支援学級の学級目標を子どもと一緒に作るためのステップ【自立活動とつなぐ】

実践アイデア集

“与える”のではなく、“一緒に作る”学級目標へ

学級目標は、教師が一方的に決めて掲げるものではありません。子どもと一緒に「どう過ごしたいか」を考える学びのプロセスにすることで、彼らの自立の力自己理解にもつながっていきます。

この記事では、支援教育の根幹である「自立活動」の6区分の視点をベースに、子どもたちの主体的な学びと成長を促すための、学級目標づくりステップをご紹介します。単なる目標設定ではなく、子どもたちが「自分たちで考え、決める」というプロセス自体が、かけがえのない自立活動の経験となるはずです。

通常学級と支援学級の学級目標の違いは、こちらの記事から👇


自立活動と「学級目標づくり」の関係

自立活動の6区分は、学級目標づくりと非常に相性が良いんです。それぞれの区分が、学級目標のテーマを考えるヒントになります。

  • 健康の保持:体を整える・無理しない
    (例:健康的な生活習慣、心身のバランス)
  • 心理的な安定:安心して過ごす・気持ちの安定
    (例:不安の軽減、自己肯定感の育成)
  • 人間関係の形成:関わる・認め合う・感謝する
    (例:友達との協力、多様性の尊重)
  • 環境の把握:今どんな場所か、何をしているか理解する
    (例:今の教室の良い点、改善したい点を共有することで、目標設定の必要性を実感する)
  • 身体の動き:姿勢・動き・作業への集中
    (例:集中力、器用さの向上)
  • コミュニケーション:話す・伝える・聞く
    (例:自分の気持ちの表現、相手の意見を理解)

この6つの視点をもとに、「目標」=「子どもに願う育ち」として言葉にすることができるでしょう。


ステップ1:【現状把握・環境の把握】学級の“今”を子どもと見つめ直す

▼ 先生が一方的に「〇〇ができてない」と言わないことが大事

まずは、子どもたちと一緒に、「今のクラスの様子」を振り返ります。ここでのポイントは、先生が一方的に課題を指摘するのではなく、子どもたち自身に気づきを促すことです。

✅ 活動例

  • ✓ 「今のクラス、いいところってどこ?」
  • ✓ 「ちょっと大変だな、困るなと思うときはどんなとき?」
  • ✓ 「どんなクラスだったら、もっとみんなが楽しく過ごせるかな?」

発表が苦手な子には、個別ワークシートや感情カード、絵カードなども活用できます。子どもたちが「今の自分たちのクラスはどんな状態なのか」を具体的に認識することは、目標設定の必要性を実感する大切な一歩となります。

✏️ ワークシート例

いいところもっとよくしたいところどうしたらいい?
みんなやさしいうるさくなるときがある休み時間と勉強のけじめをつけたい
助け合う片付けが遅い終わりのチャイムで片付けを始める

ステップ2:【心理的な安定・人間関係の形成】「こんなクラスにしたい!」を子どもの言葉で広げる

子どもたちから出た「今のクラスの様子」をもとに、「こんなクラスにしたい!」という理想のイメージを広げていきます。ここでは、心理的な安定や人間関係の形成といった自立活動の観点が活きてきます。

✅ 話し合いの問いかけ

  • ✓ 「もっとこんな風になったらいいなって思うことは、どんなこと?」
  • ✓ 「例えば『安心できるクラス』って、どんな感じかな? 具体的に教えてくれる?」
  • ✓ 「『けんかしないクラス』にするには、どんなことが大事だと思う?」

✨ ポイント

抽象的な言葉が出た場合でも、先生が具体的な問いかけで深掘りすることで、子どもの思考をサポートできます。

  • 「安心してすごしたい」
    →「安心って、どんなときに感じる? どんな時に不安になる?」
  • 「けんかしないクラス」
    →「けんかしないために、どんな言葉を使ったり、どんな行動をしたりするといいかな?」

ステップ3:【コミュニケーション・環境の把握】子どもの言葉を基に、目標案を形にする

子どもたちから出た言葉は、彼ら自身の願いや気づきそのものです。基本的にはその言葉をそのまま採用し、先生は言語化と構造化の支援を行います。ここでは、子どもたちのコミュニケーション能力を伸ばしながら、目標の「形」を整えていきます。

  • 言葉を整える:子どもが言った言葉を、よりシンプルで覚えやすい形にする。
    (先生の声かけ例:「〇〇さんの言った『ゆっくりしたい』と、△△さんの『あせるとこわい』、これって似ているかな? じゃあ、『ゆっくりでいい。自分のペースで』はどうかな?」)
  • 共通点でまとめる:似たような意見をグループ化する。
  • 似ている意見を分類する:複数の意見を包括するような表現を見つける。

💬 子どもの声からの変換例

  • 「ゆっくりしたい」「あせるとこわくなる」
    「ゆっくりでいい。自分のペースで」
  • 「まちがえるのがいや」「まちがえたらおこられる」
    「まちがってもだいじょうぶな教室」

もし目標の言葉選びに迷ったら、こちらの記事を参考にしてみてください👇


ステップ4:【コミュニケーション・人間関係の形成】子どもと一緒に決定!納得感を大切に

いくつかの目標案ができたら、「どれがいちばん“みんならしい”かな?」「この中で、一番やってみたいのはどれ?」と問いかけ、子どもたちと一緒に決定します。自分たちで選んだという納得感が、目標達成への原動力となります。

✅ 決め方の工夫

  • カードにして選ぶ:目標案をカードに書き出し、目で見て選びやすいようにする。
  • 投票シールを貼る:各目標案の横に投票シールを貼ることで、視覚的に分かりやすくする。
  • ミニ討論をする:高学年向けに、それぞれの目標案の良い点や課題を話し合う時間を作る。

このプロセスを通じて、子どもたちは「自分の気持ちを伝える」「他人の意見を受け入れる」「合意形成をする」といった、大切なコミュニケーション力と人間関係形成のスキルを自然と育んでいきます。


ステップ5:【健康の保持・身体の動き】目標を視覚化し、日々ふり返れる形にする

できあがった目標は、「貼って終わり」ではありません。日々の生活の中で目標が意識され、行動につながるよう、視覚的な工夫と振り返りの習慣化が大切です。

📌 おすすめの工夫

  • 教室に大きく掲示:子どもたちの目に入りやすい場所に、大きく分かりやすく掲示する(視覚支援)。
  • イラスト付きカードにして配布:個別の支援ニーズに応じて、目標をイラストやピクトグラム付きのカードにして配布する。
  • 毎朝や帰りの会で目標にふれる:今日の目標や、目標達成のために頑張りたいことを確認する時間を設ける(習慣化)。
  • 成長記録シートと連動させる:週ごとや月ごとに目標を振り返り、できたことや頑張ったことを記録するシートを作成する。

おわりに|“学級目標づくり”は、それ自体が自立活動

学級目標を子どもと一緒に作ることは、単なる「目標設定」ではなく、自己理解・他者理解・意思決定・表現・生活調整といった、まさに自立活動そのものと言えます。

支援学級だからこそ、子どもの“今”に寄り添い、「自分たちで決めた目標」を目指して、1年間を共に歩んでいきましょう。

子どもたちの主体的な学びと成長を応援する学級目標づくり、ぜひ楽しんで取り組んでみてくださいね。

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