特別支援学級と通常学級の“学級目標”はどう違う?|それぞれの目標に込められた願い

実践アイデア集

学級目標って、そのクラスでどんな1年を過ごしたいかを表す、大切な言葉ですよね。でも、「通常学級」と「特別支援学級」では、目標の立て方に違いがあるってご存知でしたか?

この記事では、それぞれの学級目標が持つ特徴と、その背景にある考え方、そして特別支援学級ならではの目標作りのヒントをお伝えします。違いを知ることで、それぞれのクラスに込められた先生たちの願いや工夫が見えてくるはずですよ。

支援学級の最適な学級目標づくりについては、こちらの記事を参考にしてください。👇


通常学級の学級目標、その特徴とは?

通常学級の学級目標は、多くの場合、クラス全体での成長や一体感を意識した言葉が使われます。

  • 集団を意識した言葉が多い:「協力」「助け合い」「思いやり」といった、仲間との関わりを促す言葉がよく見られます。
  • 学習や活動への意欲・向上心が前提:「チャレンジ」「高め合う」など、前向きな姿勢や努力を促す表現が使われがちです。
  • 「クラス全体」での到達が重視されがち:個々の成長はもちろん大切ですが、クラスとして目指す姿が共有されます。
  • 学年の発達段階をふまえた抽象的な表現も可能:ある程度の抽象度を持たせることで、多様な活動に適用できる目標を設定します。

例:「仲間とともに 高め合うクラスにしよう」
→ クラス全体が一体感を持ち、互いに刺激し合って成長する姿が前提にあります。

学級目標の具体的な案を学年別に見てみましょう。

低学年向け(1・2年生):親しみやすさと基本的な生活習慣

低学年では、小学校生活の基礎となる挨拶や友達との関わり、ルールを守ることなどを分かりやすい言葉で目標にします。

  • 「あいさつ えがお げんきなこえ」
    ─ きもちのよいクラスにしよう
  • 「ありがとうが いえる こころ」
    ─ やさしいきもちをたいせつに
  • 「みんな なかよし たすけあい」
    ─ ひとりじゃないよ、みんなともだち
  • 「がんばる こころを わすれない」
    ─ できるまで やってみよう!
  • 「ルールをまもって たのしいがっこう」
    ─ みんながにこにこすごせるように

中学年向け(3・4年生):ユニークさと主体性の芽生え

中学年になると、学習や集団活動の幅が広がるため、主体性や協調性を育むユニークな目標も増えてきます。

  • 「チャレンジ・チームワーク・つづける力」
    ─ 3つの“ち”で大きくなろう
  • 「やさしいことばと きもちのこえ」
    ─ こころでつながるクラスに
  • 「なかまといっしょに がんばるクラス」
    ─ 一人じゃできないことも、みんなならできる
  • 「しっかり きいて じぶんの いけんも はっきりと」
    ─ つたえあいを大切にしよう
  • 「できないを できるに変える努力」
    ─ あきらめずに まずは やってみよう

さらに、ユニークで楽しい目標の例もご紹介しますね。

  • 「今日も1ミリ成長!」
    ─ 小さなチャレンジを毎日積み重ねよう
  • 「ナイスキャッチ!みんなのいいところ」
    ─ 友だちのよさを見つけよう
  • 「やってみ隊、あつまれ!」
    ─ まずはやってみようの気もちで!
  • 「ドキドキOK!まちがいは宝」
    ─ まちがえることは成長のチャンス
  • 「スマイルじゅうでん中!」
    ─ クラスみんなで元気をチャージ!
  • 「ハートでつながる〇〇人」
    ─ 数字は学級人数に合わせて変更可能
  • 「にじいろクラス、大作戦!」
    ─ いろんな個性がまざり合うステキなクラス
  • 「よっしゃ!スイッチON」
    ─ やる気スイッチをいっしょに入れよう
  • 「話す・聞く・笑う・考える」
    ─ 4つの力でぐんぐんのびる!
  • 「やさしさリレー、バトンつなごう」
    ─ 思いやりをつないでいくクラスに

