特別支援学級の先生方、日々の授業でこんな悩みを抱えていませんか?
- 「この子に、この学びをどう届けたらいいんだろう?」
- 「教科書通りに進めたいけれど、目の前の子どもたちには難しすぎる…」
特別支援学級の教室には、さまざまな学年、さまざまな特性を持った子どもたちが一緒に学んでいます。私のクラスでは、現在1年・2年・4年・5年、6年の児童6人を担当しており、それぞれの教科・単元を学年ごとに計画通り進めようとすると、40教科分の授業を並行して進めなければならない(1年国語と2年国語で2カウント)計算になります。
当然ながら、それをそのまま実行するのは現実的ではありません。「ではどれかの単元をやめてしまおう」と簡単に決められるほど単純な問題でもないことは、先生方ならよくご存知のはずです。
一律に「やらない単元」を決めるのではなく、「学びをどう届けるか」を考える
特別支援学級では、個別の教育課程の編成が可能です。しかし実際には、保護者から「学年の内容をしっかり学ばせてほしい」「交流学級と同じように教科書やテストを使ってほしい」といった要望も少なくありません。
そんなとき、私は「この単元は無理そうだからやめよう」ではなく、「どうすればこの子がこの単元に取り組めるか」を常に考えるようにしています。
たとえば、2年生の算数「かけ算」の単元。言葉の指示理解が難しい子には、かけ算の文章問題の意味を理解することが困難な場合があります。
そこで、私はこんな工夫を凝らしました。
- 実物の花やブロックを使って「3つの花が5本ずつあるよ」と視覚化して提示する
- 抽象的な「かけ算」という概念を、具体物と結びつけることで、視覚優位な子どもたちでも理解しやすくなります。
- 課題プリントは3問程度に絞り、問題文は図とシンプルな文に言い換える
- 情報量を減らし、集中力を維持しやすいように配慮。複雑な文章は、シンプルな図や言葉に置き換えることで、問題を解くハードルを下げます。
- 音読や読み聞かせを取り入れ、指で数えながら一緒に考える時間を設ける
- 聴覚からの情報と、具体的な操作を組み合わせることで、多角的な理解を促します。
こうした工夫を通して、その子にとっての「今の学びやすさ」に寄り添いながら、内容自体は学年相当のものに触れられるようにしています。
複数の教科を個別に同時に教える授業の方法についてはこちらをご覧ください👇
減らすのは「量」ではなく「壁」
確かに、認知面に著しい遅れがある子や、強い情緒的な不安定さから学習に取り組む準備が整っていない子については、学習量や単元数を減らすことが支援になる場合もあります。
しかし一方で、環境さえ整えば、学年相当の内容を十分に理解し、応用力を育てていける子もたくさんいます。私は、そうした子どもたちの「伸びる力」を信じて、可能な限り学びの機会を保障したいと考えています。
例えば、4年生の国語「ごんぎつね」の学習。
文章を読むのが得意でない子には、まず音読と絵本版でストーリーを把握してもらい、感情を視覚化するワークシートで「ごんは今、どんな気持ち?」と気持ちの変化を整理してもらいました。その上で、発達の段階に応じた記述課題に取り組ませることで、物語を自分なりに読み取る力を育てることができました。
この時、最初から記述課題に取り組ませようとすると、手が止まってしまい「できない」という経験をさせてしまったかもしれません。しかし、物語の全体像を絵本や音読、音声動画でつかみ、登場人物の感情を視覚的に整理するというスモールステップを踏むことで、苦手意識なく取り組めるようになります。
このように、小さな工夫をすることが、支援級担任の専門性であり、子どもたちの可能性を引き出す鍵になると感じています。(優先順位やバランスが難しいですが。)
支援学級だからこそ、教えることを諦めない
確かに、支援学級担任はやることが多く、週の流れは交流学級の予定に左右され、毎日が綱渡りのような忙しさです。私も、当然完璧ではありませんし、すべてがうまくいくわけではありません。
以前、ある単元をどうしてもスムーズに進められないことがありました。教材研究を重ねても、しっくりくる方法が見つからず、正直なところ「この単元はもう諦めるしかないかな…」と弱気になったこともありました。
その時、ヒントになったのは、別の単元で使ったタブレットアプリでした。視覚的に情報を整理できるアプリを、この単元の学習内容に合わせてアレンジしてみたところ、驚くほど子どもたちの理解が進んだのです。
私は、日々教材研究を続け、時間割を調整し、個別の対応を模索しながら教室を運営しているつもりです。
例えば、主要教科は午前中の集中力が高い時間帯に設定し、個別学習の時間を確保するためにブロック時間割を取り入れるなどの工夫をしています。
「一人ひとりの学びを保障する」という軸を持ち続けることが、自分自身をぶれずにやっていくコツかと思います。
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