特別支援教育で教材を準備していると、
「市販の教材では、今の子には少し難しい」
「書く活動になると、なかなか取り組めない」
「好きなものを使えば取り組めそうだけど、ちょうどよい教材が見つからない」
と感じることがあります。
そんなときに役立つのが、子どもの実態に合わせて調整できる手作り教材です。
手作りといっても、凝った教材を一から作る必要はありません。
課題を少し簡単にする、文字を大きくする、選択肢を減らす、書く代わりにカードを選べるようにする。
こうした小さな調整も、立派な教材づくりです。
この記事では、特別支援学級で教材を作ってきた経験をもとに、マッチング教材・ひらがな教材・SST教材などのアイデアと、無料で使えるプリントを紹介します。
📋 この記事で分かること
- 特別支援の手作り教材で大切にしたい考え方
- ラミネート・マジックテープを使ったマッチング教材の作り方
- 書くことが負担になる子へのひらがな学習の工夫
- SST・自立活動で使える教材の選び方
- 無料プリントを使うときのポイント
- 教材を一から作る時間がない場合の選択肢
特別支援の手作り教材で一番大切なのは「その子に合わせること」
特別支援教育の教材・教具は、見た目がきれいであることや、種類をたくさん用意することが目的ではありません。
大切なのは、
今、この子は何に困っているのか?
↓
何ができるようになりたいのか?
↓
どんな提示方法なら取り組みやすいのか?
という順番で考えることです。
例えば、同じ「ひらがなの学習」でも、
- 文字を見ることはできるが、書字が負担になる
- 似た形の文字を見分けることが難しい
- 文字と音がまだ結び付いていない
- 課題量が多いと取り組み始めにくい
- 好きなものが題材になると取り組みやすい
など、困り方はそれぞれ違います。
教材は、診断名や学年だけで決めるのではなく、本人の学習状況・経験・興味関心・得意な方法などを見ながら調整します。
「発達障害だから視覚支援」ではなく、本人の実態から考える
特別支援教育では、写真・絵カード・文字カード・実物などの視覚的な情報が役立つことがあります。
ただし、すべての発達障害のある子どもが「視覚優位」というわけではありません。
例えば、
- 言葉だけより、絵も一緒にある方が理解しやすい
- 写真より実物の方が分かりやすい
- 文字の情報がある方が安心する
- 一度にたくさん見せるとかえって混乱する
など、取り組みやすい提示方法は子どもによって異なります。
「この子には、どんな見せ方・伝え方が分かりやすいか」を確かめながら教材を選びます。
スモールステップは「少し頑張ればできる」に調整する
一度にたくさんの課題を提示すると、取り組み始めること自体が難しくなる場合があります。
そんなときは、課題量や選択肢を調整します。
例えば、ひらがなであれば、最初から五十音すべてを扱わず、
- 自分の名前に入っている文字
- 好きな食べ物の頭文字
- すでに分かっている文字+新しい文字1つ
などから始める方法があります。
「できる課題を繰り返す」だけでも、「難しい課題へどんどん進む」だけでもなく、本人の現在の力を見ながら少しずつ調整することがポイントです。

特別支援の手作り教材|マッチング教材の作り方
特別支援学級で使いやすい教材の一つが、マッチング教材です。
「同じものを見つける」「絵と文字を組み合わせる」「形や色を対応させる」など、目的に応じて内容を変えられます。
マッチング教材は何を練習するために使う?
一口にマッチング教材といっても、目的はさまざまです。
- 同じ絵・写真を対応させる
- 色や形を見分ける
- 物と名前を結び付ける
- 絵とひらがなを対応させる
- 季節・曜日・生活動作などを整理する
- 気持ちや行動を選択肢から選ぶ
「マッチングをさせること」が目標ではなく、何を理解したり、どんな方法で表現したりするために使うのかを先に考えます。
基本的な材料
私がよく使うのは、次のような材料です。
- 厚めのコピー用紙や画用紙
- ラミネートフィルム
- ラミネーター
- 面ファスナー(マジックテープ)
- はさみ・角丸カッターなど
すべてをそろえる必要はありません。
まず紙のカードで試し、繰り返し使えそうな教材だけラミネートする方法でも十分です。
作るときに意識したい3つのポイント
① 情報を増やしすぎない
今見てほしい絵・文字・色が分かりやすくなるよう、必要のない装飾は減らします。② 操作しやすさを確認する
カードの大きさ・厚さ・面ファスナーの強さなどは、本人の手指の使い方に合わせます。③ 実際に使ってから直す
最初から完成品を目指さず、「剥がしにくい」「選択肢が多すぎる」など、使って分かったことを修正します。
ラミネート&マジックテープ式にすると繰り返し使いやすい
「書く」ことに負担がある場合でも、カードを選んで貼る方法なら取り組みやすくなることがあります。
ただし、マジックテープ式だから必ず取り組みやすいわけではありません。
剥がす音や感触が気になる子もいるため、本人の様子を見ながら使います。
教材の使用シーン動画
※動画は教材の使い方の一例です。カードの枚数や提示方法は、子どもの実態に合わせて調整してください。
マッチング教材を手作りする時間がない場合は?
子どもに合わせて一から作ることには大きなメリットがあります。
一方で、毎日の授業準備の中で何十枚もの教材を印刷・作成するのは簡単ではありません。
その場合は、完成済みのPDF教材をもとに、
- 必要なページだけ印刷する
- カードの数を減らす
- 本人に必要な部分だけラミネートする
- 選択肢を隠して使う
など、既存教材を個別化する方法もあります。
📚 マッチング教材をまとめて準備したい方へ

発達支援マッチング教材セット
認知・生活・コミュニケーションなどに使えるマッチング教材と、ひらがな学習に使える教材をまとめています。必要なページを選び、子どもの実態に合わせて調整して使えます。
単品で必要な教材だけ使う方法もあります
セットではなく、必要なテーマだけ選びたい場合は、次の教材があります。
- ラミネート&マジックテープ式SSTワーク+指導書
気持ち・学校生活・コミュニケーションなどを扱うSST教材です。