高学年向け(5・6年生):自立と未来を見据えた目標

高学年では、卒業を意識し、一人ひとりの自立や社会性を高める、より深く、力強い目標が掲げられます。

  • 「自分を大切に 友だちも大切に」
    ─ 思いやりと自信をもって過ごそう
  • 「一人ひとりが主役のクラス」
    ─ 自分らしさを力に変えよう
  • 「やるときはやる 楽しむときは楽しむ」
    ─ けじめをつけて、毎日を充実させよう
  • 「笑顔と成長があふれる毎日を」
    ─ 前向きに、明るくすごそう
  • 「なかまとともに 高め合う」
    ─ チームの力で 未来をひらこう

また、高学年ならではの「かっこいい」学級目標として、英語や漢字二文字を取り入れるのも人気です。

漢字二文字読み意味/英語サブタイトル
挑戦ちょうせん失敗をおそれずに挑もう
信頼しんらい信じ合える関係をつくろう
飛翔ひしょう自分の力で羽ばたこう
友情ゆうじょう仲間とともに進もう
進化しんか毎日少しずつ、成長しよう
自立じりつ自分で考えて動ける力を
情熱じょうねつ夢中になる力が未来をつくる
協力きょうりょく力を合わせて乗り越えよう
未来みらい今の自分が、未来をつくる
挑夢ちょうむ夢に向かって挑む心を

特別支援学級の学級目標、その特徴とは?

一方、特別支援学級の学級目標は、一人ひとりの「できること」や「成長の段階」に深く寄り添って立てられます。

  • 一人ひとりの“できること”が違う前提で立てる:個別の支援計画(IEP)に基づいて、その子に合わせた目標を設定します。
  • 抽象的な表現より、“目の前の小さな達成”を意識:具体的な行動や、日々感じられる小さな成功体験につながる言葉が重視されます。
  • 目標の言葉そのものが「支援の道しるべ」になる:先生も子どもも、目標の言葉を見れば次に何をすればいいのかが分かるような機能を持つことがあります。
  • 「その子の世界」が広がるような表現を重視する:新しいことへの挑戦や、人との関わりが増えるような言葉が選ばれます。
  • 保護者にとってもわかりやすく、共感しやすい言葉を選ぶ:家庭での支援にもつながるよう、共通認識を持てる表現が大切です。

例:「できた!をいっしょにふやそう」
→ 小さな成功を認め合い、自信を育む経験を大切にしたいという願いが込められています。

特別支援学級の学級目標について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧くださいね。



通常学級と特別支援学級、目標の立て方の「価値観」の違い

両者の学級目標には、それぞれ異なる「価値観」が反映されています。以下の表で比較してみましょう。

比較項目通常学級特別支援学級
目標の対象クラス全体一人ひとり
目指す姿成長・団結・挑戦安心・自信・達成
表現のレベル抽象的・高め合う具体的な行動・寄り添う
優先すること集団での成長と協調性個の支援と喜び、小さな成功

特別支援学級の学級目標づくりのヒント

特別支援学級の学級目標を考える際は、以下のような視点を持つと、より子どもたちに寄り添った目標が作れます。

  • 子どもの表情・会話・行動から「今、育てたい姿」を見つける:日々の様子を観察し、個々のニーズや興味関心から目標のヒントを得ます。
  • 支援目標(個別の教育支援計画)とリンクさせる:個別の教育支援計画に沿った具体的な目標を設定することで、一貫した支援につながります。
  • 子どもが「自分のことだ」と思える言葉にする:子ども自身が目標を理解し、主体的に取り組めるような、分かりやすい言葉を選びましょう。
  • 親しみやすく、繰り返し言いやすい短さがベスト:日常的に意識できるよう、覚えやすく口に出しやすい言葉が効果的です。
  • 毎日の中で“使える言葉”として機能させる:目標が掲げるだけでなく、日々の生活や学習の中で「今、この目標を意識しよう」と具体的に行動を促せるような言葉にしましょう。

  • 「やってみよう!が合言葉」
  • 「ゆっくりでも まえにすすもう」
  • 「できた!の数を ふやそう」

おわりに:ちがいを知ることは、“理解”の第一歩

特別支援学級の学級目標は、決して「やさしい表現」にしているだけではありません。それは、その子たちの歩幅に合わせて、意味ある1年を描くための「支援と言葉のデザイン」なのです。

今回、通常学級と特別支援学級の学級目標の違いについてご紹介しました。この違いを知ってもらうことで、通常学級と特別支援学級の間にある“目に見えない壁”が、少しでもやわらかくなることを願っています。

それぞれのクラスが、子どもたちにとってかけがえのない場所となるように、学級目標がその道しるべとなることを願ってやみません。

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