「学校行きたくない小学生」原因が見えない不登校の始まりに…親ができる3つの初期対応【第1回】

保護者・連携


はじめに 〜不登校に立ち止まったとき、最初に読んでほしいこと〜

ある日突然、朝起きられない。登校班の時間が近づいても準備をしない。熱もないのに「学校、行きたくない」と言う。

「昨日まで普通に行ってたのに…どうしてうちの子が?」

戸惑いや焦り、混乱。子どもが学校に行かなくなったとき、最初にぶつかるのは、“原因がわからない”ことへの不安です。

はじめまして。私は18年間、公立小学校で教員として働き、現在は特別支援学級で自閉スペクトラム症など発達特性のある子どもたちと日々過ごしています。

不登校の子どもと接してきた経験も多く、登校刺激を控えながら見守ったケース、家庭と連携して支援の環境を整えたケース、支援学級への転籍により安心感を得たケースなど、様々な道を一緒に歩んできました。

このブログは、もともと「特別支援教育」の実践を紹介することを目的に運営してきましたが、近年特に、不登校と支援教育が交わる場面が増えてきたと実感しています。例えば、学習面での困難さからくるストレス、集団行動への適応の難しさなどが、不登校の引き金になるケースも少なくありません。

不登校の背景に発達特性や感覚過敏などが潜んでいる場合もあれば、学校という環境そのものが合わない子もいます。

そして何より、どのケースでも共通しているのは、「保護者が最初に“地図”を持っていないこと」

見通しが持てない不安の中で、藁をも掴む思いで情報を探し、悩み、迷い、疲れていく。そうした保護者の方の気持ちに、私はこれまで何度も触れてきました。

だからこそ私はこのシリーズで、少しでも「現状を整理し、これからの道筋を考えるための“地図”」を提供できたらと願っています。


「なぜうちの子が?」と感じるのは自然なこと

不登校の始まりは、あまりにも突然やってきます。

  • 昨日は楽しそうに帰ってきたのに…
  • 勉強も人間関係も問題ないと思っていたのに…
  • 「行きたくない理由」がはっきりしない…

そういった中で、親は「どうして?」という疑問に支配されてしまいます。自分を責めてしまう方もいるかもしれません。

でも実は、不登校のきっかけが明確な子どもはむしろ少数派です。いじめや事件などのように“これが原因です”と説明できることはまれで、多くは小さな違和感やストレスの積み重ねが、ある日限界を超えて噴き出すのです。例えば、些細な友人関係の悩み、先生とのちょっとしたやりとり、勉強のつまずきなどが複合的に絡み合っていることもあります。

そして子ども自身も、何が原因なのかうまく言葉にできていない場合がほとんどです。


不登校の「初期対応」で親ができる3つのこと

ここからは、不登校が始まったばかりの時期に、親としてできる3つのことをご紹介します。


① 「学校に行かせる」よりも、「安心できる環境」を整える

最初に必要なのは、子どもの“逃げ場”を認めることです。

「とにかく1日でも早く学校に戻ってほしい」という気持ちはとても自然ですし、親の心配として当然です。

でも、不登校初期の子どもは、身体も心も緊張状態にあり、回復のための“安全基地”を必要としています。無理に学校の話をしたり、登校のプレッシャーをかけたりすることは、逆効果になることもあります。

まずは、家庭の中で「ここにいても大丈夫」「あなたは大切な存在だよ」というメッセージを伝えていくこと。

テレビを見たり、ゲームをしたり、昼夜逆転になったりしていても、「否定せず、様子を見守る」姿勢が大切です。焦らず、今は心身を休める時期だと捉えましょう。無理に声かけせず、好きなものを食べさせてあげる、家での役割を一時的に減らしてあげるなど、お子さんが心からリラックスできる環境を意識してみてください。


② 子どもの変化を“記録”する

不登校が始まると、生活リズムの乱れや情緒の不安定さが出てくることがあります。それは決して「甘え」や「怠け」ではありません。心の中で何かが起きているサインです。

この段階で親がしておくとよいのが、「子どもの様子を日記のように記録すること」です。これは、漠然とした不安を可視化するためにも役立ちます。

  • 眠った時間/起きた時間
  • ご飯の食べ方/話した言葉
  • どんな出来事があったか(例:楽しそうにしていたこと、怒ったり泣いたりした時のきっかけ)
  • 体調の変化(例:頭痛、腹痛など)

スマホのメモ機能やアプリでも手軽にできますし、のちのち支援機関や学校、医療機関に相談する際にも非常に役立ちます。「毎日見ていると気づけない変化」も、記録を振り返ることで見えるようになります。


③ 親自身の心のケアを忘れない

不登校に直面すると、親のほうも「自分が何か間違っていたのか」と自責に陥ることがあります。また、周囲の目や、学校とのやりとりの中で、プレッシャーを感じることもあるでしょう。

でも、子どもの状態が良くなるには、「親が心に余裕を持って関わる」ことがとても重要です。完璧を目指す必要はありませんし、休む時間も大切です。そのためには、親自身も安心できる場所や相談できる相手を持つことが必要です。

  • 信頼できる友人やカウンセラー
  • 保健センターや教育相談
  • オンラインコミュニティやブログ(このブログもぜひご活用ください!)

私はこのブログでも、そうした「親が安心できる情報源」としての役割を担いたいと思っています。


不登校は「人生の終わり」ではない

不登校というと、どうしても「暗い」「将来が心配」といったイメージを持ちやすいものです。

でも、子どもたちは回復力を持っています。大人が思っている以上に、子どもたちは自分の力で立ち直る力を持っています。安全な場所で休み、少しずつエネルギーが戻ってくると、自分なりの「動きたい」気持ちが芽生えてきます。

  • 「学校以外の場なら行けるかもしれない」
  • 「通信制高校に行ってみたい」
  • 「家で学ぶのも悪くない」

そうした選択肢が見えてきたときに、親としてできるのは「信じて、寄り添うこと」。そのための“準備”が、今回お話しした「初期対応」なのです。


まとめ:まずは“今”を受け止め、子どもと一緒に歩き出そう

今回は、不登校が始まったばかりの時期に親ができることとして、

  1. 学校に行かせるより、安心できる環境を作る
  2. 子どもの変化を丁寧に記録する
  3. 親自身の心のケアも忘れない

という3つの視点をご紹介しました。

「うちの子だけが…」と思う必要はありません。

不登校は、特別な家庭だけに起こることではありません。そして、そこから回復し、自分らしい道を見つけていく子もたくさんいます。

このシリーズでは、今後、以下のようなテーマで「保護者のための地図」を描いていきます。

  • 学校復帰を目指すときのステップ
  • フリースクール・通級・支援学級の選び方
  • 発達特性との関わり方
  • 子ども自身の気持ちをどう支えるか
  • 将来の進路や就労への考え方

学校での小さな成功事例については、こちら↓

次回は、【第2回:「学校に戻ってほしい…」と願うときに大切な視点】を予定しています。


おわりに 〜このブログに込めた思い〜

私は、教育現場にいて強く感じています。

「不登校の子どもには、多くの場合、声にならないSOSがある」

「そして親も、声にならない不安や焦りを抱えている」

このブログを通して、少しでもその声に耳を傾け、道を一緒に探していけるような存在になれたら嬉しいです。保護者の方にとっての“地図”となるような情報を、これからも発信していきます。

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