「個別の指導計画と個別の教育支援計画って、何が違うんだろう?」
年度初めに2つの計画を前にして、迷った経験がある先生も多いのではないでしょうか。
- どちらも似たような内容になってしまう
- 本人・保護者の願いはどちらに書く?
- 長期目標と短期目標で分ければいい?
- 2つとも作らなければいけない?
- 実際にどう書き分ければいいのか分からない
名前が似ているため混同しやすいのですが、2つの計画にはそれぞれ異なる役割があります。
まず結論から整理すると、
個別の教育支援計画
→ 長期的な視点で「必要な支援をつなぐ」計画
個別の指導計画
→ 学校で「何を、どのように指導するか」を具体化する計画です。
ただし、2つはまったく別々に作るものではありません。
個別の教育支援計画で整理した長期的な支援の方向性を、個別の指導計画や日々の授業・支援へつなげていくことが大切です。
私は特別支援学級を担任していたとき、この2つの計画を作成・活用してきました。
この記事では制度上の違いだけでなく、同じ1人の子どもについて「個別の教育支援計画にはこう書く」「個別の指導計画にはこう書く」という具体的な書き分け方まで紹介します。
【結論】個別の指導計画と個別の教育支援計画の違い
まずは、2つの違いを一覧で確認してみましょう。
| 比較 | 個別の教育支援計画 | 個別の指導計画 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 長期的な視点で必要な支援をつなぐ | 学校で行う具体的な指導を明確にする |
| 中心となる視点 | 本人を取り巻く支援全体 | 学校での具体的な指導 |
| 主な内容 | 本人・保護者の意向、支援目標、学校や関係機関による支援など | 実態、指導目標、指導内容、指導方法など |
| 関わる範囲 | 学校・家庭・医療・福祉等との連携 | 学校での授業・学校生活を中心とした指導 |
| 時間的な視点 | 長期的・継続的な支援 | より具体的な指導期間を見通す |
| 活用する場面 | 連携・支援の共有・進学等の引き継ぎ | 授業・自立活動・学校生活・評価 |
| 一言でいうと | 「支援をつなぐ」 | 「指導を具体化する」 |
文部科学省は、個別の教育支援計画について、家庭や医療・福祉等の関係機関と連携し、長期的な視点で教育的支援を行うための計画としています。
一方、個別の指導計画は、一人ひとりの実態に応じて、指導目標・指導内容・指導方法を明確にするために学校で作成する計画です。

参考:文部科学省
▶ 「個別の教育支援計画と個別の指導計画」
個別の教育支援計画とは?
個別の教育支援計画は、本人を長期的な視点で捉え、学校・家庭・関係機関などが必要な支援をつないでいくための計画です。
子どもの生活は、学校だけで完結しているわけではありません。
例えば、子どもによっては、
- 家庭
- 学校
- 医療機関
- 福祉サービス
- 相談支援機関
など、複数の場所や人から支援を受けています。
それぞれが別々の方向を向くのではなく、本人や保護者の意向を踏まえながら、「この子を長期的にどのように支えていくか」を共有していくために活用するのが個別の教育支援計画です。
個別の教育支援計画には何を書く?
具体的な様式は自治体や学校等によって異なりますが、例えば次のような内容が整理されます。
- 本人の願いや意向
- 保護者の願いや意向
- 本人の実態や得意なこと・困っていること
- 長期的な支援の目標
- 学校で行う支援
- 家庭での状況
- 医療・福祉等の関係機関との連携
- 合理的配慮の提供状況
- 進級・進学等で引き継ぎたい情報
大切なのは、単に情報をたくさん書くことではありません。
本人にとって必要な支援を整理し、それぞれの関係者がどのようにつながるのかを明確にすることです。
本人の願いを学校での目標につなげる実践については、こちらの記事でも紹介しています。
関係機関と共有するときは個人情報にも配慮する
個別の教育支援計画には、本人や家庭、医療・福祉などに関わる情報が含まれることがあります。
関係機関と連携して活用する際には、保護者の同意を得るなど、個人情報を適切に取り扱うことも大切です。
個別の指導計画とは?
