個別の指導計画の長期目標・例文まとめ【自立活動6区分対応】特別支援学級担任が現場で使える書き方ガイド
日曜日の夜、真っ白なWord画面の前でフリーズしていませんか?
「去年のコピペでは、今年のこの子には合わない」「保護者の願いと、本人の実態をどうすり合わせればいい?」「そもそも、自立活動の長期目標って何を書けば正解なの?」
特別支援学級の担任にとって、毎学期の「個別の指導計画」作成は、最も神経と時間をすり減らす業務のひとつです。この記事では、自立活動の6区分に対応した長期目標の書き方と例文を、現場目線でわかりやすく解説します。
📋 個別の指導計画における「長期目標」とは?
個別の指導計画には、大きく「長期目標」と「短期目標」の2種類があります。
| 項目 | 長期目標 | 短期目標 |
|---|---|---|
| 期間 | 1年間(または前期・後期) | 数週間〜1学期単位 |
| 内容 | その子が年間でめざす姿 | 長期目標に向けた具体的なステップ |
| 書き方 | 「〜することができる」「〜しようとする」 | 「〜場面で、〜の支援のもと、〜できる」 |
長期目標は「1年後のその子のゴールイメージ」であり、自立活動の6区分(健康の保持・心理的な安定・人間関係の形成・環境の把握・身体の動き・コミュニケーション)のどれに対応するかを意識して書くことが重要です。
✏️ 自立活動6区分別|長期目標の例文
ASD・ADHDの特性を持つ児童に対応した、現場で使いやすい長期目標の例文を区分ごとに紹介します。
① 健康の保持|感覚特性と自己管理
ASDの児童にとって、教室は「眩しく、うるさく、痛い場所」になることがあります。まず自分の身体の状態を知り、整えることが学習の土台になります。
【長期目標の例文】
聴覚や視覚などの感覚過敏による苦痛を自覚し、イヤーマフや遮光カーテンの利用、静かな場所への移動など、自分に合った調整手段を選択することができる。
【長期目標の例文】
自分の「疲れ」や「空腹」「便意」などの内的感覚を認識し、適切なタイミングで「休みます」「トイレに行きます」等の発信を行うことができる。
② 心理的な安定|感情の調整と自己肯定感
「こだわり」や「完璧主義」からくるパニック・自己否定感をどう和らげるかが鍵です。
【長期目標の例文】
自分の思い通りにいかない時に、怒りの感情を爆発させるのではなく、深呼吸やカウントダウン、場所の移動によって自分を落ち着かせることができる。
【長期目標の例文】
100点でない自分や、小さなミスをした自分を許容し、「書き直せば大丈夫」「次に活かせる」という中間の思考(グレーゾーンの受容)を持つことができる。
【長期目標の例文】
怒りが頂点(噴火)に達する前の「モヤモヤ(予兆)」を自覚し、「10数える」「水を飲む」などの自分専用の鎮静ルーチンを発動させることができる。
③ 人間関係の形成|他者理解と社会的スキル
「空気を読む」ことが難しい児童に、具体的な「ルールの翻訳」を提供することが支援の出発点です。
【長期目標の例文】
相手の表情や言葉、状況から、相手がどのように感じているかを推測し、それに応じた適切な言葉かけや行動を選択することができる。
【長期目標の例文】
困難な状況に直面した際、一人で抱え込んだり諦めたりせず、「手伝ってください」「わかりません」と、相手が助けやすい方法で伝えることができる。
【長期目標の例文】
自分のやりたいルールを押し通すのではなく、集団のルールや友達の提案を一度受け入れ、「じゃあ今回は〇〇でいいよ」という妥協のスキルを習得することができる。
④ 環境の把握|空間・時間・情報の整理
ASD特有の「情報の断片化」を防ぎ、世界を「見通せる場所」に変えることが目標です。
【長期目標の例文】
タイマーやスケジュール表を活用し、活動の終わりを予測して、次の活動へスムーズに移行することができる。
【長期目標の例文】
自分の持ち物や学習用具を決められた場所に整理し、今必要な情報(教科書、指示)だけに集中して取り組むことができる。
⑤ 身体の動き|協調運動と微細運動
「不器用さ」は脳の特性です。訓練だけでなく「代わりの手段」をセットで考えることが大切です。
【長期目標の例文】
箸・ハサミ・鉛筆・定規などの道具を、自分の意図した通りに操作し、学習や生活の利便性を高めることができる。
【長期目標の例文】
自分の身体の大きさを把握し、人や物にぶつからずに移動したり、力加減(強弱)をコントロールして運動したりすることができる。
⑥ コミュニケーション|意図の伝達とICT活用
