特別支援学級を担任していると、こんな場面に何度も出会います。
「この子、今どんな気持ちなんだろう」
「どんな声かけなら安心できるだろう」
「困っているのは分かるけれど、何に困っているのか本人からうまく伝わってこない」
言葉で気持ちや困りごとを表すことが難しい子の場合、その困りが、黙り込む・離席する・強い言葉になる・その場から離れるといった行動として表れることがあります。
そんなとき、「行動を止めるにはどうするか」だけでなく、「この子は何に困っていて、どうしてもらえると助かるのだろう」と一緒に考えることが大切です。
この記事では、特別支援学級の自立活動で活用できる「わたしのトリセツ(自己理解シート)」を紹介します。
自分の好きなこと・苦手なこと・困ったときにしてほしいことなどを整理し、必要な支援を周囲へ伝えるためのワークです。
無料PDFもダウンロードできます。
この記事で分かること
- 自立活動で自己理解を扱うときの考え方
- 「わたしのトリセツ」の使い方と声かけ
- 低学年や、書くことが苦手な子への調整方法
- トリセツから次のSST・自立活動へつなげる方法
- 自己理解を段階的に取り組めるNo.01〜04の児童用ワーク
支援級の教材を、これからまとめてそろえたい先生へ
この記事では「わたしのトリセツ」を無料で使えます。
一方で、自己理解だけでなく、気持ち・SST・アンガーマネジメント・友達との関わり・個別の指導計画など、支援級の1年間で使う教材をまとめて準備したい場合は「支援級コンプリートパック」を用意しています。
今回紹介する児童用SST・自立活動ワーク19枚+教師用指導ガイドも、支援級パックに収録しています。
※まず自己理解の教材だけ試したい方は、このまま記事を読み進めてください。無料プリントと、19枚教材の単品版も後半で紹介します。
なぜ「自己理解」を自立活動で扱うのか
自立活動では、子ども一人ひとりの学習上・生活上の困難を踏まえて、必要な内容を考えていきます。
その中で自己理解は、
- 自分は何が好きなのか
- どんな場面で困りやすいのか
- 困ったときにどんなサインが出るのか
- どんな方法があると取り組みやすいのか
- 誰に、どのように助けを求めるのか
といったことを本人と一緒に整理するための大切な視点になります。

例えば、「大きな音が苦手」ということが分かっても、それだけでは支援はまだ具体的になりません。
さらに、
「音が大きいときは静かな場所へ移動したい」
あるいは、
「先生にカードを見せて伝えたい」
というところまで分かると、実際の支援につなげやすくなります。
「わたしのトリセツ」は、そのための対話の入り口として使えるワークシートです。
「わたしのトリセツ」ワークシートとは
子どもが自分のことを知り、それを必要に応じて周囲へ伝えるための自己理解ワークです。
無料版では、次のような内容を扱います。
- なまえ・ニックネーム
- すきなこと・じかん
- きらいなこと・にがてなこと
- こんなとき、こうしてほしい
- 自分のいいところ
- これからできるようになりたいこと
特に大切にしたいのが、「こんなとき、こうしてほしい」という部分です。
苦手なことを見つけるだけではなく、本人が「どうしてもらえると助かるのか」を一緒に考えることで、実際の支援へつなげます。
無料PDFはこちら
無料版を使ってみて、「自己理解をもう少し段階的に扱いたい」と感じた先生は、後半で紹介するNo.01〜04の児童用ワークも参考にしてください。
実際の活用の流れ
① 導入|まずは先生がお手本を見せる
年度当初や、新しく担任になったときなどに使いやすい活動です。
いきなり子どもへ「苦手なことを書いて」と求めるのではなく、まず教師自身が軽い内容のお手本を示します。
「疲れているときは、少し休むと元気になるよ」
教師も「人によって得意なことや苦手なことは違う」という姿を見せることで、子どもが自分について考えやすくなります。
ただし、教師自身の重い個人的な経験まで話す必要はありません。子どもが安心して活動へ入れる程度の軽い例で十分です。
② 実施|書くことより「伝えられること」を優先する
特に困りごとを扱う部分は、1対1など安心できる状況で取り組むのがおすすめです。
言葉で説明することや文章を書くことが難しい場合は、
- 教師が選択肢を読み上げる
- 絵を指さして選ぶ
- ○をつける
- 一言だけ話す
- 教師が本人の確認を取りながら代筆する
という方法で構いません。
「プリントを全部完成させること」が目的ではありません。
本人が「自分はこうかもしれない」「こうしてもらえると助かる」と一つでも示せれば、そこから支援を考えられます。
「書かなくても、近いものを指で教えてくれて大丈夫だよ」
③ 活用|書いた内容を実際の支援へつなげる
プリントを書いて終わりにしないことが大切です。
例えば、
「失敗したときは、すぐにたくさん話しかけられるより少し待ってほしい」
という希望が分かったなら、実際の学校生活でも、その子に合う声かけや待つ時間を検討します。
また、本人の了承を確認したうえで、必要に応じて支援に関わる先生や保護者との情報共有に活用することもできます。
ただし、トリセツには本人の苦手さや個人的な情報も含まれます。
学級内へ掲示したり、本人の了承なく広く共有したりすることは避けましょう。
無料トリセツの次に|自己理解をNo.01〜04で段階的に取り組む
「わたしのトリセツ」は自己理解を1枚にまとめる教材として使いやすい一方、子どもによっては、いきなり自分の特徴をまとめることが難しい場合があります。
そこで、新しく制作した児童用SST・自立活動ワーク19枚では、自己理解の入り口をNo.01〜04に分けています。
| No. | ワーク | 主に考えること |
|---|---|---|