個別の指導計画は、一人ひとりの実態に応じて、学校で行う具体的な指導目標・指導内容・指導方法などを明確にする計画です。
例えば、個別の教育支援計画に、
「自分に合った方法を使いながら、見通しをもって生活できるようにする」
という長期的な支援の方向性が示されていたとします。
学校では、そこからさらに、
- 今、学校ではどんな場面で困っている?
- 今学期・今年度にどんな姿を目指す?
- 教師はどのような指導をする?
- どのような支援を用意する?
- どのように評価する?
と具体化します。
個別の指導計画の詳しい作り方は、実態把握から長期目標・短期目標、支援、評価までこちらの記事でまとめています。
個別の教育支援計画と個別の指導計画の7つの違い
ここから、2つの違いをもう少し具体的に見ていきます。
① 目的が違う
最も大きな違いは目的です。
個別の教育支援計画は、本人に必要な支援を長期的・継続的につなぐために活用します。
個別の指導計画は、その方向性などを踏まえ、学校での具体的な指導を明確にします。
② 時間的な視点が違う
個別の教育支援計画では、就学前から学校卒業後までを含めた長期的な視点が重視されます。
一方、個別の指導計画では、学校で実際に指導する内容をより具体的な期間で設定し、評価・改善していきます。
ただし、「教育支援計画は必ず○年間」「指導計画は必ず1年間」という全国一律の区分で理解するのは適切ではありません。
長期・短期という期間だけでなく、「支援全体をつなぐ計画なのか、具体的な指導を示す計画なのか」という目的の違いを押さえておくと分かりやすいです。
③ 関わる人・機関が違う
個別の教育支援計画では、学校だけでなく、家庭や医療・福祉等の関係機関との連携が重要になります。
個別の指導計画は学校で作成し、担任や関係する教職員が、実際の指導に活用します。
④ 書く内容が違う
個別の教育支援計画では、本人・保護者の意向や長期的な支援目標、学校・家庭・関係機関の支援など、支援の全体像を整理します。
個別の指導計画では、現在の実態、指導目標、指導内容、具体的な方法など、学校で行う指導を具体化します。
⑤ 活用する場面が違う
個別の教育支援計画は、保護者・関係機関との連携や、進級・進学等で支援をつなぐ場面で重要になります。
個別の指導計画は、授業、自立活動、学校生活での支援、学期末等の評価・見直しなど、日々の指導で活用します。
⑥ 評価・見直しの視点が違う
どちらの計画も、作成して終わりではなく、実施状況を評価し、必要に応じて改善していくことが重要です。
ただし個別の指導計画では、特に「設定した目標に対して、どのような指導や支援が有効だったか」を振り返り、次の指導へつなげます。
⑦ 引き継ぎでの役割が違う
個別の教育支援計画は、進級・進学等で長期的な支援を切れ目なくつなぐための重要な資料になります。
個別の指導計画では、学校で「どのような目標に取り組み、どの支援が有効だったのか」という具体的な指導情報を次の担任等へつなげることができます。
個別の教育支援計画と個別の指導計画はどうつながる?
2つの違いを理解するときに、もう一つ重要なのが「関係性」です。
2つを別々の書類として考えるのではなく、次のようにつなげて考えると分かりやすくなります。
個別の教育支援計画
長期的な支援の方向性
↓
個別の指導計画
学校での具体的な目標・内容・方法
↓
日々の授業・支援
↓
評価
↓
必要に応じて見直す
山口県教育委員会も、個別の指導計画について、個別の教育支援計画に示された長期的な支援の方針を踏まえ、具体的な指導目標・内容・方法等を示すものと整理しています。

参考:山口県教育委員会
▶ 「個別の指導計画と個別の教育支援計画との関係」
ここまでが制度上の違いです。
ただ、実際に計画を書くときには、
「違いは分かった。でも、同じ子どものことを2つの計画にどう書き分ければいいの?」
という疑問が残ると思います。
そこで、ここからがこの記事で最もお伝えしたい部分です。
【具体例】同じ子どもを2つの計画にどう書き分ける?
