小学校の支援学級に入る基準は?勧められた時の対処法、デメリットまで答えます

保護者・連携

この記事では、「小学校の支援学級の基準」について、制度的な側面から、現場のリアルな声、そして保護者としての考えまで、詳しく掘り下げていきます。

この記事を読むと、以下のことがわかります。

  • 小学校の支援学級を勧められた時に、まず何をすべきか
  • 「特別支援学級はずるい」という誤解に対する考え方
  • 文部科学省が定める特別支援学級の基準とは
  • 特に「知的障害」の支援級の基準や目安
  • 支援学級に入るかどうかを最終的に誰が決めるのか、そのプロセス
  • 支援学級に入るための具体的な手続きや流れ
  • 知っておくべき特別支援学級のデメリットと、その向き合い方

小学校の支援学級を「勧められた」…親の戸惑いと最初に考えるべきこと

「お子さん、就学のことで少しご相談が…」「〇〇くんの集団での様子を見ていると、小学校では支援学級も検討されてみては…?」

保育園や幼稚園の先生、あるいは就学時健診の心理士さんから、ある日突然こんなふうに「小学校の支援学級を勧められた」としたら。多くの保護者の方は、頭が真っ白になるほどの衝撃を受けるかもしれません。

「うちの子が、どうして?」
「他の子と何が違うっていうの?」
「“普通”じゃないってこと?」
「支援学級なんて入ったら、将来どうなるの?」

不安、焦り、怒り、悲しみ…色々な感情が渦巻くと思います。

教師の体験談

「保護者の方に支援学級のお話を切り出すのは、私たち教師にとっても非常に勇気がいることです」と、ある教師は言います。「私たちは、毎日大勢の子どもたちを見ています。その中で、『この子は、通常学級の40人近い集団の中では、しんどい思いをするかもしれない』『この子の良さや可能性を伸ばすには、もっと個別に合わせたサポートが必要かもしれない』と感じることがあります。それは、その子の“今”の困りごとと、“未来”の可能性、両方を見据えての専門的な判断です。決して『できない子』と決めつけているわけではなく、その子に『最適な学びの場』はどこかを、保護者の方と“一緒に”考えたい、という提案なのです。」

勧められたら、まずは深呼吸してください。それは「決定」ではありません。あくまで「選択肢の一つ」として提案されたに過ぎません。

最初に考えるべきこと

  1. 冷静に事実を確認する
    • 「なぜ、そう思われたのですか?」
    • 「集団の中で、具体的にどんな様子が見られますか?(例:指示が通りにくい、友達とトラブルになりやすい、パニックになる、じっとしていられない等)」
    • 「逆に、得意なこと、伸びている部分はどんなところですか?」
    • 感情的にならず、まずは園や学校でのお子さんの具体的な様子を、客観的に教えてもらいましょう。
  2. 家庭での様子と照らし合わせる
    • 園や学校で指摘された「困りごと」は、家庭でも見られますか?
    • 「外では頑張っているけど、家では癇h尺がひどい」など、内外でのギャップはありませんか?
    • お子さん自身が「行きたくない」「疲れた」と口にしていませんか?
  3. 情報収集を始める
    • 「支援学級」とは具体的にどんなところなのか、調べ始めましょう。
    • この時点ではまだ、「入れる・入れない」を決める必要はありません。まずは「知る」ことが大切です。

「勧められた」ことは、ショックな出来事であると同時に、お子さんの「困りごと」に早期に気づき、最適なサポート体制を考える「きっかけ」をもらった、と捉えることもできるかもしれません。


「特別支援学級はずるい」という誤解と保護者の葛藤

支援学級を検討する上で、保護者の心を重くするものの一つに、「周りの目」があります。特に、「特別支援学級はずるい」という、一部の誤解に基づく声です。

なぜ「ずるい」と思われてしまうのでしょうか。

  • 人数の手厚さ: 通常学級が30~40人なのに対し、支援学級は(障害種別にもよりますが)法律上8人が標準です。先生の目が届きやすい環境です。
  • 個別の対応: 一人ひとりの特性や学習進度に合わせて、個別の指導計画が作られ、きめ細やかな対応がされます。
  • テストや評価: 通常学級とは異なる基準や方法で評価されることがあります。
  • 行事などでの配慮: 運動会や学芸会などで、負担が少なくなるような配慮がされることがあります。

