はじめに
「支援学級」という言葉を耳にしたとき、多くの保護者の方は不安や疑問を感じられることでしょう。「うちの子に合っているのかな?」「普通学級とどう違うの?」「どんな風に過ごしているのかしら?」そんな疑問にお答えするために、この記事では支援学級の実際の1日の流れを詳しくご紹介します。
支援学級は、お子様一人ひとりの個性やニーズに合わせた教育を提供する場所です。この記事を読んでいただければ、支援学級がどのような場所なのか、お子様がどのように過ごしているのか、具体的なイメージを持っていただけると思います。
支援学級とは?
支援学級(正式には「特別支援学級」)は、知的障害、発達障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、情緒障害などのある児童生徒が、個々のニーズに応じた教育を受けるための学級です。
「障害があるから」ではなく「より適した教育環境が必要だから」という考え方が基本です。普通学級に在籍しながら一部の授業だけ支援学級で受ける「通級」という形態もあります。
支援学級の1日の流れ(小学校の場合)
では、具体的に支援学級の1日がどのように進むのか見ていきましょう。あくまで一例ですが、多くの学校で共通する部分をご紹介します。
登校~朝の会(8:30~9:00)
支援学級の子どもたちは、通常の学級の友達と一緒に登校することが多いです。校門に着くと、支援学級の先生が迎えに来てくれる場合もあります。
教室に到着したら、まずは荷物の整理から。支援学級では、視覚的に分かりやすいように絵カードや写真を使って片付けの手順を示すことがよくあります。例えば、ランドセルを置く場所、連絡帳を出す場所などが写真付きで表示されています。
「おはようございます!」と元気に挨拶を交わした後、朝の会が始まります。ここでは:
- 日付と曜日の確認
- その日の予定の確認
- 出席確認
- 簡単なスピーチ(昨日の出来事や今日の目標など)
が行われます。視覚支援として、ホワイトボードにその日の流れを絵や文字で示したり、実際にカレンダーや時計を使って日付や時間の概念を学んだりします。
1時間目~2時間目(9:00~10:30)
ここから授業が始まりますが、支援学級では個々の学習計画(IEP)に基づいた指導が行われます。例えば:
- 国語・算数:通常学級のカリキュラムに沿いつつ、一人ひとりの理解度に合わせたペースで進めます。具体物を使ったり、ゲーム形式を取り入れたりして、楽しみながら学べる工夫がされています。
- 自立活動:日常生活に必要なスキル(着替え、食事、お金の計算など)を練習します。実際の場面を想定したロールプレイも効果的です。
- ソーシャルスキルトレーニング(SST):友達との関わり方、感情のコントロール、ルールの理解など、社会生活に必要なスキルを学びます。
授業は15~20分程度の短い区切りで、休憩を挟みながら進めることが多いです。集中力が続きやすいように、タブレットを使った学習や体を動かす活動を組み合わせることもあります。
休み時間(10:30~10:45)
休み時間は、支援学級の友達と過ごすこともあれば、通常学級の友達と遊ぶこともあります。先生が見守りながら、自然な交流が生まれるよう配慮してくれます。
トイレや水分補給など、生活面のサポートが必要な子には、個別に対応します。特に低学年のうちは、休み時間も生活スキルの練習の場として活用されます。

3時間目~4時間目(10:45~12:15)
この時間帯は、通常学級との交流学習が行われることが多いです。音楽、図工、体育など、みんなで楽しめる教科に参加します。
交流の程度はお子様の状態によって異なります:
- 完全に通常学級に参加
- 支援学級の先生が付き添って参加
- 一部だけ参加してあとは支援学級で過ごす
無理のない範囲で、少しずつ通常学級との関わりを広げていきます。もちろん、その日のお子様の体調や気分に合わせて柔軟に対応してくれます。
給食時間(12:15~13:00)
給食は、支援学級で食べる場合と通常学級で食べる場合があります。配膳や食事のマナー、偏食への対応など、食育の観点からも重要な時間です。
- アレルギー対応はもちろん、感覚過敏がある子には無理強いせず、食べられる範囲で挑戦
