
「特別支援学校が望ましいという話を聞いたけれど、特別支援学級では難しいのかな?」
「地域の学校で友達と過ごすことも大切にしたい」
「どちらなら、わが子が安心して学べるのだろう?」
就学先を考えるとき、特別支援学級と特別支援学校のどちらがよいのか迷う保護者は少なくありません。
ただし、両者を「障害が軽ければ特別支援学級、重ければ特別支援学校」と単純に分けることはできません。就学先は、障害の状態だけでなく、必要な支援の内容、本人・保護者の意見、地域の教育体制、専門家の意見などを踏まえて総合的に検討されます。
また、同じ「特別支援学級」「特別支援学校」であっても、在籍人数、教職員の配置、交流及び共同学習の機会、医療的ケアの実施体制、専門職との連携方法などは学校や自治体によって異なります。
この記事では、全国共通の制度と、学校ごとに確認すべきことを分けながら、両者の違いと就学先を考えるポイントを解説します。
この記事でわかること
- 特別支援学級と特別支援学校の制度上の違い
- 国が示す学級編制の標準
- 専門職・医療的ケア・教育課程を比べるときの注意点
- 就学相談や学校見学で確認したいポイント
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特別支援学級と特別支援学校の違い
まずは、両者の主な違いを一覧で確認します。
| 比較項目 | 特別支援学級 | 特別支援学校 |
|---|---|---|
| 在籍先 | 小学校・中学校等に設置された学級に在籍する | 視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱の教育を行う学校に在籍する |
| 学級編制の標準 | 公立小・中学校では1学級8人 | 公立の小学部・中学部では1学級6人、重複障害の学級は3人。高等部は8人、重複障害の学級は3人 |
| 教育課程 | 小・中学校の学習指導要領を基本とし、実態に応じて特別の教育課程を編成できる | 小・中学校等に準ずる教育に加えて自立活動を行う。障害の状態等に応じた弾力的な教育課程を編成できる |
| 地域の子どもとの学び | 同じ学校の通常の学級と交流及び共同学習を行うことがある。教科・時間・方法は個別に異なる | 地域の学校等と交流及び共同学習を行うことがある。頻度や内容は学校・地域によって異なる |
| 通学 | 居住地域の学校に通うことが多いが、学区や設置状況によって異なる | 通学区域が広い場合がある。スクールバスの有無、利用条件、保護者送迎の必要性は学校ごとに確認が必要 |
| 専門性・支援体制 | 担任の経験や免許状、支援員、特別支援教育コーディネーター、巡回相談等の体制は学校・自治体によって異なる | 障害特性に応じた教育や設備、地域支援のセンター的機能を備える。教職員構成や専門職との連携体制は学校によって異なる |
| 医療的ケア・専門職 | 医療的ケア看護職員の配置・巡回や外部専門家との連携を行う場合がある。対応内容は個別確認が必要 | 医療的ケア看護職員を配置する学校や、PT・OT・ST等と連携する学校がある。ただし、すべての学校に常駐しているわけではない |
| 進路 | 本人の学習状況や希望に応じて検討する。中学校・高等学校等への進学先は一人ひとり異なる | 進学・就労・福祉サービスの利用などを個別に検討する。学校や学部によって進路指導の内容は異なる |
なお、「そもそも特別支援学級とはどんな学級なのか」を知りたい方は、対象・種類・授業・教育課程・自立活動までまとめたこちらの記事も参考にしてください。
「標準人数」と実際の在籍人数は同じとは限りません
特別支援学校小学部・中学部の「6人(重複障害の学級は3人)」、特別支援学級の「8人」は、国が示す公立学校の学級編制の標準です。「どの学級も必ずその人数」という意味ではありません。児童生徒数や自治体の基準等により、実際の在籍人数は標準より少ない場合があります。
特別支援学級とは
特別支援学級は、小学校・中学校等に設置される学級です。対象となる障害種は、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害です。
子どもは特別支援学級に在籍し、個々の実態に応じた指導を受けます。小・中学校の学習指導要領を基本としながら、必要に応じて特別支援学校の学習指導要領を参考にした特別の教育課程を編成することもできます。
特別支援学級で期待できること
- 少人数の学級で、実態に応じた学習内容や方法を設定できる
- 同じ学校の通常の学級と交流及び共同学習を行う機会がある
- 居住地域の友達や地域とのつながりを保ちやすい場合がある
入学前に確認したいこと
- 在籍人数、学年構成、担任数、支援員の配置
- 個別学習と集団学習をどのように組み合わせているか
- 交流及び共同学習を行う教科・時間数・支援方法
- 落ち着ける場所、バリアフリー、感覚面への配慮
- 欠席が続いたときや困りごとが生じたときの相談体制
特別支援学級と「通級による指導」は別の制度です
特別支援学級では、その学級に在籍します。一方、通級による指導では通常の学級に在籍し、必要な時間に通級指導教室などで障害に応じた特別の指導を受けます。「通級」と「固定級」を特別支援学級の二種類として扱う説明は正確ではありません。
特別支援学校とは
特別支援学校は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱のある幼児児童生徒に対し、幼稚園・小学校・中学校・高等学校に準ずる教育と、障害による学習上または生活上の困難を改善・克服するための教育を行う学校です。
学校教育法施行令第22条の3には、特別支援学校の就学対象となる障害の程度が示されています。ただし、現在の就学先決定はその基準だけで自動的に決まるものではありません。本人の障害の状態、必要な支援、地域の教育体制、本人・保護者の意見、専門家の意見などを踏まえて総合的に検討されます。
特別支援学校で期待できること
- 障害の状態や発達段階に応じた教育課程と自立活動
- 障害特性に配慮した教材、教具、施設・設備
- 個別の指導計画に基づく指導
- 地域の小・中学校等への助言や相談を行うセンター的機能
- 学校の体制に応じた医療・福祉・心理等の専門職との連携
「専門職や看護師が常駐」とは限らない
特別支援学校の中には、医療的ケア看護職員を配置している学校や、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)等から助言を受けている学校があります。
しかし、看護師やPT・OT・STがすべての特別支援学校に常駐しているわけではありません。配置ではなく、巡回、派遣、外部機関との連携という形を取る場合もあります。医療的ケアの内容によって必要な体制も異なるため、希望する学校に「誰が、いつ、どこまで対応できるのか」を具体的に確認することが大切です。
「生活スキル・就労支援だけを学ぶ学校」ではない
特別支援学校では、生活に必要な力や自立、社会参加に向けた学習を大切にしています。しかし、教育課程が一律に「生活スキル・就労支援に特化」しているわけではありません。
小学部・中学部では、小学校・中学校に準ずる各教科等を学ぶ教育課程や、知的障害の特性に応じた各教科を学ぶ教育課程などが、子どもの実態に応じて編成されます。就労に関する学習は、特に高等部の一部の学科や教育課程で重視されますが、その内容も学校や本人の進路希望によって異なります。
特別支援学級と特別支援学校のどちらを選ぶ?5つの判断ポイント

就学先は、診断名や数値だけで決めるものではありません。次の5つの視点から、子どもに必要な支援と、候補となる学校で実際に受けられる支援を照らし合わせて考えましょう。
1.子どもの教育的ニーズ
最初に整理したいのは、「障害が重いか軽いか」ではなく、学校生活のどの場面で、どのような支援が必要かです。
- 理解しやすい説明や教材はどのようなものか
- 集団の大きさや音、光、においによる負担はあるか
- 意思表示やコミュニケーションにどんな支援が必要か
- 移動、食事、排せつ、着替え等にどの程度の支援が必要か
- 健康・安全面や医療的ケアについて、どのような対応が必要か
感覚過敏や医療的ケアがあるという理由だけで就学先が一つに決まるわけではありません。必要な配慮を、候補となる学校がどのような体制で実施できるかまで確認します。
2.候補校の支援体制