これらの「手厚さ」だけを切り取って見ると、「楽をしている」「優遇されている」と見えてしまい、「ずるい」という言葉につながるのかもしれません。 

もし自分の子が通常学級で、毎日宿題やテストに追われ、集団生活のルールに必死に適応しようと頑張っているとしたら…。その横で、少人数で手厚く見てもらっている支援学級の子たちを見て、「いいな」と一瞬思ってしまう気持ちも、人間として理解できなくはありません。

しかし、それは大きな誤解です。支援学級の「手厚さ」は、「特権」や「優遇」では断じてありません。それは、彼ら・彼女らが、他の子と同じスタートラインに立ち、学校生活を送り、学ぶ権利を保障されるために「必要不可欠な配慮」なのです。

教師の体験談

以前、通常学級の保護者の方から『うちの子も、もっと個別に見てほしい。支援学級の子ばかり手厚くて不公平だ』とご意見をいただいたことがあります

その時、私はこうお話ししました。『例えば、目が悪い子がメガネをかけるのを“ずるい”とは言いませんよね。その子にとって、黒板の字を見るためにメガネが必要だからです。支援学級のサポートも同じです。例えば、Aくんは聴覚がとても敏感で、通常学級のざわめきやチャイムの音が、私たちには想像もできないほどの苦痛に感じられます。だから、静かな環境で学ぶ時間が必要なんです。Bさんは、板書を書き写すのが極端に苦手です。書くことに必死で、先生の話が全く頭に入ってきません。だから、タブレット端末を使ったり、書く量を減らしたりするサポートが必要なんです』と。

多くの子にとっては“当たり前”の環境が、ある子にとっては“耐え難い”環境であること。その“当たり前”に合わせるために、莫大なエネルギーを消費し、疲弊しきっていること。その『見えない困難さ』を想像してもらうよう、丁寧に説明を続けます。支援学級は、決して『楽をする場所』ではなく、『その子に必要な方法で学ぶ場所』なのです。

「ずるい」という言葉に、親は傷つきます。「うちの子だって、好きでこうなったわけじゃない」「通常学級で頑張れるものなら、そうしたい」と。しかし、その言葉に怯えて、お子さんにとって必要なサポートを受ける機会を逃してしまうことの方が、将来的に大きな不利益につながるかもしれません。

大切なのは、周りの声に振り回されることではなく、お子さん自身が「今、何に困っているのか」「どうすればその困りごとを減らし、安心して学べるか」という視点で判断することです。


特別支援学級に入る基準、文部科学省の定義はどうなっている?

では、具体的にどのようなお子さんが特別支援学級の対象となるのでしょうか。その基準は、国(文部科学省)が法律で定めています。

根拠となるのは、「学校教育法施行令 第22条の3」です。ここには、特別支援学級の対象となる障害の種類と、その「程度」が示されています。

非常に堅苦しい文章なので、少し噛み砕いて解説します。小学校の特別支援学級は、主に以下の障害種別ごとにクラスが編成されます(※自治体や学校によって、設置されている学級の種類は異なります)。

  1. 知的障害
  2. 肢体不自由
  3. 病弱・身体虚弱
  4. 弱視
  5. 難聴
  6. 言語障害
  7. 自閉症・情緒障害

このうち、近年特に在籍者が増えているのが「自閉症・情緒障害」学級です。発達障害(ASD、ADHD、LDなど)と診断されたり、その傾向があったりするお子さんの多くが、この学級の対象となります。

重要なのは「障害の程度」

法律で定められているのは、診断名だけではありません。重要なのは「どの程度の障害か」という点です。

例えば、「知的障害」については、
「知的発達の遅滞があり、他人との意思疎通が困難で日常生活を営むのに頻繁に援助を必要とする程度のもの」
とされています。

また、「自閉症・情緒障害」については、
「自閉症又はこれに類するもので、他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの」
「主として心理的な要因による選択性緘黙(かんもく)等があり、社会生活への適応が困難である程度のもの」
と定められています。