| 01 | わたしの すき・とくいマップ | 好きなこと・得意なこと・やってみたいこと |
| 02 | わたしの こまりごとマップ | 困りやすいこと・困ったときのサイン・してほしいこと |
| 03 | わたしの トリセツ | 好き・サイン・助かる方法を一つにまとめる |
| 04 | わたしが さんかしやすい ほうほう | 話を聞く・作業する・集団へ参加するときに合う方法 |
つまり、
好き・得意を知る
↓
困ることとサインを知る
↓
助かる方法を整理する
↓
実際の授業で参加しやすい方法を考える
という流れで取り組めます。
自己理解を「苦手なところ探し」にしないためにも、最初はNo.01の好き・得意など、答えやすい内容から始める方法があります。
自己理解だけでなく、気持ち・援助要請・振り返りまで続けたい先生へ
No.01〜04の自己理解に加えて、
- 気持ちを伝える
- 身体のサインに気づく
- 自分に合うクールダウン方法を探す
- 困った場面でどうするか考える
- 「たすけて」と伝える
- うまくいった日・難しかった日を振り返る
- 学んだ方法を日常生活で使う
ところまで、19枚にまとめています。
児童用プリントとは別に、各プリントのねらい・授業の進め方・教師の声かけ・支援方法をまとめた教師用指導ガイドも付属しています。
児童用ワーク19枚+教師用指導ガイド
支援級パックをご検討中の方へ:この19枚教材は支援級コンプリートパックにも収録されています。ほかのSST教材や個別の指導計画文例集も必要な場合は、単品購入の前にパック内容をご確認ください。
年間3回の「定点観測」として使う
「わたしのトリセツ」は、一度書いて終わりではありません。
その時点で本人が感じていることを確認する資料として、年度途中に見直すこともできます。
私は例えば、次のような時期に見直してきました。
| 時期 | 目的 | 活用の例 |
|---|---|---|
| 年度当初 4〜5月 | 自分を知る・関係づくり | 本人の好き・困り・必要な支援を知る |
| 2学期中頃 10〜11月 | 変化に気づく | 以前の回答と比べ、今必要な支援を見直す |
| 学年末 2〜3月 | 振り返り・引き継ぎ | 本人と成長や今後必要な支援を確認する |
例えば、以前は「にぎやかな場所が苦手」とだけ答えていた子が、後の振り返りでは「安心できる人がいると大丈夫」と伝えられるようになることがあります。
こうした変化が分かると、「静かな場所へ移動する」だけでなく、「安心できる大人と一緒に参加する」など、支援の選択肢を広げられます。
「わたしのトリセツ」の後に何をする?
トリセツで本人の特徴や困りが見えてくると、次に取り組みたい自立活動も見つけやすくなります。
例えば、
- 気持ちを言葉にすることが難しい → 気持ち・感情を扱う活動
- イライラすると行動が大きくなる → 身体サインやクールダウンを考える活動
- 助けてほしくても黙ってしまう → 援助要請のSST
- 友達とのトラブルで困りやすい → 「こんなときどうする?」などの問題解決SST
- 授業への参加方法に困る → 自分に合う環境や支援を考える活動
というように、自己理解で見つけた課題を、その後の具体的な学習へつなぐことができます。
使う上で大切にしてほしいこと
この活動で最も避けたいのは、「全部書かせること」が目的になることです。
自分の苦手さや困りごとについて考えることは、子どもによっては負担になります。
そのため、
- 話したくないことは話さなくてよい
- 書かなくてもよい
- 指さしや○でもよい
- 途中でやめてもよい
- 答えが以前と変わってもよい
という前提で取り組みます。
大切なのは、
「自分のことを伝えても大丈夫」「先生は自分の言葉を聞いてくれる」
という経験です。
ワークシートは、そのための対話を始める道具の一つです。
トリセツで「この子に必要な支援」が見えてきたら
自己理解はスタート地点です。
その後は、本人の困りに応じて、SST・感情理解・アンガーマネジメント・コミュニケーション・個別の指導計画などへ支援をつなげていきます。
支援級コンプリートパックには、今回の児童用SST・自立活動ワーク19枚+教師用指導ガイドに加えて、複数のSST教材・絵カード・アンガーマネジメント教材・個別の指導計画文例集などをまとめています。
「19枚だけでよいか」「支援級の教材をまとめてそろえるか」で迷う場合は、先に支援級パックの収録内容をご確認ください。
まとめ|「わたしのトリセツ」を、次の支援につなげよう
「わたしのトリセツ」で大切なのは、きれいなプリントを完成させることではありません。
子ども自身が、
- 「自分はこれが好き」
- 「こんなとき困る」
- 「こうしてもらえると助かる」
ということを少しずつ知り、必要なときに周囲へ伝えられるようになることです。
まずは無料版を使って、子どもとゆっくり話してみてください。
無料PDFダウンロード
無料版の次に、どれを選ぶ?
| こんな先生へ | おすすめ |
|---|---|
| まず「わたしのトリセツ」を1枚試してみたい | この記事の無料PDF |
| 自己理解・気持ち・援助要請・振り返りなどを19枚で取り組みたい | 19枚教材+教師用指導ガイド |
| 19枚に加え、SST・アンガーマネジメント・個別の指導計画など、支援級の教材をまとめて準備したい | 支援級コンプリートパック |
支援級の1年間をまとめて準備したい場合はこちら
19枚教材も支援級パックに収録されています。
今後、SSTや自立活動の教材を複数そろえる予定がある先生は、19枚教材を単品購入する前にパック内容をご確認ください。


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