「こんなときどうする?」というテーマは、子どもたちが日常生活で起こりやすい具体的な場面を想定し、自分で考え、適切な行動を選ぶ習慣を養うのに最適な活動です。特別支援学級では、このSSTを継続的に行うことで、子どもたちのトラブル対応力や感情調整力が大きく向上することが期待できます。
この記事では、
「こんなときどうする?」の具体的な授業の進め方から、すぐに使える例題10選、そして無料でダウンロードできるワークシートまで、実践に役立つ情報をご紹介します。
また、絵カード10枚とワークシート10枚をセットにした有料教材についてもご案内します。無料ダウンロードと合わせて、日々の指導にお役立てください。
その他の無料教材も多数ご用意しています。ご活用ください👇
授業のねらいと流れ
「こんなときどうする?」の活動は、単に「正解」を教えるのではなく、子どもたち自身が様々な選択肢に気づき、より良い行動を主体的に選べるようになることを目指します。

【授業のねらい】
この活動を通して、子どもたちには以下の力を身につけてほしいと考えています。
- 自分の気持ちに気づき、適切な行動を選べるようになる:自分の感情を認識し、その感情に流されずに理性的な行動をとる方法を学びます。例えば、イライラしたときに「どうすれば落ち着けるか」「相手にどう伝えればいいか」などを具体的に考えます。
- 他者の視点を取り入れて考え、共感力を育てる:自分だけでなく、相手がどう感じているのか、どうしてそう行動したのかを想像する練習をします。これにより、多角的な視点を持つことの重要性を理解し、共感する心を育みます。
じっくり取り組む場合の授業の流れ
効果的な活動のために、以下の4つのステップで進めることをおすすめします。これは、自立活動の時間を確保できる場合や、特定の子どもたちにじっくりと取り組ませたい場合に適しています。
- 例題の提示:具体的な「こんなときどうする?」の場面を提示します。状況がイメージしやすいように、絵カードや写真、短い寸劇などを活用するのも効果的です。
- 自分の考えをワークシートに書く:子どもたちは提示された例題に対し、自分だったらどうするか、どんな気持ちになるかをワークシートに記入します。この時、「どうしてそう思ったのか」理由も書くように促します。
- みんなで共有・意見交換:記入したワークシートをもとに、グループや全体で意見を発表し合います。それぞれの考えを尊重し、様々な意見があることを知る機会とします。先生はファシリテーターとして、多様な意見を引き出す役割を担います。
- いろいろな対処法を知る:意見交換の後、先生が「こんな考え方もあるよ」「こんな言い方もできるね」といった形で、多様な解決策や建設的な行動例を提示します。これにより、子どもたちの選択肢を広げます。
短時間でもできる!「こんなときどうする?」の実践アイデア
「自立活動の時間を毎回確保するのは難しい…」と感じる先生方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。「こんなときどうする?」は、ワークシートがなくても、朝の会や帰りの会、ちょっとしたスキマ時間に、手軽に実践できます。
【イラストを見せて問いかけ、短時間で行うスタイル】