学校名や制度上の分類だけでは、実際の学び方まではわかりません。同じ自治体内でも学校によって体制が異なるため、次の点を具体的に尋ねましょう。
- 学級の在籍人数と学年構成
- 担任、支援員、医療的ケア看護職員等の配置
- 個別指導と集団指導の割合
- 交流及び共同学習の内容と、その際の支援
- 落ち着ける場所や、刺激を減らす環境調整
- 学習が難しくなったときの対応
- 保護者、福祉、医療等との連携方法
3.本人の気持ちと実際の様子
本人が言葉で希望を伝えられる場合は、その意見を丁寧に聞きます。言葉での表現が難しい場合も、見学や体験のときの表情、疲れ方、落ち着き、活動への参加のしやすさなどが大切な手がかりになります。
「地域の友達と一緒にいたい」「少ない人数の方が安心する」といった希望だけでなく、本人が安心して意思を伝えられるか、失敗しても助けを求められるかという視点も持ちましょう。
4.通学と家庭生活を含めた継続のしやすさ
通学時間、スクールバスの乗車時間、保護者送迎の必要性、放課後等デイサービス等との接続は、毎日の生活に関わります。通学の負担で睡眠や体調が崩れないかも確認したいポイントです。
一方で、送迎の都合だけで子どもに必要な支援を諦めるのではなく、利用できる通学支援や福祉サービスについて、教育委員会や自治体の相談窓口にも確認しましょう。
5.現在の学びと将来の見通し
将来を考えることは大切ですが、「特別支援学級なら進学」「特別支援学校なら就労・福祉」というように、進路を二つに分けることはできません。
候補校でどのような教育課程を学ぶのか、卒業生にどのような進路があるのか、進路変更を考える場合にどんな準備が必要かを確認します。数年後の進路だけでなく、今の子どもが安心して学び、力を伸ばせるかを中心に考えることが大切です。
就学先を決めるまでの進め方
- 早めに就学相談を申し込む
自治体の教育委員会や就学相談窓口に相談し、今後の流れや見学・体験の機会を確認します。 - 候補となる学校を実際に見る
可能であれば、特別支援学級と特別支援学校の両方を見学します。説明だけでなく、授業中の環境や休み時間、移動の様子も見られると判断材料が増えます。 - 診断名ではなく、必要な支援を伝える
「自閉症です」だけでなく、「口頭指示だけでは理解しにくい」「大きな音の後は休憩が必要」など、具体的な姿を伝えます。 - 学校の回答を具体的に確認する
「配慮します」という回答だけでなく、誰が、どの場面で、どのように支援するのかを確認します。 - 入学後も定期的に見直す
就学時の選択を固定的に考えず、本人の成長や必要な支援の変化を踏まえ、個別の教育支援計画等を活用しながら継続的に相談します。
よくある保護者の疑問
Q.特別支援学校が望ましいという意見が出たら、必ず特別支援学校に就学するのですか?
就学先は、検査結果や一つの意見だけで自動的に決まるものではありません。本人・保護者への十分な情報提供を行い、本人・保護者の意見を最大限尊重しながら、教育委員会や学校等が教育的ニーズと必要な支援について合意形成を図ることが原則です。その上で、最終的には市町村教育委員会が就学先を決定します。疑問がある場合は、判断の理由や候補校で受けられる支援について説明を求めましょう。
Q.途中で特別支援学校から特別支援学級へ、またはその逆に変更できますか?
本人の教育的ニーズの変化等に応じて、学びの場を見直すことは可能です。ただし、本人・保護者の希望だけで直ちに変更できるとは限らず、教育委員会や学校との相談、必要な情報の整理、受け入れ体制の確認、就学先変更の手続きが必要です。変更を考え始めた段階で、早めに担任や特別支援教育コーディネーター、教育委員会へ相談しましょう。
Q.医療的ケアが必要なら、特別支援学校しか選べませんか?
医療的ケアの必要性だけで就学先が一律に決まるわけではありません。地域の小・中学校にも医療的ケア児が在籍しており、看護職員の配置や巡回等によって対応する自治体があります。ただし、実施できるケア、看護職員の勤務時間、緊急時の対応等は学校・自治体によって異なります。主治医の意見も踏まえ、候補校と教育委員会に具体的な実施体制を確認する必要があります。
Q.特別支援学校に進むと、将来の選択肢が狭くなりますか?
