業後の日常場面でも同じ方法を使えた
など、どのような支援があればできたのか、以前と比べて何が変わったのかも記録します。
自立活動の「めあて」と「振り返り」についてはこちらでも詳しく解説しています。
コミュニケーションのゲーム・実践例をもっと探したい方へ
この記事では、コミュニケーションに関する自立活動の考え方・指導案・ねらいを中心に解説しました。
実際に授業で使えるゲームや活動をさらに探したい場合は、こちらの記事で10種類紹介しています。
「考え方・指導案はこちらの記事」「具体的なゲーム集は10選記事」という形で使い分けてください。
✅ 自立活動・SSTの教材をまとめて準備したい先生へ
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まとめ|自立活動のコミュニケーションは「活動」より先に「困り感」を考える
特別支援学級でコミュニケーションの自立活動を考えるとき、最初からゲームや教材を決める必要はありません。
まず、
子どもの困り感
↓
指導目標
↓
必要な自立活動の項目
↓
具体的な指導内容
↓
活動・教材
という順番で考えます。
そして、コミュニケーションは話し言葉だけではありません。
言葉、文字、指差し、カード、ジェスチャー、ICTなど、本人が使いやすい方法を一緒に探すことも大切な自立活動です。
ゲームや教材は、その目標を実現するための手段として活用していきたいところです。
参考資料
自立活動の目標・内容・指導計画については、文部科学省「特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編」で確認できます。









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