「ひらがなを何度練習しても、なかなか覚えられない」
「『きって』を書くと『きて』になってしまう」
「しりとりがうまく続かない」
「言葉の最初や最後の音を聞いても、どの音か分からない」
読み書きの学習をしていると、このような姿が見られることがあります。
そんなとき、
「もっとひらがなを書かせた方がいいのかな?」
と考えることもあるかもしれません。
もちろん、読むこと・書くことの練習は大切です。
しかし、その前の段階で、
につまずいている場合があります。
そこで大切になるのが、音韻認識(音韻意識)です。
この記事では、音韻認識を育てるトレーニングを、
「音を分ける → 見つける → 操作する → 特殊音節に気づく → 読み書きにつなげる」
という順番で紹介します。
授業や個別学習でそのまま使える無料ワークシートも用意していますので、ぜひ実際の支援にも活用してください。
音韻認識とは?読み書きの土台になる力
音韻認識とは、簡単に言えば、
です。
例えば「りんご」という言葉なら、
り・ん・ご
と、3つの音に分けて捉えます。
さらに、
- 最初の音は「り」
- 真ん中の音は「ん」
- 最後の音は「ご」
と、一つ一つの音に注意を向けることも音韻認識に関係します。

音韻認識と音韻意識の違いは?
「音韻認識」と「音韻意識」は、教育や読み書き支援の場面では近い意味で使われることがあります。
この記事では検索されることの多い「音韻認識」を中心に表記しますが、基本的には「言葉の音に気づき、分けたり操作したりする力」を扱っています。
音韻認識につまずきがある子に見られることがある姿
例えば、次のような姿が見られることがあります。
- しりとりが続きにくい
- 言葉の最初の音が分かりにくい
- 最後の音を取り出すことが難しい
- 言葉を一音ずつに分けにくい
- 「っ」を書き落とすことがある
- 「ゃ・ゅ・ょ」の入った言葉が難しい
- 聞いた言葉をひらがなにすることが難しい
ただし、こうした姿があるからといって、必ず音韻認識だけに原因があるとは限りません。
子どもの実態を見ながら、
「それとも、その前の“音を捉えるところ”で困っているのか」
と考えてみることが大切です。
ひらがなと音の結びつきにも難しさがある場合は
音韻認識だけでなく、「聞こえた音とひらがなを結びつけること」につまずいている子もいます。
絵とひらがなを対応させながら、少しずつ文字と音を結びつけていける ひらがなマッチング教材も用意しています。
音韻認識トレーニングは「簡単→難しい」の順番が大切
音韻認識のトレーニングで大切なのは、いきなり難しい課題をさせないことです。
私は、次のように段階を分けて考えると取り組みやすいと感じています。
↓
STEP2 音を見つける
↓
STEP3 音を操作する
↓
STEP4 促音・拗音・長音などに気づく
↓
STEP5 読み書きにつなげる
この順番を意識すると、
「この子には今、何をすればいいのだろう?」
という教師側の迷いも少なくなります。

音韻認識を育てるトレーニング7選
① 手拍子で言葉を音に分ける
まずは道具を使わず、手拍子から始めます。
例えば「さかな」なら、
さ 👏 か 👏 な 👏
というように、一つの音につき1回手を叩きます。
最初は、
- いぬ
- ねこ
- かさ
など、2音程度の短い言葉がおすすめです。
慣れてきたら、
- さかな
- りんご
- たまご
と少しずつ長くしていきます。
「ゆっくり言ってみよう」
「音が聞こえたら1回手をたたこう」
「何回たたいたかな?」
② おはじき法で「音」を見えるようにする
手拍子よりさらに分かりやすくする方法が、おはじき法です。
例えば「りんご」なら、
り ● ん ● ご ●
というように、一音ずつ言いながら、おはじきを1個ずつ置いていきます。
音は目では見えません。
しかし、おはじきを使うことで、
これは、音だけでは捉えにくい子にとって大きな手がかりになります。
おはじき法のやり方
- 絵カードを見せる
- 子どもに言葉を言ってもらう
- 一音ずつゆっくり言う
- 一つの音につき、おはじきを1個置く
- 「最初の音は?」「最後の音は?」と聞く
いきなり子どもにさせる必要はありません。
まずは教師がお手本を見せます。

