授業中に突然泣き崩れる。椅子を蹴る。大声で叫ぶ。
そのとき、あなたはどんな言葉をかけますか?
「落ち着きなさい」「なんでそんなことするの」——実はこれ、やってはいけないNGフレーズです。
癇癪が起きている子どもの脳は、言葉が届きにくい状態になっています。だからこそ、声かけの「内容」より「タイミング」と「方法」が重要になります。
この記事では、特別支援学級担任18年・支援級担任8年の経験から、癇癪の3フェーズ別に使える声かけ10選とNGフレーズ6選+OK言い換えを具体的に解説します。
「今すぐ使える言葉」を探している先生に届けたい内容です。
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癇癪中の子どもに声かけが効かない理由
まず知っておきたいのが、癇癪が起きているときの子どもの脳の状態です。
癇癪・パニック状態では、感情をつかさどる扁桃体が過剰に反応し、理性的な判断を行う前頭前野の働きが抑制されます。いわゆる「脳のハイジャック」状態です。
この状態では、どんなに正しいことを言っても言葉として処理されません。「なんで?」「やめなさい」「落ち着いて」——すべてノイズとして受け取られます。
だから声かけで大切なのは、「何を言うか」より「いつ・どう言うか」なのです。
具体的には、癇癪の状態を3つのフェーズに分けて対応を変えることが重要です。次の章で解説します。
癇癪の3フェーズと声かけの基本原則
癇癪・パニックは大きく3つのフェーズに分けられます。フェーズによって声かけの量・内容・タイミングをまったく変える必要があります。
フェーズ1:興奮期(発生〜5分)
大声・泣き叫び・物を投げる・暴言・他害・飛び出しが起きている状態。
声かけの原則:最小限にする。
1文10字以内、低くゆっくりとした声で。声をかけるより場所を変えることを優先します。
フェーズ2:移行期(5〜15分)
泣き声が小さくなる、動きが止まる、床に座るなどの変化が現れる状態。
声かけの原則:短く・選択肢を与える。
「水、飲む?」のように答えやすい形で短く。急かさない。
フェーズ3:落ち着き期(15分〜)
自分から話しかけてくる、アイコンタクトができる、普通の声量に戻る。
声かけの原則:まず認める。その後に振り返り。
「落ち着けたね」と短く認めてから、穏やかに状況を確認します。
フェーズ別 声かけ10選
では実際にどんな言葉を使えばいいか、フェーズ別に具体的なセリフを紹介します。

【興奮期】声かけ3選
興奮期は言葉を最小限にします。次の3つを低くゆっくりとした声で、使ってください。
① 「こっちおいで」
場所を変えることで状況をリセットします。正面から言わず、斜め45度・1〜2m離れた位置から穏やかに。
② 「ここにいるよ」
先生がそばにいることを伝えるだけでいい。安心感を与えることが最優先。
③ 「大丈夫だよ」
繰り返し言っても構いません。声のトーンが落ち着いていることが大切です。
【移行期】声かけ4選
少し落ち着いてきたタイミングで使います。選択肢を与えることで、子どもが自分で決められる感覚を持てます。
④ 「ゆっくりでいいよ」
急かさないことを明確に伝えます。時間的なプレッシャーを取り除く言葉。
⑤ 「水、飲む?」
yes/noで答えられる選択肢。答えられなくてもそっと差し出してOK。
⑥ 「先生、隣にいるよ」
干渉せずに存在することを伝える。「何かしなければ」と焦らなくていい。
⑦ 「ここにいていいよ」
クールダウンスペースにいることを許可する言葉。「早く戻りなさい」と逆のアプローチ。
【落ち着き期】声かけ3選
自分から話しかけてきたタイミング、または落ち着きが確認できたタイミングで使います。
⑧ 「落ち着けたね、えらかったよ」
まず落ち着けたこと自体を認める。「何があったの?」より先にこれを言う。
⑨ 「何があったか、話せる?」
「話せる?」という確認形式にする。話さなくてもいいという選択肢を与える。
⑩ 「一緒に考えよう」
責めずに一緒に解決しようとする姿勢を伝える。振り返りシートへの移行もここから。
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絶対NGの声かけ6選と言い換え
次は、やってしまいがちなNGフレーズと、その言い換えを紹介します。
