放課後等デイサービスのSST実践ガイド|今日から使える具体例10選と進め方

放課後等デイサービス

放課後等デイサービスのSST実践ガイド|活動例10選と進め方・振り返り方

「SSTを取り入れたいけれど、何から始めればいい?」
「ゲームは盛り上がるのに、日々の生活につながっているか分からない」

放課後等デイサービスで行うSST(ソーシャルスキルトレーニング)は、子どもに「正しい振る舞い」を一律に教える時間ではありません。本人が友達と遊びたい、困ったときに助けを求めたい、誘いを断りたいといった思いを確かめ、その子に合う方法を一緒に探す機会です。参加しない、見てから決める、別の伝え方を選ぶことも尊重します。

私は小学校の特別支援教育でSSTや自立活動に取り組み、放課後等デイサービスとは子どもの支援について連携してきました。この記事では、その実践を手がかりに、事業所で活動を考える際の進め方と具体例10選を紹介します。

放課後等デイサービスでSSTを始める前に

最初に確かめたいのは「どんな行動を直したいか」より、本人がどんな場面に参加したいか、何に困っているかです。友達に声をかけない子も、言い方が分からないのか、騒がしい場所が負担なのか、一人で過ごしたいのかで必要な支援は変わります。本人の言葉、表情、選択や普段の様子を見ながら考えます。

こども家庭庁の放課後等デイサービスガイドラインも、子どもの希望に応じた遊びや集団活動への参加、本人の思いや願いを受け止めることを重視しています。SSTも、本人の目標と日々の生活に結びつけて計画します。

個別支援計画で目標や支援内容をどう整理するかは、放課後等デイサービスの個別支援計画の記事で詳しく紹介しています。SSTで扱う場面も、その子の計画や日々の観察と照らして選びましょう。

SSTの進め方|短い活動から日常の場面へ

次は進行の一例です。時間や順番を固定せず、参加する子どもの体調、興味、理解しやすい方法に合わせて調整します。個別で試してから小集団に広げても、見学から始めても構いません。

  1. 場面を選ぶ:「友達の遊びに入りたい」「断りたい」など、本人にとって意味のある場面を確かめる。
  2. 方法を示す:言葉、絵カード、実演などから、本人が分かりやすい方法で選択肢を伝える。
  3. 試してみる:職員との練習や遊びの中で取り組む。見るだけ、途中で休むなどの参加方法も用意する。
  4. 振り返る:「何ができたか」だけでなく、本人はどう感じたか、支援や環境が合っていたかを確かめる。
  5. 生活につなぐ:本人が望む実際の場面で試すかを相談し、職員が見た反応を共有する。

例えば「誘いを断る」がテーマなら、職員が「今日は見ていたい」「あとで参加したい」と言う例を見せ、子どもが言葉・カード・身振りから伝えやすい方法を選びます。相手役には、断られたときにその意思を尊重する練習も用意します。無理にロールプレイをさせず、次に本人が使ってみたい場面があるかを聞きます。

放課後等デイサービスで使えるSSTの具体例10選

次の10例は、全員に順番どおり実施するメニューではありません。本人の希望と個別支援計画、事業所での様子に合うものを一つ選び、参加方法を調整してください。

① あいさつ・声かけを選ぶ

ねらい:相手と関わりたいときに、自分に合う伝え方を見つける。
進め方:「おはよう」「一緒に遊ぶ?」のほか、手を振る、カードを見せるなど複数の方法を職員が実演し、本人が選んで試す。
参加の工夫:返事や視線を強制しない。見学や職員相手の練習から始められるようにする。
振り返り:本人が使いやすかった方法と、相手の反応を確認する。

② 順番のあるゲーム

ねらい:順番や待ち時間を分かりやすくし、自分の希望も伝える。
進め方:すごろくや簡単なボードゲームで、順番をカードや目印で示す。待つ間にできる役割も用意する。
参加の工夫:勝敗が負担なら協力型に変える。短い回数で終えたり、見てから参加したりできるようにする。
振り返り:順番の示し方やゲームの長さが本人に合っていたかを確かめる。

③ 「すきなのどっち?」で好みを伝える

ねらい:自分の好みを伝え、人によって選択が違うことに気づく。
進め方:食べ物や遊びの二択を提示し、指さしやカード、言葉で答える。「どちらでもない」も選べるようにする。
参加の工夫:理由を言うことは必須にしない。話したくない話題は替える。
振り返り:自分の選択が受け止められたか、友達の選択を聞くことが負担にならなかったかを確かめる。

④ 場面カードで「どうしたい?」を考える

ねらい:困った場面で、本人が選べる方法や助けを整理する。
進め方:「遊びに誘われたけれど今日は休みたい」など身近な場面を一つ提示し、断る、後で参加する、職員に相談するなどの選択肢を出す。
参加の工夫:一つの正解を当てる問題にしない。経験を皆の前で話させない。
振り返り:選択肢が本人の気持ちに合っていたかを聞く。

⑤ こころカルタで気持ちを表す

ねらい:今の気持ちに気づき、表し方を増やす。
進め方:「最近うれしかったことは?」などの問いを選び、言葉、絵、カードで答える。職員も自分の答えを短く示す。
参加の工夫:答えたくない問いはパスできるようにし、個人的な話を求めない。
振り返り:話すこと自体が安心できる活動だったかを確かめる。

