SST無料プリント|感情カード×場面カードを使った自立活動の実践と使い方

「“くやしい”と“かなしい”は、ちょっと違う気持ちなんだね」

「ぶつかられたけど、わざとじゃないかもしれない」
これは、私が特別支援学級の自立活動で、感情カードと場面カードを使ったときに見られた子どもたちの言葉です。
「今どんな気持ち?」と聞かれても、すぐには答えられない子がいます。
また、嫌なことがあったときに、大きな声になったり、その場を離れたり、何も話せなくなったりすることもあります。
そんなとき、感情を表す言葉や具体的な場面をカードで見えるようにすると、自分の状態や考えを整理する手がかりになることがあります。
この記事で分かること
- 無料で使える感情カード・場面カード
- カードを使ったSST・自立活動の進め方
- 感情を一つに決めつけないための教師の声かけ
- 話す・読むことが難しい子への支援
- 自立活動6区分27項目との関連の考え方
- 学んだことを日常生活へつなげる方法
【無料DL】SSTで使える感情カード・場面カード
まず、この記事で紹介している教材を掲載します。
どちらも無料でダウンロードできます。すべてを使う必要はありません。目の前の子どもに合いそうなカードから試してください。
感情カード|気持ちを選ぶ手がかりに
「うれしい」「たのしい」「かなしい」「くやしい」「イライラする」「しんぱい」など、さまざまな気持ちを表す言葉をカードにしています。
感情を「よい・悪い」で分けるためのカードではありません。
自分の今の状態に近い言葉を探したり、「この場面なら自分はどう感じるかな?」と考えたりするための手がかりとして使います。

感情カードを無料でダウンロード👇
場面カード|学校・家庭・日常の出来事を考える
もう一つ使うのが、学校・家庭・日常生活の具体的な出来事を扱った場面カードです。
例えば、
- 順番を抜かされたとき
- 兄弟にゲーム機を使われているとき
- 発表しているときに笑われたとき
など、子どもが想像しやすい場面を扱っています。
現在の無料PDFには36場面を収録しています。
場面カードを無料でダウンロード👇
感情カード×場面カードを使う基本の流れ
基本的には、次の4ステップで進めます。
① 場面を見る
↓
② 自分ならどう感じるか考える
↓
③ 他の人の感じ方も聞く
↓
④ 困った場合に使えそうな方法を考える
① 場面カードを1枚選ぶ
最初に、場面カードを1枚選びます。

文字を読むことが負担になる子には、教師が読み上げます。
内容が本人のつらい経験と重なっている場合は、そのカードを使わないことも選択肢です。
② 「自分ならどう感じる?」と感情カードから選ぶ
次に、
「自分だったら、どんな気持ちになりそう?」
と問い、感情カードから近いものを選びます。
1枚に絞る必要はありません。
- 「くやしい」と「イライラ」
- 「びっくり」と「しんぱい」
- 「よく分からない」
などでも構いません。