ポイント

  • 診断名は必須ではない(ことが多い): 医師の診断書がなくても、「学習上又は生活上の困難」の程度が上記の基準に該当すると教育委員会が判断すれば、入級の対象となり得ます。(※ただし、知的障害学級の場合は療育手帳(愛の手帳、みどりの手帳など)や知能検査の結果が、自閉症・情緒障害学級の場合は医師の診断書や意見書が、判断の重要な資料となることがほとんどです。)
  • 「困難の程度」が鍵: 基準の文言にある通り、「困難である程度のもの」「頻繁に援助を必要とする程度のもの」という部分がポイントです。つまり、その困難さが、通常学級の集団指導の中ではカバーしきれず、個別の配慮が必要なレベルかどうか、が問われます。

私の考え

文部科学省の基準と聞くと、とても厳格で、明確な線引きがあるように思えます。しかし、実際の条文は「~程度のもの」という、ある程度の幅を持たせた表現になっています。これは、診断名や検査の数値だけで一律に決めるのではなく、一人ひとりの子どもの「教育的ニーズ(どんな支援が必要か)」に基づいて柔軟に判断しましょう、という意図があるのだと思います。

詳しくは、文部科学省のウェブサイトにも情報が掲載されています。

【外部リンク】
文部科学省:特別支援教育について
(※このリンクは文部科学省の特別支援教育のトップページです。ここから関連する法令や資料を探すことができます。)


特別支援学級(知的障害)の基準とは?具体的な目安は?

支援学級の中でも、特に「知的障害」の学級については、基準が気になる保護者の方が多いようです。

文部科学省の定義では前述の通り「知的発達の遅滞があり…(中略)…頻繁に援助を必要とする程度のもの」とされていますが、実務上、一つの目安として用いられるのが「知能検査(WISC(ウィスク)など)」の結果です。

※WISC(ウィスク)についてはこちらの記事で詳しくまとめています👇

知能指数(IQ)の目安

一般的に、知能検査の結果(IQ)が「70~75以下」であり、かつ「日常生活動作(ADL)や社会適応能力」にも明らかな困難がある場合、療育手帳(知的障害の認定手帳)の取得対象となることが多く、それに伴い「知的障害」の支援級の対象として検討されます。

しかし、これは絶対的な基準ではありません。

  • IQが70以下でも、身辺自立ができており、学習意欲も高い場合、保護者の希望で通常学級(+通級指導教室の利用など)を選択するケースもあります。
  • 逆に、IQが80近辺(いわゆる「境界知能(ボーダーライン)」)であっても、集団指示が全く通らない、抽象的な概念(算数の繰り上がり・繰り下がりなど)の理解が著しく困難、パニックが多いなど、学習面・生活面での困難さが非常に強ければ、知的障害学級や、情緒障害学級の対象となる場合があります。

知的障害学級の特徴

知的障害学級は、単に「勉強をゆっくり教える」だけではありません。「日常生活の指導」や「自立活動」といった、生きていく上で必要なスキル(着替え、片付け、時間管理、金銭管理、コミュニケーションスキルなど)を、個別の計画に基づいて重点的に学ぶ時間割が組まれているのが特徴です。

教師の体験談

「以前、WISCのIQが78だったAくんがいました。数値上は知的障害の区分には入りません。保護者の方も『何とか通常級で』と強く希望されていました。しかし、Aくんは言葉の理解が非常にゆっくりで、集団への指示はほとんど通らず、授業中は立ち歩いてしまったり、教室を飛び出してしまったりしました。私たちは、Aくんにとって、今の通常級の環境は『情報が多すぎる』『スピードが速すぎる』のではないかと感じました。

そこで、保護者の方と何度も話し合い、知的障害の支援級を体験してもらったのです。そこでは、先生がAくんの目を見て、短い言葉で、具体物(おはじきや絵カード)を使って指示を出しました。算数も、教科書ではなく、Aくんが好きな電車のカードを使って『2台と3台で、全部で何台?』と学びました。すると、Aくんは初めて『わかった!』という表情を見せ、課題に集中できたのです。

最終的に、保護者の方は知的障害学級を選ばれました。『IQの数字より、あの子が“わかった”と笑った顔を信じたい』とおっしゃっていたのが印象的です。支援級に移ってから、Aくんは落ち着きを取り戻し、ひらがなや簡単な足し算も、彼なりのペースで習得していきました。」

私の考え

親としては、どうしても「IQ」という数字に一喜憂してしまいます。「70」と「71」で何が違うのか、と。でも、Aくんの例のように、大事なのは数字そのものではなく、その子が「今、どんな環境で、何を、どう学べば、一番伸びるのか」ということなのだと思います。

もし「知的障害」の基準に該当するかも、と言われたら、まずは検査結果の「数値」に落ち込むのではなく、「特性(得意なこと、苦手なこと)」を詳しく聞き、知的障害学級が具体的にどんな指導(学習、生活スキルなど)をしているのか、見学などを通して知ることが重要だと感じます。


特別支援学級に入る基準は、最終的に「誰が」決めるのか?

「支援学級を勧められた」「基準もなんとなく分かった」…では、最終的に「入る・入らない」は、誰が決めるのでしょうか?

このプロセスは、保護者にとって最も気になるところであり、時に「学校や教育委員会に強制されるのではないか」という不安を抱く部分でもあります。

決定プロセス(一般的な流れ)

  1. 相談・情報収集(保護者): 園、学校、療育機関、教育委員会(就学相談窓口)などに相談。学校見学を行う。
  2. 就学相談(保護者・教育委員会): 保護者が自治体の教育委員会に「就学相談」を申し込む。(※在学中の場合は、学校を通じて教育委員会と相談します)
  3. アセスメント(検査・面談): 必要に応じて、教育委員会の専門スタッフ(心理士など)がお子さんの発達検査(WISCなど)や行動観察、保護者との面談を行います。
  4. 就学支援委員会(専門家委員会)での検討: 医師、心理士、大学教授、学校長、特別支援教育の専門家などで構成される「就学支援委員会(※名称は自治体による)」が、検査結果、園・学校での様子、保護者の意向などを基に、その子に最もふさわしい「学びの場」はどこか(通常学級、支援学級、通級、特別支援学校など)を専門的に検討します。
  5. 決定(教育委員会): 就学支援委員会の「意見(答申)」を受け、最終的に「教育委員会」が、就学先(どの学校の、どの学級か)を決定します。
  6. 通知(教育委員会→保護者): 決定内容が、保護者に通知されます。

「誰が決めるか」の答え

法律上の最終的な決定権を持っているのは、「教育委員会」です。

しかし、ここで非常に重要なことがあります。現在の特別支援教育の考え方では、「保護者の意向を最大限尊重する」ことが大原則となっています。

文部科学省も、「就学先の決定に当たっては、本人の障害の状態、本人の教育的ニーズ、保護者の意見、専門家の意見、学校や地域の状況等を踏まえ、総合的な観点から判断することが重要」としています。

つまり、教育委員会が一方的に「あなたの子は支援学級です」と強制することは、原則としてありません(あってはなりません)。就学相談のプロセスは、保護者と教育委員会(専門家)が、お子さんの情報を共有し、対話を重ねながら、「合意形成」を目指していく場なのです。

私の考え

「教育委員会が決める」と聞くと、なんだかお役所的で、冷たいイメージを持ってしまうかもしれません。でも、実際には、お子さんに関わる多くの人々(園・学校の先生、心理士、医師など)が情報を持ち寄り、何度も話し合いを重ねる、非常に丁寧なプロセスです。

だからこそ、保護者として一番大切なのは、「人任せにしないこと」だと思います。「専門家が言うなら…」と流されるのではなく、「家庭ではこういう様子です」「親としては、こういう点を伸ばしてほしい」「通常学級(あるいは支援学級)の、こういう点に期待(不安)がある」と、自分の言葉で、率直に意見を伝えることが何より重要です。もし教育委員会の提案に納得がいかなければ、その理由を明確にし、対話を続ける権利が保護者にはあります。


特別支援学級に入るには、具体的に何をすればいい?(手続きの流れ)

では、実際に「うちの子も支援学級の選択を考えたい」と思った場合、具体的にいつ、何をすればよいのでしょうか。ここでは、主に「就学時(年長さん)」のケースを想定して解説します。(※在学中の「転級」については、担任の先生や特別支援教育コーディネーターの先生に相談するのがスタートラインです)

1. スタートは「就学相談」

支援学級への入級を希望する場合、まず自治体の「教育委員会」が行っている「就学相談」に申し込むことから始まります。

  • 時期: 自治体によって異なりますが、年長さんの春(5月頃)から秋口(9~10月頃)にかけて相談を受け付けていることが多いです。早めのスタートが肝心です。
  • 窓口: 市(区)役所の「教育委員会(指導課、学務課など)」や、「教育センター」などに就学相談の専門窓口が設けられています。まずは電話で問い合わせてみましょう。
  • きっかけ: 保育園・幼稚園からの勧め、療育機関からの勧め、就学時健診での指摘、保護者自身の希望など、様々です。

2. 準備するもの(あると良いもの)

相談や面談の際に、お子さんの様子を客観的に伝えるために、以下のようなものがあるとスムーズです。

  • 母子健康手帳(発育の記録)
  • 療育手帳(もし取得していれば)
  • 医師の診断書(発達障害などの診断が出ている場合)
  • 知能検査(WISCなど)の結果(療育機関などで受けたことがある場合)
  • 保育園・幼稚園での様子を記した連絡帳やメモ
  • 家庭での困りごと、逆に得意なことなどをまとめたメモ

3. 学校見学(最重要!)

就学相談と並行して、あるいはその前に、必ず「学校見学」に行きましょう。

  • どこを見るか
    • 学区の学校の「通常学級」の様子
    • 学区の学校の「支援学級」の様子
    • (必要であれば)学区外の学校の「支援学級」(※自治体によっては、設置されている支援学級の種類(知的、情緒など)が学校によって異なるため)
  • チェックポイント
    • 教室の環境(広さ、掲示物、静かさ、刺激の多さなど)
    • 在籍している児童の人数や様子(落ち着いているか、楽しそうか)
    • 先生の雰囲気(児童への接し方、言葉遣い)
    • 通常学級との「交流」はどの程度、どんな内容で行われているか(給食、休み時間、特定の教科など)
    • 支援学級の先生に、指導方針や力を入れていることなどを直接質問してみましょう。

私の考え

この「学校見学」は、手続きの中で最も重要だと言っても過言ではありません。「支援学級」と一口に言っても、学校のカラー、先生の専門性、在籍しているお子さんたちの雰囲気によって、全くカラーが異なります。

ある学校は、生活スキルの習得に力を入れていて、非常に落ち着いた雰囲気。別の学校は、交流を重視し、通常学級との行き来が活発で賑やか。

パンフレットや人から聞いた話だけでは分かりません。必ず自分の目で見て、「この環境なら、うちの子は安心して過ごせそうか」「この先生になら、預けられそうか」を感じ取ることが大切です。

4. 就学支援委員会を経て、決定へ

見学や相談、検査などを経て、前述の「就学支援委員会」で検討が行われ、冬頃(12月~1月頃)に教育委員会から「就学先決定通知書」が届く、というのが一般的なスケジュールです。


見過ごせない、特別支援学級のデメリットとは?

ここまで支援学級の必要性や基準について述べてきましたが、保護者として不安に思うのは、やはり「デメリット」です。良い面ばかりではありません。入級を選択する前に、懸念される点もしっかりと理解しておく必要があります。

1. 学習面のデメリット

  • 進度の遅れ: 支援学級(特に知的障害学級)では、個々のペースに合わせるため、学習の進度は通常学級よりゆっくりになります。教科書も、通常のものとは異なる「特別支援教育用教科書」を使用することがあります。
  • 内容の簡略化: 学習内容が、基礎的・基本的なものに絞られることがあります。
  • 中学進学時のギャップ: もし、中学で通常学級への進学を希望した場合、小学校6年間の学習内容の差が大きく、本人が苦労する可能性があります。

2. 人間関係・社会性のデメリット

  • コミュニティの狭さ: 在籍人数が少ないため、人間関係が固定化しがちです。気の合う友達が見つかれば良いですが、もしトラブルになった場合、逃げ場が少ないという側面もあります。
  • 「守られすぎ」の環境: 手厚いサポートがある反面、通常学級のような「集団の荒波」にもまれる経験は少なくなります。その結果、自分と他者との違いを調整する力や、トラブルを自力で解決する力が育ちにくい可能性も指摘されます。
  • 交流の限界: 多くの学校で「交流学級(通常学級)」との交流(給食や特定の教科)が行われますが、その頻度や質は学校によって様々です。形式的な交流に留まり、深い関係性を築きにくい場合もあります。

3. 周囲からの偏見

  • 「支援級の子」というレッテル: 残念ながら、いまだに「支援学級=特別な子」という偏見の目(子ども同士、あるいは保護者や地域から)が存在する場合があります。
  • いじめの対象: 特性が目立つことや、「違う」とみなされることで、からかいやいじめの対象になるリスクは、通常学級より高いと懸念する声もあります。

私の考え

毎日「できない」ことばかりを指摘され、「どうして君だけ違うの?」という目で見られ、授業は全く分からず、友達もできない…。そんな日々が続けば、子どもの自己肯定感はボロボロになり、学校そのものが「苦痛の場所」になってしまうかもしれません。不登校や二次障害(不安障害、うつなど)を引き起こす可能性もあります。

通常学級で自信を失うデメリットと、支援学級で学習が遅れるデメリット。
どちらが、お子さんにとって「今」そして「将来」より深刻でしょうか。

デメリットを理解した上で、「そのデメリットをどう補うか」を考える方が建設的かもしれません。学習面が心配なら、家庭学習や放課後デイサービスで補う。社会性が心配なら、地域のスポーツ少年団や習い事など、学校以外のコミュニティに参加させる。親が積極的に交流学級の保護者とコミュニケーションをとる。

「支援学級に入れたらおしまい」ではなく、「支援学級をベースキャンプにしながら、どう社会と繋げていくか」という戦略を立てることが、親の役割なのかもしれません。


まとめ:お子さんにとって「最善の学びの場」を選択するために

小学校の支援学級の基準について、文部科学省の定義から、現場のリアルな声(想像)、そして保護者としての葛藤まで、詳しく見てきました。

「支援学級」という選択は、決して簡単なものではありません。様々な情報、周りの目、そして我が子の将来への不安が入り混じり、迷い悩むのは当然のことです。

重要なのは、支援学級は「劣っている子の行く場所」でも「楽をする場所」でもない、ということです。
そこは、「通常学級の環境では困難を抱える子が、その子に合った方法で、必要なサポートを受けながら、安心して学び、成長するための場所」です。

文部科学省が定める基準はありますが、それはあくまで目安です。最終的には、IQの数字や診断名ではなく、「お子さん自身が、今、何に困っていて、どうすれば笑顔で学校生活を送れるか」という視点が、何よりも大切です。

「勧められた」ことをネガティブに捉えるのではなく、お子さんの特性を深く理解し、最適な環境を考える「きっかけ」と捉えてみてください。

一人で抱え込まないでください。園や学校の先生、教育委員会の就学相談、療育機関の専門家、そして場合によっては先輩ママさんなど、相談できる相手はたくさんいます。

納得いくまで情報収集し、実際に見学し、夫婦で(あるいは家族で)とことん話し合い、最後はお子さんの表情を一番よく知る保護者として、「うちの子には、ここが最善だ」と信じられる道を選んでください。

その選択が、お子さんの「学校が楽しい」「学ぶって面白い」という気持ちを育む、一番の土台となるはずです。

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