SSTプリント「振り返りシート」を使った自立活動の実践(ネタ)

自立活動•SST

現代の子どもたちは、情報過多な社会の中で、自分の価値を見出し、自信を持つことが難しいと感じる場面が増えています。特に発達に特性のある子どもたちにとって、自己理解を深め、目標に向かって進む力は、今後の人生を豊かにするために不可欠です。

この記事では、

特別支援学級や通常学級で活用できるSSTプリント「振り返りシート」を通して、子どもたちの自己肯定感(心理的安定)と目標設定能力を育む具体的な方法や実践(ネタ)をご紹介します。

自立活動SSTの無料教材プリントはこちらから👇

おすすめの自立活動はこちら


SSTプリント「振り返りシート」を使った授業の『ねらい』

この振り返りシートの最大のねらいは、

子どもたちが成功体験や課題を具体的に言葉にし、次の行動へとつなげる力を育むことです。

日々の活動の終わりに、「今日できたこと」「もう少しがんばりたいこと」を書き出すことで、子どもたちは自分の行動を客観的に振り返り、主体的に次の目標を立てられるようになります。これは、自立活動の「心理的な安定」「自己理解」「意思決定」といった重要な領域にも深く関わる、子どもの成長を促す大切な取り組みです。


SSTプリント振り返りシートの進め方と効果的な工夫

この振り返りシートは、小学校の特別支援学級(特に自閉症・情緒障害のある児童)を中心に、通常学級でも活用できます。

活動の概要

  • 対象 主に小学生(支援学級、自閉症・情緒障害のある児童)
  • 形式 1日1回、記入式のシートを活用
  • 所要時間 1人あたり3~5分
  • 使用場面 帰りの会・自立活動の時間・週まとめの時間など、日課の中に組み込む

記入項目の例

シートの項目は、子どもたちが迷わず記入できるよう、シンプルに2項目だけにするのがおすすめです。

項目記入例
今日できたこと発表のとき、みんなの方を見て話せた。
もう少しがんばりたいこと先生の話をさいごまで聞く。(最後まで座って聞く)

記入が難しい子への支援例

記入に抵抗がある子や、まだ文字を書くことが難しい子には、以下のような工夫を取り入れてみましょう。

  • 口頭でのやり取りから始める 先生が聞き取り、代筆する。
  • 絵やイラストで表現する 文字が難しければ、簡単な絵で「できたこと」や「がんばりたいこと」を描いてもらう。
  • 選択肢を提示する 「今日できたことは、AとBどっちかな?」と、先生が具体的な選択肢を出す。
  • 定型文を用意する 枠内に〇をつける、色を塗るなど、少ない負担で振り返りができるようにする。

記録が自己肯定感と成長の可視化につながる効果

この振り返りシートを継続することで、子どもたちには目に見える変化が生まれます。

  • 自己肯定感の向上 毎日「できたこと」を記録することで、「あ、前よりできるようになってる!」「毎日がんばってるな」と、自分の成長に気づけるようになります。これにより、「自分はできる」「努力すれば成果が出る」という自己肯定感が育まれます。
  • 目標達成の喜 「もう少しがんばりたいこと」が「できたこと」に変わった時の喜びは、次への大きなモチベーションになります。例えば、ある子は1学期の間、ずっと「気になることがあると話を聞けない」と書いていましたが、2学期には「聞けた!」という日が増え、自信に満ちた表情を見せるようになりました。
  • 成長の可視化と共有 日々の記録は、子ども自身の成長の証となるだけでなく、指導記録や保護者への報告、通知表の所見にも活用できます。具体的なエピソードとして共有することで、関係者全員で子どもの成長を喜び、今後の支援に役立てられます。

自立活動との関連:6区分27項目の視点から

この振り返りシートの取り組みは、文部科学省が示す自立活動の「6区分27項目」と深く関連しています。

  • 健康の保持 活動のリズムを整え、振り返りを通して気持ちの安定を図ることで、生活のリズムや健康の維持につながります。
  • 心理的な安定 自分の行動を客観視し、感情のコントロールを学ぶことで、情緒の安定を図ります。
  • 人間関係の形成 できたことを先生や友達と共有することで、自己開示の力を養い、コミュニケーションのきっかけにもなります。
  • 自己理解と自己管理 振り返りから、自分の得意なことや苦手なこと、今後の課題を知り、自分自身を理解し管理する力を育みます。
  • 意思決定と将来設計 自分で目標を立て、それに向かって行動することで、見通しを持って意思決定し、将来を考える力を養います。

特別支援学校教育要領 学習指導要領解説 自立活動編を参考にしています。


子どものやる気を引き出す!先生の声かけ例

振り返り活動をより効果的にするには、先生の温かい言葉かけが不可欠です。以下のようなフレーズで、子どもの自己肯定感を高め、次への意欲を引き出しましょう。

  • 肯定的なフィードバック
    • 「昨日よりちょっとだけできたね!素晴らしい!」
    • 「〇〇(具体的な行動)ができたね。すごい!」
    • 「毎日がんばってるのがシートから伝わってくるよ。」
  • 目標への励まし
    • 「がんばりたいことが見つかったのは、成長のサインだね。応援してるよ!」
    • 「どうしたら、がんばりたいことができるようになるかな?」
  • 継続の促し
    • 「できたことを続けるにはどうしたらいいと思う?」
    • 「もし、がんばりたいことが難しかったら、先生と一緒に考えようね。」

よくある質問 (FAQ)

Q1. 毎日続けるのが難しい場合はどうすれば良いですか?

A. 毎日でなくても、週に2~3回から始めるなど、無理のない頻度で継続することが大切です。まずは「続けること」に焦点を当て、子どもが負担に感じないように調整しましょう。曜日を決めて習慣化するのも効果的です。

Q2. できたことが見つからない、または書くことがないと言われたら?

A. 先生が具体的に褒めるべき行動を提示し、「今日、〇〇先生の話を最後まで聞けたね」「宿題を早く終わらせられたね」など、一緒に活動を振り返ってあげましょう。些細なことでも良いので、肯定的な視点で「できたこと」を見つけて伝えてあげることが重要です。

Q3. 目標設定が苦手な子にはどう指導すれば良いですか?

A. まずはスモールステップで、達成しやすい小さな目標から始めましょう。例えば、「先生の話をさいごまで聞く」が難しければ、「座って1分間聞く」のように具体的な行動と時間を設定したり、「手を挙げて発表する」ではなく「質問に一回答える」のようにハードルを下げたりするのも効果的です。先生が選択肢を提示して選ばせるのも良い方法です。


ダウンロードできるプリントもご用意しています

この振り返りシートを、ぜひあなたの学級やご家庭で活用してみてください。記事下部に、すぐに印刷して使える振り返りシートのテンプレートをPDFでご用意しています。


まとめ

毎日のちょっとした振り返りが、子どもたちの自己肯定感目標意識を大きく育てます。「できたこと」と「がんばりたいこと」を記録するシンプルな活動は、特別支援学級だけでなく、通常学級でも取り入れやすく、自立活動や帰りの会の定番活動にもぴったりです。

この振り返りシートが、子どもたちが自信を持って成長していくための一助となれば幸いです。


関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました