【支援学級の参観日】自立活動×ボッチャ知的・情緒の子どもたちと一緒に

自立活動•SST

ボッチャという競技をご存知でしょうか?パラリンピックの正式種目であり、誰もが工夫次第で活躍できるユニバーサルスポーツです。それを自立活動の中で取り入れたことで、思いがけない子どもたちの姿が見えてきました。

普段はなかなか自分から声を出せない〇〇くんが、チームメイトの成功に「ナイスショット!」と自然に声をかけた瞬間は、まさに感動的でした。

授業参観という“見られる場”であっても、子どもたちはのびのびと活動し、保護者とともに温かい空間が生まれました。今回は、そんな自立活動の授業づくりと、ボッチャという競技の持つ力をご紹介します。

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なぜ「ボッチャ」なのか? 〜運動が苦手な子が「輝く」理由〜

自立活動では、「自分の感覚や身体を知る」「他者と関わる」「感情を整える」といった、教科とは異なる育ちを支援します。その中で「体を動かす活動=運動」も重要な位置づけとなりますが、運動が得意でない子どもも多いのが現実です。

そんな中で私たちが着目したのが「ボッチャ」でした。

  • ボールを投げる、転がすなどシンプルな動き
  • 遠くに飛ばせなくても、工夫次第で勝てるルール
  • 座ったままでもできる
  • 道具の扱いが安全・簡単

こうした特徴は、知的障害のある子も、情緒的に不安定な子も、同じ土俵で楽しめるという点で非常に優れています。運動能力に関わらず、誰もが主役になれるボッチャだからこそ、子どもたちは安心して活動に参加し、それぞれの持ち味を発揮できるのです。


ボッチャに隠された、自立活動のねらいに「ぴったりな学び」とは?

ボッチャは一見すると「ボールを転がすだけのゲーム」に見えるかもしれません。ですが、実は多くの教育的要素が隠されており、まさに自立活動の柱となる“育てたい力”と一致します。

1. 自分の身体感覚を知る

「どれくらいの力で投げれば届くのか?」「思った通りに転がらないとき、どう工夫すればいいのか?」といった試行錯誤を通して、筋感覚や力加減、姿勢、手首の使い方など「自分を調整する力」が育まれます。狙い通りにボールが転がった時の達成感は、子どもたちの自己肯定感を高めます。

2. 他者と関わる・作戦を立てる

チームで順番を考えたり、「ここを狙ってみて」「次はこうしよう」と声をかけ合ったり。こうしたやり取りの中で、コミュニケーション能力や協調性が育ち、さらに“相手の考えを受け止める”という大切な練習にもなります。お互いの意見を聞き、認め合うことで、チームとしてのまとまりが生まれます。

3. 自分の気持ちをコントロールする

失敗してもイライラせず、どうすれば次はうまくいくかを考える。仲間の成功を自分のことのように素直に喜ぶ。ボッチャの活動を通して、子どもたちは情緒面での成長を自然に促されます。感情のコントロールや、仲間を思いやる気持ちが育つ場となります。


保護者も巻き込む授業参観

今回の授業参観では、保護者の方にも一緒に活動に参加してもらいました。この取り組みには、いくつかの大きな意味があります。

最初は緊張していた子どもたちも、「親子ペア」で一緒に考えたり、「ナイス!」「惜しい!」と声をかけ合ったりする中で、自然と笑顔が増えていきました。あるお母さんからは、こんな感動の声が聞かれました。

「うちの子、普段こんな風に人と関わってるんですね。驚きましたし、すごく嬉しかったです。」

また別の保護者の方からは「点数や勝敗よりも、みんなで笑ってる様子に感動しました。自立活動の大切さがよく分かりました」という感想もいただきました。

保護者が「自立活動とは何か」を体感し、子どもの普段見せない一面や成長を共有できる機会として、今回の授業は大きな意味を持つものとなりました。家庭と学校の連携が深まる貴重な時間です。


授業の流れと支援の工夫

【授業構成の一例】

  1. 体育館を2周歩いて準備運動
  2. みんなで体操(視覚支援を活用)
  3. 本時の目当てを確認(例:「相手に気持ちよく声をかけよう」「工夫して挑戦しよう」)
  4. ボッチャのルール説明と実演
  5. ボッチャ活動(チーム戦・親子戦など、様々な組み合わせで実施)
  6. 振り返りシート記入・振り返り共有

【支援の工夫ポイント】

子どもたちが安心して、そして主体的に活動できるよう、細やかな工夫を凝らしました。

ルールは絵カードや写真で提示

文字での理解が難しい子どもも、視覚的にルールを把握でき、安心して活動に参加できました。

投げ方は自由

手で転がす、足で蹴る、スロープを使うなど、子ども一人ひとりの身体状況や得意な方法に合わせて自由にボールを動かせるようにしました。

得点より「いい声かけ」や「工夫」に注目してフィードバック

「今の声かけ、すごくいいね!」「〇〇ちゃんの工夫、みんなも真似できるね!」といった声かけで、結果だけでなくプロセスを評価しました。

コートはマスキングテープで簡単に設置

特別な設備がなくても、身近な材料で手軽にコートを作れるため、準備の負担も少なく、柔軟な対応が可能です。

※コートやラインがなくてもプレーできます!


活動のあとの「ふり返り」で深まる学び

この活動で特に大切にしているのが、活動後の「ふり返り」です。子どもたちが自分の活動を客観的に見つめ、学びを深める貴重な時間となります。

振り返り例(低学年)

  • 「〇〇くんに“ナイス”って言えてよかった」
  • 「まっすぐ投げるのがむずかしかったけど、がんばった」

振り返り例(高学年)

  • 「はじめは投げ方が分からなかったけど、友だちのを見てまねしたらできた」
  • 「チームでどう勝つか考えるのが楽しかった。コミュニケーションが大事だと分かった」

ふり返りがあることで、子どもたちは“活動の意味”を再確認し、自分の成長を自覚できます。また、友達の振り返りを聞くことで、新たな気づきや学びを得る機会にもなります。


おわりに

ボッチャは、運動が得意な子も苦手な子も、静かに過ごしたい子も、みんなが「自分のペース」で参加できる活動です。点数や順位ではなく、「関わること」「工夫すること」「楽しむこと」が評価されるこの場面で、子どもたちはそれぞれの力を存分に発揮します。

今回の授業参観で保護者とともに取り組んだことで、家庭との連携も深まり、子どもたちの成長を共有する喜びが生まれました。

自立活動にボッチャを取り入れることは、まさに“共に学び、共に生きる”という「共生」の実践そのものです。これからも、一人ひとりの子どもが輝き、他者と共に成長できるような授業を大切に育てていきたいと考えています。

あなたの学校でも、ボッチャを自立活動に取り入れてみませんか?

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