「先生と一緒にやってみよう」
「『り・ん・ご』。音が一つ聞こえたら、一つ置くよ」
「3つに分かれたね」
「最初の音は何だった?」
③ はじめの音を見つける
音を分けられるようになってきたら、次は特定の音を取り出します。
例えば、
「りんごの最初の音は?」
と聞きます。
答えは「り」です。
難しい場合は、おはじきを並べた状態で、
「一番最初はどれだったかな?」
と尋ねます。
最初から耳だけで答えさせるのではなく、見える手がかりを使いながら考えられるようにすることがポイントです。
④ 最後の音を見つけて、しりとりにつなげる
次は、言葉の最後の音です。
例えば、
りんご → 最後は「ご」
最後の音が分かるようになると、しりとりにもつながります。
しりとりは、
前の言葉の最後の音を取り出し、その音から始まる言葉を探す
という活動です。
そのため、「遊び」に見えますが、音に注意を向ける経験を作りやすい活動でもあります。
関連記事
しりとりだけでなく、おはじき、一音削除など、遊びながら音韻意識を育てる活動をもっと知りたい方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
⑤ 「この音、入っている?」ゲーム
次は、言葉の中に特定の音があるか探します。
例えば、
「『か』が入っているのは、さかな? りんご?」
と尋ねます。
最初は2択にすると取り組みやすくなります。
慣れてきたら、
「『か』が入っている言葉を、このカードの中から全部探そう」
というゲームにもできます。
絵カードをたくさん並べて探すだけでも、子どもにとってはクイズ感覚の活動になります。
⑥ 一音削除ゲーム「たぬき言葉」
音を分けたり取り出したりできるようになってきたら、次は音を操作する活動に進みます。
例えば、
たぬき −「ぬ」= たき
です。
ほかにも、
- さくら −「く」= さら
- くるま −「る」= くま
- たいこ −「い」= たこ
などがあります。
子どもにとっては、
「音を一つ取っただけで違う言葉になった!」
という発見になります。

一音削除は、音を分けるだけの活動より難しくなります。
できない場合は、おはじきを並べて一つ隠すなど、もう一度「見える形」に戻して考えます。
⑦ 促音・拗音・長音を体で表す
読み書きで特につまずきやすいのが、特殊音節です。
促音「っ」
例えば、
きっぷ
「っ」のところでは、一瞬音が止まります。
そこで、
手を叩いて一瞬止まる
という動作を取り入れます。
拗音「ゃ・ゅ・ょ」
例えば、
きゃべつ
「き」「や」と別々に言うのではなく、「きゃ」と一まとまりになっています。
両手をひねってから一回手を叩くなど、音が一つにまとまる感覚を身体で表します。
長音
例えば、
ケーキ
「ケー」と音が伸びます。
手を横にスライドさせながら、
「ケーーキ」
と発音すると、伸びる音を感じやすくなります。
特殊音節では、文字だけを見せるのではなく、
というように、複数の方法を組み合わせていくことがポイントです。

どの音韻認識トレーニングから始めればいい?
子どもの姿によって、取り組む活動は変わります。
| 子どもの姿 | おすすめの活動 |
|---|---|
| 音の数が分かりにくい | 手拍子・おはじき法 |
| 最初の音が分かりにくい | 語頭音の抽出 |
| しりとりが難しい | 最後の音を取り出す活動 |
| 音を分けられるようになってきた | 一音削除 |
| 「っ」を書き落とす | 促音の動作化 |
| 「ゃ・ゅ・ょ」が難しい | 拗音の動作化 |
| 伸ばす音が分かりにくい | 長音の動作化 |
大切なのは、学年だけで活動を決めないことです。
目の前の子どもが、
「どこまでは分かっていて、どこから難しくなるのか」
を見るようにします。

音韻認識トレーニングがうまくいかないときの5つの支援
① 短い言葉に戻す
5音が難しければ、2音や3音に戻します。
難易度を下げることは後退ではありません。
子どもが自分で考えられるところまで課題を調整することが教師の支援です。
② 文字を見せすぎない
音を聞くことが目的なのに、最初から文字を見せると、文字を読んで答える場合があります。
そのため、
絵だけ → 音 → 必要なら文字
という順番も有効です。
③ 見える手がかりを使う
おはじき、ます、絵カード、ひらがなチップなどを使います。
「耳だけで分かること」にこだわる必要はありません。
④ 一度にたくさんやらない
10問、20問と続けるよりも、
「今日は5問」
でも構いません。
むしろ、
「もう少しやりたい」
くらいで終われる方が、次の活動への意欲につながることがあります。
⑤ 正解だけを褒めない
答えを間違えた場合でも、
「最初の音は分かったね」
「3つに分けられたね」
「おはじきを使ったら、自分で分かったね」
と、できた部分を具体的に返します。
「すごい!」だけではなく、
ことを大切にします。
10〜15分でできる音韻認識トレーニングの授業例
音韻認識の活動だけで45分続ける必要はありません。
短時間で区切って取り組む方法がおすすめです。
① 2分|絵カードを選ぶ
「今日はどれにする?」と子どもに選んでもらいます。
② 4分|おはじきで音を分ける
2〜4枚程度のカードを使います。
③ 3分|音探しクイズ
「最初の音は?」「最後の音は?」と確認します。
④ 3分|ひらがなチップ
聞こえた音を文字に結びつけます。
⑤ 1分|振り返り
「今日分かったこと」「できたこと」を一つ確認します。
長く続けることよりも、
子どもが意欲的に取り組める時間で終えること
を優先します。