⑥ ストップ&ゴーで合図を共有する

ねらい:合図を理解し、動き方を自分で調整できる環境をつくる。
進め方:色カードや音など分かりやすい合図で動く・止まる遊びをする。最初に職員が見本を示す。
参加の工夫:走らず歩く、座って手を動かすなど参加方法を選べるようにする。音が苦手な子には視覚的な合図を用意する。
振り返り:合図の種類や速さ、場所の広さが合っていたかを確認する。

⑦ 感情カードで「私はこう感じた」を伝える

ねらい:自分の感じ方を表し、必要な助けを伝える。
進め方:架空の場面を見て、気持ちのカードを選ぶ。「私は困ったから、少し待ってほしい」などの言い方も職員が示す。
参加の工夫:同じ場面でも感じ方は人によって違うと確認する。言葉にしにくい場合はカードだけでもよい。
振り返り:伝え方の選択肢が増えたか、相手役がどう受け止めたかを見る。

⑧ ロールプレイで頼み方・断り方を試す

ねらい:助けを頼むことと、誘いを断ることの両方を尊重する。
進め方:「手伝って」「今日はやめておく」などの場面を職員同士が短く演じ、本人が使ってみたい表現を選ぶ。
参加の工夫:子ども同士で演じることを必須にせず、人形やカードで示してもよい。断られた相手の返し方も扱う。
振り返り:本人にとって自然な言い方だったかを確かめる。

⑨ ワークシートで自分のペースで整理する

ねらい:活動中に話しにくかったことを、落ち着いて整理する。
進め方:「どんな場面だった?」「次はどうしたい?」を絵、選択肢、短い言葉などで記入する。
参加の工夫:書字が負担なら指さしや口頭、職員による代筆を選べるようにする。書いたものを全員の前で発表させない。
振り返り:本人が考えを表しやすい形式になっていたかを見る。

⑩ すごろくで経験を振り返る

ねらい:これまで試した伝え方や、次に使ってみたい方法を振り返る。
進め方:「困ったときに相談した」「友達に好きな遊びを伝えた」など、実際の生活に近いマスを選ぶ。活動で学んだことを本人の言葉で確認する。
参加の工夫:成功・失敗を競わず、パスや別の答えも認める。
振り返り:本人が使いたいと思う方法と、職員が環境を整える点を一つずつ決める。

SSTがうまくいかないときに見直したいこと

  • 参加しにくい:人数、音、活動時間、説明の長さを変えられないか。見学や個別参加を選べるか。
  • ゲームで終わる:「今日楽しかったこと」に加え、本人が次に試したい場面を聞けているか。
  • 練習した方法を使わない:本人がその方法を使いたいか、実際の場面で相手や職員の協力があるか。
  • 職員によって関わりが違う:本人の希望、試す支援、見ておきたい反応を短い申し送りで共有できるか。

「できなかった」で終えず、活動の条件や職員の支援を見直すことも大切です。例えばあいさつの練習で声が出なかったとき、視線や発声を評価する前に、本人が関わりたいと思っていたか、別の方法なら伝えられたかを確かめます。

職員同士で、活動後の支援まで話し合う

SSTの活動を事業所で続けるなら、「今週はこのゲームをする」だけでなく、「誰のどんな希望や困りごとに関わる活動か」「参加しやすくするには何を変えるか」「普段の場面で何を見るか」まで職員で共有します。個別支援計画の目標と活動がどうつながるかも確認します。

職員がスライドとワークを使い、子どもの事例を話し合う研修のイメージ
活動のねらいと本人の反応を、事例に沿って職員同士で考えるイメージ。

例えば順番を待つゲームなら、「待てた回数」だけでなく、待ち時間が分かる工夫をしたか、本人は続けたいと感じたか、友達とどうやり取りしたかを共有します。事業所研修のテーマの選び方と、スライド・台本・ワークを使った事例検討は、放課後等デイサービスの職員研修の記事で教材の見本とともに紹介しています。

SSTを、職員みんなで考える研修へ

「支援力向上研修システム|事業所研修版」では、基本第9講で遊びとSSTを通した社会参加の支援を扱います。子どもの参加したい気持ち、伝え方、必要な助けを職員で考え、活動後の反応を振り返るための教材です。

スライド・講師用資料・受講者ワークを使って、同じ事例を見ながら話し合えます。教材見本と収録内容を確認し、事業所の課題に合うかをご検討ください。

事業所研修版の教材見本・収録内容を見る(note)

この教材は事業所内で子ども理解と支援を考えるためのものです。児発管の資格取得に必要な研修や、事業所で実施すべき法定研修に代わるものではありません。

よくある質問

SSTは必ず集団で行いますか?

いいえ。本人の希望や負担に合わせて、個別、少人数、見学などから始められます。集団への参加そのものを目標にする前に、本人がどんな関わりを望むかを確かめます。

1回の活動は何分にすればよいですか?

一律の時間を決める必要はありません。数分の練習や普段の遊びの中のやり取りから始め、本人の反応を見て調整します。説明よりも、試す時間と振り返る機会を確保することを意識します。

個別支援計画とSSTはどうつなげますか?

本人と家族の意向、アセスメント、計画上の目標を確認したうえで、活動のねらいと支援方法を考えます。活動後は子どもの反応と職員が試した支援を記録し、必要に応じて方法や計画の見直しに生かします。

まとめ|本人が使いたい方法を、生活の中へ

放課後等デイサービスのSSTでは、活動例を増やすことよりも、本人が何を望み、どんな方法なら参加しやすいかを考えることが出発点です。まずは10例から一つ選び、本人が試してみたいかを確かめてください。実施後は子どもの反応と環境の工夫を職員で共有し、日々の支援につなげていきましょう。

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