③ 他の子の感じ方も聞く
少人数で行う場合は、それぞれが選んだカードを見比べてみます。
Aさん「私はくやしい」
Bさん「ぼくはびっくりすると思う」
Cさん「ぼくはそんなに気にならない」
ここで大切なのは、どの感情が正解かを決めないことです。
同じ出来事でも、経験や受け取り方、その日の状態などによって感じ方は違います。
教師は、
「同じ場面でも、感じ方が違うんだね」
と整理する程度で十分です。
④ 次に使えそうな方法を考える
必要に応じて、
「もし本当にこうなったら、どうしたい?」
「何があると助かりそう?」
と聞きます。
- 「やめて」と伝える
- 先生に知らせる
- その場を少し離れる
- 相手に「大丈夫?」と聞く
- 落ち着いてから話す
など、複数の方法が考えられます。
「一番正しい行動」を当てさせるのではなく、本人に使えそうな選択肢を増やすことを大切にします。
自立活動6区分27項目との関連はどう考える?
この活動を行えば、自動的に特定の自立活動の項目に該当するわけではありません。
自立活動では、まず一人ひとりの実態や学習上・生活上の困難を整理し、指導目標を設定します。その目標を達成するために必要な項目を6区分27項目から選び、関連付けて具体的な指導内容を考えます。
| 個別目標の例 | 関連を検討できる項目例 |
|---|---|
| 気持ちが大きくなったとき、自分の状態に気づいて落ち着く方法を使う | 2-(1) 情緒の安定に関すること |
| 相手にも自分とは異なる感じ方があることに気づく | 3-(2) 他者の意図や感情の理解に関すること |
| 自分が感じやすい気持ちや行動の傾向に気づく | 3-(3) 自己の理解と行動の調整に関すること |
| 自分の気持ちや希望を言葉・カードなどで表す | 6-(2) 言語の受容と表出に関すること |
| 場面に応じて、伝える・相談する・離れるなどの方法を選ぶ | 6-(5) 状況に応じたコミュニケーションに関すること |
※実際に選ぶ区分・項目は、子どもの実態と指導目標によって異なります。
文部科学省「特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 自立活動編」
実際のやり取り|「感じ方は一つではない」と気づく
例えば、「給食の配膳中に友達とぶつかった」という場面を扱ったとします。
子どもA「私は“くやしい”と“イライラ”かな」
子どもB「ぼくは“びっくり”」
教師「二人で違う気持ちを選んだね。どっちもありそうだね」
ここで、教師が「本当はこういう気持ちだよ」と決める必要はありません。
その後、必要なら、
教師「もし本当にぶつかったら、何があるといい?」
子どもA「わざとか聞きたい」
子どもB「大丈夫?って言ってほしい」
のように、感情から必要な行動や支援へつなげます。
カードを使った3つの活動アイデア
① 自分ならどんな気持ち?
一番基本的な活動です。
- 場面カードを1枚見る。
- 自分ならどんな気持ちになるか考える。
- 感情カードを1〜3枚程度選ぶ。
- 話せそうなら理由を伝える。
理由を言えない場合は、カードを選ぶだけでも構いません。
② 「この人はどう感じるか」をいくつも考える
旧記事では「気持ちを当てるクイズ」としていましたが、他者の感情には唯一の正解があるわけではありません。
そのため、
「この人は、どんな気持ちかもしれない?」
と問い、複数の可能性を考えます。
例えば「発表中に笑われた」という場面でも、
- 悲しい
- 恥ずかしい
- 腹が立つ
- なぜ笑ったのか気になる
など、さまざまな可能性があります。
「相手の気持ちは決めつけず、確かめなければ分からない」という視点にもつなげられます。
③ 短いロールプレイで方法を試す
子どもが希望する場合は、考えた対応を短いロールプレイで試すこともできます。
例えば、
「痛かったよ」
「大丈夫?」
「先生を呼んでくるね」
といった短いやり取りです。
ただし、本人の実際のトラブルやつらい出来事を、本人の意思に反して再現させることは避けます。
ロールプレイが負担なら、教師の実演を見る、カードから対応を選ぶだけでも十分です。
読む・話すことが難しい子への支援
同じカードを使っていても、参加方法は変えて構いません。
| 困りごと | 支援の例 |
|---|---|
| 文章を読むことが難しい | 教師が読み上げる、短い言葉に言い換える |
| 感情語が多いと選びにくい | 2〜3枚に絞って提示する |
| 言葉で説明することが難しい | 指差し・カード選択・ジェスチャーを使う |
| 自分の経験と重なってつらくなる | 別のカードへ変える、見学する、中止する |
| 人前で話すことが負担 | 教師と1対1で行う、少人数から始める |
教師が意識したい4つの関わり方
① 感情に正解・不正解をつけない
例えば「順番を抜かされた」という場面で「うれしい」を選んだとしても、すぐに「それは違う」と修正しません。
本人なりの理由があるかもしれません。
「うれしいを選んだんだね」
「話せそうなら、どうしてか教えてくれる?」
② 「分かるよ」と決めつけない
受容的に聞くことは大切ですが、教師が同じ経験をしているとは限りません。
そのため、
「そう感じたんだね」
「教えてくれてありがとう」
程度に返す方が使いやすい場合があります。
③ 「なぜ?」を聞きすぎない
理由を説明することが難しい子もいます。
感情カードを1枚選べただけでも、その子にとって大きな表現になっている場合があります。
④ 行動だけでなく環境も考える
例えば「イライラしたときどうする?」と本人の対処だけを考えるのではなく、
- 課題が難しすぎなかったか
- 騒音や人の多さが負担ではなかったか
- 休憩できる場所があったか
- 教師へ助けを求められる仕組みがあったか
など、周囲の環境や支援も一緒に見直します。
活動で見取りたい子どもの姿
この活動では、「感情の名前を何個覚えたか」だけを評価する必要はありません。
例えば、
- 自分の状態に近いカードを選べた
- 二つの気持ちが同時にあることに気づいた
- 「分からない」と伝えられた
- 友達が違うカードを選んでも否定せず聞けた
- 困ったときに使えそうな方法を一つ選べた
- 実生活でもカードや言葉を使って伝えられた
といった姿を見取ります。
実践で見られた一つの変化
私が関わった子の中に、自分の気持ちを言葉で説明することが難しく、困ったときには行動で表すことが多い子がいました。
感情カードを使った活動を重ねる中で、あるとき本人から、
「くやしかったから、ちょっと怒っちゃった」
という言葉が出たことがありました。
これは、この教材だけの「効果」を示すものではありません。
日々の関わりや環境調整、本人の成長など、さまざまな要因が重なっています。
ただ、カードが自分の状態を整理して相手へ伝える一つの手がかりになったことは、実践の中で感じました。
学んだ感情語を日常生活へつなげる
カード活動の中で「くやしい」を選べても、日常のトラブル場面ですぐ言葉にできるとは限りません。
実際の生活で気持ちを伝えられたときに、
「今、『くやしかった』って教えてくれたから、先生にも分かったよ」
のように、伝えたことがどう役に立ったかを返します。
必要な子には、教室にも数枚の感情カードを置き、言葉が出ないときに指差して伝えられるようにする方法もあります。
取り入れるタイミングは子どもの実態から決める
使い方は、毎日・毎週と固定する必要はありません。
- 個別の自立活動:感情語を増やしたり、自分の状態を整理したりする。
- 少人数SST:同じ場面でも感じ方が違うことを知る。
- 実際の出来事の振り返り:本人が落ち着いた後に必要に応じて使う。
- 日常のコミュニケーション:言葉が出ないときの補助として使う。
ただし、トラブル直後や強く興奮している最中に、無理にカードを選ばせたり振り返らせたりしません。
まず安全と落ち着きを優先します。
感情理解をさらに深めたい場合の関連記事
感情カードを使ってみて、「もう少し違う活動でも気持ちを扱いたい」と感じた場合は、次の実践もつなげやすいです。
まとめ|感情カードは「気持ちを当てる教材」ではない
感情カードと場面カードは、「この場面ではこの気持ちが正解」と覚えるための教材ではありません。
大切にしたいのは、
場面を見る
↓
自分ならどう感じるか考える
↓
自分なりの方法で伝える
↓
他の人には違う感じ方もあると知る
↓
必要なら使えそうな方法を考える
↓
日常生活で使ってみる
という流れです。
まずは、この記事の無料プリントから1枚選び、目の前の子どもに合うか試してみてください。
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