この方法は、特に低学年の子どもや、集中が長く続かない子どもに効果的です。
- イラスト・写真の提示:あらかじめ準備した「こんなときどうする?」の状況を表すイラストや写真(例:牛乳をこぼして困っている子のイラスト、友達と言い争っているイラストなど)を、子どもたちに見せます。ホワイトボードに貼ったり、タブレットで提示したりするのも良いでしょう。
- 問いかけ:「これ、どうしたのかな?」「この子、どんな気持ちだと思う?」「こんなとき、あなただったらどうする?」と、簡潔な言葉で問いかけます。
- 意見の発表:子どもたちに自由に意見を発表させます。数人に絞って指名したり、挙手制にしたり、子どもの状況に合わせて調整しましょう。どんな意見でもまずは受け止める姿勢が大切です。
- 共感と広がり:「そうだね、そんな気持ちになるね」「いいね、そうするのも一つの方法だね」と肯定的に受け止めつつ、「他にはどうかな?」「もし、相手の人がこう言ったら?」などと、少しだけ思考を広げる問いかけをします。
よく使った「こんなときどうする?」例題10選
ここでは、実際に特別支援学級でよく活用し、子どもたちの反応が良かった「こんなときどうする?」の例題を10選ご紹介します。日常生活で起こりやすいシチュエーションを中心に選んでいるので、子どもたちが自分事として考えやすいでしょう。
これらの例題に対応する絵カードやワークシートは、後述する教材に収録されています。
- 牛乳をこぼしてしまったとき
- 友達と意見がぶつかってしまったとき
- 課題がわからなかったとき
- 忘れ物をしてしまったとき
- 友達に嫌なことを言われたとき
- 体育の順番に納得できないとき
- 手を挙げたのに当ててもらえなかったとき
- 廊下でぶつかってしまったとき
- 音がうるさくて集中できないとき
- 自分が正しいと思ったときに反対意見を言われたとき
これらの例題は、単に「どうする?」だけでなく、「どう感じる?」という感情の側面にも着目させることが重要です。
子どもたちの反応と変化
「こんなときどうする?」の活動を始めた当初は、子どもたちから「わからない」「先生が言えばいい」といった反応が見られることがよくあります。しかし、継続して取り組むことで、子どもたちの反応には目覚ましい変化が現れてきます。
「自分だったらこう言う」「助けを呼べばいい」といった、前向きで具体的な意見が出てくるようになります。これは、子どもたちが「もしものとき」に備え、自ら考え、行動する力が育ち始めている証拠です。
また、自分の気持ちや考えをワークシートに書き出すことにも慣れてきます。最初は単語しか書けなかった子が、徐々に「〜と思ったから、〜する」といった形で、自分の思考プロセスを言語化できるようになる姿も見られます。この「言語化する」という過程が、感情の整理や問題解決能力の向上につながるのです。
【無料DL】「こんなときどうする?」お試しワークシート(PDF)
このセクションでは、今すぐ授業で使える「こんなときどうする?」の「廊下でぶつかったとき」のワークシートを無料でダウンロード提供します。
このワークシートは、A4サイズで印刷でき、子どもたちが自分の考えや気持ちを記入するスペースが設けられています。ぜひ、活動の入り口としてご活用ください。イラストも提供しますので、テレビに映したり印刷したりしてご活用ください。

【有料教材】「こんなときどうする?」絵カード&ワークシートセット
この活動を継続的に実践したい先生方のために、厳選した10の事例に対応した教材セットを制作しました。
この教材には、以下の内容がすべて含まれています。
イラストカード 10枚
授業の導入や短時間での活動にすぐに使える、見やすいイラストカードです。1枚1枚pdfで制作してありますので、画面にうつしたり印刷したりしてご活用ください。

場面の説明と発問例をまとめたシート
各カードに合わせた授業の進め方や、子どもたちへの具体的な声かけ例を解説しています。丁寧にA4、7枚にまとめました。

ワークシート 10枚
各事例に沿った記入式のワークシートです。子どもたちが自分の考えを整理し、言語化する力を養います。

このセットがあれば、準備の手間を大幅に削減し、質の高いSSTをすぐに実践できます。日々の指導をさらに豊かにする10時間分のツールとして、ぜひご検討ください。
ダウロードはこちらから👇
【教材配布】SST「こんなときどうする?」絵カード&ワークシートセット
活用のポイント・先生へのヒント
「こんなときどうする?」の活動をより効果的に進めるために、以下のポイントを意識してみてください。
- 初めは「正解」を求めず自由に意見を出させる:最初のうちは、どんな意見でも否定せず、まずは子どもたちが自分の考えをアウトプットすることに慣れさせましょう。
- 子どもの回答は肯定的に受け止め、「こんな考えもあるね」と広げる:どんな意見に対しても「なるほど、そういう考え方もあるね」と肯定し、そこからさらに「もし、こんな風に言ったらどうなるかな?」といった問いかけで、思考を深めていきます。
- 感情の背景にも注目させるとより深い理解に:単に「どうする?」だけでなく、「その時、どんな気持ちになった?」「どうしてそう思った?」と、行動の裏にある感情や思考のプロセスに焦点を当てることで、共感力や自己理解を深めることができます。
まとめ
「こんなときどうする?」の活動は、自立活動の核となるSSTとして、子どもたちが「もしものとき」に備える力を身につける最高の教材です。
自分で考え、自分の気持ちを調整し、他者と建設的に関わる力は、子どもたちが社会で生きていく上で不可欠なスキルです。じっくりとワークシートに取り組む時間があれば、子どもたちの思考を深める良い機会になりますし、もし時間がなければ、絵カード一枚からでも始められる手軽さも魅力です。
今回ご紹介した無料お試しワークシートと、より実践的な有料教材をぜひご活用いただき、子どもたちの成長をサポートする一助となれば幸いです。
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