学校名だけで将来が決まるわけではありません。ただし、学校や教育課程によって、学ぶ教科・内容、評価、進路指導、卒業後の選択肢や必要な準備は異なります。「大丈夫」と抽象的に考えるのではなく、候補校の教育課程、卒業生の進路、進学・就労に向けた支援を確認し、本人が希望する将来とのつながりを具体的に検討しましょう。
Q.学校見学では何を見ればよいですか?
子どもたちの表情だけで判断せず、①授業の人数と学年構成、②指示の伝え方、③個別課題の内容、④休憩・クールダウンの方法、⑤交流及び共同学習の実施状況、⑥教職員や専門職の体制、⑦医療的ケアや安全面の対応、⑧家庭との連絡方法を確認しましょう。「このような場面で困りやすいのですが、どのように支援しますか」と具体的に尋ねると、入学後の生活をイメージしやすくなります。
就学先を考える2つの想定事例
ここでは、考え方をイメージしやすくするために、複数の相談で見られる状況をもとにした想定事例を紹介します。特定の家庭の実話ではなく、どちらの学びの場が優れていると示すものでもありません。
想定事例1:地域とのつながりを大切にしながら特別支援学級を検討
本人は近所の友達と一緒に通学することを希望しています。候補となる特別支援学級を見学したところ、落ち着けるスペースがあり、視覚的な手がかりを使った個別学習も可能でした。交流及び共同学習の時間には支援方法を調整できることも確認できたため、特別支援学級を候補として検討しました。
この場合の判断材料は「地域の学校だから」だけではありません。本人が望むつながりと、必要な支援を両立できる見通しがあるかを確認している点が重要です。
想定事例2:学習環境と専門的な支援を確認して特別支援学校を検討
大きな集団や音の多い環境では疲れやすく、身体面の支援も必要な子どもです。候補となる特別支援学校で体験したところ、教材・設備や休憩の取り方が本人に合い、必要な支援を学校の体制の中で継続できる見通しが持てました。通学方法も確認した上で、特別支援学校を候補として検討しました。
ここでも、「特別支援学校なら必ず静か」「専門職が常にいる」と決めつけず、候補校の実際の環境と体制を確認したことが判断のポイントになります。
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- 「学校の種類」ではなく、実際の環境を見る
同じ種類の学校でも、人数、教職員、設備、教育課程、交流の方法は異なります。必ず候補校ごとに確認しましょう。 - 本人の困りごとと必要な支援を言葉にする
診断名や検査結果だけでなく、どんな場面で困り、どんな支援があれば参加できるのかを整理します。 - 本人の意見と様子を大切にする
言葉による希望だけでなく、体験時の安心感、疲れ方、活動への参加のしやすさも見ます。 - 選択を固定せず、学びの場を継続的に見直す
本人の成長や必要な支援は変わります。学校と情報を共有し、必要に応じて教育委員会にも相談しながら、学びの場が合っているかを定期的に確認しましょう。
まとめ:必要な支援を実際に受けられるかで考えよう
特別支援学級と特別支援学校には、在籍先、学級編制、教育課程、通学、支援体制などに違いがあります。
一方で、「特別支援学校は2〜3人」「看護師やPT・STが常駐」「生活スキルや就労支援に特化」といった説明は、すべての特別支援学校に当てはまるわけではありません。国の学級編制の標準は、公立の特別支援学校小学部・中学部では6人、重複障害の学級では3人です。実際の人数や支援体制は学校によって異なります。
就学先を考えるときの3つの軸
- 子どもはどの場面で困り、どのような支援を必要としているか
- 候補校で、その支援を実際にどのように受けられるか
- 本人が安心して学び、力を発揮できそうか
就学時の選択だけで終わりにせず、入学後も本人の様子を見ながら、学校と一緒に必要な支援や学びの場を見直していくことが大切です。
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