【自立活動】「わたしのトリセツ」ワークシートで広がる自己理解※SST無料DLプリント付き

自立活動•SST

日々、子どもたちを預からせてもらっている立場として、私たち教師は彼らの表情や行動から「今、どんな気持ちなのか」「どんな関わりが合っているのか」を読み取ろうと努めています。しかしそれは決して簡単なことではありません。特に情緒に課題のある児童との関わりでは、言葉での表現が苦手な子も多く、戸惑う場面も少なくありません。

そこで本記事では、

情緒学級の自立活動で実践してきた「わたしのトリセツ(自己理解シート)」をご紹介します。このワークシートは、子ども自身が自分の好きなことや苦手なこと、困ったときにどうしてほしいかを整理し、周囲に伝えるためのサポートツールです。

自己理解を深めることは、情緒の安定につながります。自分の「好き」や「苦手」を知ることにぴったりの自立活動です👇

情緒の安定には、自分の気持ちを適切に表現する方法を身につけることが大切です。おすすめの自立活動はこちらから👇


自立活動で大切にしたい「自己理解」

自立活動は、子どもが自分らしく生活していくための土台を育む時間です。生活スキル、感情のコントロール、人との関わりなど、学びの幅は広く、その中でも「自己理解」はあらゆる力の起点となる重要なテーマです。

特別支援教育の現場では、困り感の裏にある“その子なりの理由”を理解することが欠かせません。そのためには、本人自身が「自分ってこんな人かも」と気づき、認めることが必要です。


ワークシート「わたしのトリセツ」とは?

「わたしのトリセツ」は、子どもが自分を知り、周囲に伝えることができるように設計された自己理解シートです。以下のような構成になっています

  • なまえ(またはニックネーム)
  • すきなこと・じかん
  • きらいなこと・にがてなこと
  • こんなとき、こうしてほしい(自分のトリセツ)
  • 自分のいいところ
  • これからできるようになりたいこと

文字だけでなく、イラストも入れて親しみやすく工夫しています。低学年の児童にも取り組みやすく、1対1の個別指導でもグループ活動でも活用できる内容です。

▶️ PDFダウンロードはこちらから
👉 わたしのトリセツ ワークシート(PDF)


実際の活用の流れと工夫

① 導入:自己紹介や関係づくりのタイミングで

年度当初や転入・新しい支援体制が始まる時期は、お互いを知る絶好の機会です。まずは教員が「先生のトリセツ」を書いて見せながら、一緒に取り組んでみると、子どもたちの緊張も和らぎます。

「先生はね、うるさい場所がちょっと苦手なんだよね。だから、静かに話してくれると嬉しいな。」

こうしたやりとりから、子どもも自然と「自分のこと」を語り始めます。

② 実施:安心して話せる時間と場を

1対1でじっくり関わるのが基本です。急がず、言葉にできない部分は選択肢から選んだり、イラストを指差してもOK。「こう書くと先生に伝わるよ」と少しずつ手伝いながら、子どもの中にある“ことばにならない気持ち”を形にしていきます。

③ 活用:支援会議・保護者面談の資料に

完成した「トリセツ」は、個別の支援計画や指導案の参考資料としても非常に有効です。また、保護者に共有することで、「学校での子どもの姿」が伝わりやすくなり、ご家庭との連携にもつながります。

「これ、家でも貼っています」という声をいただいたこともあります。


年間を通した活用のすすめ

この「わたしのトリセツ」は、一度作って終わりのシートではなく、その時々の成長や心の変化をとらえる“定点観測”としても役立ちます。

私はこれまでに、年間3回(年度当初・2学期中頃・学年末)のタイミングで取り組みました。

  • 1回目:自分を知る/信頼関係を築く
  • 2回目:変化に気づく/支援の見直し
  • 3回目:1年の振り返り/自己評価

目的を変えながら行うことで、児童自身の気づきも深まり、教員側も児童理解や個別の指導計画にリアルな言葉を反映させやすくなります。

例えば、2回目の記入で「にぎやかな中でも安心できる人がいると大丈夫」という表記が加わった子がいました。そこから、行事や合同活動でその子が安心できる人と一緒に活動できるよう、配慮した計画を立てることができました。


子どもの変化と可能性

このワークを継続して行う中で、以下のような変化が見られました

  • 自分の気持ちを整理して伝える力が育つ
  • 他者の“トリセツ”にも興味をもち、共感しようとする
  • 「こうしてほしい」と伝えることで、感情の爆発が減る
  • 支援者側も「その子に合った関わり」を具体的に考えやすくなる

ある児童は、「しっぱいしたときは何も言わずにちょっとそっとしておいて」と書いてくれました。それを見て、担任の先生も指導のタイミングを意識できるようになり、関係性が深まりました。


無理なく、でも大切に

この活動は、特別な教材や長い時間がなくても始められます。ただし、焦って進めたり、「全部書かせる」ことが目的になると、逆効果になる場合もあります。

大切なのは、「自分のことを大切にしていい」「先生はそれをちゃんと受け止めるよ」というメッセージを、丁寧に届けることです。


おわりに ― 小さな気づきが、支援の種になる

子どもが自分自身を知り、伝えられる力を育てること。
そして、教師や周囲の大人がその声に耳を傾けること。

このふたつが揃って初めて、安心できる学びと成長が生まれると感じています。

私たち教師は、子どもたちの一番近くにいる“読解者”でありたいと思います。
「わたしのトリセツ」は、その読み取りの一助になるものです。
日々の支援の中で、どうぞご活用いただければ嬉しいです。

📎 ダウンロードはこちらから(PDF
👉 「わたしのトリセツ」自己理解ワークシート(A4サイズ)


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