- 発達支援・SSTマッチング教材+指導書
認知の基礎から、生活・自己理解などまで扱える教材です。

- ひらがなマッチング教材+指導マニュアル
書字だけに頼らず、文字を見分けたり、絵・音・文字を対応させたりする学習に使えます。

特別支援の手作り教材【国語】|ひらがな学習の工夫
ひらがなの学習というと、何度も書いて覚える方法を思い浮かべるかもしれません。
しかし、書字そのものに負担がある場合、文字を理解する学習と「書く」活動をいったん分けることもできます。
まず「どこでつまずいているか」を確認する
例えば、ひらがなの学習では、
- 音を聞いて文字を選べるか
- 文字を見て音を答えられるか
- 同じ文字を見つけられるか
- 似た文字を見分けられるか
- 単語の最初の音に気づけるか
- 書くことだけが難しいのか
などによって、必要な教材が変わります。
「ひらがなが書けない=ひらがなを理解していない」とは限りません。
ひらがなの読みから確認したい方へ
同じ文字を合わせる、2〜3枚から選ぶ、絵と文字を結びつけるなど、「書く前」からできるひらがなの練習方法を詳しく紹介しています。
→ 発達障害のある子のひらがな練習|マッチングから始める方法書かずにできるひらがな学習の例
例えば、次のような活動があります。
- 同じ文字を探す:「り」と同じカードを選ぶ。
- 絵と文字をつなぐ:「りんご」の絵と「り」を対応させる。
- 音を聞いて選ぶ:教師が「ね」と言い、複数の文字から選ぶ。
- 文字を組み合わせる:知っている文字を使って身近な単語を作る。
- 触って確かめる:必要に応じて粘土や凹凸のある文字なども使う。
どの方法を選ぶかは、本人の理解の仕方や興味、手指の状態などから考えます。
書く練習が必要な場合も、理解する活動を十分に行ったうえで、その子に合う量から取り入れていきます。
ひらがなが少しずつ安定してきたら、カタカナへ
カタカナも、いきなり何度も書くのではなく、「見る・選ぶ・合わせる・貼る」ところから始められます。基本文字から、はじめの文字、長音や小さい文字、ことば作りへ段階的に進める無料プリントを用意しています。
→ カタカナ練習プリント|見て・選んで・貼って学べる教材【無料PDFあり】特別支援の自立活動で使える手作り教材|SST・感情理解
手作り教材は、国語や算数だけでなく、自立活動やSSTでも活用できます。
ただし、SST教材を使えば自動的に自立活動になるわけではありません。
自立活動では、まず一人ひとりの実態や学習上・生活上の困難から目標を設定し、その目標に必要な内容や活動を考えます。
気持ちを言葉にしにくいときのカード教材
「どうしたの?」と聞かれても、すぐ言葉にできない子がいます。
そのような場合、感情カードや場面カードが、本人の状態を整理したり伝えたりする手がかりになることがあります。
例えば、
などがあります。
感情カードは「正しい気持ちを当てる」ためではなく、
「自分ならどう感じる?」
「同じ出来事でも違う感じ方がある?」
「困ったときに何があると助かる?」
と考えるために使います。
「選ぶ」ことから始めるコミュニケーション教材
自由に話すことが難しい子には、二つ程度の選択肢から選ぶ活動が取り組みやすいことがあります。
「すきなのどっち」を使った自立活動では、好きなものを選び、自分なりの方法で伝え、友達の答えを聞く活動を紹介しています。
必ずどちらかを選ばせるのではなく、「どっちも」「分からない」「パス」なども認めます。
学校生活の場面を考えるSST絵カード
学校生活で起こりやすい場面をイラストで示す方法もあります。
SST絵カードの無料教材と使い方では、場面を見ながら「何が起きているか」「どんな方法がありそうか」を考える活動を紹介しています。
「このときは必ずこうする」と一つの正解を覚えさせるのではなく、本人に使えそうな方法を増やすことを大切にします。
特別支援教育の無料プリントを活用する
教材をすべて手作りしなくても、無料プリントをもとに調整する方法があります。
当サイトでは、自立活動・SSTを中心に無料教材を公開しています。
「こんなときどうする?」で学校生活の場面を考える
例えば、
- 廊下で友達とぶつかった
- 困ったけれど言葉が出なかった
- 友達との考えが違った
といった具体的な場面をイラストで確認し、使えそうな方法を考える活動があります。
無料プリントをそのまま全員に配らない
無料教材だからといって、同じプリントをそのまま全員に使う必要はありません。
例えば、
- 設問を一つだけ使う
- 教師が読み上げる
- 書く代わりに指差しで答える
- 選択肢を二つに減らす
- 本人に合わない部分は使わない
など、必要に応じて調整します。
「正解できたか」だけで評価しない
SSTや自立活動のプリントでは、正解・不正解だけを見ると、その子の変化を見落としてしまうことがあります。
例えば、
- カードから自分の気持ちを選べた
- 「分からない」と伝えられた
- 先生に助けを求められた
- 前回とは違う方法も考えられた
- 友達の考えを否定せず聞けた
といった姿も大切な見取りになります。
自立活動で教材を使うときに知っておきたい6区分27項目
自立活動には、正式に6区分27項目が示されています。
ただし、教材ごとに「これは3-(2)の教材」と固定して使うものではありません。
まず、
子どもの実態・困りごと
↓
指導目標
↓
必要な自立活動の項目
↓
具体的な活動・教材
という順番で考えます。
例えば感情カードでも、子どもの目標によって、
- 2-(1) 情緒の安定に関すること
- 3-(2) 他者の意図や感情の理解に関すること
- 3-(3) 自己の理解と行動の調整に関すること
- 6-(2) 言語の受容と表出に関すること
- 6-(5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること
などとの関連を検討できます。
6区分27項目を教材のチェックリストのように全部当てはめる必要はありません。
まとめ|「手作りすること」より「その子に合わせること」が大切
特別支援教育の手作り教材で最も大切なのは、豪華な教材を作ることではありません。
目の前の子どもを見ながら、
- 課題量を減らす
- 文字を大きくする
- 絵や実物を加える
- 書く代わりに選べるようにする
- カードを持ちやすい大きさにする
- 本人の興味のある題材へ変える
といった調整をすることが大切です。
手作り教材・無料教材・市販教材のどれが一番優れている、ということでもありません。
その子の目標に合い、本人が取り組みやすく、教師が継続して使えるものを選びます。
まずはこの記事で紹介した無料教材や、身近な材料で作れる簡単なマッチング教材から試してみてください。
✅ 自立活動・SST教材もまとめて準備したい方へ

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