悪意はなくても、この言葉を使うと癇癪が長引いたり、悪化したりします。ぜひ確認してください。
| ❌ NGフレーズ | ✅ OK言い換え |
|---|---|
| 「なんでそんなことしたの?」 | 「何があったか、後で教えてね」 |
| 「落ち着きなさい!」 | 「大丈夫。ゆっくりでいいよ」 |
| 「もうやめなさい」 | 「こっちにおいで」(場所を変える) |
| 「みんな見てるよ」 | (何も言わず静かに場を離す) |
| 「さっきのは悪かったよね?」 | 「落ち着いたら一緒に考えよう」 |
| 「また?いい加減にして」 | 「先生はここにいるよ」 |
NGフレーズに共通しているのは、「責める・急かす・比較する」の3パターンです。
癇癪中の子どもは、すでに自分でもコントロールできない状態で苦しんでいます。責めても解決しません。まず安心させることが最優先です。
他の児童への声かけ
支援学級担任として難しいのが、癇癪が起きているときに他の子どもへ同時に対応することです。
他の児童が騒いだり、怖がったりしている場合、次の声かけを使ってください。
騒いでいる子には:
「〇〇先生が見てくれてるから大丈夫だよ」
怖がっている子には:
「びっくりしたね。先生がいるから安心してね」
授業を続ける場合:
「続きをやろう。先生が戻ったらまた話すね」
支援員がいる場合は役割分担が重要です。支援員が当該児童に付き、担任は他の子どもの学習を継続するのが理想的な体制です。
事前に支援員と「こういうときはこう動く」という取り決めをしておくと、当日慌てずに済みます。
声かけの前に準備しておくこと
声かけの質を上げるより、事前の準備が癇癪対応の成否を分けます。
具体的に準備しておくべきことは3つです。
① クールダウンスペースを決めておく
「ここに行けば落ち着ける」場所を本人と事前に決めておきます。廊下の端・支援室・相談室など、静かで他の子から見えにくい場所が理想です。
場所を知っていれば、「こっちおいで」の一言で誘導できます。
② SOSカード・休憩カードを渡しておく
言葉が出なくても「助けて」「休みたい」を伝えられるカードを、事前に練習しておきます。

カードを出したらすぐに「わかった、ありがとう」と受け取ること。使えたこと自体を褒めることが定着につながります。
③ 気持ちメーターで事前に状態を確認する
朝の会や授業前に「今、気持ちはいくつ?」と確認する習慣をつけることで、レベルが高まる前に対処できます。
レベル3以上が続いているときは、早めに声をかける・課題量を減らすなどの予防的な対応が効果的です。
繰り返さないための長期対応
声かけはあくまで「その場の対応」です。同じことを繰り返さないためには、長期的な支援が必要になります。
自立活動で感情コントロールを学ぶ
週1回の自立活動で「感情の名前を知る→トリガーを把握する→クールダウン法を学ぶ→SOS練習をする」という6回プログラムを実施することで、子ども自身が自分の感情をコントロールする力を育てられます。
個別の指導計画に目標を書く
「落ち着く」という曖昧な目標ではなく、「気持ちのレベルが3以上になったときにSOSカードを出せる」など、観察可能・測定可能な目標を書くことで支援の方向性が明確になります。
保護者と情報を共有する
トリガーは家庭でも起きています。保護者共有シートを使って学校・家庭のトリガーを共有することで、連携した支援が可能になります。
まとめ:声かけより先に「フェーズを見る」
この記事でお伝えしたことをまとめます。
- 癇癪中の脳は言葉が届きにくい状態。声かけより「タイミング・方法」が重要
- 興奮期は声を最小限に。移行期は選択肢を与える。落ち着き期に初めて振り返る
- 「落ち着きなさい」「なんで?」はNG。「ゆっくりでいいよ」「ここにいるよ」に変える
- 声かけ以前の準備(クールダウンスペース・SOSカード・気持ちメーター)が対応の質を決める
- 繰り返さないためには自立活動・個別目標・保護者連携の長期支援が必要
今日の対応が変わるかどうかは、「何を言うか」ではなく「どのタイミングで・どの言葉を使うか」にかかっています。
ぜひ今日から1つだけ、声かけを変えてみてください。
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