一人の子どもを想定して、個別の教育支援計画と個別の指導計画にどのように書き分けるか考えてみます。
【想定する子どもの姿】
予定変更があると不安が大きくなり、「次は何をするの?」と何度も教師に確認することがあります。一方、写真付きの予定表や変更カードで事前に見通しをもてると、自分で次の活動を確認して行動できることがあります。
個別の教育支援計画では「支援の全体像」を書く
個別の教育支援計画では、学校の一場面だけではなく、本人・保護者の意向や家庭・関係機関とのつながりも含めて考えます。
個別の教育支援計画の記入例
本人の願い
急に予定が変わっても、安心して学校で過ごしたい。
保護者の願い
予定が変わったときにも、自分に合った方法で確認し、落ち着いて行動できるようになってほしい。
長期的な支援目標
自分に合った方法で見通しをもち、不安を感じたときにも必要な支援を受けながら安心して生活できる場面を増やす。
学校での支援
一日の予定を視覚的に示し、変更がある場合には可能な範囲で事前に本人へ知らせる。
家庭との共有
本人が予定変更に対応しやすかった方法について、学校と家庭で情報を共有する。
関係機関との連携
必要に応じて、不安が高まったときの対処方法や本人に分かりやすい伝え方について情報を共有する。
このように、個別の教育支援計画では、本人を長期的に支えるための方向性と、それぞれの場でどのような支援を行うのかを整理します。
個別の指導計画では「学校での具体的な指導」を書く
同じ子どもについて、個別の指導計画では学校で実際に指導できる形まで具体化します。
個別の指導計画の記入例
実態
予定変更があると教師へ繰り返し確認することがある。一方、写真付きの予定表や変更カードがあると、自分で確認して次の活動へ移れることがある。
長期目標
自分に必要な手掛かりを使いながら、見通しをもって学校生活を送ることができる。
短期目標
予定変更があったとき、変更カードを確認して次の活動を把握することができる。
指導・支援
朝の会で一日の予定を確認し、変更箇所には変更カードを提示する。変更時には「何が変わるか」「その次に何をするか」を本人と確認する。
評価
変更カードを確認することで、教師へ繰り返し尋ねることが減り、自分で次の活動へ移れる場面が増えた。今後は教師の声かけを減らしながら、自分で確認できる場面を広げていく。
左右で比較すると違いが分かりやすい
| 個別の教育支援計画 | 個別の指導計画 |
|---|---|
| 本人を長期的にどう支えるか | 学校で何を指導するか |
| 本人・保護者の意向 | 現在の具体的な実態 |
| 長期的な支援目標 | 長期・短期の指導目標 |
| 学校・家庭・関係機関の支援 | 教師が行う具体的な指導・手立て |
| 支援をつなぐ | 指導して評価する |
同じ子どものことを書いていても、2つの計画の目的が違います。
個別の教育支援計画では「この子を長期的にどう支えるか」を整理し、
個別の指導計画では「そのために学校で今、何をどう指導するか」を具体化すると考えると分かりやすくなります。

個別の指導計画の具体的な文例をさらに見たい方は、こちらに学年別の記入例をまとめています。
2つの計画は両方必要?特別支援学級・通級・通常学級での扱い
「違いは分かったけれど、そもそも2つとも作る必要があるの?」という疑問もあると思います。
小学校学習指導要領解説では、特別支援学級に在籍する児童や通級による指導を受ける児童について、個別の教育支援計画と個別の指導計画を作成し、効果的に活用することが示されています。
一方、通常学級に在籍する障害のある児童などについても、個々の実態を的確に把握し、両計画を作成・活用することに努めることとされています。
| 学びの場 | 個別の教育支援計画 | 個別の指導計画 |
|---|---|---|
| 特別支援学級 | 作成し、効果的に活用 | 作成し、効果的に活用 |
| 通級による指導 | 作成し、効果的に活用 | 作成し、効果的に活用 |
| 通常学級に在籍する障害のある児童等 | 作成・活用に努める | 作成・活用に努める |

この部分は、「診断があるかどうか」だけで単純に判断するのではなく、子どもの実態を的確に把握することが前提になります。
参考:文部科学省
▶ 「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編」
2つの計画を作るときに避けたい3つのこと
2つの計画の違いを理解したうえで、実際に作成するときに気を付けたいことを3つ紹介します。
① 2つの計画に同じ文章をそのままコピーする
同じ子どもについて作成するため、内容が一部関連することは当然あります。
しかし、2つの計画は作成する目的が異なります。
ほとんどすべての欄が同じ文章になっている場合は、「支援の全体像」と「学校での具体的な指導」を分けて考えられているかを確認してみましょう。
② 作成してファイルにしまったままにする
どちらの計画も「作成すること」そのものが目的ではありません。
個別の教育支援計画は、連携や引き継ぎに活用する。
個別の指導計画は、日々の授業や評価に活用する。
実際の支援や指導につながって初めて、計画を作る意味があります。
③ 「長期か短期か」だけで違いを覚える
「個別の教育支援計画=長期、個別の指導計画=短期」と覚えるだけでは、2つの本質的な違いが見えにくくなります。
期間より先に目的を見る
個別の教育支援計画
→ 支援を長期的につなぐ
個別の指導計画
→ 学校での指導を具体化する
この違いを押さえておけば、実際の書き分けもしやすくなります。
個別の指導計画と個別の教育支援計画についてよくある質問
個別の教育支援計画と個別の指導計画は両方必要ですか?
