教職調整額が増えても教員の働き方は変わらない理由|給特法の矛盾と現場の苦悩

支援の工夫

「教職調整額を4%から10%へ引き上げる」

このニュースを目にしたとき、多くの教員が「ようやく国が私たちの長時間労働の問題に本腰を入れたか」と一瞬期待を抱いたかもしれません。しかし、その期待はすぐに裏切られることになります。実態は、私たちの長年の苦労をさらに深めるような「改善」の裏に隠された冷たい現実が横たわっていたからです。

教職調整額と特別支援教員の手当てに関わりについてはこちらの記事を参考ください👇

特別支援教育に関わる個人の問題は、社会問題でもある。という視点でまとめました👇

特別支援教育担当手当の減額

今回の教職調整額の引き上げは、決して教員の待遇改善に繋がるものではありません。むしろ、その「改善」と引き換えに、私たちは別の手当を削られ、基本給のベースアップ率まで抑制されるという、まさに「焼け石に水」の状況に置かれています。

例えば、特別支援教育担当手当の減額。この手当は、特別な支援を必要とする子どもたちと向き合う教員にとって、精神的・身体的負担を考慮して支給されてきたものです。その減額は、教員の専門性や努力を軽視するだけでなく、支援を必要とする子どもたちへの教育の質の低下にも繋がりかねません。

また、物価高騰が続く中での基本給の抑制は、教員の生活を圧迫し、モチベーションの低下を招きます。結局のところ、表面的には「増額」されたように見えても、実質はトントン、いやマイナスになる教員が多数を占めるでしょう。

「定額働かせ放題」は、これからも続くのか

政府は「2029年度までに時間外在校時間を30時間程度に減らす」という目標を掲げていますが、現場の教員にとっては実現性に疑問を抱かざるを得ません。なぜなら、そのための仕組み・人員・予算が圧倒的に不足しているからです。

授業準備、部活動指導、会議、事務作業…。それらの業務を効率化しなければ、時間外労働の削減など絵に描いた餅です。ICTの導入やスクールサポートスタッフの拡充が必要なのに、現場の実態はそれに程遠いのが現実です。

このままでは、書類上は「定時退勤」、実際は「サービス残業」が続き、社会はそれを「教員の献身」として美化し続けるのでしょうか。私たちは、いつまでこの制度に甘んじ続けなければならないのでしょうか?

制度については詳しくこちらでまとめています👇

そもそもなぜ「特別」なんでしょうか?──給特法の不公平性

教員には、給特法(教育職員給与特別措置法)という例外的な制度が適用されています。「特殊性があるから」という理由で、残業代の代わりに一律4%(現在は10%)の手当を支給するこの法律。

しかし考えてみてください。他にも特殊な職業は数多く存在します。消防士、警察官、官僚…。なぜ教員だけがこのような制度に組み込まれているのでしょうか?

私たちはこう問いかけたいのです。「文科省や財務省の職員にもこの制度を適用できますか?」と。もしそうすれば、猛烈な反発が起こるに違いありません。それは、この制度がいかに不公平で、教員の労働を安く済ませるための方便であるかを示しているのです。

本当に必要なのは、「対価」ではなく「尊厳」

教員はお金のためだけに働いているわけではありません。子どもの成長を願い、社会の未来を支えるために働いています。しかし、それでもなお、私たちは「尊厳」を求めています。教員の専門性・責任・労働に対する正当な評価が必要です。

教員の尊厳を守る3つの改革案

  1. 労働時間に応じた正当な対価の支給
    給特法を廃止し、教員にも労働基準法を適用すべきです。時間外勤務手当を明確にすることで、長時間労働の抑制と健康の確保が実現されます。
  2. 手当の名を借りたごまかしをやめる
    教職調整額の引き上げと引き換えに他の手当を削るような小手先の調整では、教員の不信感は拭えません。特別支援教育担当手当のような重要な手当は維持・拡充されるべきです。
  3. 他職種と同等の法的保護と補償
    教員も労働者です。ハラスメント、過重労働、精神的ストレスに対して、万全の法的保護とサポート体制が必要です。安心して働ける環境こそが、教育の質を保つ土台になります。

おわりに

教職調整額が10%になったところで、現場の働き方は変わりません。なぜなら、給特法という不公平な構造が温存されているからです。真の改革とは、「定額働かせ放題」からの脱却です。

この問題は、教員だけの課題ではありません。子どもたちの未来、社会全体の教育の在り方に深く関わっています。

教員という職業が、専門性と情熱を最大限に発揮できるように。尊厳と対価の両立を叶えるために。私たちは声を上げ続けたいです。

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