無料で使える音韻認識トレーニングプリント
ここまで紹介した「おはじき法」をすぐに実践できるように、無料教材を作成しました。
無料版には、
- 絵カード
- 文字なし絵カード
- ますシート
- ひらがなチップ
- 基本10単語
を収録しています。
印刷して切り取れば、その日の個別学習や自立活動でも使えます。
さらに取り組みたい子には音韻意識トレーニング教材フルセット
無料版で音を分ける活動に慣れてきたら、その先のトレーニングにも進めます。
今回作成したフルセットでは、
↓
一音削除「たぬき言葉」
↓
促音「っ」
↓
拗音「ゃ・ゅ・ょ」
↓
長音
へ、段階的に取り組めるようにしています。
さらに、
- 文字あり絵カード
- 文字なし絵カード
- ひらがなチップ
- 書き込みワーク
- 一音削除カード
- 特殊音節ワーク
だけではなく、
授業のねらい・授業構成・教師の声かけ・支援のコツ・評価・次の段階へ進む目安をまとめた指導書
も付けています。
教材を渡して、
「さて、どう使おう?」
となるのではなく、
を目指して作りました。
無料版を使ってみて、
「この方法で、もう少し段階的に取り組みたい」
と思った方は、noteでとも教材の中身を詳しく紹介しています。
音韻認識トレーニングについてよくある質問
音韻認識トレーニングは何歳からできますか?
年齢だけで区切る必要はありません。言葉遊びとして取り入れられる活動も多いため、子どもの発達や興味に合わせて簡単なものから始めます。
小学生でも音韻認識トレーニングは必要ですか?
必要になることがあります。特に、ひらがなの読み書きや促音・拗音などにつまずきが見られる場合、文字を書く練習だけでなく、その前の「音」に注目した活動を試す価値があります。
しりとりも音韻認識のトレーニングになりますか?
言葉の最後の音を取り出し、その音から始まる言葉を探すため、音に注意を向ける活動として取り入れやすい遊びです。
ひらがなを書かせる前に取り組んだ方がいいですか?
必ずしも「音韻認識が完成してから文字」という順番にする必要はありません。
絵・音・動作・ひらがなチップ・書字などを行き来しながら、その子に分かりやすい方法を探します。
促音や拗音が苦手な子にはどうすればいいですか?
「っ」を書かせる、「ゃ」を覚えさせるだけではなく、まず音の違いを体験できるようにします。
手拍子、止まる動き、音をまとめる動き、伸ばす動きなどを使い、耳だけでは捉えにくい音を身体でも感じられるようにすると取り組みやすくなります。
無料で使える音韻認識のプリントはありますか?
はい。絵カード・ますシート・ひらがなチップをまとめた無料版を用意しています。
まとめ|「書けない」の前に、まず音に気づく経験を
読み書きにつまずいている子を見ると、
「もっと書かせた方がいいのかな」
と考えたくなることがあります。
しかし、その子の困り感をもう少し細かく見ていくと、
文字を書く前の、
「言葉を音として捉えるところ」
で難しさを感じていることがあります。
そんなときは、
- 手を叩く
- おはじきを置く
- 絵カードを見る
- 音を消して遊ぶ
- 体を動かして音を表す
- ひらがなチップを並べる
など、子どもが分かる方法に変えてみます。
目指したいのは、
ワークをたくさん終わらせることではありません。
子ども自身が、
「音に分けてみよう」
「ここで音が止まっているな」
と、自分で確かめる方法を持てるようになることです。
まずは無料教材から試してみてください。
その子に合った「できる方法」を見つける、一つのきっかけになればうれしいです。

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