- 箸やスプーンの使い方、食器の並べ方など、細かいスキルも練習
- 会話を楽しみながら、社会的なやり取りも学ぶ
「苦手なものは一口だけ」「今日はこのくらい」と、小さな成功体験を積み重ねられるよう配慮されています。
清掃時間(13:00~13:15)
清掃活動では、役割分担を明確にして参加します。例えば:
- ほうきで床を掃く
- 雑巾がけ
- 机運び
- ゴミ捨て
「みんなで協力して教室をきれいにする」という達成感を味わえる貴重な機会です。苦手な作業がある場合は、無理のない範囲で参加します。
5時間目~6時間目(13:20~14:50)
午後は、個別学習やグループ活動が中心です。内容は多岐にわたります:
- 作業学習:手工芸、園芸、調理実習など、実用的なスキルを身につける
- 運動・リズム遊び:体のコントロールや協調運動を高める
- 余暇活動:ゲームや読書など、楽しみながら過ごす方法を学ぶ
- 校外学習の準備:公共施設の利用練習など、社会生活に必要なスキルを練習
この時間帯は、お子様の興味や将来を見据えた活動が多く取り入れられます。成功体験を重ねながら、自信を育むことを重視しています。
帰りの会~下校(14:50~15:00)
一日の終わりには、必ず振り返りの時間を設けます:
- 今日できたこと、頑張ったことを確認
- 明日の予定を簡単に説明
- 連絡帳にその日の様子を記入
- 持ち物の確認
「今日も一日頑張ったね」と、達成感を持って帰宅できるよう心がけています。下校時も、必要に応じて先生が付き添ったり、安全確認をしたりします。

支援学級の特徴的な取り組み
通常の学級とは異なる、支援学級ならではの取り組みをご紹介します。
個別の教育支援計画(IEP)
支援学級では、お子様一人ひとりに合わせた教育目標を設定します。保護者とも相談しながら、「この1年でこれができるようになろう」という具体的な目標を立て、定期的に評価・見直します。
多様な学習方法
- 視覚支援:絵カード、写真、図表などを多用
- 構造化:時間、空間、活動を明確に分かりやすく提示
- ICT活用:タブレットやパソコンを使った学習
- 感覚統合:体を動かしながら学ぶアプローチ
専門家との連携
学校によっては、スクールカウンセラーや作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などの専門家が定期的に関わり、より効果的な支援を考えてくれます。
保護者の方へ~安心してください
「支援学級」と聞くと、ついネガティブなイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際はお子様の個性に合わせた最適な学びの場です。
よくある心配と実際の様子
- 「普通学級より遅れてしまう?」
→ むしろ、お子様のペースに合った学習ができるので、「分かる楽しさ」を実感しながら進められます。 - 「友達ができにくい?」
→ 交流学習や学校行事を通じて、自然な形で関わりが生まれます。少人数だからこそ、深い友情が育まれることもあります。 - 「先生の目が行き届かない?」
→ 逆です!少人数制なので、一人ひとりにきめ細かい対応が可能です。
保護者としてできること
- 学校との連携を密に:気になることは遠慮なく相談しましょう
- 家庭での様子を伝える:学校と家庭で一貫した対応ができるよう情報共有を
- お子様の小さな成長を見逃さず:できたことを一緒に喜びましょう
- 自分自身を責めない:支援学級は「より適した環境」を選んだだけです
まとめ
支援学級は、お子様が「自分らしく」学び、成長できる場所です。一見普通学級と違うように見えても、目指しているのは同じ「子どもの幸せな未来」です。
「うちの子にはどんな環境が合っているのか」と悩まれるのは、愛情があるからこそ。この記事が、少しでも安心材料になれば幸いです。気になることがあれば、ぜひ学校見学や教育相談を活用してください。
どのような学びの場であっても、お子様の笑顔が輝くことが一番です。保護者の皆様と教員が協力しながら、子どもたちの成長を温かく見守っていきましょう。
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