「話す」ことだけがコミュニケーションではありません。音声言語・絵カード・ICT端末など、その子に合った方法を選ぶことが大切です。
【長期目標の例文】
自分の要求、拒否、報告を、音声言語・絵カード・ジェスチャー・ICT端末など、自分にとって最も確実な方法で他者に伝えることができる。
【長期目標の例文】
「適当に」「ちょっと」などの曖昧な指示に対し、「具体的に何をすればいいですか?」と、不足している情報を聞き出すことができる。
【長期目標の例文】
相手が傷つくような「事実」をそのまま口に出すのではなく、「心の中に留める」または「優しい言葉に言い換える」フィルターを持つことができる。
🖊️ 長期目標の書き方|現場で使える3つのコツ

コツ① 「できる」より「しようとする」姿を書く
長期目標は「完全にできるようになる」ことを求めるものではありません。「やろうとする姿勢が育っているか」を評価できる書き方にすることで、達成度の判断がしやすくなります。
❌「友達と仲良くすることができる」
⭕「友達の話を最後まで聞き、『なるほど』と反応しようとすることができる」
コツ② 評価基準は「一般的な学年水準」ではなく「4月のその子」との比較
個別の指導計画は、文字通り「個別」のものです。クラス全体の平均や学年水準と比べるのではなく、4月のその子と今のその子を比較することが大切です。
「パニックの時間が10分短縮された」のは、凄まじい成長です。それを目標・評価にしっかり反映させてください。
コツ③ ねらいは「極限まで小さく」具体的に
大きすぎる目標は評価もしにくく、子どもにとっても達成感を得にくいものです。スモールステップで設定することで、子どもも先生も「できた!」を積み重ねられます。
❌「集団活動に積極的に参加する」
⭕「体育の時間、最初の5分間だけ集団と同じ空間に留まることができる」
⚠️ よくある「失敗パターン」と改善例
個別の指導計画の長期目標でありがちな失敗パターンと、その改善例を見ていきましょう。
| ❌ 失敗パターン | ✅ 改善例 |
|---|---|
| 友達と仲良くする | 友達と5分間、同じ遊びを共有することができる |
| 感情をコントロールする | 怒りの予兆(モヤモヤ)を感じた時に、深呼吸を1回実行できる |
| 自分の気持ちを伝える | 困った時にヘルプカードを提示して、教師に助けを求めることができる |
| 授業中に集中する | タイマーが鳴るまでの10分間、自分の座席で課題に取り組むことができる |
| 整理整頓ができる | ロッカーのラベルを見て、教科書を決められた場所に戻すことができる |
📌 セルフアドボカシーの視点を長期目標に入れる
自立活動の究極の目標は、「大人の支援を減らし、本人が自分のために支援をデザインできるようになること」です。長期目標には、この視点を段階的に組み込んでいくことが理想的です。
| 段階 | 状態 | 長期目標のイメージ |
|---|---|---|
| Step 1|自覚 | 自分の特性を知る | 「僕は大きな音が苦手」と自分の特性を言葉にできる |
| Step 2|選択 | 支援を選び、試す | イヤーマフか静かな部屋かを自分で選んで使える |
| Step 3|依頼 | 支援を言葉で求める | 「耳栓を使ってもいいですか?」と教師に伝えられる |
| Step 4|説明 | 理由を添えて伝える | 「集中したいので端の席にしてください」と説明できる |
| Step 5|管理 | 自分で環境を整える | 自分でタイマーをセットして休憩を取ることができる |
📝 まとめ:個別の指導計画 長期目標を書く前に確認したい3つのこと
- 自立活動の6区分のどれに対応するかを明確にする(健康の保持・心理的な安定・人間関係の形成・環境の把握・身体の動き・コミュニケーション)
- 目標は「4月のその子」を基準に、極限まで小さく・具体的に書く
- 「先生の根性や子どもの努力」に頼らず、「タイマーがあればできる」「カードがあれば言える」という仕組みをセットで考える
個別の指導計画の作成は、一人ひとりの「できないこと」を数え上げる作業ではありません。子どもたちが「自分なりの『できた!』に出会うための環境をデザインする仕事」です。
しかし、そのデザイン図(指導計画)を書くために先生自身が疲弊してしまっては、元も子もありません。先生の笑顔と心のゆとりこそが、子どもたちにとって最大の「環境調整」なのです。
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