特別支援学級に在籍する児童や通級による指導を受ける児童については、学習指導要領上、両方の計画を作成し、効果的に活用することが位置付けられています。通常学級に在籍する障害のある児童などについても、実態を的確に把握して両計画を作成・活用することに努めることとされています。
2つの計画に同じ内容を書いてもよいですか?
本人の実態や意向など、関連する情報が共通することはあります。ただし、個別の教育支援計画は支援全体をつなぐこと、個別の指導計画は学校での具体的な指導を明確にすることが主な役割です。目的に応じて内容を整理することが大切です。
個別の教育支援計画は誰が作るのですか?
学校が中心となり、本人・保護者の意向を踏まえながら、必要に応じて関係する教職員や医療・福祉等の関係機関との連携を図って作成・活用します。一人の担任だけで完結させる計画ではありません。
個別の指導計画は誰が作るのですか?
学校で作成する計画で、実際には担任などが中心になりながら、関係する教職員と連携して作成・活用していきます。重要なのは、計画に示した目標や指導方法を日々の授業に生かすことです。
2つの計画には全国共通の様式がありますか?
全国の学校がまったく同一の様式を使うわけではありません。文部科学省も個別の教育支援計画の参考様式を示していますが、実際の様式や項目は自治体・学校等によって異なる場合があります。
通常学級でも個別の教育支援計画や個別の指導計画を作りますか?
通常学級に在籍する障害のある児童などについても、個々の実態を的確に把握し、両計画を作成・活用することに努めることが学習指導要領に示されています。
「個別の支援計画」と「個別の教育支援計画」は違うのですか?
「個別の支援計画」は、教育・医療・福祉等を含めて支援をつなぐ計画を指す言葉として使われることがあります。そのうち、学校が教育の立場から中心となって作成するものを「個別の教育支援計画」と整理する例があります。実際の名称や様式については、自治体や関係機関の運用も確認してください。
個別の指導計画を書くときに文例で迷う先生へ
2つの計画の違いが分かっても、実際に個別の指導計画を書こうとすると、
- 長期目標をどう書く?
- 短期目標はどこまで具体化する?
- 支援・手立てをどう文章にする?
- 評価欄には何を書く?
と迷うこともあると思います。
個別の指導計画の具体例をもっと見たい方へ
学年別・教科別の記入例や、長期目標・自立活動の具体例も別記事で詳しく紹介しています。
まとめ|違いは「支援をつなぐ」か「指導を具体化する」か
個別の教育支援計画と個別の指導計画は、名前が似ていますが役割は異なります。
個別の教育支援計画
→ 本人・保護者の意向を踏まえ、学校・家庭・関係機関等が長期的に支援をつなぐ
個別の指導計画
→ 一人ひとりの実態を踏まえ、学校で具体的な指導目標・内容・方法を明確にする
ただし、大切なのは2つを別々の書類として作ることではありません。
個別の教育支援計画で整理した長期的な支援の方向性を、個別の指導計画へ落とし込み、さらに日々の授業・支援へつなげていく。
そして、子どもの姿を見ながら計画を評価し、必要に応じて支援や指導を見直していくことが重要です。
2つの計画を書くときに迷ったら、まず、
これは「この子を長期的にどう支えるか」を書いているのか?
それとも「学校で今、何をどう指導するか」を書いているのか?
と考えてみると、2つの計画の役割を整理しやすくなると思います。

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